中村妙子のレビュー一覧
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ミステリの女王クリスティには考古学好き、西アジア好きという一面がある。
舞台はエジプト、後にアマルナ時代と言われるアクナーテン王の治世。強大なアメン神官の力を削ぐために、アクナーテンはテーベからアマルナへ遷都し、太陽の神アテンを唯一の神として祀り始める。長い古代エジプト史の中でも謎とロマンに満ちた時代だ。個人的には、アクナーテンという王は、アケナテンないしアクエンアテンと表記する方が見慣れた気がする。
美術史上最も美しいとされるネフェルティティの胸像をキーに、クリスティはアクナーテンの哀しい物語を、虚実ギリギリのところで描いている。実は私の恩師がこの時代の専門家で、学生時代にはそれなりに文献も読み漁った。著名な考古学者で夫でもあるマックス・マローワンのツテでクリスティがエジプト学者にも監修してもらったという本作は、細かい点まで史実に忠実で驚かされる。あの時代の彼らはこんな風に話し、考えていたのかなと想像するだけでも楽しい。
クリスティの最晩年に書かれたこの戯曲にはミステリの要素はほとんどない。クリスティのエジプトへの憧憬が書かせた作品という気がする。 -
Posted by ブクログ
アクナーテン(イクナートン)は一神教の始祖として語られることもある
多神教世界のなかで他の神々の崇拝を禁じ、太陽神アテンのみを神としたという意味では、一神教というよりは、多神教の多数の神々のなかから一柱の神を選び出して優位においたというべきかもしれない
しかしヨセフやモーセが古代エジプトで重要な人物であったことからすると、やはり完成された一神教であるユダヤ教に与えた影響などを空想(妄想)してしまう
有名なネフェルティティ、ツタンカーメンも出てくる!
アクナーテンに興味のある人にはおもしろい作品
そうでない人はつまらないと感じるかも(ミステリではありません) -
購入済み
まあまあかな。
素直なストーリー展開で面白かったです。
ノベライズということで、まあまあかな。
クリスティを読破しようというのでなければ
他の本をお薦めします。 -
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ネタバレ巡りあい別れゆく運命の人たち。
お屋敷の少年ヴァーノン・デイアは、音楽が苦手だった。活発な従姉妹ジョー、隣のユダヤ人少年セバスチャン、大人しい美少女ネルと育っていくヴァーノン。彼が音楽に目覚め、オペラ歌手ジェーンと出会い、4人の幼馴染とジェーンをめぐる人間関係は変わっていき——財産、戦争、才能に翻弄される愛の大河小説。
ラストまで読んだら、必ずプロローグに戻りたくなる。そしてプロローグを読み返してため息をつくだろう。クリスティーはこういう話も書くんだ、というのが第一の感想。ロマンティックが濃厚に詰め込まれ、運命の波に一緒に翻弄された。翻弄され続け、失い続けたヴァーノンが、作り上げた《巨人》という賛否両論の楽曲。家も愛する人も名前も失った、一度は音楽も失った末に、彼がたどり着いたところ。芸術のエネルギーと狂気を感じた。
個人的にはネルの葛藤がわかりやすいというか、いくら女性の社会進出が進んでも、時代を超えて存在する人物像だと思う。貧しさに苦しんでも愛する人を選んで、けれどその夫は死んでしまった。だったら、手を差し伸べてくれた優しいお金のある人に身を委ねてもいいだろう。けれど、夫は実は生きていた。今更あの貧しい暮らしには戻る勇気が出ない。大抵の人が、ネルの立場ならネルと同じ選択をするのでは。ネルを好きだという人は少ないだろうけど、共感したりどきっとしたりする人は多いだろう。私はそうだ。
ジェーンのような人間は、あまりに理想的すぎて存在しないだろう。誰の理想か。ジェーンに愛されるヴァーノンの? クリスティーの? ネルのように男性に振り回されるのではなく、自分が男性を選び、動かしていく女性ジェーン。個人的にはネルくらい普通の人間なので、ジェーンがライバル側にいるのは怖い。ジェーンみたいに生きたいかというと、あまりそうも思えない。ジェーンの内側がよくわからないまま、彼女は去ってしまうから。
親友セバスチャン・レヴィンについて。ユダヤ人というコンプレックスがどれほどまでかは自分にはわかりえないが、自分のお金に対する才能を信じ、活かし、親友のために色々と尽力するところは好きだ。一定の成功は手に入れている。しかし、順風満帆ではもちろんないし、ずっと幸せかというとそうでもない。けれど、報われた、といってもいいのではないか。抱えた痛みは血を流し続けているのかもしれないが。彼を評価するのは難しい。 -
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読者の引き込み方がクリスティーらしいなぁ。小説の最後に、「それは結末じゃない、始まりだ」と言ったのは、私はポジディブな意味にとらえたけど、真意はどうなんだろう。
イザベラみたいに今だけを考えて、自分の輝きをずっと持っていられる人って特別だな。ゲイブリル、クセ強いなぁ。テレサは何事にも理解がある人って感じで描かれているけど、そんな人、本当にいるんだろうか。
幸せになることだけが人生の意義ではない、っていうのには共感する。世間的にみた不幸が、ある人にとっては一種の幸せでありうる。幸福が人生の意義であるとは限らないし。
