服部まゆみのレビュー一覧
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「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこ -
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シメール…幻想
最初の数ページで「あ、好きな本」と思ったのだけど間違っていなかった。
満開の桜の下に精霊がいた。
片桐と翔、2人の視点から交互に進む物語。
友人の息子である翔。
父の友人である片桐。
2000年に刊行された物語で人々がまだそれについて今ほどナーバスではなかったのだろうと思うのだけれど、人によっては嫌悪する内容であることは否めない。
それでも私には美し過ぎる悲劇。
火事によって、家と祖母と双子の片割れを失った僕と、兄を愛してやまない母と、社会性に乏しい父。
母にとって不平不満だらけの引越し先のアパートでさえ立ち退きを言い渡されて途方にくれる僕たちの前に現れたのは、大学教授で -
騙される
途中まではすっかり始まりの世界観に騙されていた。
後半というか終盤辺りで夢から覚めたようになり少し呆気に取られながら読み進めていった。
終わり方がこの先は読者に任せます的な感じだったのであまり好きではない終わり方だったのが残念。きっとこうしていくんだろうなって想像が働くのはいいけど、やっぱり著者の決定的な終わり方が見たかった。
終盤のネタばらしのような展開は読んでいるとちょっと無理矢理すぎんか?と思うこともあったけどそれでも自分の中でベスト3に入るほど好きな作品。 -
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『この闇と光』が良かったので、他の服部まゆみさん作品を探し、美少年と聞いてこちらを読みました。
若くして美大の教授となりテレビでも人気の片桐教授。事故により嫁を亡くすが、もともと教授の座を射止めるための政略結婚であり愛惜に暮れる様子もなく、ただ鬱々としていたところに、美少年を発見し猛烈に魅せられる。
こちらの美少年は双子の片割れであり、現在中学二年生。外見は美少年ながらも、中身は思春期真っ只中の中2病らしく、不登校でゲームに没頭しゲーム作家を目指している。
教授は彼を手もとに置いておきたいがため、家族ごと自分の広い家に引っ越しさせ一緒に住み始めるが……。
教授と美少年、それぞれの視点で交互 -
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ネタバレ面白かったです。
幻を求めた為に、ひとつの家族を壊してしまうお話。
主人公のひとりである美術家の片桐が、もう一人の主人公の美しい少年・翔へ向ける、崇拝と所有欲は狂気じみていました。
翔には双子の兄・聖がいるようですが、巧みな描写でラスト付近までどちらが生きているのかわからずでした。家族は、生きているのは聖だと思い、でも本人は、自分は翔だと答える。この辺りで、翔も少しずつ壊れていっていたのかなと思いました。
こちらでも、テレヴィ・ゲームが出てきました。でも面白そうなRPGです。
人々は転落していき、悲劇的な結末を迎えるのも好きでした。片桐はひとり、空洞を抱えて生きていくのかな。それとも、生を失っ -
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服部まゆみ追悼読書の第二弾。むせるような夏草の匂い、幼いころ心奪われた洋館の美少女、白皙で異端の作家、ジル=ド=レイ、そしていばら姫とラプンツェル、、、。背徳の妖しい香りがたちこめる、ただただひたすらに耽美で妖艶なゴシック・ロマン。謎解きの要素が用意されてはいるものの、そんなのは些細なこと。作者の美意識がそこかしこに散りばめられた人工的な美の世界に、酔いしれればいい。好き好き大好き。 なぜ私が服部まゆみ作品が好きなのかと言うと、結局は、私も大好きなものがたくさん詰まっているからなのだと、この作品を読んで悟ったわ。ああ、服部さん、、、、涙。その服部さんが今はもういないなんて、、、、涙。 たぶ
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服部まゆみさんと言えば…憂鬱で含みのある雰囲気から、ゴシック的モチーフを緻密に、絵画のように組み立てる筆致で、『この闇と光』を初めて読んだ時から、読書に疎かった私を「没入」させてくれた、思い入れの深い作家さんになります。
本作の雰囲気は、いみじくも作中に書かれた通り…『ヴェニスに死す』『ハムレット』『ロリータ』…といった作品群を彷彿とさせるものがあります。画壇の若き秀才、片桐哲哉が、美少年木原聖(翔)の絶対の美を求めんがために生まれてしまった悲劇が、その流麗な筆致により息付く間もなく次々と展開していきます。ラストのぶつ切り感は否めませんが、それでも見事な悲劇であること! シメールというタイトル -
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ネタバレ子どもの親に対する健気な行動、成長と共に新たな生活も含め、親に対する考え方の変化。それでも、子どもは、どうすることもできず、親が選択したものについていかなければならないという葛藤、現実。
目の届く範囲にいれば、愚痴も嫉妬も羨望も憐れみも強くなる。そしてお互いが相手をどう思っているか、いたのか浮き彫りになり、強く意識するようになる。
一人の少年と出会ってしまってからの、男の酔い方。花を愛でるように、手の届かない神をみるように陶酔し、畏れ、悶える。
シメールをシメールのままにしていれば、この男が行動を起こしたことで、ひとつの家族が、崩壊してしまう話。
最初はうまく回っていたかのような歯車も徐々にお -
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ネタバレあぁ美しい・・・この破滅美をどう伝えれば良いのだろう。
河出文庫様、『罪深き緑の夏』に続き『シメール』の復刊をありがとうございます♪
『この闇と光』で服部まゆみ先生の美しい世界に魅せられ、手に入った作品を読み漁っているけれど、毎回その期待を裏切られることはなく安心する。
作品紹介
満開の桜の下、大学教授の片桐は精霊と見紛う少年に出会う。その美を手に入れたいと願う彼の心は、やがて少年と少年のの家族を壊してゆき――。陶酔と悲痛な狂気が織りなす、極上のゴシック・サスペンス。(河出書房)
本作にサスペンスの要素はあまりないと思う。様々なことがわりと早い段階で種明かしをされていくし、トリック -
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美少年に魅せられた男の物語。といっても下心のある感じではなくて、あくまでもその美を愛でる、というような純粋な思いだと感じられるのですが。それでも恋に似た感情なのかも。微笑ましいようにも思えたのだけれど、ぴりぴりと危なっかしい雰囲気が漂う作品です。
秘密を持った少年、どこかしら歪みを見せる少年の家族、という道具立ても相まって、物語の進み方はとにかく不穏。美しい雰囲気とファンタジックな要素も交えつつ、この生活は絶妙なバランスの上に成り立っている気がしました。だからこそそこに綻びが見え始めた時にどのようになってしまうのか、という危惧が感じられて、それがなんとも言えず不安です。
そしてこの急激な幕切れ -
Posted by ブクログ
美しい少年は聖なのか翔なのか?
少年に魅入られた男の柔らかい傲慢さ。
関係を端からみしみしと詰めてきて、息苦しいほど。
少年も男も、欲しい相手の愛情は手に入れられなかった……
自分で創る物語や、鑑賞してきた絵画や小説に浸る分には、この家は少年にも楽園だったはずなのに。
男が身勝手極まりないのに紳士すぎて笑える。
が、彼が評する翔の姿は、うっとりするほど美しかった。それがよけいに残酷に感じる。
相手をまるで一人の人間として扱っていないようで。
だからこその美か。
どうしても大谷亮平さんの顔しか浮かばなくて……
実写化されることがあったらぜひにw