中村妙子のレビュー一覧
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購入済み
面白かった
ミステリーではないです。
クリスティの別名義の作品です。
みんな幸福をつかむチャンスはあったはずなのにね。
でもそうはしなかった。
望んで不幸になっているようにも見えるし。
まあ幸せなんて本人の思い込みなわけで
他人がとやかく言うものではないけれど。
ほんとうの幸いってあるのかな。 -
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これは私の人生。
母の死と夫の裏切りに心を閉ざすシーリアは、失踪事件を起こした著者の姿だと言われる。穏やかな婚約者を捨てて選んだダーモット。すれ違うシーリアとダーモット、産まれた娘はダーモットの性質を引き継いだ。孤独なシーリアが語る腕のない男の意味とは。
ぎくりとする場面も多く、読むのしんどいこともあった。内気、自意識、夢想、色々なところに自分と重なるところを見つけた。シーリアの不安を我が事のように感じた。
痛快な祖母グラニー。よき理解者の母ミリアム。自分ではなくダーモットの性質を受け継いだからこそ助けになる娘ジュディー。四世代に渡る女性の生き方を描いた作品とも読める。
シーリアが指摘 -
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凄まじいある愛の形。
鉄管工の父を持つ保守党候補者ゲイブリエル、由緒ある貴族の末裔のイザベル。男と女、どこでどう惹かれるのか。肉体、精神、顔、声、それらが相まって関係は始まる。クリスティがここまで凄い恋愛観を持っていたとは。
時は第二次世界大戦、ドイツが降伏した後、日本が降伏するまでの間に始まった。一組の愛の物語の背景に、戦争、貴族社会の変容、イギリス社会の階級意識、政治へのひとつの考え、などを配する。親父が鉄管工だという労働者階級出身だが保守党候補者ゲイブリエル。政治家になるのは金のためと割り切っておりしょせん政治はそれだけのもの、庶民に小さな希望を持たせればいいと言う。が、金で貴族の称号 -
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主人公シーリアの幼い時から結婚、離婚に至る経緯が書いてある。シーリアが自殺しそうな所に遭遇した若い肖像画家メアリーがその時シーリアから聞いたシーリアの話を活字にまとめた、という体裁をとっている。おだやかな性格の婚約者を振り、積極的で現実的なダーモットと結婚。夢見がちなシーリアと現実的なダーモット、読み終わるとそのずれが痛々しくこちらの心に沈着する。
離婚に至る夫婦とそうでない夫婦、どこでどう作用するのか、ひとつのケースを見せつけられる。前作「愛の旋律」の5人にもそれぞれクリスティの片鱗を見出したが、あちらは男女の大きなうねりが大河の流れのようにフィクションとして迫ってくる。が、こちらはクリス -
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おもしろい。一気に読んでしまった。ミステリーではないが、5人の若い男女の織りなす愛の物語と、作曲に憑かれた男の創造意欲、そして第一次世界大戦をはさむ非常時に翻弄される運命が二転三転する様はまるでミステリーのようだ。
イギリスの何代も続くお屋敷に生まれたヴァーノン・ディア、従妹のジョー、隣に越してきたユダヤ人少年セバスチャン、そしてヴァーノンの幼友達ネル、オペラ歌手ジェーン。ヴァーノンとセバスチャンはケンブリッジ卒業後すぐに第一次世界大戦に召集なので、おそらくクリスティと同年代の設定。主人公ヴァーノンの音楽への創造意欲、友人セバスチャンの商売、奔放な愛に生きるジョー、男の経済力に頼るネル、声楽 -
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ネタバレ灰色の脳細胞名探偵ポアロの活躍を書いた一冊
極秘書類を託したいとの依頼を受け、依頼人のもとに向かったポアロを待っていたのは、依頼人サー・エイモリーの変わり果てた姿だった。
犯人探しと共に、行方不明となった極秘書類の在り処も探すこととなったポアロ。
イギリスでありながら、紅茶ではなくブラックコーヒーというあたりで、ある程度あらましが分かりそうですが・・・。
戯曲の小説化ということで、基本的に大きな場面転換はありません。
それ故、他の作品よりも個々の登場人物の動き、それに伴う心理の変化を想像すると、さらにこの作品を楽しめると感じました。
事件発生の様子を思い返しながら、灰色の脳細胞と共にコー -
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BSのマープルにはまりこの短編集を読んでみた。マープルほか小説家で甥のレイモンド、女流画家、前警視総監、牧師、弁護士の6人がマープル宅に集まり自身の知っている事件を話し、それぞれが犯人を推理するというもの。1人1話で後半はメンバーが前警視総監、大佐夫妻、女優、セント・ミード・村の医者になっている。テレビではあまり目につかないのだが、マープルはセント・ミード村に住んでいてその村の出来事にひきつけて各人の語る事件の犯人を言い当てるのである。この短編を読んだことでよけいドラマがおもしろくなった。おいそれと年をとっているわけではない、身の回りの出来事に人生の機微があり、様々な人間の悲哀をその目の奥にた
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古代エジプトを舞台にした戯曲。
ミステリではなく、有名な王アクナーテンの生涯のポイントを描いたもの。
多神教が信じられていた古代エジプト。
中でもアメン神殿が王をしのぎかねないほどの大きな勢力を持っていた。
アクナーテンの母である王妃ティイは、神官の横暴に不信を抱きつつも権力を守るために神殿と結びつき、息子の純粋さを心配しているところから始まります。
軍人のホルエムヘブは信仰心は薄く現実的でまったく違うタイプだが、まじめさに通じるところがあり、アクナーテンは親友と思うほどになる。
王位についたアクナーテンは、太陽神であるアテンのみを信じる一神教とし、遷都して芸術家を集め、皆が愛し合う平和で -
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人が才能を持って生まれるのか、才能が人を選ぶのか。偉大な音楽の才能を持って生まれた主人公の青年が、たったひとつの道のためにほかの全てを失うまでの物語。あるいは人のエゴと自己愛、欺瞞、その醜さについての物語。
ずいぶんと救いようのない話だった。つまらなかったというのではない。読み始めれば劇的な展開もないうちから引き込まれ、分厚い本にも関わらず短期間で読み終えてしまった。面白く、人間の業が描かれていて、そして意地の悪い話だった。見たくないものをつきつけられるようなところがある。悲劇なのだが、悲劇に浸って気持ちよく涙を流せるというようなカタルシスではない、皮肉な話だった。
クリスティは「春にし