小杉健治のレビュー一覧
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小杉健治『刑事の父』角川文庫。
2ヶ月連続刊行のシリーズ第1弾。
世の中には政治家絡みの隠蔽や陰謀めいた事件が多々ありそうだ。安倍晋三の暗殺事件で逮捕された山上被告の初公判開始が何故、ここまで遅れたのか。山上被告は捨て駒にされ、真犯人は別に居たのだという説もある。死刑囚にしても、実際に刑が執行の判断は法務大臣の胸算用であり、刑が確定していても冤罪の可能性があれば、なかなか刑は執行されない。一方で死刑が確定して、直ぐに刑が執行される場合もあるのだ。
一般企業でも不良問題や不祥事を隠蔽したり、上層部の意向に逆らえば左遷させられたり、馘首されたりする場合もある。
本作は、家族思いの実直でひた -
ネタバレ 購入済み
幸せに
高四郎が亡くなり、異母兄弟の文七が、湯浅家を嗣ぐ事になった。文七の代わりには、小さい頃、剣一郎に励まされた事を心の励みに生きてきたという太助という、猫の蚤取りを生業にする男が、現れる。高四郎の死は、無念な事であったが、これで、日陰の身であった文七にも、日の目が当たる。
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小杉健治『もうひとつの評決』祥伝社文庫。
法廷ミステリー小説。『裁判員 ―もうひとつの評議』を改題、初文庫化。
人が人を裁く責任の重さと危うさを法廷ミステリーという形で巧く昇華させた見事な作品であった。タイトルの『もうひとつの評決』の意味は終盤に知ることになる。
少し腑に落ちない点はあるが、面白い。
29歳の木原一太郎が出会い系サイトで知り合った並河留美子と母親の富子を刺殺したとされる事件の裁判員裁判が行われる。
離婚協議中の輸入雑貨会社の経営者、堀川恭平は6人の裁判員に選ばれ、犯行を自供した木原一太郎の審理に参加する。ところが、公判初日に木原は自供を翻し、無罪を主張する。物理的な証 -
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今回の一冊は、小杉氏の得意とするところの裁判が舞台となる。
2009年(平成21年)5月21日から始まった裁判員制度がテーマとなっている。
牧田孝一郎の母親が、自宅で何者かに絞殺されたことから物語は始まる。
家庭内のいざこざが原因で実母を絞殺したのではと、メディアは息子の孝一郎に疑惑を集中して報道する。
初期症状の認知症を発症した母親である文子に対し、日頃から激しい言葉を投げかけていた孝一郎が真っ先に疑われたのだ。
そんな渦中、警察はホームレスの男を犯人として逮捕する。
容疑者の三田尻作雄は取り調べに対し、素直に文子を絞殺したことを認めた。
谷口みな子は、33歳を迎えた時から母親の介護に明け暮 -
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小杉健治『父の声』文春文庫。
家族をテーマにした書き下ろしのミステリー小説。
覚醒剤の恐ろしさと父と娘の絆と父親の娘に対する深い愛情を描いた感動の物語だった。覚醒剤に手を染めた娘と父親、覚醒剤を憎み、家庭を省みずに捜査に没頭したために娘と別れることになった麻薬取締官の父親……
覚醒剤を強く憎む麻薬取締官の懸命な捜査と覚醒剤に手を染めた娘を救おうとする父親とが交互に描かれる。やがて、2つのストーリーが重なっていくのだが……
富山県高岡市の地元を離れ、東京で暮らす娘ののぞみが婚約者の本間明を連れて2年ぶりに帰省する。妻を亡くしてから娘のことを思い続けていた父親の順治は二人を明るく迎えるが、