小林朋道のレビュー一覧
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『先生!』シリーズの著者によるエッセイ。
エッセイといっても、日常を切り売りするようなそれではなく『先生!』シリーズの根幹というか根っこの部分を丁寧に紐解いて、その上で新たに編み上げたような内容。
『先生!』シリーズは大学教授としての立ち位置が強く出てくるが、こちらの本はあくまで動物行動学者としての著者の軌跡と立ち位置を主体にしている。
私がまだ学生だった30年くらい前、動物行動学というものはもっと客観的な視点と思考で取り組むものだという主張が多かった。感情を交えないことが学術的だとされていた訳だが、小林朋道氏はそれに真っ向から対立する論を展開している。氏は繰り返し主張している。動物の行動学というが、そこで見いだされる主体は人間だ。動物はいわば鏡であると氏は主張しているのだろうと私は解釈した。
観察者が主観を完全に捨てることは不可能だ。それを考えたならば、感情の出処を踏まえ擬人化の有効性を理解し、自分自身を観察する方が有効だろう。
少々小難しい感想を書いたが、文章も洒脱で面白いこの本は単なる書物として楽しんで良いと思う。それこそ、著者が動物に触れ観察したのと同じように楽しめば良い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・グレという魚の話
・そのハエは、コウモリの体毛のなかで暮らしていた
・イヌは、自分の行動に罪の意識を感じることがあるか?
・コウモリは結構ニオイに敏感だ!
・モモンガの天敵たち
・トチノキとヤギたちの物語
このシリーズを一気に読み上げた時、当時の最新刊も読んだはず。
2015年6月刊行の『先生、洞窟でコウモリとアナグマが同居しています!』を2015年の10月に。
つまり、前回読んでから10年もの月日が経っていたのか。感無量。
先生、相変わらずコウモリを追いかけてるんだね。
ヤギ部もモモンガプロジェクトも順調そうで何より。
と思って読んでいたけれど、この本は2016年5月刊行だから、先生としては今までと同じペースで書いているに過ぎない。
そして、この10年の間も順調に書き続けて現在に至るわけで、読むべき本がまた増えて嬉しい。
面白かったのは、グレ(メジナ)が、同じ日に同じ海から同じ水槽に入れられたイソギンチャクが、腹痛に苦しんでいるのを助けた話。
実際には絶対に美談じゃないはずだが、そうであってほしいと思う人の心の機微も相まって、やっぱり愉快なのである。
そのグレは、小さかった時同じ水槽の先輩であるルリスズメダイから相当にいじめられていたのだが、ある時自分の方が大きくなったことに気づき、それからはお互い適度な距離を保って暮らしているらしい。
小さいメジナというのが、長男が小学生の時、ハゼを釣りに行って一匹だけ引っかかったのがそれで、私にとってはなかなかに思い出深い魚なのだ。
ヤギの話もしみじみよかった。
言葉をもたない動物は、どうやって感情の交流を行っているのかわからないが、すべてが本能のなせる業ではないと思いたい。
傷心の友を慰めるヤギがいたっていいじゃないか。
10年ぶりに読んだけれども、私のなかでは「一番笑える動物行動学の本」という立場は揺るがなかった。 -
Posted by ブクログ
2022年刊。「先生、」シリーズを毎年執筆・刊行すること20年?。大学の副学長であり、フィールドワークもしながら、研究して論文を書き… とてつもないな、と素直に思う。「先生」シリーズが有りながら、何故本書が書かれたのか? 筆者の思いと意思・考えを、より濃縮しつつ分かり易く纏めた本、なのだと思う。主張であり提案でもあり。「動物行動学」という文字通りの狭い範囲でなく、人が人らしく生きていく為に必要なアプローチ、ヒント、みたいなモノが書かれている。「先生」シリーズよりは固いが、「○○学」と表記される全般の書籍よりは格段に分かり易い。小林節も、最初は抑え目だが、段々と緩やかになり、飽きさせないように書かれている。
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Posted by ブクログ
動物行動学者の著者が、動物との触れ合いや研究の上で、ホモサピエンスの進化的適応にも触れながら、今後の生きものとの共存について考察した内容。小林先生の著作と聞きさぞかし面白おかしく、だろうと思い込んでいたのだが、至極真面目な展開である。野生動物との共存についてとても興味がある私は、時折混じる小林節に翻弄されつつ、読み進めていった。今まで読んだ本の中で、最も『野生動物との共存の必要性』について説得力があり、いわゆるバイオフィリア(ヒトには生命あるいは生命のシステムについての関心や愛情を感じる精神特性のこと)の側面を多く持たない人も説得できるであろう、と感じた(たとえば本書にもあった南部町の地域活性化対策である)。ホモサピエンスは、狩猟採取時代に獲得したこの専門的思考回路を今こそ目覚めさせるべきではとも思ってしまった。
生きものはこれからも私たちホモサピエンスと密接に関わってくる。さまざまな恩恵を与えてくれる生きものとの共存のために、ずっと考え続けたいテーマである。 -
Posted by ブクログ
タイトルの通り、とても楽しい科学読本。
筆致は読みやすく、ユーモラス。けれどきちんと科学的な考え方が学べる。紹介されているエピソードも興味深い。子どもたちがこれを読んだら、きっと身の回りの生き物たちを今までとは違った気持ちで見るようになるんじゃないかなと思う。そして、大学って楽しそうだな、と感じるんじゃないのかな。
著者は動物行動学という分野の研究者で、特にニホンモモンガやコウモリなどがご専門。
この本ではそうした生き物に加え、ヤギやカルガモ、キジバトやヤマネなど、身近な生き物たちのへーと驚くような話、ちょっと切ない話、著者との心温まる話が紹介されている。特に、最後のキジバトの話と生き物のワクワクの話が印象的。
シリーズ化されているようなので、また別の本も読んでみようと思う。