小林朋道のレビュー一覧
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『先生!』シリーズの著者によるエッセイ。
エッセイといっても、日常を切り売りするようなそれではなく『先生!』シリーズの根幹というか根っこの部分を丁寧に紐解いて、その上で新たに編み上げたような内容。
『先生!』シリーズは大学教授としての立ち位置が強く出てくるが、こちらの本はあくまで動物行動学者としての著者の軌跡と立ち位置を主体にしている。
私がまだ学生だった30年くらい前、動物行動学というものはもっと客観的な視点と思考で取り組むものだという主張が多かった。感情を交えないことが学術的だとされていた訳だが、小林朋道氏はそれに真っ向から対立する論を展開している。氏は繰り返し主張している。動物の行動学と -
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2022年刊。「先生、」シリーズを毎年執筆・刊行すること20年?。大学の副学長であり、フィールドワークもしながら、研究して論文を書き… とてつもないな、と素直に思う。「先生」シリーズが有りながら、何故本書が書かれたのか? 筆者の思いと意思・考えを、より濃縮しつつ分かり易く纏めた本、なのだと思う。主張であり提案でもあり。「動物行動学」という文字通りの狭い範囲でなく、人が人らしく生きていく為に必要なアプローチ、ヒント、みたいなモノが書かれている。「先生」シリーズよりは固いが、「○○学」と表記される全般の書籍よりは格段に分かり易い。小林節も、最初は抑え目だが、段々と緩やかになり、飽きさせないように書
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動物行動学者の著者が、動物との触れ合いや研究の上で、ホモサピエンスの進化的適応にも触れながら、今後の生きものとの共存について考察した内容。小林先生の著作と聞きさぞかし面白おかしく、だろうと思い込んでいたのだが、至極真面目な展開である。野生動物との共存についてとても興味がある私は、時折混じる小林節に翻弄されつつ、読み進めていった。今まで読んだ本の中で、最も『野生動物との共存の必要性』について説得力があり、いわゆるバイオフィリア(ヒトには生命あるいは生命のシステムについての関心や愛情を感じる精神特性のこと)の側面を多く持たない人も説得できるであろう、と感じた(たとえば本書にもあった南部町の地域活性
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タイトルの通り、とても楽しい科学読本。
筆致は読みやすく、ユーモラス。けれどきちんと科学的な考え方が学べる。紹介されているエピソードも興味深い。子どもたちがこれを読んだら、きっと身の回りの生き物たちを今までとは違った気持ちで見るようになるんじゃないかなと思う。そして、大学って楽しそうだな、と感じるんじゃないのかな。
著者は動物行動学という分野の研究者で、特にニホンモモンガやコウモリなどがご専門。
この本ではそうした生き物に加え、ヤギやカルガモ、キジバトやヤマネなど、身近な生き物たちのへーと驚くような話、ちょっと切ない話、著者との心温まる話が紹介されている。特に、最後のキジバトの話と生き物のワク -
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著者は、動物行動学に関するユニークな著書を多数発表している鳥取環境大学教授である。
本書で著者は、「ヒトの脳にはクセがある」、即ち「ヒトの脳にはかなり偏った性質がある」ことを、その原因・背景から明らかにしようとしている。
具体的に、「なぜマンガは文字より分かりやすいのか?」、「なぜヒトは時間の始まりと宇宙の果てをイメージできないのか?」等のヒトの脳のクセ(=性質)を挙げて、それは、ヒト(=ホモサピエンス)にとって当座の生存・繁殖のために何が有利であったのかを反映しているのだという。つまり、自分たちの歴史の99%においてアフリカのサバンナ地域で狩猟収集を中心とした生活を送ってきたヒトにとって、現 -
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ドーキンスの『利己的遺伝子』をもとに、現代の科学的な知見を追加してわかりやすく説明した書。
2部構成になっており、第1部は『利己的遺伝子(selfish gene)』の解説と、遺伝子の機能や構造を『利己的遺伝子』の考え方から解説されている。第2部は人間にみられるさまざま行動を霊として『利己的遺伝子』をもとに解釈・解説が加えられている。また、エピローグには、そういった『利己的遺伝子』の理解を通して、個体としての幸福を得るための助言が書かれている。
著者のユーモアも加わり、かなりわかりやすい説明となっていて読みやすかった。
読み進めて気がついたんだけども、著者(小林朋道氏)は鳥取環境大学の教授だ -
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「生物の形態や生理特性、行動、心理といった形質は、その生物がもつ遺伝子のコピーが世代をとおして増えやすいような性質につくり上げられている」というリチャード・ドーキンスの利己的遺伝子説に関して、最新の研究結果(2012年3月時点)を交えてその正当性を示唆している。
文章自体読みやすく、人間や動物の行動における具体例も面白い。
科学に対する非常に魅力的な考え方が記載されていたため、以下に長々と抜粋。
科学の研究を進めるためには、仮説が必要であり、仮説は研究を通して捨てられたり、修正されたり支持されたり、発展させられたりする。そしていずれにせよ、仮説は、完全に正しいものになることは永久にありえな -
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目次
・真無盲腸目の動物とKjくんの話
・ヤギの体毛の夏毛と冬毛
・ヒキガエルで新しい対ヘビ威嚇行動をみつけた
・Okくんは自分のニオイでヤギの脱走経路を発見した!
・シジュウカラは生きたシカやキツネから毛を抜いて巣材に使うようだ
・クルミが逝った日
・二ホンモモンガの子どもは家族のニオイがわかる!
・千代(せんだい)砂丘には驚きと発見があふれている!
今回は、学生さんとの思い出から動物とのエピソードへとつながる話が多かった。
先生の指導のたまものか、それとも最初からなのか、ここに登場する学生さんたちは皆、自分が研究したいという対象を明確に持っていて、実験や研究に対する熱量が極めて高いように -
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ネタバレ目次
・子モモンガを育てて彼らが森に旅立つまで
・ヤギはほかのヤギたちの鳴き声を聞いて誰が鳴いたかわかっているか!?
・私のホンヤドカリについての思い出と今
・ニセショウロというキノコの表面に絵を描いた話
・夜行性の小動物ヤマネはフクロウの声に強烈に反応する
・ヤギは尾をふって「これは遊びだよ」と相手に伝える
・私のスギについての思い出
今回の白眉はモモンガでしょう。
育児中に不慮の事故で亡くなった母モモンガに代わり、生後間もない子モモンガ3匹を育てることになった小林先生。
その苦労は、そして創意工夫は本書を読んでもらうとして、ふんだんに差し挟まれる子モモンガの写真が愛くるしすぎてたまらん。 -
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第三者(前書きからするに全てTwitterフォロワーであろうか)から寄せられた、「人間」という生き物にまつわる様々な疑問についての著者の答えをまとめた1冊。
寄せられた疑問は実に様々で、自分も「それが気になっていた」というものもあったが、著者の答えは全項にわたり「それが自分(の遺伝子)の生存·繁殖に有利だから」というもので、著者いわく、それが動物行動学の基本であるとのことなので多少致し方ない部分はあろうが、その結論に至るまでの推論なども素人の身でも思いつく程度のことしか書かれておらず、面白さが感じられなかった。
特に表題の「モフモフはなぜ可愛いのか」については①(モフモフに内包されがちな「丸さ