あらすじ
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって……状況は被告不利に傾いてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回日本推理作家協会賞長篇部門受賞作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
夫殺しの被告弓岡奈緒子。殺された夫には愛人が⋯。状況は被告不利に傾いて行く。だが、裁判の進行につれて秘められた意外な真実。人間の心の気高さを謳いあげる感動の法廷ミステリー。
Posted by ブクログ
法廷ミステリー。
原島弁護士が被告人の過去を暴くことで無罪を勝ち取る。
こんな悲しい過去があったなんて。
最後は姉弟が明るく笑顔であったことが何より。
Posted by ブクログ
ー これまでの検察側の尋問においても、被告人の犯行は浮き彫りにされたのである。さらに、被告人自身も自白している。このようなケースにおいて、なおかつ原島弁護士だけが無実の主張をしているのだ。
事実はなにか。法廷にさらけ出されるのは、『訴訟上の事実』であって、『真実』ではない。『真実』は神にしかわからないのだ。
冤罪事件の多くは不当な自白から起こっている。冤罪事件の弁護は、捜査側の自白強要による嘘の供述の指摘からはじまる。つまり、被告人は取調官の過酷な追及に抗し切れずに、ついにやってもいない事件を自白してしまうのだが、裁判に入って、その自白をくつがえすことから、冤罪裁判がはじまるのだ。
ところが、この事件の被告人弓丘奈緒子は、裁判に入ってもすなおに罪をみとめている。その被告人を無実だと、原嶋弁護士は言いはなったのである。 ー
起訴事実をすべて認めている被告人を無罪だと主張する弁護士が紐解いていく“真実”。
後半の弁護側の冒頭陳述からの展開が面白い!
背後にある重たいテーマも考えさせる作品。
Posted by ブクログ
「絆」
日本の、法廷物ミステリーの名作をご紹介。
ミステリーでは、裁判で真実を暴く、というのが王道ですが、小杉作品は「暴いてはいけない真実もあるのではないか、真実とは何か?」が大きなテーマとなっている作品が多いですね。社会的弱者を題材にした作品を数多く発表していますが、「絆」はその中でも感動的作品です。
Posted by ブクログ
先日、コミックスで「家裁の人 全10巻」を読み終えたばかり。
カバーのかかった「次に読む本」候補、数冊の中から目をつむって選んだのが、この本。 帯の「書店員さん大絶賛」の惹句に思わず購入。第41回(1988)推理作家協会賞受賞作。
これほど上手い文章は久しぶりです。
展開に無駄やゆるみが全然ないんです。
時間が空いたのでちょっとだけ読もうと、ページを繰っていたら、あっという間に10ページは進んでいます。おまけに活字を追っているのも忘れてしまうほど没入してしまいます。
法廷劇です。夫殺し罪を認めている主婦の裁判を、幼馴染でもあり、かつては憧れてもいた新聞記者の私が傍聴します。
3分の1くらいで、大体、犯人の予想はつくのですが、その予想が、途中で2転3転します。そのうちに、自分は完全に新聞記者の私になりきってしまいます。
読後感良好!! なぜもっと早くにこの作家に出会わなかったことが悔やまれます!!
Posted by ブクログ
ミステリーでここまで心に沁みる話は滅多にない。裁判の過程を辿り、明らかになっていく真実・過去の因縁・強い絆。 ミステリーとしてもすごいし、心に迫ってくる力も、最大級。 すごくいい本です。
Posted by ブクログ
法廷ミステリーとしても社会派としても
小谷野さんから。
裁判エンターテインメント。同時に、社会派エンターテインメント。
法廷ミステリーは初めて読んだ。筆致が丁寧で面白かった。紋切型も厭にならない範囲で巧みで、無駄な文章が少い。素材はきっちりと社会派に収めてある。
テーマ的に、大江健三郎を思ひ浮かべた。よくできた筋だ。社会派としてまったく古びてゐない感じさへあった。
直木賞候補になったが落された。選評を読むと、文体だったり人情物だったりに難癖がつけられてゐる。この小説が落されるのだから、当時の直木賞は相当レベルが高かったのだなと皮肉交じりに思った。
Posted by ブクログ
我が家のお庭は芝生なのだが、毎年この季節は草取りが大変(-。-;
土日ともなると何時間も外で草取りをしている(-。-;
いつも通り、早朝に草取りをしていると、隣に住む読書好きの叔母が声をかけてきた。
いつも私がポチポチした本は、一冊残らず、全て隣の叔母に回しているのだ。(もちろん、ラブセメタリーもだ)
「まきちゃん、いつも本ありがとね。
まきちゃん、絆って本読んだことある?小杉なんとかって人だったと思うけど。
あれなかなか良かった記憶があるよ。」
と教えて貰ったのですぐにポチった(笑)
弓丘奈緒子は、夫を殺害したことを認めていたのだが、担当する弁護人である原島は無罪を主張する。
殺された夫には、愛人がいたことがわかっていた。夫婦の間では離婚話もあった。
明らかに検察側が圧倒的に有利だったのだが、原島弁護士によって真相が明らかにされていく。
新聞記者であり、幼い頃被告人の隣の家に住んでいた男性が物語を進めていく。
彼は被告人の弟と幼い頃仲良くしていたことがあった。知的障害者の弟に命を助けられたこともあったのだ。
最初はちょっと難しいのかな?退屈かな??と思ったのだが、次第に物語が進み出す。
半分くらい来ると、早い!早い!
