中村妙子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ結婚しても、独立しても、娘は娘。
母と子の共依存なのかと思って読み始めたが、これを共依存というとすべての母娘が共依存になってしまう。母アンと娘セアラ2人で(メイドのイーディスはいるけど)仲睦まじく暮らしてきたが、アンがリチャードと再婚しようとしたことに、セアラが反発したことから、2人の仲は引き裂かれる。微笑ましい仲良し親子はどこへやら、お互い相手を貶し、自分は幸せだとのたまいながら享楽的な生活に溺れていった。
甲斐性なしと言われていたジュリーが、戻ってきてセアラを求めたのが、とてもロマンティック。麻薬から抜け出すのはとても簡単なことではないだろうけど。お互いに意地を張っていたことを認め合い、旅立つ空港で抱き合う母娘の姿はドラマティック。
他のメアリ・ウェストマコット名義作品でも思うのだが、どの立場になるかは別として、女性の読者は、自分に覚えがあったり、共感できたりするのではないだろうか。男性読者の感想も知りたい。
すぐ自分の家族の話を引き合いに出しながらネガティブな意見を言いつつ、じっとアンを見守り続けるメイドのイーディスと、セアラの名付け親であり実際的で、下手な同情は全然しないローラのキャラクターが秀逸。 -
Posted by ブクログ
素晴らしかった!
クリスティのウエスト・マコット名義で書いた本を読んでいる。これもまた恋愛、家族について考えさせられる。
死を選びそうな女性(主人公)が、出会った人にこれまでの人生を夜通し話すというスタイルで、幼少期の話から始まる。そこは正直読んでいて少しダルい感じもしてしまうのだが、主人公が内気な妄想好きの少女だった、ということがわかる。少女が大人になって、恋愛話が出てくると、一気に面白くなってくる!いろんな人から救愛されるのだけど、ちょっとでも違和感を感じると、彼女は流されず、断る。きちんと自分の好きな人を結婚相手として選ぶことができた。はずなのだが、ずっと続くと思われた結婚関係が、相手方の勝手な考え方や行動によって終わりを告げる。性格の違い(新しい物好き、独特の冷淡さ)によって破綻する。シーリア(主人公)は、それまでずっと夫に関してあれ?と思うことがあっても、包むような優しさで違和感を覆い隠し、彼に合わせてあげてきた。10年以上の結婚生活をぼいと捨てられる。本当に理不尽です。愛される人より愛してきた人の方が辛いです、多分。
-
Posted by ブクログ
ネタバレその人生を幸福と呼ぶか。
ヒュー・ノリーズの元にゲイブリエルが死にそうだと報せが来る。ノリーズはゲイブリエルを憎んでいた。イザベラを死なせたゲイブリエルを。ノリーズの語るゲイブリエルの物語。
一気に読ませる。メアリ・ウェストマコット名義の作品なのでいわゆるミステリではない。しかし最後に明かされる真相に向かって進み、最後の打撃に痺れるという点では実によくできたミステリ的。
軽薄で自己宣伝的な醜男ゲイブリエル。彼の根底に流れる高貴なものへの歪んだ感情。生まれながらに貴族というのが日本には(一応)ないので、ここら辺の大英帝国的な価値観を完璧に理解はできないけど、なんとなく感覚的にはわかる。自分がつまらない、みっともないものだと思わされてしまう存在がそこにいて、それを愛してしまう苦しみ。ゲイブリエルの吐露には活字なのに巻き込まれそうな勢いがある。
まっすぐなイザベラ。彼女は自分で決めたことしかしない。そんな彼女の前でゲイブリエルが襲われた。銃弾に貫かれたのはイザベラだった。それが意味するところとは。背表紙のあらすじを読むと(本当にこのあらすじが9割)キリスト教的博愛とは『塩狩峠』みたいなもので、この話はイザベラがゲイブリエルを愛していたという解釈ではないのかと思ったが。
ダメ男に次々と引っかかる感傷的な女性とか、大袈裟におせっかいを焼く高齢女性とか、悪人ではなく平凡なまとめ役とか、ズレていると思いきや放った不思議な一言が真実を指している芸術家とか、相変わらず登場人物の描き方が秀逸。カッコいいと思ったのは、大英帝国の大奥様を象徴するレディー・セント・ルーと、クールに周囲の観察をして如才なく立ち回る義姉テレサ。語り手のヒューには病んでいるように見えて、その根は健康な精神を持っていると感じた。
