鈴木雅生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「人間の土地」や「夜間飛行」と同じスタンスで
読み進めていましたが、本作は負けると分かっている
戦争での不可能であろうと思われる任務である
偵察飛行を遂行し、帰還するまでが描かれており
その中で著者が思い巡らしたことが
書かれてるのか?と思っていたものの途中から
違和感を覚え…
「結局のところ、なぜ我々はいまだに戦って
いるのだろうか?《民主主義》のため?(中略)
ならば《民主主義陣営》のほかの連中も一緒に
戦ってくれればいいじゃないか!」(P179)と
他国を攻める姿勢になり、名指しはしないものの
アメリカを非難します。
すでにアメリカではベストセラー作家であった
著者のこの作品の目的は「祖国の立場を弁明し、
民主主義という大義を共有するアメリカがヨーロッパの
戦争に参戦するよう促すことである。」(P312)
でしたが、本作の発売前にアメリカは参戦し、
その後、「アメリカの読者はこの作品を、今や
戦友となったフランスの勇気ある戦いの記録として
熱狂的に受け入れた。」(P312)ということでした。
とても素晴らしい作品ですが、今後こういった
目的で書籍が作り出されることがないことを
願うばかりです。。 -
Posted by ブクログ
ネタバレほぼ死の宣告と同じような無謀な飛行機偵察任務を命じられ、何のために死ぬのかも分からぬままに飛び立った主人公が死という犠牲の意味、人間とは何かなどを死線をくぐることで悟っていく物語。
敵の集中砲火の中をぎりぎりでくぐり抜ける偵察任務はサン・テグジュペリの実体験をもとに描かれているだけあって非常に生々しく緊迫度が高いが、この話は任務より任務中の主人公の内省、そしてその思考が哲学的に高まっていく様子が主な内容になっている。
難しいところもあって読んで全部理解できたとは到底言い難いのだが、人間は「さまざまな関係の結び目」であり、戦友、軍、祖国という「自分が結ばれているもの」のためにこそ戦い、死ぬのであるという悟りに主人公が徐々にたどり着く過程は熱かった。
この小説はあっさり敗北したフランスの立場を擁護し、アメリカの参戦を促すという第二次世界大戦中での明確な目的を持った本であったということだが、ここで展開される哲学には普遍的な響きがある。それはサン・テグジュペリ自身が死地へ赴き、命を懸けて獲得したからこその哲学の強度なのだろうと思った。行動こそが自分だというようなことが作中にも書いてあったが、実際の体験に深く裏打ちされたテグジュペリの〈信条(クレド)〉が最後に燦然と提示される時、その力強さには胸を打たれた。 -
Posted by ブクログ
フランス島に住む二組の親子と彼らに仕える召使いたちのお話。
良い家柄に生まれ地位のない青年と結婚しフランス島へやってきたラ・トゥール夫人。夫を亡くし途方に暮れていたところを、農村生まれで近所の貴族の青年にそそのかされて私生児を産み故郷を追われてフランス島に居着いたマルグリットに助けられて、二人で暮らすようになる。やがてラトゥール夫人にも娘のヴィルジニーが生まれらマルグリットの息子ポールと四人、そしてそれぞれに仕える黒人奴隷の召使いの6人で、慎ましく幸せな生活を送るようになる。
お互いを唯一無二の兄妹であり幼馴染みであり愛おしい人と想い合うポールとヴィルジニー。幸せな暮らしは、しかしヴィルジニーが祖国フランスへ渡ることになった時から崩れていく。
川端康成の「乙女の港」に出てくる三千子たちが(たしか)読んでいたので気になって読んでみた。むかし子どもの頃に、このお話のように家の周りに植えた食物だけで生きていく自給自足の生活のごっこ遊びをしたなぁと思い出した。
最終的にヴィルジニーはポールたちを裏切らず、乙女のまま島に帰ってこようとしていたことに安心した。とても悲しい結末ではあるけれど、彼らが彼らの信念を穢すことなく物語が終わったこと自体は救いがあるのかなと。
逃げてきた女奴隷のために主人のもとへ許しを請いにいく件など、果たしてそれは本当に善行なのか?と疑問に思う箇所はあったものの(そもそも召使いという存在を当たり前に受け入れていることとかも)、二人の世界と二人の脳内には悪いことというのは一切存在しなくて、彼らが信じている善だけがそこに存在して生きていたことは納得できる。