どんどん新事実が出てきて読者を飽きさせず、後味も悪くない終わり方o(^▽^)o
叔母はこういう本が好みなのだろうなo(^▽^)o
しっかり楽しませて頂いた♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
Posted by ブクログ
第41回日本推理作家協会賞長編部門受賞作。直木賞候補にも挙がった作品である。
物語は、被告人に憧れを抱いていた司法記者の視点で進み、記者自身が進行形で抱える問題と、裁判の進行が見事にリンクする構造となっている。
罪を全て認めている被告人と、無罪を主張する弁護人。実際の事件の犯人は誰なのか、という点に主眼はなく(そこも一定の推理はされるが)、「被告人はなぜやっていない罪を認めるのか」を、知的障害者(本作では精神薄弱者となっている)の問題と「罪」に絡めて描写している。
舞台は全て法廷であり、尋問を見つめながら過去を紐解く語り手の「私」の設定が秀逸だと思えた。
きっちりきっちりと薄皮を剥ぐように明らかになる事実。
弁護人は法廷外で語ることばはほぼない。代わりに前弁護人が、弁護人の葛藤を語り、その考えを語り、そして「私」も心を決める。この物語は多くの人物が心に抱える「何か」を、痛みを抱えながら清算する物語なのだ。
被告人は過去の罪への思いが強すぎて結果、現在の家族をある種置き去りのような形にしているのもどこか人の業を感じてしまう。人間は複雑だ、というありきたりな結論になってしまうのだけれど。
Posted by ブクログ
夫を殺した犯人にされた妻はアリバイを主張せず、法廷でも犯行を認める証言を繰り返す
しかし、ひとり無実を確信して、弁護士は法廷で無罪を主張する…
法廷劇ミステリーで、濃い人間ドラマでもあり、当時の社会福祉を問う内容でもあり、さらにはどんでん返しを仕組んであるといういい本でした
Posted by ブクログ
評価は4.
内容(BOOKデーターベース)
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。
ここまでして罪を背負う必要があるのか?家族愛も分かるが娘のこと考えたら実際は出来ないだろう。
Posted by ブクログ
「殺人を自白し、法廷でも認めている容疑者を
無実だと主張する弁護士」という「ナニかある」感が
すごいツカミだった。
法廷でのやり取りは小説として面白かった。
ものすごい秘密を期待していたけど、
オチはそこまでではなかった
ただ、読み進めたいと思わせる文章だったし、
障害に対する主人公の気づきなど、他の点でも
読んでよかったと思えた
Posted by ブクログ
新聞記者の眼を通した法廷劇。
被告人は罪を認めているのに、弁護士は無罪を主張。
なぜ弁護士は無罪を確信しているのだろうか、現実問題として弁護士にそこまでの調査力はあるかと、一部覚めた目で読み進めながらも、法廷でのスリリングな展開を楽しめた。
そして、裁判の形式を踏まえ、精神障碍者問題というたいへんなテーマを作品に昇華した著者の力量に、改めて敬意を表したい。
Posted by ブクログ
タイトルやジャケットの見た目より、
数段おもしろい。裁判ものです。
障害をもつ子どもの家庭に起こった悲劇が
書かれています。家族の愛ってすごい。
Posted by ブクログ
法廷のみで事件の真相を追究していくミステリーです。被告人が自白しているのに対し、弁護士は無罪を主張します。しっかりと筋道を立てて覆していく過程は読み応えがありました。
その被告人ですが、兄弟思いで情の深い人物かと思いきや、自分の娘には無感情。「殺人犯の娘」として今後一生を過ごさなければならない娘に対して何とも思わない母親の姿は、どうも矛盾している気がして、感情移入できませんでした。
Posted by ブクログ
作者の著作は、2冊目です。「父の手紙」が、とてもよかったので読んでみました。法廷劇です。目の前で裁判が行われているという緊迫感が伝わってきます。面白かったです。
Posted by ブクログ
私自身法廷ミステリーは初めて読みました。質疑応答が淡々と繰り返されるため、落ち着いて冷静に読みすすめることができました。おかげで、障害者の気持ちや精神障害者を受け入れるために社会がどうあるべきなのか、などをじっくり考えることができました。
