島本理生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレはっきり言って期待外れだった。
このエッセイが特別下手だというわけではないのだけど、私の期待値が高すぎたのだろう。
ナイーブな内面を繊細にすくい取る文章力と構成の巧。
彼女の小説を読んで、才能の発露は年齢とは無関係なのだと思い知らされたこともあり、異常にハードルを上げてしまったのかもしれない。
武田百合子の「富士日記」のように、無邪気なくらい素直なまなざしと、物事の本質をとらえる鋭い視線を感じさせるような。
または、よしながふみの「愛がなくても喰っていけます」のように、食に対する妥協を一切持たないような。
そんな文章を期待していた。(よしながふみはマンガだけれど)
いや、ゆるい。
っていうか、中途半端。
恋愛小説家ってことに縛られ過ぎだったんじゃないの?
恋愛小説自体にもあまり興味がない私は、ましてやエッセイで全然知らない他人の恋愛事情なんか知りたくもない。
食だけでいけなかったのかなあ。
食と恋愛を結び付けるのに、無理やり感がぬぐえなかった。
そして何よりも残念だったのは、適当に書き流したかのような文章。
本職は小説家だもん、という気持ちがなかっただろうか。
小説での繊細さはみじんも感じられなかった。
けれど、東日本大地震の日の、その時の光景を書いている部分だけは違った。
そこはやはり、辛く哀しいことを思い出してしまう人にもきちんと配慮して、とても丁寧な文章になっている。
ということはやはりそれ以外の部分は…と思ってしまうのだ。
例えば大阪の町をひとりで歩いているときに、職探し中だと勘違いされた話。
“(ちなみにお水系ではなく、ごく普通の飲み屋でした)”
そもそもごく普通の飲み屋も水商売では?
そして傷心の北海道旅行。
札幌駅から小樽行きの列車に乗った時のこと。
“駅からちょっと離れると、白い平原と雑木林だけが延々と続いている。まっさらな雪にキツネの小さな足跡が点々と付いていた。”
札幌小樽間にこのような場所ありましたっけ?
札幌市内だと、住宅が途切れたところに雑木林が見える場所はあるけれど、平原はないでしょ?
小樽市に入ったらほぼ海と山に挟まれているし…。
これは脳内のイメージ映像なのではないでしょうか?
野生の鹿もクマもいるけど、キツネは見かけたことないしなあ。
全体的に、彼女に対する信頼が一方的に下がった一冊。
“『少年のような男性』と『子供化する男』というのは、似て非なるようである。”
というところだけは、なるほど!と思ったけれど。 -
Posted by ブクログ
8篇の物語が収められている。
今回の物語に特徴的なのは、「小説とは何か」という疑問だ。
「青と赤の物語」では、物語が禁止された世界を描いている。
物語があるから悪いことをする人がいる、そんな考えを持ったエライヒトたちが物語を禁じてしまったのだ。
全く因果関係はないのに、AだからBと決めつけてしまったのだ。
物語は、文学は、何の役にも立たない。
本当にそうだろうか。
物語は時に残酷なものも、悲しいものも、苦しいものもあり、そんな世界を目にするのは時には恐ろしい。
けれども、そんな世界があるから救われる人もいる。
物語に書いてあることは、どんな物語にせよ、誰かから、読者に、あなたに、向けたメッセージだからだ。
困難な世界に立ち向かったり、悲しみと対峙したり、失敗し、絶望することもあるかもしれないが、それだけが物語の価値ではないのだ。
「ゴールデンアスク」は物語を作る側、つまり作家の姿が描かれている。
よく、登場人物たちが勝手に動きだす、なんて言うけれどきっとこんな感じに違いない。
作家が言う言葉にイラつきながらもいちいち納得させられる。
本を読め、というのは大人が安心したいだけ、なんて。
「あかがね色の本」も同じく作家の側からの物語。
言葉とは難しいもの。
人との関係も難しいもの。
だからこそ、言葉を発し、相手に伝えること、そしてその言葉を信じることは尊い。
あかがね色の本。
きっとこの本はこうしてたくさんの人たちに影響を与えた。
今までも、きっとこれからも。
世界を共有する、それは、人と人とがつながること。
その結晶の一つがが、あかがね色の本だったのだ。 -
Posted by ブクログ
タイトルの通り、小説にまつわるアンソロジー。
ラノベっぽい軽さのものが多くて中高生向けかな。
それでも小説の存在意義を説くような話が読めてなんだか嬉しかったです。
本を読んで驚いたり、感動したり、幸せな気持ちになったり、そういう純粋に読書を楽しんでいた頃の初々しさを思い出しました。
「青と赤の物語」 加藤千恵
「あかがね色の本」 千早 茜
「新刊小説の滅亡」 藤谷 治
この3つが好きです。
私の人生、何度小説に救われてきたんだろう。
探さなくてもいつだって必要なときは必ず寄り添ってくれてた。
その経験はその本とともに、何年経っても何が変容しても移ろわなくて、私にとって本当にかけがえのないものです。 -
Posted by ブクログ
強引で恋多き華子と、その双子の弟で冷静で常識人の冬治、華子に一目ぼれしぞっこんの公務員の熊野さん、人付き合いが苦手で冴えない外見の雪村さん。タイプの異なるそれぞれが織りなす恋愛小説。
華子と冬治の夫婦漫才のような掛け合いがまるで少女漫画を読んでいる気分にさせてくれるドタバタで明るい前半を過ぎると、後半に向けてそれぞれの過去の葛藤や素直になれない気持ちが交錯し、もどかしさも感じた。
恋愛小説とうたっているが、登場人物それぞれの成長物語だと思う。表立っては見せない自信の無さや消極的な面などの繊細な心理描写が見事で、でも憎めない子ばかり。
読後感はすっきりした作品。