中村妙子のレビュー一覧
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ネタバレ灰色の脳細胞名探偵ポアロの活躍を書いた一冊
極秘書類を託したいとの依頼を受け、依頼人のもとに向かったポアロを待っていたのは、依頼人サー・エイモリーの変わり果てた姿だった。
犯人探しと共に、行方不明となった極秘書類の在り処も探すこととなったポアロ。
イギリスでありながら、紅茶ではなくブラックコーヒーというあたりで、ある程度あらましが分かりそうですが・・・。
戯曲の小説化ということで、基本的に大きな場面転換はありません。
それ故、他の作品よりも個々の登場人物の動き、それに伴う心理の変化を想像すると、さらにこの作品を楽しめると感じました。
事件発生の様子を思い返しながら、灰色の脳細胞と共にコーヒーの如く漆黒の謎を楽しんでください。 -
Posted by ブクログ
古代エジプトを舞台にした戯曲。
ミステリではなく、有名な王アクナーテンの生涯のポイントを描いたもの。
多神教が信じられていた古代エジプト。
中でもアメン神殿が王をしのぎかねないほどの大きな勢力を持っていた。
アクナーテンの母である王妃ティイは、神官の横暴に不信を抱きつつも権力を守るために神殿と結びつき、息子の純粋さを心配しているところから始まります。
軍人のホルエムヘブは信仰心は薄く現実的でまったく違うタイプだが、まじめさに通じるところがあり、アクナーテンは親友と思うほどになる。
王位についたアクナーテンは、太陽神であるアテンのみを信じる一神教とし、遷都して芸術家を集め、皆が愛し合う平和で美しい都を築こうとする。
外敵に襲われた属国や友邦に援軍を送ることを拒み、大罪人も厳罰を与えずに穏やかに反省させようとするアクナーテン。
エジプトは混乱し、次第に衰退していく。
美しい王妃ネフェルティティは夫を愛し続けるが、夫の宗教観を理解はしきれない。
貴族の少年ツタンカーテン(後のツタンカーメン)はネフェルティティの次女と結婚し、後継者となるのだが。
忠実だったホエルムヘブはついに耐え切れなくなり、王の暗殺を決意。
ネフェルティティの姉妹は野心家でホルエムヘブの妻となることを選び、後に王妃となるのだった‥
ホルエムヘブが軍人から王になったのは史実で、第18王朝の最後の王。
アテン神信仰を異端としてアクナーテンら4代の事績を抹消したため、正確なことがわからないんですね。
そのあたり、空想を膨らます余地もあるという。
アクナーテンは一神教をおこしたことでキリスト教社会では人気があるそう。なるほど。
紀元前1350~1334年頃の在位。
キリストの早すぎた先駆者といったところでしょうか。
(日本人にとっては、多神教を信じる庶民感覚もわかる気がするんだけど)
この時代についてはクリスチャン・ジャックの「光の王妃 アンケセナーメン」が詳しく、面白いですよ。アンケセナーメンは少年王ツタンカーメンの妃になった王女です。
アガサ・クリスティは考古学者マックス・マローワンと1930年に再婚。
この作品は1937年に執筆されていたが未発表で、1973年に刊行された。
気に入っている作品だそう。
個性豊かな歴史上の人物をいきいきと描き出した筆致は乗っていて、気に入っていたのはわかる気がします。 -
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人が才能を持って生まれるのか、才能が人を選ぶのか。偉大な音楽の才能を持って生まれた主人公の青年が、たったひとつの道のためにほかの全てを失うまでの物語。あるいは人のエゴと自己愛、欺瞞、その醜さについての物語。
ずいぶんと救いようのない話だった。つまらなかったというのではない。読み始めれば劇的な展開もないうちから引き込まれ、分厚い本にも関わらず短期間で読み終えてしまった。面白く、人間の業が描かれていて、そして意地の悪い話だった。見たくないものをつきつけられるようなところがある。悲劇なのだが、悲劇に浸って気持ちよく涙を流せるというようなカタルシスではない、皮肉な話だった。
クリスティは「春にして君を離れ」に続いてまだ二冊目なのだけれど、「春にして~」と共通するテーマが根底にあるような気がした。人がいかにして自分を誤魔化し、正当化し、己の正義を信じるために多くのことに目をつぶるかということ。愛と名付けられたものの欺瞞。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスティーの話は必ずといっていいほど最初は面白くない。なぜならば言い回しがとてもまどろっこしかったりするし。でもストーリーが進むにつれて、次の展開がすごく気になってしまい知らず知らずのうちにそのストーリーにのめりこんでしまう。
そんなミステリー作家だと私は思っている。