Posted by ブクログ
裁判を軸とした推理小説。
続々と暴かれる真実は推理小説の常套だが、この本では精神障害を持つ子供と言う大きく重いテーマについて考えさせられる。
障害児本人は不幸など感じていないこと、社会の受け入れ方が不幸な状況を生み出すのだ、ということを改めて認識させられた。
思った以上に良い作品だった。
Posted by ブクログ
【絆】 小杉健治さん
会社社長、弓丘勇一が殺害された。そして
彼の妻である奈緒子が犯人として逮捕された。
彼女は当初犯行を否認していたが、アリバイも無く
証拠品が発見され、ついに犯行を認めた。
彼女と弓丘氏の間には離婚話も出ていたのだ。
裁判では、当初水木が弁護に当たっていたが
水木は、この裁判の弁護を原島に委託した。
原島は、かつて自分の妻と娘を殺した犯人を
弁護したことのある弁護士だった。
彼は「人間の尊厳を守ることは、真実をおいて
ほかに無いと確信する」という信念をもって
弁護にあたる弁護士だった。
彼は、奈緒子は犯人ではないが、何かの理由で
あえて、殺人犯として罪を受けようとしていると
考えていた。
奈緒子にとって、真実を暴かれるコトは
殺人犯として、起訴されるよりもツライコトだとは
分かってはいても、彼は彼の信念に基づいて
奈緒子の秘密を暴き、裁判を進めていく。
障害者の家族を持っていた奈緒子。
彼女が殺人犯の汚名を受けてまで、
庇おうとするモノは何か。。
障害者への偏見や、障害者を持つ家族の苦悩。
そして、隠し続けてきた過去。
ソレを原島弁護士があらわにしてゆく。
☆
小杉さんの法廷ミステリーシリーズの中の一冊。
奈緒子の弟で障害者の寛吉。
彼の優しさと、あえて家族を捨ててまで、
身を隠さなければならなかった彼の哀しさ。
そういうモノが強く心に伝わってきました。
Posted by ブクログ
父ちゃんが「面白いから読んでみな~」と薦められて読んだ一冊。
ほんとに良い作品でした。
自分が障害児教育に関わっているからということもあると思うんだけど、
すごく考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
第41回推理作家協会賞受賞作。
夫殺しで罪に問われている弓丘奈緒子。本人も犯行を認め、取り調べにも素直に応じている。裁判は情状酌量を求めて進むのかと思いきや、一人、彼女の無実を訴える人物がいた。彼女の弁護士である原島である。そのことにより、被告人が罪を認めているのに弁護人は無罪を主張するという、異例の裁判が始まった。
被告人が殺人の罪をかぶってまで隠そうとする事実は何なのか。被告人の利益を最優先するはずの弁護人が、被告人が拒否しているのにも関わらず真実を追究しようとする姿勢には読んでいてずっと疑問があった。(途中、被告人も解任要求をして弟に説得されたという一文があったが、この嫌がり方なら弟の説得ぐらいでひっこめるのはおかしいと思う)。結果的には被告人にいい結果にはなったと思うが、これはやはりフィクションだからできることかなぁと。しかしながら、原島弁護士によって次々と明らかにされていく真実には驚かされると同時に、物語の構成の緻密さに感心。精神薄弱者(※今は知的障害者とされる)を抱える家族の問題や、タイトル通りその絆についても考えさせられる作品で、ぐいぐい引き込まれた。
読んでいる間1つ気になっていたこと。なぜわざわざ、弁護人が元は水木弁護士だったのが原島弁護士になったという設定が必要だったのかがいまひとつわからなかったのだが、原島弁護士というのはこの作家さんの他の作品にも出てくる人物のようで。この物語は一人の法廷記者から見た裁判という形で進んでいて、主人公はこの法廷記者だと思っていたのだが、実際は原島弁護士ということのよう。
Posted by ブクログ
2025.5.1 BSテレ東 「渡哲也サスペンス 絆」
夫殺し!罪を認めた妻の供述に不審な点を発見。いったい何を隠そうとするのか。被告人絶対不利の状況で、法の下の真実を追求して原島弁護士が立ち上がる。法廷ミステリー。(解説・山崎洋子)
Posted by ブクログ
法廷ミステリー
テーマは暴いてはいけない真実といったところでしょうか?
