森内薫のレビュー一覧
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現在の社会は21世紀になっても未だに国家間・地域間の経済格差が生じている。
この大きな格差を生み出した要因とは何か?
という問いに答える本書。
テーマとしてはダイアモンド博士の鉄、銃、病原菌と重複する部分は多い(実際引用も多い)が、それよりも近代の産業革命以降に多くのページを割いているのが特徴的。
子どもがよく言う「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」
というという問いに一番納得できたのが本書だった。
本書を通じて面白いのは「生活水準」に重きを置いていた点である。
人類全体の所得に着目するのでなく、人口一人当たりの所得に着目すると、19世紀以前の世界では、世界のどこでも生存ギリギリの生存水運が普通であった。
(もちろんごく一部の特権階級や、発展した都市では別だったのだろうが)
それまではマルサスの罠と呼ばれるすべての生物が陥る貧困のスパイラルから人類も逃れられなかった。
(技術革新で余剰食糧が生まれても人口を増やして食いつぶしてしまうこと)
それを乗り越えたのが産業革命であった。
これにより市民は人的資源(つまり基礎・高等教育)の重要性を認知し、子供に教育を受けさせるようになる。
教育には金がかかるので、出生率は低下した。
これにより人類はマルサスの罠を抜け出し、余剰所得はそのまま人々に分配され、それが更に人的資本に注入され、技術・社会制度革新を生むという正のループに入るというのが、豊かになった国々の特徴といったお話。
後半では、なぜ欧州では人的資本に注力できたかを様々な視点から紐解き、歴史をさかのぼって探求していく。
こちらもなかなか面白い。
ただし、現在の経済構造や国家間の経済格差には触れられていないので、そちらはどちらで気になる点はある。 -
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ネタバレ格差の起源_オデッド・ガロー著_柴田裕之訳
そもそも格差とは?
健康格差、教育格差、経済格差、世代間格差、地域格差など、世の中にはさまざまな格差と呼ばれる言葉がある。
Wikipediaによると、"格差(かくさ)とは、同類のものの間における、程度(水準・資格・等級・価格・格付け、レベル)などの差や違いである。また、社会問題の一つとしての意味合いを込めても用いられる語であり、貧富の差(経済格差)などを意味しても用いられる。"とある。
そもそも、違いがあるのは当たり前なので、格差があること自体は当然。その一方で、後者の部分を指した言葉が、〇〇格差なのだと、改めて認識した。
では、そのような違い及び、社会問題ともなる格差はどのように人類で始まり、今に至っているのか。
この本は、それを説明する本である。
特に興味深いのが、なぜ農業革命が起こり文明が進化した地域で産業革命は起こらなかったのかという問い。
それを、著者は人類がアフリカから出た時から、実は始まっていると説明する。
それが、実は現代の男女の賃金格差や多様性に結びついている。
最後に著者はこう結ぶ。
"豊かさと地球規模の格差の起源を理解する事が、世界全体の繁栄を促すような政策設計につながり、人類が未知の領域へと旅を続ける中、読者が、先々待ち受ける今よりさらに豊かな未来を思い描き、その実現に向けて努力できるようになることを、わたしは願ってやまない"
#格差の起源
#オデッドガロー -
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様々な研究成果を引用して悲観脳と楽観脳の違いを説明している。とても面白かった。
結論、悲観脳を楽観脳に変えることができるということで、その方法も書かれている点は、悲観脳の私にとって大変参考になり励みになった。
なお、遺伝子の働きを調べる方法には、関連タンパク質から遺伝子に当たりをつけ、実験によってその遺伝子の機能を推察する方法と、大規模な遺伝子解析によって調べる方法があるということは初めて知った。祖先を辿るなどの遺伝子解析キットが売られていて、大規模遺伝子解析が唯一の信頼できる方法なのかと思っていたが、強いストレス下など特定の状況下で有効に働く遺伝子などもあり、それは大規模遺伝子解析では検出できないため、両方の方法が必要であるようだ。 -
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クオリティランドでは、全ての人が自動的にレベル付けされて、収入や社会貢献などのステータスに直結している。(一桁台だと社会のお荷物扱いをされてしまう)
また、日用品、食事、各種サービス、結婚相手まで様々モノがレコメンド(ユーザーの身体、思考を読み取り、好みに合わせておススメ商品を紹介される世界。偶然などはもはや存在せず、ユーザーが欲しいと思った次の瞬間には商品を持ったドローンが近くに到着している。
スクラップ工のピーターは、あることがきっかけでレベルが一桁台になってしまう。
ある日届いた品物は全く自分の欲しいものとかけ離れていたため、販売業者に返品しようと奮闘するが…