第二次世界大戦末期における大時代なイギリスの終焉が感じられるのも面白い。この先に『日の名残り』があるのだと感じる。 -
Posted by ブクログ
個人的にクリスティ作品の魅力といえば、
個性豊かかつ人間味のある登場人物(事件の容疑者)たち、
膨大な情報の中にミスリードと本当のヒントとを潜り込ませる巧みさ、
そしてミスリードの要素すら拾い上げ本筋とは別のストーリーに昇華させる組み立ての巧さ、
あたりが大きいのだが今回は短編集という性質上どうしてもそれらを感じづらかったというのが正直な印象。
短いページ数で語らなければいけないので人物描写にそこまで割けず、ミスリードを入れる隙がないのでヒントが分かりやすく浮き彫りになっており、長編では毎回予想外の真相に驚かされていたのに、今回は途中でなんとなく分かってしまうことが多かった。
というのは各話で語られるミステリーの内容の話で、毎回変わる語り手の性別や性格や職業による語り口の違いの書き分けにはもはや凄みすらある。
そしてそれを逆手にとったような『バンガロー事件』の結末が特に痺れた。
各ミステリーの内容についても、真相が予想できるからといって読み応えがないなどということは全くなく、謎めいたシチュエーションの面白さはさすがといった感じ。
特に『舗道の血痕』の語り手ジョイスが見ていたであろう定点観測のような景色は読みながらまざまざと頭に思い浮かんできて、読み終わった今でも強烈に残っている。
ホームズ作品の短編集も「シチュエーションの面白さ勝負」みたいなところがあるが、あちらがおどろおどろしい見るからに奇妙なシチュエーションが多いのに比べて、クリスティはもっと日常と隣り合わせの、牧歌的な雰囲気の中に潜むちょっとした違和感というような、じわじわと感じる恐怖を得意としているように感じた。 -
購入済み
結末は、これで良かったのかもしれないね。
過去は変えられないし。
登場人物全員がまるで実在の人物かのように思えてくる。
それだけでも読む価値があると思いました。
若い人に読んでほしい本ですね。ピントこないかもしれないけどね。
それにしても、クリスティは人物描写が巧みだね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスティーがメアリ・ウェストマコット名義で書いた一冊。この作品群はとにかく登場人物の内面が他作品以上に深く描かれているのが特徴。
夫に先立たれたアンは、娘のセアラに無償の愛を注いでいた。あるとき、セアラが三週間のスイス旅行に出掛けている間にアンは自分と同じく配偶者に先立たれた悲しみを背負って生きるリチャードと出会い、たちまち恋に落ちる。しかしスイスから帰ってきたセアラはリチャードを毛嫌いし、二人の結婚を認めようとしない。リチャードはリチャードで、そんな態度を取る近い将来継娘になるはずのセアラを拒絶する。
母親には女性としての幸せを求めることは許されないのかと苦悩するアン、突然現れた継父に「お母さんの幸せを考えてあげないといけない」と説教され反発するセアラ、継娘に拒絶され、アンが間を取り持ってくれるわけでもなく苛立ちを募らせるリチャード。
それぞれの苦しい胸の内がこれでもかと深掘りされている。
リチャードとセアラの板挟みになったアンはリチャードとの結婚を諦め、ついに壊れてしまう。何もかもがどうでもよくなり、ただ目の前の快楽に溺れるアンがあまりにも哀しい。
アンが結婚を諦めざるを得ないほどセアラはリチャードを嫌っていたのに、当のセアラはあっという間にリチャードのことなど忘れてしまう。また、アンがリチャードとの結婚を考えていた時は頑なに家を出ることを拒んだのに、騒動が過ぎれば家を出たいと言い出す始末。セアラへの不満が募るのに、「娘だから」「愛しているから」と自分の本心に蓋をし続けたアンの気持ちを考えると苦しくなる。もちろんセアラも含め登場人物の誰もがそれぞれに葛藤を抱えながら生きているが、それでもやはりアンがあまりにも不憫。そのため、アンがセアラにぶつけた憎しみの言葉はそこまで残酷とは思えない。
ただその部分を深く考えてみると、セアラがリチャードに厳しく当たったのは、「自分の娘にはまともな人を結婚相手に選んで欲しい」と考える世の母親に対する強烈なカウンターにも思える。