しかしこの「アクナーテン」についてはミステリー小説ではなくロマンス小説だ。なのにどんどん引き込まれていってしまった。さすがクリスティーだな~って思った
この話ではストーリーの主となるものが宗教で、「多神教世界」からアテン神という太陽神のみを崇拝する。「一神教世界」を創りだしてしまったしまったがためにおきてしまった悲劇。
当然、今までの自分が信教していたものを廃止とういうことは国民は納得もいかず・・・大反乱をおこす
しかしアクナーテンは一神教「アテンの神こそ本当の神だ」と思い込んでしまっているので、傍からみたらキチガイじみている。
私は、カミサマというのは存在はしてなく弱い人間が創りだした
ものだと思っている。だから強制的に「~だけが神」「~だけを崇拝しろ」というのはもともと無理な話だ。暴動がおきて当然だ。
しかしそこに付け込んできたネゼムートは最低ではないだろうか?そしてホルエムヘブも最期の最期「どんな人間にもこれ以上我慢できないという一線があるものです」など言わずずっと忠誠を誓っていてほしかったと思う。
私がこの物語で一番好きなキャラはネフェルティティだ。姉のネゼムートは彼女を見下していたところがあったけれど、一番辛抱強くて王のことを愛していたのは彼女だと思う。アクナーテンがプッツンした時も冷静さを決して失わなかったのは彼女だけ。それだけアクナーテンを愛していたのに最期はネゼベートに騙されてアクナーテンに毒薬を飲ませてしまった時私は胸が詰まって涙がでてしまった。なんとも切ない・・・って感じだ。 -
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「愛の旋律」……訳名つけた人、出てこい!!といいたくなりそうな題名ですね。
ミステリーじゃないクリスティです。もともと、アガサ・クリスティ名義ではなくて、メアリ・ウェストマコット名義で書いた作品だそうです。
展開は、ベタベタです。
2人の女性の間で揺れ動く、天才音楽家……みたいな。それを幼なじみたちを交えて、少年時代から書いていく。そしてもちろん(笑)、記憶喪失もあります。
もう、ここまでやるかというぐらいベタな展開なのですが、「マリンブルーの風に抱かれて」の時にも書いたのですが、クリスティや、矢沢 あいみたいな、話作りがうまい人がやると、すごい迫力になります。
若干、迫力過多な気もするぐらいです。
でも、650ページ弱、一気に読ませる小説です。
クリスティ文庫、表紙いいよな。うまいよな。……内容とは、あんまり関係なかったりするけれど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ神はわたしのしたことを赦さない。
ローラは両親の愛を妹シャーリーに奪われていると感じていた。だから彼女は妹の死を願った。両親が不在の夜、火事が起きて、妹は炎の中に取り残された。ローラは炎の中に飛び込んで、妹を救った。その日からローラは妹を何よりも大切なものとして愛し続けたのだった。それが何を引き起こすのかわからずに。
最後の伝道者ルウェインの未来視したのはローラだったのでプロポーズするという展開はちょっと唐突すぎてうまく理解できなかったが、愛することで他人の人生を駄目にする罪ということには考えさせられた。両親を早くに亡くしたローラは親代わりとなり、よかれと思ってシャーリーの幸せを考え続けた。自分の幸せについてはあまり考えなかった。もちろん結婚が幸せだという単純な結論ではなく、ローラが自分の人生に目を向けずシャーリーの幸せばかり考えて行動することを、クリスティーによく出てくるタイプの皮肉を愛するおじいさんボールドック氏が早いうちに看破している。他人の人生に手を出しすぎてはいけない、と。
こういう近しい人の幸せが自分の目的になって、その人の「幸せ」を追い求めすぎる人はいつの時代もどの場所にもいる。水をあげすぎると花はダメになる。シャーリーは意外と強いタイプだったとルウェインは言っていたが、ヘンリーを選んだのがシャーリー自身なのだからシャーリーが戦うまで待てるローラだったらよかったのに。そうはいっても実際にはローラのようにシャーリーに辛く当たるヘンリーを安楽死させるまで振り切れる人は少ないだろうが、ローラはできてしまった。そしてそれをシャーリーの幸せのためだと思っていた。ローラは恵まれない子のために、おそらくプライベートなどない状態で、働いている。他人を「幸せ」にすることに全力を注いでしまっている。しかもそれに成功してしまっている。ルウェインはそんなローラの生き方を間違っていると伝えた。
原動力を他人にすることの危険さを、この物語は語っている。自分の人生を生きることの大切さと、その難しさも語っている。ローラみたいに生きると多分気持ちがいいと思う。でもそれは誰かを「幸せ」にすると過信して、逆に台無しにしているかもしれない。ローラにはルウェインが現れたけど、自分には現れなかったら。やはりウェストマコット名義のクリスティーは、自分にとってゾワッとする作品だ。