鈴木雅生のレビュー一覧

  • 戦う操縦士

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    ネタバレ

    ほぼ死の宣告と同じような無謀な飛行機偵察任務を命じられ、何のために死ぬのかも分からぬままに飛び立った主人公が死という犠牲の意味、人間とは何かなどを死線をくぐることで悟っていく物語。
    敵の集中砲火の中をぎりぎりでくぐり抜ける偵察任務はサン・テグジュペリの実体験をもとに描かれているだけあって非常に生々しく緊迫度が高いが、この話は任務より任務中の主人公の内省、そしてその思考が哲学的に高まっていく様子が主な内容になっている。
    難しいところもあって読んで全部理解できたとは到底言い難いのだが、人間は「さまざまな関係の結び目」であり、戦友、軍、祖国という「自分が結ばれているもの」のためにこそ戦い、死ぬのであ

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    2025年09月29日
  • 十五少年漂流記~二年間の休暇~

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    子供の頃、「ロビンソン・クルーソー」「家族ロビンソン」などとともに楽しんだ。
    が、悪党との決闘、島からの脱出方法など、内容が記憶に残っていなかった。もちろん抄訳である。勧善懲悪、ハッピーエンドという単純明快さ、人種、ジェンダーの考え方は、現代に合わないところはあるものの勇気、夢を与えるストーリーとして読み継がれていくだろう。2025.5.21

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    2025年05月22日
  • ポールとヴィルジニー

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    フランス島に住む二組の親子と彼らに仕える召使いたちのお話。

    良い家柄に生まれ地位のない青年と結婚しフランス島へやってきたラ・トゥール夫人。夫を亡くし途方に暮れていたところを、農村生まれで近所の貴族の青年にそそのかされて私生児を産み故郷を追われてフランス島に居着いたマルグリットに助けられて、二人で暮らすようになる。やがてラトゥール夫人にも娘のヴィルジニーが生まれらマルグリットの息子ポールと四人、そしてそれぞれに仕える黒人奴隷の召使いの6人で、慎ましく幸せな生活を送るようになる。
    お互いを唯一無二の兄妹であり幼馴染みであり愛おしい人と想い合うポールとヴィルジニー。幸せな暮らしは、しかしヴィルジニ

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    2025年04月18日
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)

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    寂しさや不安から来る孤独や一人ぼっちの孤独なら分かる気がする。17人の作家陣の考える孤独と孤独へのアプローチが様々で、孤独って奥が深いんだなと思った。想像力や創造力を生み出す有意義な孤独を味わいたいと思った。

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    2024年09月14日
  • ポールとヴィルジニー

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    そうです
    またもやフランス文学です

    うーん、とうしても手にとっちゃうのよね
    血のなせる業といいますか
    今まで黙ってたけど実は自分母方の祖父がフランス人気質なんですよ
    だからフランス人気質のクォーターってことになるのかな
    なのでどうしてもフランス文学に惹かれてしまうのです
    しょうがない、これはしょうがない
    それが血ってやつですもの

    はい、かのナポレオン通称ボナちゃんも愛読したというフランス文学の名作『ポールとヴィルジニー』です

    悲恋純愛物語となっております
    そして純愛するのはなんと!意外や意外ポールとヴィルジニーです(そりゃそやろ)

    舞台はインド洋に浮かぶマダガスカル島(アフリカ大陸の脇

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    2024年06月18日
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)

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    十人十色の「孤独論」とあるが、実際に20人近くの知識人、著名人による寄稿の寄せ集めなので、ダイジェストとしての読み応えはあるが、全てが皮層的で浅い。なんだか格言や至言を探し出したり、その言葉の周辺を少しだけ肉付けしたような文章。それでも思考のきっかけを得たり、脳内に連鎖して考えさせられるのだから、読書は面白い。複数人分を読んで、余韻で考えるのが、私自身のオリジナルな「孤独論」というわけだ。

    人は、社会的分業をしているために完全な自給自足にはなり得ない。また、直接会話をする相手がいなくても、本や看板など、目に入る日本語は、その集団に帰属している証拠。ゆえに言葉が分からぬ海外での孤独感は一層強ま

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    2024年05月25日
  • 戦う操縦士

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    いつかの『新潮』で山内志朗が面白いって言ってたから読んだ。

    第二次世界大戦下で敗北が決定的なフランス。そのなかで敵地での偵察非行に向かう主人公。負けがわかっている(何も守るべきものがない)中で「何のために死ぬのか」という命題を問い続けた筆者の葛藤を自伝的に描き出した小説。

    自分には内容が少し難しかったけれど、「人間は関係の結び目である」とか身体ではなく行為の中にその人が宿るみたいな印象に残るフレーズが多くて面白かった。

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    2023年06月13日
  • 戦う操縦士

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    ヒトラー『我が闘争』に対する「民主主義からの返答」として高く評価される。という書評が気になってしょうがなかったので、「ちいさな王子」に続いて読んでみた。

    1940/5/23の、電撃戦直後のフランス軍偵察飛行1日のお話。

    両世界大戦とも早々に降伏しておきながら、戦勝国然としたフランスには、決していい感情は持ってなかったが、負け戦ながら、懸命に抵抗する姿勢に感銘を受けた。また、「民主主義陣営の中でも最強のやつ」としてアメリカの参戦を待ち望む雰囲気が、よく分かった。

    P302 最後の一文
    明日も、われわれはなにも言わないだろう。明日も、傍観者たちにとっては、われわれは敗者だろう。敗者は沈黙す

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    2022年07月13日
  • ポールとヴィルジニー

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    恋愛小説の古典のひとつで、清らかで純粋な二人の男女の恋愛悲劇を描いた作品です。
    二人のもつ心の清らかさを示すように、細かく描き込まれた風景描写は圧巻ですし、いかなる時にも「神」の存在を信じて自らを律し、他者を恨んだり自暴自棄になったりすることなく常に思いやりを持って行動するヒロイン、ヴィルジニーの姿の美しさは神々しさすら感じさせます。
    互いに想い合いながらも引き裂かれてしまう二人、という構成は、今では定番ですが、1788年に書かれたこの作品はその端緒と言えるのかもしれません。
    ストーリー展開は「王道」の筋道をたどりますから安心して読むことが出来ますし、ヴィルジニーがフランスに旅立った後に残され

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    2021年11月15日
  • ポールとヴィルジニー

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    美しい大自然のなかで育まれる無垢で純粋な愛情。
    二人を引き裂く文明社会。

    繊細で緻密な植物の描写は、まるで島の木々に囲まれながら太陽の光を頬に受けているかのような気分にさえなる。
    社会状態は堕落、自然状態こそ自由と平和だと説いたルソーの思想の影響が強く表れ、また神こそが摂理という啓蒙的な宗教観も表れ、その考え方は現代的になかなか受け入れ難いところもあるが、そういう時代の話だからと読み進めるものである。

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    2021年04月22日