最終的に母娘は和解し、今まで何もかも母や他人のせいにばかりして生きてきたセアラが地に足をつけしっかり生きていこうと決意するので、その点は救いかもしれない。家族とは言えそれぞれが自我を持った一人の人間。甘えから、家族であればどんなきつい言葉をぶつけても大丈夫というわけでは決してない。
何をやらせても駄目なジェリーが母娘の関係の在り方も含め意外に常識人なのと、クリスティー作品の中に出てくるある種の秩序を形成する役割を担うローラとイーディスのキャラクターがとても魅力的。 -
Posted by ブクログ
目次
・火曜クラブ
・アスタルテの祠
・金塊事件
・舗道の血痕
・動機対機会
・聖ペテロの指のあと
・青いゼラニウム
・二人の老嬢
・四人の容疑者
・クリスマスの悲劇
・毒草
・バンガロー事件
・溺死
アンソロジーなどで何編か読んだことはあるはずのミス・マープルシリーズ。
実はきちんと読んだのは初めてです。
思った以上に短い作品ばかりで、推理をするというよりも人々の意見を聞いているうちに正解に流れ着いちゃった、という感じ。
長編と比べたら、必ずしも論理的ではないけれども、ミス・マープルの言葉には説得力がある。
しかし、これほどバラエティに富んだ殺人事件と同じ構造の事件が起きているのだとしたら、セント・メアリ・ミード村というのは、米花市と同じくらい怖い土地である。
流れるように読んだから、個別の感想は特になし。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主に三人の人物を中心として物語は進展していく。
①ローラ
両親の愛を一身に受ける兄。その兄が死ぬと、悲しみの中にありながらローラは密かに両親の愛が自分に向くのではと期待する。しかし今度は、生まれたばかりの妹シャーリーが愛を独占することに。ローラはシャーリーの死を願うようになるが、ある時火事からシャーリーを守ったことをきっかけに、ローラはそれまでとは打って変わってシャーリーを心から愛するようになる。それは独占欲とも執着ともとれるものだった。成長したシャーリーと恋仲になったヘンリーのことをよく思わないローラは、二人の結婚に反対する。
②シャーリー
ローラを説得してヘンリーと結婚するものの、定職につかず浮気までするヘンリーとの結婚生活に疲れ果てる。そのような中でたまたま出会った探検家のリチャードに惹かれるも、ヘンリーがポリオにかかり介護が必要になってしまう。病気を機に偏屈になってしまったヘンリーを介護しながら、シャーリーはますます疲弊していく。
③ルウェリン
恋人を捨てて伝道者となり訪れた熱帯の島で、物思いに耽るシャーリーと出会う。シャーリーはヘンリーに先立たれた後リチャードと結婚して島で暮らしていた。その島でシャーリーが不慮の事故で死ぬと、ルウェリンは傷心のリチャードに代わって訃報を姉であるローラに伝えに行く。
愛されることを諦め愛することを選んだローラ。シャーリーを愛するが故にローラが犯した過ち。ルウェリンが告げる残酷な事実を受け止めて、ローラは最後に愛される道を選ぶ。
暗く虚しい人生の中で、偏屈な老人ボールドックが唯一の心の友としてローラを支えている。
クリスティーとは別名義の「愛の小説シリーズ」の一冊だが、ミステリー要素もある(かなり予想はしやすい) -
Posted by ブクログ
【ノンシリーズ】
シングルマザーのアンは人生の全てを注いで一人娘を育てきた。しかしアンの再婚問題を機に母と娘の関係が変わってくる…。
「母親の目線」で読むか、「娘の目線」で読むかによって思う事も変わってくる。
自分も娘がいる母親だし、かつては娘だった時代もあるので、両方の気持ちがよくわかるので面白い。
再婚を決めた男性のことをどう思うか?
娘が好きな男性を親として許せるかどうか?
この2点は読者それぞれの価値観によって違うと思う。
古い友達と長年仕えるメイド、この2人の頼れる老女が精神安定剤みたいで安心する。
クリスティー自身もこの作品と同じように、娘がいて14歳も年下の男性と再婚してるので、ここまで繊細に描けるのではないかと思った。
読後感は『春にして君を離れ』と同じ。
読み終わった後に考えさせられる本が好きなので、こういうのも大好き。
いつものミステリーっぽくない、こういう作品もあるからクリスティーは飽きないんだよなぁ。