あらすじ
テレビで演説をぶった芸人ヒトラーは新聞の攻撃にあうが民衆の人気は増すばかり。極右政党本部へ突撃取材を行なった彼は、徐々に現代ドイツの問題に目覚め、ついに政治家を志していくことに…。静かな恐怖を伴ったこの爆笑小説は、ドイツで大反響を巻き起こした。本国で250万部を売り上げ、映画で240万人動員したベストセラー小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
再読
史実通り,ヒトラーは反ユダヤ主義という過激な思想の持ち主ですが,作中では,自らの信念のために無私の奉仕を行う高潔な人物として描かれ,多くの大衆から肯定的に受け止められています.
彼に反対する勢力ももちろん登場しますが,その批判の方法が卑劣で(事実無根のスキャンダルを流布する,暴力的な言動に訴えるなど),かえってヒトラーの高潔さが際立つ構造となっています.しかし,その構造ゆえに,社会の矛盾や危うさが浮き彫りになる作品であり,その巧妙さには恐ろしささえ感じます.
人柄の良さや高潔さが,その人物の思想の正しさと必ずしも結びつかないところも皮肉として印象に残ります.
Posted by ブクログ
小説のラスト、映画よりずっと良かったです!(というより、映画のラスト、よくわからんかった。)
ジョーシ・オーウェルの『動物農場』の終わりを彷彿とさせる「あちゃ〜、ついにここまで来ちゃったか…」という滑稽な描きっぷりなのに絶望感たっぷりな感じ、めっちゃ味があってよかったです。正直、最後どう着地するんだろうとドキドキしてましたが、素晴らしいラストでした。
ところでヨーロッパって、コメディアンが政治家になること多いですよね。ウクライナのゼレンスキー大統領も元コメディアンだし、イタリアでもグリッロという五ツ星という政党の党首が元コメディアンなのだとか。…まあ、日本にもタレント議員はたくさんいますが…。
そういう意味でもヨーロッパ人には、より怖いお話だったかもしれませんね。
Posted by ブクログ
この本の舞台はドイツであり、ヒトラーがタイムスリップしてくるという内容なのだが、一種の風刺的なものやコメディも含まれており歴史について少しばかりの知識があれば爆笑してしまいます。しかし読み進めていると今まで笑っていた場所は最も恐ろしい場面であったことに気付かされました。この本の内容は独裁者が現れたら少しずつ政権を取るだろうという話です。日本でこそありえるでしょう。
もう二周して,気づいた話を書きます。我が闘争と合わせて読むとやはり、訳者が同じなのでは?と思うほどには口調や思考がそっくりでした。他にも我が闘争に少ししか触れられていない話もより詳しく書いてありました。他にもヒトラーの仲間の作り方や軍の扱いをよく調べてから見るとこの作品は想像の100倍は面白い作品になります。
Posted by ブクログ
秀逸なダークユーモア
ナチスの問題というよりは、現代社会の問題とそれに対する向き合い方がテーマになっている。
笑えるんだけど笑えないと言った具合。。
とにかく予想よりも全然面白い。
社会学などを学んでいる人におすすめできそう。
Posted by ブクログ
”悪いことばかりではなかった” 歩き出すのだ。このスローガンとともに。
扇動家は消えていたわけではなかった。皆それぞれの中に生き続けていた。どこかで求めていたのだろうか。
最初は笑いものに。そのうち難解な話の中に耳障りのいい言葉を見つけ、共感。その力強さから”自分たちの味方”と認識。悲劇は毎日の不安に内在しているのだろうか。気づいた時には手遅れになっている。。。
Posted by ブクログ
いや〜面白かった。ずっと読んでられる。
「暗い過去」だってこんな角度で見てみたい。
体験してないからこそ「あれはダメ、これは悪」だけでは終わらさないようにというメッセージがあった気がする。ほんとに面白かった、続編希望。
Posted by ブクログ
最後まで面白かった。
タイムスリップものSFなわけですが、イデオロギー、プロパガンダ、メディア、ポピュリズムなど、勝手にあれやこれや考えさせられてしまう。それがこの作品の一番すごいところではないか。