もう一方では、史上初のAI大統領誕生に向けてインデペンデンス・デイの大統領に似てるロボット候補者ジョンの大統領選の活動が描かれる。
合間に黒地に白文字のページで、クオリティランド内で流れているテレビ番組やCMが入りつつ2人の物語が進んでいく。
アメリカ内の政治動向や歴史に精通してると更に楽しめるネタもあり、どこまで理解出来てたか自信がない。
ネタはネットゲームやドラマ、名作など幅が広く全ては追えなかった。
「支配されている感覚がない」「誰も不満を抱いてない」ディストピア
監視カメラとSNSが揃えば「1984年」な風味も出てくる。
ディストピア小説でありながら暗くなく風刺やブラックな笑い要素が多くて楽しく読めた(その分、書かれてる内容は身近で笑ってられない要素も多かった)
世界で販売されてる物語はほとんどカスタマイズされたモノだったり、自分の好きな傾向に合わせさせることは普段SNSを使ってても、嫌なことをミュートしたり、似たような行為をしている。
SNSや通販サイトを見ても「あなたへのオススメ」は頻繁に画面に現れる。
「試してみよう」と思うものもあれば、オススメで何度も目にすることによって鬱陶しくなり避けてしまうモノもある。自分の傾向にあったモノがオススメされているはず、とまでは思わないけれど「本当にそれを自分が欲しいと感じているか?」は意識させられた。 -
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前作がとてもためになったため、本書にも興味を持ち購読。
著者は本書執筆目的として
「経済のシステムにより生じた精神的・実在的な深淵へと読者を案内するため」
と述べている通り、過去と現在の経済動向を心理学や哲学を絡めて解説している。
『予言』をテーマにした項が、コロナ禍に加えて政権の暴走で疲弊する日本の現状を表しているように感じた。
「人間は何かに理由を求めたがる」
「国家の非常時には国民が低俗な情報を信じ、誇張して伝える」
怒りに満ちたネットニュースへのコメントや、根拠の乏しい陰謀論。論理的にこういった現象を紐解いていくと、現状がアホくさく見えて来てしまう。
これからも読む経済本はより本質的な情報が載っているものを選んでいきたい。
〇学長のような手っ取り早いノウハウ本ではなくて。 -
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本当に面白かった。
アウシュビッツで生還した収容者の物語。ホロコーストはなかったとか信じる奴らに対しリアルな経験を物語る。まあでも普通文明人が一つの民族を根絶やしにしようと考えるなんてありえないって考えてもおかしくないよな。事実は小説より奇なり。
ゲットーの物語、アウシュビッツでの苦痛など現実味が溢れていて、ノンフィクションの惨劇にめまいがする。ユダヤ人嫌い嫌いになるぞ。わずか4歳でアウシュビッツ入りする子供に同情するし、そこで子供を守るために全力を尽くした母と祖母に涙が出る。父は賄賂という方法で同胞を救ったが、言うなればこれは救えない人間を選ぶということでもあるから心が傷んだろうと感じた。キツイな。ナチのクズめ。
ジャルキでの苦悩の日々から、ピョンキでの多少マシな日々を経てアウシュビッツに行ったのは本当に幸運だったと思う。ピョンキでのまともな(それでも健康で文化的とは言えないだろうが)生活のおかけでアウシュビッツを乗り越えられたという面はあるだろう。「死の行進」を避けたのは本当に幸運で驚嘆する。
母子の再会が最高。これは涙が出る。生きててよかったねえ。父と兄がなくなったのは悲劇だが、母、子、祖母が生き残ったのは20世紀最大の奇跡だろう。隠れん坊の世界チャンピオンに幸あれ。
ユダヤ人を石鹸にするクズどもに対し、母の「それなら私はとびきり上等の石鹼になるわ、イズラエル。ラベンダーの石鹼、それともライラックやローズヒップ?」好き。
たまーにだがまともなドイツ人がおり、それを描写している点も評価できる。流れには逆らえないけど自分のやり方で差別と戦う姿は良い。こういう人を描いたノンフィクション本も読みたいね。
オーウェルのエッセイを読むと感じるが、ヨーロッパ人のユダヤ人嫌いって根拠がない上に根深いよなあ。 -
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以前に一度読んだことがあったことを、読み始めてから気がついた。
ただ、『アウシュビッツの図書係』の後に読んだことで、重なる部分を違う視点で見ることができて、より立体的なユダヤ人迫害像に迫ることができた。
この本の前半は住んでいた街でのゲットーの始まりからアウシュビッツでの生活に至るまでを描き、後半ではアウシュビッツを出てからの生活を描いている。
アウシュビッツを出てからの生活についてはあまり読んだことがなかったので、興味深かった。
また、この本の冒頭で述べられていたように、すでにこの経験から長い年月が経っており、記憶していることが、本当のことなのか、そのように想像していたのか定かではないため、あまり話したくなかったという点では実に誠実な対応に感心する。この本はそれが思い込みでないことを証明するため、さまざまな資料に当たりながら書かれたものだ。信頼に値する立派な体験記である。 -
