中村妙子のレビュー一覧
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『春にして君を離れ』を読み終えてまず感じたのは、これはミステリーではなく、人間の自己認識を描いた物語だということだった。アガサ・クリスティーと聞くと、どうしても殺人事件や巧妙なトリックを期待してしまう。しかし本作には探偵もいなければ本格的な謎解きもない。それにもかかわらず、読み終えたあとに残る衝撃は非常に大きく、人間という存在の怖さをここまで静かに描いた作品があるのかと驚かされた。
主人公のジョーン・スカダモアは、世間から見れば理想的な人生を歩んできた女性だ。弁護士の夫を持ち、子どもにも恵まれ、自分自身も善良で常識的な人間だと信じている。物語の序盤では読者も自然とその認識を共有する。しかし旅 -
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面白いし、後からじわじわ色々考えさせられる。
読んだ後にどんな話だったかすぐに忘れてしまう作品も多いが、この本のテーマはずっと覚えているだろうと思った。
3人の子供を立派に育て、弁護士の夫に愛され、中年を過ぎてもまだ若々しく美しい容姿を保ち、自信満々の主人公「ジェーン」の一人称視点で、ほとんどの物語が語られる。
娘の見舞いのための一人旅の帰り道、砂漠で数日間立ち往生することになり、そこで自分の人生を顧みる時間を得たジェーンのお話。
自分は本当に夫に愛されてきたのか?、自分は夫の事も子供の事も本当は何も理解していなかったのではないか?という思考に引き釣り込まれていく。
誰もが自分を守るため -
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ネタバレ「私は完璧な妻であり母」自認の主人公が、ある事情で自分の過去をつぶさに振り返り「自分は最低な妻、母、友人だった」となっていく作品。
ほぼ主人公の一人芝居であるにも関わらず内容は非常に面白いし、先が気になってどんどん読んでしまうにも関わらず、とにかく疲れる作品でした…
主人公は(おそらく意図的に)かなりの性悪女として描かれていて、自分もそんなに性格が良くないと自認している私でもさすがに彼女のことを擁護はできない。…けれど、この世界に他人への加害性が全くない人間はいないので、大なり小なりどんな人にも刺さる部分があるのではないかなと思う。私も所々「ゔ……ごめんなさい……」となりながら読んだ。
それ -
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素晴らしかった!
クリスティのウエスト・マコット名義で書いた本を読んでいる。これもまた恋愛、家族について考えさせられる。
死を選びそうな女性(主人公)が、出会った人にこれまでの人生を夜通し話すというスタイルで、幼少期の話から始まる。そこは正直読んでいて少しダルい感じもしてしまうのだが、主人公が内気な妄想好きの少女だった、ということがわかる。少女が大人になって、恋愛話が出てくると、一気に面白くなってくる!いろんな人から救愛されるのだけど、ちょっとでも違和感を感じると、彼女は流されず、断る。きちんと自分の好きな人を結婚相手として選ぶことができた。はずなのだが、ずっと続くと思われた結婚関係が、相手 -
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ネタバレその人生を幸福と呼ぶか。
ヒュー・ノリーズの元にゲイブリエルが死にそうだと報せが来る。ノリーズはゲイブリエルを憎んでいた。イザベラを死なせたゲイブリエルを。ノリーズの語るゲイブリエルの物語。
一気に読ませる。メアリ・ウェストマコット名義の作品なのでいわゆるミステリではない。しかし最後に明かされる真相に向かって進み、最後の打撃に痺れるという点では実によくできたミステリ的。
軽薄で自己宣伝的な醜男ゲイブリエル。彼の根底に流れる高貴なものへの歪んだ感情。生まれながらに貴族というのが日本には(一応)ないので、ここら辺の大英帝国的な価値観を完璧に理解はできないけど、なんとなく感覚的にはわかる。自分 -
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個人的にクリスティ作品の魅力といえば、
個性豊かかつ人間味のある登場人物(事件の容疑者)たち、
膨大な情報の中にミスリードと本当のヒントとを潜り込ませる巧みさ、
そしてミスリードの要素すら拾い上げ本筋とは別のストーリーに昇華させる組み立ての巧さ、
あたりが大きいのだが今回は短編集という性質上どうしてもそれらを感じづらかったというのが正直な印象。
短いページ数で語らなければいけないので人物描写にそこまで割けず、ミスリードを入れる隙がないのでヒントが分かりやすく浮き彫りになっており、長編では毎回予想外の真相に驚かされていたのに、今回は途中でなんとなく分かってしまうことが多かった。
というのは各話 -
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ジョーンは娘の看病帰りに女学校時代の古き友人と出会い、その友人の落ちぶれた姿に愕然とする。
それと同時に自分の人生は良き家族に恵まれたと優越感に浸る。
だが果たして【良き家族】だったのだろうか?
遠征途中で足止めを受けることになり、砂漠の真ん中で1人過ごす日々。
その時に自分の人生を振り返り、家族のことを考え、そして後悔する。
自分のものさしで価値観を押し付け、家族の気持ちを考えなかったこと。ハッとする。子供達が頼るのは良き母親の自分ではなく父親だったこと。
優しい夫。優しさではなく諦めたということなのかと思うとゾッとする。
違和感はいつもあった。だがこの正体に気づけないと孤独が待ち受けるこ