モーリシャス島、一度行ってみたい。 -
Posted by ブクログ
そうです
またもやフランス文学です
うーん、とうしても手にとっちゃうのよね
血のなせる業といいますか
今まで黙ってたけど実は自分母方の祖父がフランス人気質なんですよ
だからフランス人気質のクォーターってことになるのかな
なのでどうしてもフランス文学に惹かれてしまうのです
しょうがない、これはしょうがない
それが血ってやつですもの
はい、かのナポレオン通称ボナちゃんも愛読したというフランス文学の名作『ポールとヴィルジニー』です
悲恋純愛物語となっております
そして純愛するのはなんと!意外や意外ポールとヴィルジニーです(そりゃそやろ)
舞台はインド洋に浮かぶマダガスカル島(アフリカ大陸の脇っちょにあるやつね)近くの絶海の孤島
そこで兄弟のように育った二人が…というお話
うーん、途中までは良かったんよなー
自然美あふれる描写とか二人の優しさに溢れた日々とかね
とっても素敵だったんだけど、途中から宗教色つかキリスト教色が強過ぎてもう全然受け入れられません
幸せな日々を送っていた二人はセオリー通り途中引き裂かれちゃうんだけど、もう明らかに母親たちの判断ミス
ヴィルジニーとかめっちゃ辛い日々
なのに神の与えた試練ですとか言われて
逆に濡れ衣を着せられた神様がちょっとかわいそう
で最後はヴィルジニー死んじゃうんだけど、今は神々の元で幸せに暮らしてるから良かったねっていいわけあるかー!っていう
まぁ残されたポールが「いいわけあるかー!」の子だったのでちょっと救われたけど、これでポールが納得してたらナポレオンも破り捨てるでほんと
うーんキリスト教色強めですとか書いといてくれへんかなー -
Posted by ブクログ
ヒトラー『我が闘争』に対する「民主主義からの返答」として高く評価される。という書評が気になってしょうがなかったので、「ちいさな王子」に続いて読んでみた。
1940/5/23の、電撃戦直後のフランス軍偵察飛行1日のお話。
両世界大戦とも早々に降伏しておきながら、戦勝国然としたフランスには、決していい感情は持ってなかったが、負け戦ながら、懸命に抵抗する姿勢に感銘を受けた。また、「民主主義陣営の中でも最強のやつ」としてアメリカの参戦を待ち望む雰囲気が、よく分かった。
P302 最後の一文
明日も、われわれはなにも言わないだろう。明日も、傍観者たちにとっては、われわれは敗者だろう。敗者は沈黙すべきだ。種子のように。
P296
私は信じる。《人間》の優越こそが唯一意味ある《平等》を、唯一意味ある《自由》を築きあげるものだと。私は《人間》の権利が各個人を通じて平等であると信じる。《自由》とは《人間》の上昇にほかならないと信じる。《平等》とは《同一性》ではない。《自由》とは個人を《人間》よりも賞揚することではない。したがって私が戦うのは、それが誰であれ、《人間》の自由をある個人にーあるいは個人からなる群れにー隷従させようとする者だ。
P67
ある女性を美しいと思うとき、私には言うべきことはなにもない。ただその女がほほえむのを見るだけだ。インテリ連中はその顔を説明しようとして、分解してからそれぞれの断片を分析するが。もはやほほえみそのものは見ていない。 -
Posted by ブクログ
恋愛小説の古典のひとつで、清らかで純粋な二人の男女の恋愛悲劇を描いた作品です。
二人のもつ心の清らかさを示すように、細かく描き込まれた風景描写は圧巻ですし、いかなる時にも「神」の存在を信じて自らを律し、他者を恨んだり自暴自棄になったりすることなく常に思いやりを持って行動するヒロイン、ヴィルジニーの姿の美しさは神々しさすら感じさせます。
互いに想い合いながらも引き裂かれてしまう二人、という構成は、今では定番ですが、1788年に書かれたこの作品はその端緒と言えるのかもしれません。
ストーリー展開は「王道」の筋道をたどりますから安心して読むことが出来ますし、ヴィルジニーがフランスに旅立った後に残されたポールが不安定になる様子(ときには神を疑ったり、自棄になったりする)ところは真に迫っていると思います。
一方で、キリスト教の死生観や宗教観が強く反映されているところも少なくありませんから、少し説教臭く感じた部分もあり、「神」や「徳」の美しさや正しさを繰り返し主張されることに少し抵抗感があった、というのも正直なところです。