小杉健治のレビュー一覧
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余り評価されていない作品であるが、自分は最後まで面白く読み終える事が出来た。戦後の動乱期に同じ会社で働いていた6人の老人たちは現代社会、戦時、戦後に暗躍した真の悪人の存在を憂えていた。老人仲間の一人の急逝をきっかけに老人たちは真の悪人どもに天誅を下そうとするが…
プロローグに登場した同級生を殺害した少年は暫く鳴りを潜め、あれっと思ううちに次々と新たな人物が登場し、複雑に糸が絡まり、なかなか展開が見えなくなる。終盤、複雑に絡まった糸が少しずつ解され、物語の全貌が明らかになるとともに感動を覚える。
非常に技巧を凝らしたミステリー作品であり、さすがは小杉健治である。 -
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罪と救いの狭間の中で描かれる父と子の長い旅路…その中に感じる強い家族愛…途中で真相の断片が分かるのだが、涙無くしては最後まで読めない小説だった。
母と娘を描いた第一章に始まり、第二章では二十六年前に起きた悲惨な一家惨殺事件が描かれる。殺人の罪で死刑囚となった父親は無実だった…何故、父親は無実の罪で死刑囚となったのか…
事件の真相を追うミステリーと親が子の強い絆が描かれ、思わず物語にのめり込んだ。
小杉健治の作品と初めて出会ったのは『父からの手紙』だったが、この作品も勝るとも劣らない同じ路線の作品である。『父からの手紙』以来、小杉健治作品に魅了され、何冊か読んでいるが、どれも非常に素晴らし -
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今から四半世紀ほど前に描かれた傑作法廷ミステリー。幼き頃に両親を亡くした兄妹。妹面白いの兄の古沢克彦は社長殺しの容疑で逮捕され、無実を叫びながら獄中で自殺する。兄の無実を信じる妹の秀美は兄の名誉回復のため…
タイトルの二重裁判の意味は読み進むうちに少しずつ明らかになるのだが、冤罪の恐ろしさと兄妹の強い絆を感じさせる見事な構成の小説だった。また、冤罪を産むのは警察や裁判所などの司法機関だけではなく、マスコミの報道も大きな要因の一つであるという強いメッセージも描かれ、今のマスコミの暴走を見ると四半世紀ほど前の作品とは思えない先見性をも感じた。 -
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先日、コミックスで「家裁の人 全10巻」を読み終えたばかり。
カバーのかかった「次に読む本」候補、数冊の中から目をつむって選んだのが、この本。 帯の「書店員さん大絶賛」の惹句に思わず購入。第41回(1988)推理作家協会賞受賞作。
これほど上手い文章は久しぶりです。
展開に無駄やゆるみが全然ないんです。
時間が空いたのでちょっとだけ読もうと、ページを繰っていたら、あっという間に10ページは進んでいます。おまけに活字を追っているのも忘れてしまうほど没入してしまいます。
法廷劇です。夫殺し罪を認めている主婦の裁判を、幼馴染でもあり、かつては憧れてもいた新聞記者の私が傍聴します。
3分の1くらい -
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火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)は、江戸幕府の役職で、放火(火付)、盗賊、賭博などの重犯罪を取り締まりました。本来は臨時の役職でしたが、治安維持の必要性から常設化しました。町奉行のような文官とは異なり、武官が担い、必要に応じて武力で制圧する専門部隊でした。
例繰方(れいくりかた)は、江戸時代の町奉行所にあった役所(分課)で、判例の整理や判決録の保存、必要な際の先例調査を主な任務としていました。南北町奉行ごとに、各々与力2人、同心6人で構成されていました。
八百八町を狙う火付盗賊
いつ、どこで、誰が、何を目的に?
市中を疾駆する風烈与力・剣一郎
大風の夜、風烈廻り与力・青柳剣一 -
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今まで、サスペンス物だけしか、読んで無かったが、文体、ストーリー実によく出来ている、「早見俊」時代劇読んでいるが、立体感がある。
ふださし【札差】
1.
江戸時代、旗本・御家人(ごけにん)の代理として、禄米(ろくまい)を受け取り、また金貸しなども業とした人。
2.
宿場(しゅくば)の問屋場で荷物の目方を検査した役目(の人)。
旗本の子女が立て続けに自死する事件が続くなか、富商・大和屋が斬殺された。
なぜか、その目撃者を執拗に狙う二人の刺客……。不可解な動きの先に見えてきた武士の窮状と富商の果てしない欲望が生んだ“江戸の闇”の真相とは?
初見参! 頬に走る刀傷が疼くとき、風烈廻り与刀・青柳剣 -
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知的障がいを持つ息子の翔太が、警察官に取り押さえられている最中に死亡した。
父親の高尾はどうしてそんなことになったのか、警察官に真実を尋ねたが、翔太が暴れたので取り押さえただけだと埒が明かない。
しかし、目撃していた人が何人かおり、その人たちは警察の暴行や新聞発表との違いを指摘する。
しかも、人通りの多い道路にも関わらず、目撃証言が少ない。
そのうち、警察が目撃者の弱みを握り、裁判への証言を妨げている様子が浮かんでくる。
そんな状況の中、新聞記者の八田に水木という弁護士を紹介される。
警察との衝突を避ける人が多い中、水木は過去の経験からも警察を恐れることはなかった。
最初からある程度の展開は