「かもめ」がかつて魂を焦がし、自ら終わらせた、2つの恋の物語。
10代後半、身も心も捧げたのは、男らしい人。
20代後半、生きたまま殺されているような愛をくれたのは、優しい人。
何もいらない、欲しいのはあなただけ、その言葉そのままに、ひたすら待って、追いかけて、愛して愛して行き着いた
...続きを読むのは、生きたまま死ぬこと。
恋愛小説の楽しみは、どんな風にその恋が終わるのかということです。(暗い…笑)相手や主人公が死ぬとか、そんなのは全然面白くない。
主人公は、自らが死ぬほど愛した相手に、自らサヨナラを告げています。
気が狂うほど愛して、丸裸の心で、プライドなんてはじめからどこにもない。
そんな、果てしなく続くだろうと思っていた恋が、かもめの愛と、男たちの愛が全然違うものであると彼女が気づいとき、終わる。
まるで私がかもめに去られた男たちみたいな気持ちになって泣きたくなったし、
かもめが去っていった後の男たちがどんな人生を送っていったのか知りたくもなった。
きっと男たちはまた別の女性と幸せに暮らしていっていると思う。
身を焦がし、魂を焦がしたかもめは、この先もずっと独りぼっちの不完全な死体として生きていくのだと思う。
川滝かおりさんの詩が過ぎで、彼女が現在は小手鞠るいという名前で小説や児童書を書いていることを知り、はじめて手に取りました。
詩のような優しさとセンチメンタルさを味わわせてくれる1ページ目、1行目。はじめからわたしを虜にする彼女の文章がたまりません。