現代に帰ってきたヒトラーがナチズムを繰り出す事で、ただただ困惑する人、ジョークとして消費する人、ジョークとして消費する事すら禁忌であるとする人、ジョークとして扱われる事を嫌悪する人(ナチ)、いつの間にか本気で傾倒していく人、があぶりだされる。これは作者が描くヒトラーの主張にある程度共感できる部分があったり、おかしみを含めてとても魅力的であるからだ。その結果、作品を描く作者、それを読む自分、そして世の反応に対しても考えさせられる事になる。この作中作外に及ぶ多様な視点の表出がこの作品の特徴といえる。
さらにいうならば、これらの多様な視点は時代にも関係してくる。作品の舞台となっているのは2011年頃であり、トランプやブレグジットを経た2020年の解釈とは異なってくる。きっとあと5年後に読むと、また新しい視点になるのだろう。
それらをひっくるめて、自由で多様性のある社会とそこに内包される一抹の危うさを、最後の一文が表しているのではないだろうか。
Posted by ブクログ
何が笑いを誘うのかというと噛み合わない感じとか、お互いが誤解してしまってる感じか。
ヒトラーが大した人物だと思うのはホントに自分にストイックでその信念を貫くためにものすごい努力と自制をしているようであること。単なる誇大妄想や私欲というより、ドイツという公に奉仕しようとする気持ちが強いのだな。
Posted by ブクログ
めっちゃ面白かった。「ヒトラーの言動を笑っていたのがヒトラーと共に笑っている」という評にハッとさせられた。
授業で習ったような薄い知識しかないのでここは笑いどころなんだろうけどどういう意味だろうというところが多々あった(P201 あれが彼の娘じゃないって)。人名も作中で有名とされている人の名前さえわからなかったので、もっと知識をつけてから再読したい。
訳者後書きより、著者の意向で注釈がないらしく残念。
Posted by ブクログ
映画より原作の小説の終わり方の方がリスキーだ。
ヒトラー礼賛とも歴史終戦義への皮肉とも、どちらにもとらえられるからだ。その人の価値観、教養をあぶり出すリトマス試験紙のような結末だった。
ヒトラーの実直さには惚れる。しかし、ドイツ国家を思うが故のユダヤ人への排外主義と婚外子や外国人雇用への徹底した合理的思考は怖い。
世界大戦前とは時代があまりに変わっていることの、ヒトラーの目からみた描写は面白い。しかし、人々の心象に現状への不満が滲む部分は変わらない。政治や文化の部分の劣化は否めないのは物悲しい。
時代は変わっている。悪く変わっている部分、よく変わっている部分。けれども変わらない部分もある。
冷静に腑分けして、考えなければならない。
Posted by ブクログ
結末に賛否両論だろうな、と思いましたが・・・。個人的には、ヒトラーに対して、どこか人間味を感じました。いくら総統といえども、やはり人間、とでもいいましょうか・・・。
Posted by ブクログ
ともかく第二次大戦のほとんど全ての問題をヒトラー及びナチスに負わせているわけだ。ムッソリーニ及びイタリアは、途中で降伏して、内部告発で減免されたかのようで。
そんなこんなだから、まぁナチスのネタとヒトラーのネタはざっくりおいしいネタということで、いくら悪事を働かせても大丈夫。従軍慰安婦問題とかにも通じるものがあるねぇ。
でも今回はヒトラーのちょっといいところも探してみようネタなんであって、そりゃアンチとして再評価があっても良い頃だよね。もはや戦後ではないというか。
まぁ多分に美化されてるところもあるんだろうけど、この自信というか、引っ張っていく力は参考になる面もあるんではないか。ヒトラーが成り上がるまでをドラマ化したらええがな。
Posted by ブクログ
上巻の面白さはそのままラストまで続く。
主義主張はヒトラーと同じなのに、現代の今に置き換えてみればそれなりの説得力を持って行為的に受け止められ、本人にも魅力が感じられもして、恐いことだと思った。
Posted by ブクログ
ヒトラーが現代に現れたらどうなるのか?フィクションながら非常にリアリティのある風刺小説。ヒトラーをどこまで笑いものにできるのか?著者にとってはいわば挑戦的な主題だったと思うが、個人的にはよく出来た作品だと思った。攻めた表現描写も見受けられるものの、「2度と繰り返してはならない歴史」が現代社会に起こりうる予感を抱かせ、今日の社会情勢にも通づることからその危険性に対して警鐘を鳴らす。読み込めば読み込むほど
