立原透耶のレビュー一覧
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念願のマイホームを長安に得た主人公が嵌められたのは実現不可能な案件。長年可もなく不可もなく、ただこのまま出る杭ともならずにローンを返すためだけの人生を思い描いていたところに舞い込んだ任務。当初楽な仕事と思っていたのに嵌められた事に気づいた時には時遅し。なんと数ヶ月後には首と胴が離れる予定が立ってしまう。
中国の唐を舞台にした新鮮なライチを長安まで運ぶプロジェクト。唐でライチならいわずとも舞台に上がるべき役者は決まっている。しかし、そんな大物の影を感じつつも話はヒラ官吏の目線から下っ端の苦悩や切なさと共に語られて行く。実現不可能なプロジェクトを前にして家のローンと残されることになる家族を背水として最終カンギマリせざるをえなくなる主人公。その実現不可能さに対して不可能さを構成している要因を紐解き始めさせたのは、命と引き換えに守りたいものと長年ヒラで積み上げていた彼自身の経験値から来るところがプロジェクトXめいて先を読み進めてしまう。
試行錯誤と諦めと、そんな折に出会う人との縁と情の温かさ。官吏の職務遂行の前に捨てざるを得ない友との繋がりや権力による悪政と義憤からのカタルシスと中国官吏お仕事小説の山場が詰め込まれている。
余りにもライチにまつわるあれやこれやに主人公と一緒にのめり込み過ぎてしまうのは三国志を舞台にしたあの小説と同じで、近視眼的になったところを歴史的事象で不意打ちしてくれるのがたまらなく好きだった。
歴史に名を馳せる人物が作品に滑り込まされてくる分量が諄すぎず、しかしながら効果抜群で、このバランス感を読みたくて手に取ってしまう。
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IIは400年後の三体襲来に人類が足掻く話です。
Iは未知世界の探索みたいな高揚感が常にある感じで、IIも未来の地球危機に現代人がどう足掻く様子が書かれててどちらも最高に面白いです。
本作のキーワードは面壁者。三体人は脳波で直接意思疎通するから思考が筒抜けで、人間では当たり前の隠すって言う概念がない。その性質を使って考え出した策が面壁者。
選出された4人の策略が闘争本能、敗北主義、現実逃避とよく考えられててこれがまた面白い。
地球の運命がたった4人の頭の中だけに託されるって、一見異常だけど、それぐらい混乱しても仕方ない話だなと。
その重圧の中での行動や思惑がいかにも人間味溢れてて、見どころだと思う。
2巻目も内容濃くて1巻目の話が遠い過去のようだけど、葉文潔から話はちゃんと繋がってて、その象徴が本巻の主人公でもある羅輯なんだと思う。作者には感嘆しかないです。さてはて地球の行方は!?下巻へ続く、、!! -
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1はそんなに刺さらなかったので据え置いていたのだが、同じような人が2は面白いとレビューしていたので手に取った。確かに面白かった。
400年後の対決に向けてどこにリソースを注ぐべきかという考え方が興味深かったのだが、それをウォールフェイサーに一任するという展開に驚いた。背景を踏まえたとしても現実で考えたらとても採択されるとは思えなかったが、案の定作中でも皮肉られていて苦笑した。おまけに主人公が理想の恋人を妄想したり、果てには妄想の恋人をウォールフェイサー権限で探し出したりして、一体何を見せられているのかという気分にもなった。そりゃ「計画の一部」がミームになるよ。とは言え冷凍睡眠で時間軸が飛ぶと大胆な未来描写に、過去からの来訪者達が戸惑う様にはワクワクした。でも何でもかんでもモニターになるのはちょっと鬱陶しそう。
ルオジーの狙いは呪文をかけたタイミングで何となくピンと来た。ただ効果の出方までは想像していなくてその絶大さには驚いた。また他のウォールフェイサー同様、民衆からの扱いが乱高下する様は気の毒だった。一矢報いることが出来て他の面々も多少は救われただろうか。 -
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主要人物の一人である羅輯(ルオ・ジー)に関わる2人の女性の話し方がとても印象的。「作者のコントロールを離れ、やがて彼らの次の行動が予測不能になる。作者はただ好奇心に駆られて彼らのあとをついていき、彼らの生活の細部を除きま見たいに観察して記録する。それが名作になるのよ。」- 羅輯の元恋人である女性小説家から、小説を書いてプレゼントしてほしいとお願いされ書き始めるが羅輯の中で登場人物が自在に動き出すことに悩む。女性小説家は、作者が登場人物をコントロールするのではなく、真に才能のある小説家であれば登場人物は自由気ままに動き回り、作者はただそれを記録するだけだとするメッセージ。
「ええ。人間の表情、とりわけ目の光は、一番微妙で複雑なんです。視線やほほえみは、ものすごくたくさんの情報を伝えられる。そしてその情報は、人間にしか理解できません。人間だけがこの種の感性を持ち合わせている。」 - 羅輯の妻となる女性はとても綺麗な心の持ち方をする女性で今作の鍵になるんじゃないかと睨んでいる。SFっぽさが感じられて良かった。 -
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全知全能に近づいたAIは、それを生み出した人と連なるものなのか、人とは分かたれてしまった存在なのか。
人である自分としては、連なるものであってしてほしいと考えるものの、存在したリアルな人間の情報でつくられた存在ならば果たしてどう考えればよいのか…、と悩まされたのが「不死病院」でした。そのAI/生身の人間の境目の付けかたへの逡巡の描かれ方とともに、物語としての展開を一番楽しめたのがこの作品でした。
ほかでは、ショートショートに近い作品ながら、初々しいピュアな子どもと全知に近いAIのやりとりがほほえましい「乾坤と亜力」が好きです。
人が生み出しながらも「個人」では到達できない彼岸へと到達したAIは、至らない人という種族の個を、取るに足らないと取るか、理解したいと接するか、ただ何も思考しないのか。その個体差はきっと千差万別で、根源たるヒトとそんなに変わらない愚かしさすら備えた個性を持つものもいるのかもしれないな、と思ったりしました。一周回って、隣り合う存在になってくれているのかも、と。