森内薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第二次大戦当時、自殺したとされたヒトラーが70年後の現代に蘇り、当初は本人似のコメディアンとして認知されるものの、メディアを通じて次第に人気が出て行って…という話。
読んでて面白いのに、読みすすめていく内にとんでもなく不安になる不思議な小説。
その不安は①そもそもヒトラーの話を面白おかしく読んでしまってる自分がいるけどいいのだろうか?②ドイツやイスラエルの読者はこれ読んでどんな気持ちになるんだろ?③これはヒトラーの事例だけど、似たような状況が知らぬ間に起こり得るってことだよね?、といった具合に様々な思いが入り混じって押し寄せてきます。
巻末のニューヨークタイムズの書評やイスラエルでの版権を獲得した編集者へのインタビュー、そして日本で活躍しているドイツの方と訳者による解説はとても読み応えがありました。
本国ドイツで200万部のベストセラーとなった時、著者が「これは200万人が参加する社会実験だ」と言ったというのは頷けます。
ヒトラーについて思考停止で“絶対悪”と決めつけるべきではなく、そこに至るまでの過程があったことに気付かされます。 -
Posted by ブクログ
もう10年前くらいにアウシュビッツの強制収容所を訪れたことがある。有名なArbeit macht frei の看板も見たし、大量のユダヤ人の髪の毛とかシューズの山の展示物も見たことがある。
どこか他人事になっちゃうけど、当時4歳の子どもが体験した経験としてはあまりにも悲惨。周りの家族、大人たちの執念と奇跡によって生き延びることができた、無事でほんと良かったあって思った。
アウシュビッツからの生還がクライマックスかと思ったらその後の再起の物語と戦後にもはびこるユダヤ人差別の実情が暗澹とした気持ちと希望に燃える輝かしさを感じ取れて寧ろ後半わくわく読み進めることができた。
しかし、家族の別れと再会の物語は涙を誘うわ。感動。 -
Posted by ブクログ
アウシュヴィッツを奇跡的に生き抜いたマイケル。戦後、同じく生き抜いた母親と移住した米国で結婚したが、長くアウシュヴィッツのことは語らなかった。しかし、上映されていた映画のドキュメンタリー部分にアウシュヴィッツから解放された自分を見て驚く。そして、ネットで検索するとその写真はすぐに見つかり、その子どもたちの健康そうな姿に、アウシュヴィッツはユダヤ人のでっち上げだ、という書き込みまで見つけてしまう。その写真は、アウシュヴィッツを解放したソ連軍が、数日後に記録のためにもう一度解放時の服装をさせて撮ったもので、連合軍の手厚い保護のおかげで健康を取り戻した後の写真だったのだ。マイケルは、娘のデビーの協力のもと、一家や親戚のたどった苦難の道を書き残すことにしたのが本書である。
当時のポーランドのユダヤ人社会の実力者であった父親の判断と、たくさんの幸運に恵まれ生き延びたマイケルと祖母。戦後亡くなっていたと思っていた母親との再会。調べあげた事実を淡々と記していることがより考えさせる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上下巻。
表紙が秀逸。あれだけで誰だかわかるんだから。
おもしろくてどうしようって困った本は初めて。
翻訳本にありがちな読みづらさもないし、脚注が充実しているから知識がなくてもわかりやすかった。
過去からタイムスリップしてきた男が当時と現代のギャップに右往左往しながらも、コメディアンとして世間の注目を集め、そして政治家へ。
彼のなんとまあ魅力的なこと。たまに会話が噛み合わないこともあるけれど、真面目で紳士的で理知的でウィットにとんでいる。それに子供と動物好き。
そりゃ過去だって今だって国民が彼を、ヒトラーを選ぶのは不思議じゃないよねって思わせる話。
下巻で暴漢に襲われて、目が覚めたら過去に戻っているのかと思いきや最後に出てきたあのスローガン。
なにこれ、歴史は繰り返すってこと?ってぞくっとした。
近代以降の戦争は一人の絶対悪がいて嫌々周囲が巻き込まれていくわけじゃない。
ヒトラーだって、武力で政権を乗っ取った訳ではなく、彼自身が言うように国民に正当に選ばれた存在だったんだよね、と思うと自分が“ヒトラー”を選ばないとは言い切れないから恐ろしい。
幸か不幸か、今時こんなに魅力的な政治家はいないだろうけれど。
サヴァツキ君とクレマイヤー嬢の子供、ソートーにあやかって~とか言ってアドルフとか名付けるんじゃないかと心配になった。