一方で多くの批判もなされているように、批判検証の余地もあるように感じる。ヒトラーに少し人間味があるような描写だったり、ポップすぎる振る舞いには多少違和感も。
Posted by ブクログ
ヒトラーがタイムスリップして現代ドイツに現れたらという風刺映画。ヒトラーはコメディアン扱いでテレビに登場して沸かせるが、とても面白いのは、現代ドイツにおける行き過ぎたポリティカル・コレクトネスに反発する形で共感を得ていく。ヒトラーは民主主義で選ばれたことを強調するが、ポリティカル・コレクトネスが行き過ぎて息苦しくなると、扇動の余地が出てくるということも表現している。現代ドイツの世情(行ったことが無いから見たことが無い)が理解できるのも秀逸な点。別の文化・社会の話なので完全に理解できたわけでは無いが面白かった。
Posted by ブクログ
今までは極悪な独裁者としてのイメージしかなかったヒトラーが、1人の人間として書かれている。しかも魅力的な。
良くも悪くも歴史に名を残すような人物はやはり人を惹き付ける魅力があるのかな。
ドイツの歴史や戦争当時の状況を学べばもっと楽しく読めると思います。
Posted by ブクログ
上下巻合わせての感想とする。
知識が足りず難解なところも多かった。
ヒトラーが時代錯誤な言動を繰り広げるのを笑っていたはずが、いつの間にかヒトラーと一緒に笑っていた。
「なんだ、まともな事言ってるじゃないか」とすら思った。
キャッチコピーの「笑うな危険」にモノの見事に陥ったものである。
映画で大きく構成を変えたのは、思いの外皮肉が通じず本当に「悪いことばかりじゃなかった」って方に転びそうで脅威をより分かりやすくしたのかな?
Posted by ブクログ
面白い企図。読者はヒトラーの時代の恐ろしい所業をすでに知っている。しかし全編通してヒトラーの視点で描き出された現代社会と彼の思想を読んでいると、「こいつ面白いやつじゃん、なんか純粋でいい人やん、確かに言っていることは一理ある」と思ってしまう。ごく自然に彼が現代社会においてもスターになっていくことが受け入れられる。
ヒトラーとナチスが台頭してきた時代もきっとそうだった。こうやって民主的に独裁恐怖政治が選ばれていくんだとわかる。
ファシズムは最初から恐ろしい顔をしていない。ごく当たり前のように隣に存在するんだという事を知って恐ろしくなる。
Posted by ブクログ
ヒトラー本人が現代のドイツで目覚める。
最初は戸惑うも徐々に現代に順応していくさまはよくあるタイムスリップもの。
一発ネタかと思ったら意外と面白かった。
映画も面白く、難しいことを考えないで見るには良かった。
Posted by ブクログ
うわべだけのポリティカル・コレクトネスで、本書も読まないままにタイトルと、それが持つイメージだけで追いやってはいけないだけの内容がある。
今の世界を覆っている(と我々が思っている)民主主義なるものは、「ヒトラー」が持つ世界観とその世界観からの再解釈を拒否できる自浄作用を持っているだろうか。
Posted by ブクログ
上巻ではコメディーキャラクターとして物語の中で登場していた、ヒトラーが徐々に大きな影響を持ち世間を巻き込んでいく。
ここまでヒトラーにスポットを当てて現代におりまぜ、物語として成り立たせるには大変なヒトラーへの関心、歴史的な立ち位置、現代について知識がなければ描くことはできないだろう。
読めば歴史の授業だけでは感じられないヒトラー感を得ることができると思う。
Posted by ブクログ
ピンチを乗り越え先行きは明るい、総統たちの戦いはこれからだ!
なんて凄く前向きな終わり方…なのに、と言うかだからこそ、と言うか後味は悪い…!
ドイツ史をちゃんと分かってたらもっと面白く読めるんだろうな
Posted by ブクログ
原題 ER IST WIEDER DA
けだし、ヒトラーは難しい。
ドイツの崩壊を目の当たりにしながら、なにひとつぶれずに「彼はまた戻ってきた」というのは…反省はあっても後悔はなく、迷いもなく決断し行動力も1945年そのままに。
彼の言動を現在の人たちがいいように勘違いして物語が転がっていく。なんとか〝1st〟ではなく〝only〟を叫び、人々が彼を求めた1935年もかくあるかのように…?
