森内薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ格差の起源
なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか
目次:人類史の二つの謎
第1部 何が「成長」をもたらしたのか
第1章 最初の一歩
第2章 停滞の時代
第3章 水面下の嵐
第4章 蒸気エンジン全開!
第5章 停滞から成長へ
第6章 約束の地
第1部のまとめ――成長の謎を解く
第2部 なぜ「格差」が生じたのか
第7章 光と影
第8章 制度の痕跡
第9章 文化的な要因
第10章 地理が落とす影
第11章 農業革命の遺産
第12章 出アフリカ
第2部のまとめ――格差の謎を解く
第1部では、なぜ人類がこの200年くらいで急に豊になったのか?に関しての考察を進め、第2部では現在拡大しつづける格差はどのようにして起こってきたのかを考察しています。
前者の肝は、人的資源の充実による知の蓄積と進歩があげられ、後者の肝は、地理的要因と多様性があげられています。
中でも面白かったのは、豊になるためには多様性と技術の進歩にほどよいトレードオフがあり、その条件を満たしたものが豊になってきたということ。また、マルサスの罠から逃れ人口増加と技術の進歩のトレードオフにいたったものが豊になっているということです。
何事も行き過ぎはまずく、中庸を良しとするということでしょうか。
これに照らすと、日本は多様性を高めることによってより豊になることができるということ。
今後の施政の参考になり得る知見かと思います。
竹蔵 -
Posted by ブクログ
「『心の病』の脳科学」からのつながりで、電子書籍として積ん読状態であったこの本に手を伸ばした。
楽観的な脳(サニーブレイン)と悲観的な脳(レイニーブレイン)の違いには、扁桃体及び側坐核の影響が大きいことや、大人になっても脳には可塑性があり、(簡単ではないが)レイニーブレインをサニーブレインに変化させられること等の知見を得た。
また、エピジェネティクスについての話が興味深かった。
経験によって生じた生物学的な変化が、DNAの配列を変えることなく次の世代へ受け継がれる場合があり、例えば 11歳以前にタバコを吸い始めた父親の息子は、9歳の時点でBMI値が非常に高くなる傾向があるとのこと。
人の可塑性は、意外に大きいのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
再読
史実通り,ヒトラーは反ユダヤ主義という過激な思想の持ち主ですが,作中では,自らの信念のために無私の奉仕を行う高潔な人物として描かれ,多くの大衆から肯定的に受け止められています.
彼に反対する勢力ももちろん登場しますが,その批判の方法が卑劣で(事実無根のスキャンダルを流布する,暴力的な言動に訴えるなど),かえってヒトラーの高潔さが際立つ構造となっています.しかし,その構造ゆえに,社会の矛盾や危うさが浮き彫りになる作品であり,その巧妙さには恐ろしささえ感じます.
人柄の良さや高潔さが,その人物の思想の正しさと必ずしも結びつかないところも皮肉として印象に残ります. -
Posted by ブクログ
ネタバレ小説のラスト、映画よりずっと良かったです!(というより、映画のラスト、よくわからんかった。)
ジョーシ・オーウェルの『動物農場』の終わりを彷彿とさせる「あちゃ〜、ついにここまで来ちゃったか…」という滑稽な描きっぷりなのに絶望感たっぷりな感じ、めっちゃ味があってよかったです。正直、最後どう着地するんだろうとドキドキしてましたが、素晴らしいラストでした。
ところでヨーロッパって、コメディアンが政治家になること多いですよね。ウクライナのゼレンスキー大統領も元コメディアンだし、イタリアでもグリッロという五ツ星という政党の党首が元コメディアンなのだとか。…まあ、日本にもタレント議員はたくさんいますが…。
そういう意味でもヨーロッパ人には、より怖いお話だったかもしれませんね。
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Posted by ブクログ
この本の舞台はドイツであり、ヒトラーがタイムスリップしてくるという内容なのだが、一種の風刺的なものやコメディも含まれており歴史について少しばかりの知識があれば爆笑してしまいます。しかし読み進めていると今まで笑っていた場所は最も恐ろしい場面であったことに気付かされました。この本の内容は独裁者が現れたら少しずつ政権を取るだろうという話です。日本でこそありえるでしょう。
もう二周して,気づいた話を書きます。我が闘争と合わせて読むとやはり、訳者が同じなのでは?と思うほどには口調や思考がそっくりでした。他にも我が闘争に少ししか触れられていない話もより詳しく書いてありました。他にもヒトラーの仲間の作り方や軍の扱いをよく調べてから見るとこの作品は想像の100倍は面白い作品になります。 -
Posted by ブクログ
前半では、なぜ19世紀以降に劇的な経済成長が生じたかを、後半では、なぜ国家間に格差が生じたかを解く。
産業革命によってマルサスの罠から解き放たれたのは、工場化によって労働者への教育の必要性が高まり、子供を増やすよりも教育に金をかけることになり、人口増加率が低下したため。工業が成長した産業革命の後半になると、技能を持つ労働者の需要が大幅に高まり、労働者の生産性に影響する教育、訓練、技能、健康などの改善が意識され、実施されるようになった。