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幸福になれるには;ポジティブな感情や笑いを数多く経験、生きるのに積極的に取り組む、今日明日でなく長期的な視野で人生に意義を見出すこと
楽観的;ただ楽観視するのでなく、良いことも悪いことも受け入れることでメリットがある。出来事に対して自分が影響を与えられると考える→人生に積極的に取り組める。健康、諦めずに課題に向き合う、成功の可能性が高い。同じ経験をしても解釈が違う。左側を多く使えている、快楽中枢の興奮を維持出来る(悲観的でも興奮は同じくらいする)
ヒトは楽観的で、自分のことを平均以上だって思う
大抵の人はポジ;ネガ=2;1で体験している。3;1とポジな感情を多く見出すようにする事が幸福になる方法として提唱されている。自己を最大限に生きることが幸福
ゾーン;フロー;今この瞬間の自分に没頭できる、過去や未来についての意識は頭の中から消える
セロトニンが脳内に長くとどまる;リスクを回避、大きな出来事の後に鬱になりやすいけどポジティブな出来事にも影響を受ける、可塑性が高い
統合失調症;ドパミンが分解されない、前頭前野の活動低く、記憶に不調
神経細胞は増える。海馬が3倍にもなる
扁桃体;前頭前野で活動を抑えられる;ラベリングする不安が強いひとは前頭前野と扁桃体を結ぶ線が細くて弱い。信頼出来る顔を判断している(眉尻が下がっている、鼻梁の
下が浅い、顎が細い)
瞑想;注意集中;前頭前野の活動アップ、邪念をはねのけて集中出来る。
マインドフルネスも瞑想;ラベリングすることで前頭前野の活動アップ、扁桃体の密度が小さくなる。恐怖の感情を隠すのが上手い感情調節者になれる。感情のコントロール上手い人は高い収入
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Posted by ブクログ
最後まで面白かった。
タイムスリップものSFなわけですが、イデオロギー、プロパガンダ、メディア、ポピュリズムなど、勝手にあれやこれや考えさせられてしまう。それがこの作品の一番すごいところではないか。
現代に帰ってきたヒトラーがナチズムを繰り出す事で、ただただ困惑する人、ジョークとして消費する人、ジョークとして消費する事すら禁忌であるとする人、ジョークとして扱われる事を嫌悪する人(ナチ)、いつの間にか本気で傾倒していく人、があぶりだされる。これは作者が描くヒトラーの主張にある程度共感できる部分があったり、おかしみを含めてとても魅力的であるからだ。その結果、作品を描く作者、それを読む自分、そして世の反応に対しても考えさせられる事になる。この作中作外に及ぶ多様な視点の表出がこの作品の特徴といえる。
さらにいうならば、これらの多様な視点は時代にも関係してくる。作品の舞台となっているのは2011年頃であり、トランプやブレグジットを経た2020年の解釈とは異なってくる。きっとあと5年後に読むと、また新しい視点になるのだろう。
それらをひっくるめて、自由で多様性のある社会とそこに内包される一抹の危うさを、最後の一文が表しているのではないだろうか。
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・「ペーター問題」
全てはペーター問題に集約される。
人間がアルゴリズムに追従するようになった未来。鏡の世界。
もう来ているのかもしれない。
ゾッとする文章だった。
・フェザツ
油と塩と砂糖だけで出来ている食べ物。
ちょうどこの本を読んでいた時にグミを食べまくっていたのでびくっとした。
だってグミ美味しいんだもの
・全体的に
一章一章が短くて読みやすい。全部数ページくらい。
でもそれぞれ厚みを失っていないし、
全体としても読みやすい。交錯するストーリーがすっと頭に入ってくる。
・皮肉や下ネタが現実感ありありで飽きない。
Twitterから引っ張ってきたようなネタばかり。リアル。 -
Posted by ブクログ
※上巻だけを読み終わった気持ちで。
面白い。という論調で感想を書いてもよいものか、むねがざわつく。
2011年の「現代」に蘇った総統は技術の進歩に感嘆しつつ社会の腐敗に憤る、ナチズム的に筋が通ったやり方で。一方、周りの人間はこれをメソッドとしてキャラとして消費する。このズレが可笑しみの基本線には違いない。
ただ、単純なズレだけで処理できない部分が何箇所か出てくる。プーチンや国防大臣の件などはもちろんだが、民主主義のちょっと怪しいところに対する極論など、多少なりとも共感できる部分が出てくる。しかしそれと同時に、ナチズムに共感してしまった自分自身への怖れが現れるから、胸がざわつくざわつく。
人類史上最悪(という事になっている)ヒールをこういう描き方をする事で、ただの娯楽SFに終わらず多層な深読みをもたらすものになっている。
復活から約10年、ポピュリズムが跋扈する2020年にこの本を読むのもまた味わい深い。
下巻の展開はどのようになるのか。たぶん問うていくんだろうな。