という危険が最後までつきまとう。同じことは起こり得るのか?という不安も。
肝心な部分が曖昧なままなのは意図的なのか。茶化される日は来てほしくない。
Posted by ブクログ
下巻は、上巻ほど突飛な展開はない。想像できる範囲のものである。ヒトラーが現代においても大きな力を持ったとしたら、どのような国へ変わっていくのか。なんとなくそのような淡い期待のようなものを抱いてしまった。黒い歴史を作り上げた過去のヒトラーと、現代をユーモアに生き人々を魅了していくヒトラー。常にそのどちらにも視点を移しながら読み進めていく、新しい読書体験だった。
Posted by ブクログ
ヒトラーが現代のドイツにタイムスリップし、ヒトラーそっくり芸人としてテレビに出て大受けするのがあらすじ。ヒトラーを一人称として物語が進行するため「ヒトラーがどのように世界を見てたのか」というところが読み応えがあるポイント。
「おそらくドイツ人ならもっと楽しめるんだろうな。。。」と思える、よくわからない描写が多かったりして楽しめないところが多かった。
ずっとトルコ人女性が多いという描写があって何のことを言ってるんだろうと思ったら、目元を黒くするヘビメタ風メイクをしている女性のことを言っているのか、とか。
ヒトラーの抱く感想には、結構共感するところもあるのだが、所々全く共感できないポイントがあって、しかもそこがヒトラーのやばいポイントだったりするところがぞっとするポイントだった。
話の最初のところに、汚れた制服を洗うべきとするおっさんに対してヒトラーは断固として反対するのだがそのときにブルータスの話を引用して激論する。それに対しておっさんがげんなりして「どうして、そういつも話が大きくなっちゃうのかね?」というところがヒトラーと一般人のずれを端的に表していて面白かった。
ヒトラーの自己の過剰な使命感+独自の世界感+現実歪曲フィールドというのが多くの人を惹きつけた理由であり、危険なところだ。これは組織で生きる人間として見習うべきとことはある。読んでみると共感するところもありつつ、「あ、この人やばいな」というところが直に感じられるのでとても面白く読めた。逆に、「あ、この人やばいな」と感じない人は独裁者を支持しちゃう可能性があるのでやばいかもしれない。
中学生とかに読ましたときに、どういう反応があるかというところをみれば、結構いい教材になるかも。
Posted by ブクログ
自殺する直前のヒトラーが現代にタイムスリップしたら...というお話
誰もが悪人として知っているヒトラーが、その信念と思考力を現代社会で発揮したら、行うであろう思考と
戦時の状態を引きずったヒトラーと現代の市井の人々のギャップとすれ違いが面白い!
ただし、100%理解をするにはトルコ移民などの現代のドイツの問題と、ナチスの知識を持っていた方がよいと思う。
時々?となる箇所がある
映画も観たが、こちらの方がコミカルに書かれていてメッセージが分かりやすいのでこっちから入るのもオススメかもです。
Posted by ブクログ
第二次大戦当時、自殺したとされたヒトラーが70年後の現代に蘇り、当初は本人似のコメディアンとして認知されるものの、メディアを通じて次第に人気が出て行って…という話。
読んでて面白いのに、読みすすめていく内にとんでもなく不安になる不思議な小説。
その不安は①そもそもヒトラーの話を面白おかしく読んでしまってる自分がいるけどいいのだろうか?②ドイツやイスラエルの読者はこれ読んでどんな気持ちになるんだろ?③これはヒトラーの事例だけど、似たような状況が知らぬ間に起こり得るってことだよね?、といった具合に様々な思いが入り混じって押し寄せてきます。
巻末のニューヨークタイムズの書評やイスラエルでの版権を獲得した編集者へのインタビュー、そして日本で活躍しているドイツの方と訳者による解説はとても読み応えがありました。
本国ドイツで200万部のベストセラーとなった時、著者が「これは200万人が参加する社会実験だ」と言ったというのは頷けます。
ヒトラーについて思考停止で“絶対悪”と決めつけるべきではなく、そこに至るまでの過程があったことに気付かされます。
Posted by ブクログ
終わり方が打ち切り漫画みたいだった。続刊ありますと言われたら信じるくらいアッサリ。
実際彼がしたことはそんなにないし、周囲の人間に影響を与えた程度で、国民にどれほど人気になったのかもよく分からなかった。
もう一度総統になるのは現実の風潮が許さないだろうし、人気芸人の頂点に立って終わるのは本人が満足しないだろうし、この終わり方が妥当なのか?
前編ほど面白くなかった。