土地が少数の地主に集中している地域では、地主たちは労働者が近隣の都市へ集団移動するのを食い止めるために、公的な普通教育制度の確立に反対した。
ヨーロッパの工業化によって、国際貿易は大幅に増えた。世界の総生産高のうち国家間で取引された割合は、1800年の2%から1900年には17%、第一次世界大戦直前の1913年には21%まで増えた。国際貿易の拡大は、工業国では技能を持つ労働者の需要が高まったことで、人的資本への投資が強化され、人口転換に拍車がかかった。非工業国では、技術を必要としない農産物や原材料への生産への特化が奨励されたため、人的資本に投資する意欲が抑えられ、貿易の利益は人口増加に回されてしまった。発展途上国では、19世紀の間に工業化の水準は低下し、ようやく飛躍できたのは、20世紀後半になってからだった。
貿易が行われるための重要な前提条件として、拘束力と強制力のある契約のような政治と経済の制度があることが必要。合意に対する違反を統治機関が防げなければ、貿易に大きな支障が生じるため。共通の通貨、財産権の保護、一律に課される法律など、貿易に役立つような制度を発展させた社会の方が経済成長を促進できた。一方、貿易に適した制度を整えることが遅かった社会は、後れをとることになった。
中央アメリカとカリブ海域諸島の気候や土壌は、コーヒー豆や綿花、サトウキビ、タバコを育てるのに最適だったため、プランテーションによる集約的な土地所有によって、不平等な富の分配や強制労働、奴隷制につながり、不平等を定着させ、成長を阻害した。
マルサスの時代までは、技術の発展と人口密度が直結しており、人口密度の高い地域は文明が進んだ地域だった。繁栄していた地域では、植民地政府は地元民の富を収奪する制度を作る動機が強まった。のちに植民地が独立を勝ち取ったときも、宗主国の跡を継いだ地元の有力者は、収奪的で成長妨げる制度を継続したため、一向に発展できなかった。一方、人口密度が低く、あまり発展していなかった地域では、包括的で成長を促進するような制度を樹立し、これが地域の経済発展に貢献した。
資源が豊富だと、レントシーキング型の非生産的な活動が促進され、人的資本収集集約型の部門から人材や物資や資金が奪われるため、長期的には「資源の呪い」をもたらす。
エスター・ボーズラップは、女性の役割に対する態度は、産業革命以前の農耕の手法によって異なるという仮説を提示している。土壌の性質や主な作物によって、鍬や熊手を使って耕す地域もあれば、牛や馬につないだ犂を使って耕作する地域もあった。犂を使ったり、それを引く動物を操るには強靭な上半身が必要なため、そうした地域では、その後も家庭内での男女の労働分配がはっきりしている。鍬や熊手を使っていた地域では、男女が共同で農作業を行う傾向がある。
土壌が穀物の収穫に適した地域では、複雑な階層性社会が生まれやすい。発展した古代文明では、農業は、計量も輸送も貯蔵も楽で収税も簡単な穀物を土台にしていた。主に塊根や地下茎を収穫する地域では、都市国家や国や帝国などの階層的な社会には発展しなかった。
2010年から18年の一人当たりの平均所得の国家間格差のうち、地理と気候で説明できるのは40%、病気の蔓延しやすさは14%、民族や文化の要因は20%、政治制度で説明できるのは10%(Ashraf et al. 2021)。 -
Posted by ブクログ
久々に迫力のある本を読んだな、と思う。ページをめくるたびに「そうなのか」と驚いたり感心したりしながら読んだ。
前半は、いつ人類が豊かになったのかを述べ、後半は格差がなぜ生じたのかを述べている。
人類が豊かになったのはジャガイモやアンモニア合成、産業革命(そのもの)だと思っていたが、まったく違った。それぞれの時代の各世代の生活や人々の考え・判断まで考慮しないといけなかった。そんなに単純なものではない。
格差の起源については、現代から理由を探っていき、どんどん遡っていく。圧倒的な時間の流れを受けながら要因検討を追体験する。自分が何億年も生きてきたような錯覚を抱いた。
地理、文化、政治、様々なものが俎上に載せられる。それぞれ勉強になった。
とくに専制政治の利点と欠点について、歴史的な事実の話は面白かった。「言われてみればたしかにそうなるよなあ」と思う。
表向きは専制政治でない現在の日本だが、その欠点ばかりが目立つ。
よくわからなかったのは多様性の影響度。大きいのかそうでないのかよくわからず(他要素を足していくと、およそわかる気はするが)、言葉を濁しているように感じた。 -
Posted by ブクログ
タイトルは「格差の起源」だが、むしろ、「なぜ人類は、ここ200年程度で急速に繁栄したのか」が真髄だと思う。格差(繁栄度の違い)については、「重・病原菌・鉄」などでも分析が試みられているが、本書はそれらの議論を網羅的に踏まえ、一つの完成品と言って良いと思う。大まかに言って格差とは、より生産性の高い技術いち早くを導入し(そのためには既得権益を手放さなければならない)、それを使いことなすこと(そのためには広く教育を行わなければならない)で、付加価値を生み出し続ける(営業や認知向上を行わなければならない)ことができたものが繁栄し、できなかったり留まったものが置き去りにされるということ。これを、文化や制度が加速するということも重要。今の日本、自分は大丈夫か。