森内薫のレビュー一覧
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再読
史実通り,ヒトラーは反ユダヤ主義という過激な思想の持ち主ですが,作中では,自らの信念のために無私の奉仕を行う高潔な人物として描かれ,多くの大衆から肯定的に受け止められています.
彼に反対する勢力ももちろん登場しますが,その批判の方法が卑劣で(事実無根のスキャンダルを流布する,暴力的な言動に訴えるなど),かえってヒトラーの高潔さが際立つ構造となっています.しかし,その構造ゆえに,社会の矛盾や危うさが浮き彫りになる作品であり,その巧妙さには恐ろしささえ感じます.
人柄の良さや高潔さが,その人物の思想の正しさと必ずしも結びつかないところも皮肉として印象に残ります. -
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ネタバレ小説のラスト、映画よりずっと良かったです!(というより、映画のラスト、よくわからんかった。)
ジョーシ・オーウェルの『動物農場』の終わりを彷彿とさせる「あちゃ〜、ついにここまで来ちゃったか…」という滑稽な描きっぷりなのに絶望感たっぷりな感じ、めっちゃ味があってよかったです。正直、最後どう着地するんだろうとドキドキしてましたが、素晴らしいラストでした。
ところでヨーロッパって、コメディアンが政治家になること多いですよね。ウクライナのゼレンスキー大統領も元コメディアンだし、イタリアでもグリッロという五ツ星という政党の党首が元コメディアンなのだとか。…まあ、日本にもタレント議員はたくさんいます -
Posted by ブクログ
この本の舞台はドイツであり、ヒトラーがタイムスリップしてくるという内容なのだが、一種の風刺的なものやコメディも含まれており歴史について少しばかりの知識があれば爆笑してしまいます。しかし読み進めていると今まで笑っていた場所は最も恐ろしい場面であったことに気付かされました。この本の内容は独裁者が現れたら少しずつ政権を取るだろうという話です。日本でこそありえるでしょう。
もう二周して,気づいた話を書きます。我が闘争と合わせて読むとやはり、訳者が同じなのでは?と思うほどには口調や思考がそっくりでした。他にも我が闘争に少ししか触れられていない話もより詳しく書いてありました。他にもヒトラーの仲間の作り方 -
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前半では、なぜ19世紀以降に劇的な経済成長が生じたかを、後半では、なぜ国家間に格差が生じたかを解く。
産業革命によってマルサスの罠から解き放たれたのは、工場化によって労働者への教育の必要性が高まり、子供を増やすよりも教育に金をかけることになり、人口増加率が低下したため。工業が成長した産業革命の後半になると、技能を持つ労働者の需要が大幅に高まり、労働者の生産性に影響する教育、訓練、技能、健康などの改善が意識され、実施されるようになった。
土地が少数の地主に集中している地域では、地主たちは労働者が近隣の都市へ集団移動するのを食い止めるために、公的な普通教育制度の確立に反対した。
ヨーロッパの -
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久々に迫力のある本を読んだな、と思う。ページをめくるたびに「そうなのか」と驚いたり感心したりしながら読んだ。
前半は、いつ人類が豊かになったのかを述べ、後半は格差がなぜ生じたのかを述べている。
人類が豊かになったのはジャガイモやアンモニア合成、産業革命(そのもの)だと思っていたが、まったく違った。それぞれの時代の各世代の生活や人々の考え・判断まで考慮しないといけなかった。そんなに単純なものではない。
格差の起源については、現代から理由を探っていき、どんどん遡っていく。圧倒的な時間の流れを受けながら要因検討を追体験する。自分が何億年も生きてきたような錯覚を抱いた。
地理、文化、政治、様々な -
Posted by ブクログ
タイトルは「格差の起源」だが、むしろ、「なぜ人類は、ここ200年程度で急速に繁栄したのか」が真髄だと思う。格差(繁栄度の違い)については、「重・病原菌・鉄」などでも分析が試みられているが、本書はそれらの議論を網羅的に踏まえ、一つの完成品と言って良いと思う。大まかに言って格差とは、より生産性の高い技術いち早くを導入し(そのためには既得権益を手放さなければならない)、それを使いことなすこと(そのためには広く教育を行わなければならない)で、付加価値を生み出し続ける(営業や認知向上を行わなければならない)ことができたものが繁栄し、できなかったり留まったものが置き去りにされるということ。これを、文化や制
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現在の社会は21世紀になっても未だに国家間・地域間の経済格差が生じている。
この大きな格差を生み出した要因とは何か?
という問いに答える本書。
テーマとしてはダイアモンド博士の鉄、銃、病原菌と重複する部分は多い(実際引用も多い)が、それよりも近代の産業革命以降に多くのページを割いているのが特徴的。
子どもがよく言う「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」
というという問いに一番納得できたのが本書だった。
本書を通じて面白いのは「生活水準」に重きを置いていた点である。
人類全体の所得に着目するのでなく、人口一人当たりの所得に着目すると、19世紀以前の世界では、世界のどこでも生存ギリギリの生存水運 -
Posted by ブクログ
ネタバレ格差の起源_オデッド・ガロー著_柴田裕之訳
そもそも格差とは?
健康格差、教育格差、経済格差、世代間格差、地域格差など、世の中にはさまざまな格差と呼ばれる言葉がある。
Wikipediaによると、"格差(かくさ)とは、同類のものの間における、程度(水準・資格・等級・価格・格付け、レベル)などの差や違いである。また、社会問題の一つとしての意味合いを込めても用いられる語であり、貧富の差(経済格差)などを意味しても用いられる。"とある。
そもそも、違いがあるのは当たり前なので、格差があること自体は当然。その一方で、後者の部分を指した言葉が、〇〇格差なのだと、改めて認識した -