不幸に生きながらえる人っているよなぁ。悪いわけではないし、無理に変える必要もないって思ってたけど、滑稽だし誰かを辟易させる。
誰のことも見ているつもりでも、ちゃんとその人のことは見えていない。自分の偏見から自由にはなれない、公平になんて見ることはできない。自分に対してですら、公正な目で見ることはできないんだから。 -
購入済み
ミステリーではない
面白かったです。
ポワロとビッグ4が対決する冒険小説です。
謎解きや犯人探しの要素はあまりないので
素直にストーリーを読み進めるのが良さそうです。 -
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愛の重さは、愛すること、愛されること、これが同じ重さになるのが理想なのか。親対子、兄弟姉妹、夫対妻、どちらかが一方的に愛するだけでは破たんし、愛されるだけでも、愛するだけでも幸せにはならない。
賢く愛くるしい兄、控え目でおとなしい妹ローラ、両親の愛は兄に傾きがち。妹はそこで葛藤する。だが兄は病気であっけなく死んでしまう。そこに兄に似た妹が生まれる。また両親の愛は妹に向かう。私は妹の死を願う。が家が火事になり、とっさに妹を助け出したことで、妹への愛に目覚める。
主人公ローラは誰かに愛される事を願いながら、ずっと愛することで人生を生きてきた。親に愛されなかったと思い込んでいるローラ、妹をひたすら愛したローラ、それは不均衡な愛で幸福な結果にはならなかった。最後に愛し愛される男を配し、均衡な愛を授けた。
妹シャーリーの結婚相手、押しが強く悪気はないが不誠実な男、の描写がクリスティの最初の夫アーチボルトを念頭においてるのか。妹に次に思いを寄せる思慮深い旅行家はクリスティの再婚相手の考古学者マローワンを思わせる。
1956発表
2004.9.15発行 2019.7.25第3刷 -
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若くして夫を亡くし育てた一人娘も19歳になった。そこに再婚してもいいかと思う男性が現れた。ところが娘と男性はそりが合わない。娘は全力で男性を排除しようとする。男性には娘と自分とどちらを択るのか?と選択を迫られ、娘を選ぶ。まるで一人息子を争う嫁姑のような会話が展開される。
また女性が間にはさまり対立が異性という点では婿取り娘対実母と婿。これも間にはさまる娘は大変。自分がこの立場なので、対立相手は娘ではなく実母だが、この小説の未亡人アンが娘と愛する男との間にはさまり神経が摩耗する会話が実にリアルに響いてきて、読むのがつらくなるほどだ。
娘は母親が相手の男性を好きな事に気づかないし気づいてやる余裕も無い、という描き方だが19歳ならそうなのかなあ。あるいはクリスティ自身の再婚あたりの実情はどうだったのか。
娘は娘、A Daughter's a Daughter's 娘のために自分のしたいことを犠牲にした と思い娘のあやうげな結婚にも親身にならない。娘は相談した時否定して欲しかった、と最後に言っているが、修羅場とはこういうことか。
1952発表
2004.8.31発行 1018.7.25第3刷 -
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★★★2019年1月レビュー★★★
『ブラックコーヒー』というタイトルに惹かれて読んでみた。ポワロシリーズのミステリー。1934年の英国が舞台。新たな兵器の化学式を発明した科学者サー・クロード・エイモリー。彼の開発した化学式を巡って起こる殺人事件を名探偵ポワロが解き明かしていく。
ロンドン郊外のエイモリー家の屋敷。被疑者は彼の家族と、訪問中のイタリア人医師。
「ああ犯人はあの人ね」
というオチ。展開のテンポはよく、すらすら読めた。
エルキュール・ポワロの人物が分かる紹介を少しだけ。
*ポワロは几帳面で、何事も整理整頓されていないと気が済まない。「左右対称、均整調和こそ、すべてなんですがねえ・・・・灰色の脳細胞はきちんと整理されていなくては」
*また、ポワロは自信満々。
「しかも、マダム。このエルキュール・ポワロは超一流の猟犬です」
「私ほどの推理力に恵まれていない人間にははっきりしないことが、このエルキュール・ポワロの知力にとっては、まったく明らかだからですよ」
しかしながら、見た目はぱっとしない。
卵形の頭をした小男。 -
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ポワロ作品。
クリスティー原作の戯曲を、クリスティー研究家のオズボーンが小説化したもの
【あらすじ】
強力な爆弾を生み出すことのできる化学式を、開発した化学者の邸宅からロンドンまで運ぶ依頼を受けたポワロ。しかし、邸宅では化学式の盗難騒ぎが起こり、ポワロが邸宅に駆けつける寸前に化学者が殺されてしまう。
【感想】
戯曲が元ネタということもあって、冒頭から登場人物の怪しげな態度や行動が目立って記述されている。また、小説の大部分が読書室での出来事を書いているので、舞台の上だったらどう表現されるのか、想像しながら読み進むのも面白いかも。
小説自体は人物描写と会話のやり取りがメインになっており、読みやすい半面重厚さには欠けるかも。殺人のトリックも平凡だと思う。ただ、その状況を誤解した人達による怪しい行動の理由を考えながら読むと楽しめた。