ストーリとしては、
夫殺しの起訴事実を認めている被告の奈緒子。しかし、弁護士の原島は無罪を主張。
検察の状況証拠や論述、本人の自白も含めて、奈緒子の犯行にしか思えないところから、原島が法廷で少しずつ真実を明らかにしていきます。
奈緒子が殺人の罪を背負ってまで、守りたかったものとは?
といった展開です。
そこには知的障碍者が絡んできます。
さらに家族の絆が浮き彫りになります。
そして、この裁判を通して、語り手である司法記者の「私」の知的障碍者に対する考え方、生まれてくる子供に対する決断が心打たれます。
とってもお勧め
Posted by ブクログ
この人の作品はたぶん今まで読んだことがないと思うけど、帯に「日本推理作家協会賞長篇賞受賞」って書いてあったので、それがどんなもんかさっぱしわからなかったけど評価は得てる事は確かなんだしと思って読んでみた。
普段、推理小説はほとんど読まないけど、これは面白かった。
最初から最後まで一つの殺人事件の裁判シーンばかりで構成されていて、隠されている事をひとつひとつ暴いていく・・・なんてこたあ、推理小説にとって当たり前のことなんだろうけど、題材が知的障害を持つ家族にあるので、単なる探偵ものとはちと違う。
私だってというか、誰だって家族の中に障害者が出来るかもしれないのだから、偏見差別の話は、かなり勉強になるし、知っていなければいけない事だと思う。
ただ、やっぱり推理小説って嫌いじゃないけど、あえて進んで読む分野ではないな。完全に個人の嗜好ですが。
Posted by ブクログ
とてもいい作品でした。夫殺しを認めている奈緒子、無実を信じている原島弁護士。裁判を通して明らかになる過去の事件の真相と奈緒子の秘密。単なる謎解きミステリーでは無く人間の尊厳にまで切り込んだとっても感動的な作品でした。
Posted by ブクログ
明らかに無罪だと思われるのに、なぜか夫殺人事件の犯人として自白し、裁判所でもそのことを認め続けるヒロイン奈緒子。そしてその無実を証明しようとする原島弁護士。奈緒子がなぜ自らの犯罪を主張し続けるのか、その謎解きの物語です。当然ながら大きな秘密があって・・・。読者としてもどきどきしながらその展開を追うことに惹きつけられました。「私」として語り手となっている新聞記者の視点が奈緒子の若い日からの魅力と無実を信じさせてくれるのですが、それにしても夫殺しを認めることにまでなるのだろうか、と冷静には思ってしまいます。このようなタイプの法廷小説は普通の推理小説と異なり新鮮でした。
Posted by ブクログ
1947年生まれ。
登場人物が同世代の人々である。
データベス社会に勤めているかたわら、
書いたと思えない文章の緻密さ。
<構想力>が実にすぐれている。
「障害者」という社会の底辺に
位置づけられている人をめぐって「健常者」
からのよぶんな゛気くばり゛ーそして「意識」
障害者側からの視点も明らかにしてある。
「仕事をとおして生きる喜びをあじわい、
成長していくわけです。」
とても美しい女性ー
「奈緒子」と精神薄弱な弟をもった悲劇。
互いに「過去の事件」を背負っているがゆえに
「かばいあっている。」
Posted by ブクログ
法廷小説の裏側に、家族に障害を持った者が生まれたら、人はどうするのか、どうあるべきなのか? という深い内容が盛り込まれていて、それが「絆」というタイトルに結びついているように思った。
「自分を犠牲にしてまでも、守らなければならないもの」
今の私にはないかもしれない。
でも、子どもを産んだら、迷うことなく、「私の子ども」と言うだろう。
「障害」そして「絆」について深く考えさせられた作品だった。