他のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ前半は「事故物件とは?」から始まり、事例や事故物件に関連しての話が取り上げられている。怪談話もあるものの、孤独死やゴミ屋敷といった話が生々しくインパクトがある。
後半は短編怪談が収録されているが、どれもゾワッとさせてくれる上質なもので面白かった。
ただ大島てる氏の話は非常に不愉快。てる氏の運営する事故物件サイトに掲載されたものはその内容が事実でない場合を除いて掲載削除依頼に対応しない、依頼に応じて掲載を削除していくとサイトの公平性・信憑性がなくなるという。その主張には一理あると思うが、娘を自殺で亡くした遺族である物件所有者(しかも賃貸ではなく所有物件だが、将来売却される可能性がある等の理由から掲載対象だという)の方からの掲載削除依頼(懇願)をわざわざ仔細紹介した上で、こうした訴えに「私は絶対に屈しない」と締め括るところに、自身が社会正義をなしていると信じて疑わない傲慢さを感じた。てる氏のような他者を巻き込んで強い主張をする人は、逆の立場になった人のことを考えてほしい。少しでも考えているのなら、娘を亡くして深く傷ついている遺族の訴えを、本にわざわざ掲載する(ところどころに嫌な注釈を加えながら)という、相手の人間性を全く考慮しない非道なことはできないのではないでしょうか。てる氏からは人間として持ち合わせるべき優しさ・良心を全く感じず、繰り返しになりますが、非常に不愉快でした。 -
Posted by ブクログ
お笑いファン的には「蹴ってみ?」からの「殺すぞ!」もしくはハリウッドザコシショウのタイガーステップでお馴染み佐山聡をUWF関係者の証言から解き明かそうと試みた一冊。特に新事実は出てこないし、そもそも証言の信憑性(記憶の正確さ)も絶対真実とは言い切れない年月の経過は大前提としてある。それでも佐山が天才だというのは揺るがない事実だと思う。微妙に食い違う証言を積み重ねて二次創作的に妄想するプロレス的な楽しみ方の出来る人にはオススメ。真実は一つではない。東京五輪が閉会したタイミングで読んだので藤原組長の「どんなスポーツだって本物は素人が見ても美しいと分かる」の言葉も印象に残った。
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Posted by ブクログ
特異な世界観と、どことなくセンチな余情が残るSF短編集。物語の雰囲気をつかむまでに苦戦した短編もあるにはあったのですが、その世界観や人間関係であったり、あるいは「ここでない世界」に対しての、切ない思いが印象的です。
収録作品は6編。
表題作『逆行の夏』はストーリーはもちろん、SFならではの描写が印象的。水銀の湖と洞窟が、太陽の光を照らし返す情景なんかは、美しさを感じるとともに、SFの想像力の豊かさも感じます。
ストーリーとしては、クローンの姉との再会であったり、身体の改造や性別の転換ですら、簡単に行える、という技術背景が描かれ、なかなかのハードSFらしい雰囲気。
そのため、ややとっつきにくさはあったものの、技術や世界観の面白さだけに頼らず、技術では変えられない家族の関係性に焦点を当てた、暖かさが印象的な短編です。
世界観でもっともインパクトがあったのは『バービーはなぜ殺される』という短編。「統一教」という男も女も性別関係なく、すべてバービー人形のような顔、身体に整形した宗教団体で起こった殺人事件。捜査は被害者、容疑者、目撃者全て顔が同じな上、思想や思考まで一緒という状況に困難を極め……
この設定だからこその、展開の持っていき方や、動機の異常さなどが見事! 統一教の教義や始まりについては、触れられていたけど、それぞれの個人が、統一教のどこに惹かれたのかは、あまり詳しく書かれていなかったと思うので、少しだけ感じたことを。
他者とまったく同じになるというのは、みんなと同じ、自分は異質じゃない、という安心感があるのかなあ、という気がします。そういう意味においてはユートピアとも感じる人もいるのかもしれないけど、そういう思考に対するアンチテーゼとして、この短編は書かれたのかも。
また改めて読んでみると、印象が変わりそうな作品です。
『残像』もある意味ではユートピアのお話。経済不安によって社会が不安定となり、それぞれが小さなコミュニティに分かれた世界。その小さなコミュニティを渡り歩き旅をする男は、ある日、視覚・聴覚ともに不自由な人たちが中心となって運営されている町を訪れる。
音声、文字が認識できない人たちが、どうやってコミュニケーションを取り、文化を維持、発展させるか。現代のパートに、時折過去のパートが挟まれ、現在の実際的な状況と、過去のコミュニティが成り立つまでの歴史や理念までも語られます。
視覚や聴覚などあらゆる情報にさらされる人々と、そこから離れ、独自の言語文化や考え方を発展させていった人々の対比としても読めるかも。思考実験的な部分と、物語のテーマ、そしてここではない世界や文化への憧れが共鳴し合う、こちらも印象的な短編です。
アメリカではいくつもの賞を受賞した作品みたいですが、それも納得の出来。
ユートピアの話はもう一編。少年と一人の女性の出会いが描かれる『さようなら、ロビンソン・クルーソー』は、ユートピアの終わりと共に、一つの時代の終わりの寂しさや郷愁と、新たな決意や爽やかさも印象的な短編でした。
設定自体は特異で作り込まれたものが多くて、話にスッと入れるかは、人によって分かれるかもしれません。
でも一方で、そういった世界を描きながらも、どこまでも変わらない人間の憧れや哀しさを、表現した短編集でもあった気がします。 -
Posted by ブクログ
エドワード・ホッパーの絵画から生まれた十七の短編。
それぞれ全て異なる作家の手によって物語が編み出されており、短編好きも、絵画好きも、うまく取り込まれてしまう。
正直なところ、絵画を眺めているだけでも楽しい。
絵画は、18枚修められている。一枚は、読者が自分で話を作ってみてね、という序文の心憎さよ。
翻訳物なので、独特のクセがある。
決して変な日本語ではないし、つまらないわけでもない。
翻訳者も12人(贅沢!)いるので、この翻訳者だと合わない、といったことがあるわけでもないのだが、やはり「ニュアンス」「空気」という見えないものを取り入れることは、難しいのだろうか。
「キャロラインの話」はある老婦人の物語だ。
視点が変わっていくところ、また、老婦人の秘密がポイントだ。
老婦人の心の中にあったしこりは解消されただろうか。また新たなしこりを生んだだろうか。
願わくば、ハッピーエンドに、と思うが。
家族の問題は近しいだけに問題も起こりやすいことも、必ずしも皆が幸せにはならないだろうという、ざらついた余韻の残る物語であった。
「映写技師ヒーロー」
映写室にいる、少し引っ込み思案な男性の物語。
いかにもアメリカらしい展開だ。
小さな映画館にみかじめ料を求めてやってきた男たちから映画館と、経営者と、受付嬢を守るため、映写技師は立ち上がる。
でも、その「誰かのため」は表に出ることなく、消える。
そしてまた日常に戻る。
アメリカらしい解決方法だが、アメリカンヒーローらしからぬヒーロー。
いや、スーパーマンも普段は冴えない、んじゃなかったっけ。
だとすれば古典的なヒーローがここにいる、のかもしれない。