服部まゆみのレビュー一覧
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舞台は19世紀末のロンドン、実際に起きた切り裂きジャックの事件について、医学を学ぶために渡欧した日本人の目を通して、犯人を暴いていく。
切り裂きジャックと呼ばれる犯人による娼婦連続殺人は、未解決の猟奇事件ということもあり、ミステリーの素材として取り上げられることも少なくない。これもそのひとつで、史実を織り混ぜながら重厚な読み物に仕上げている。
主人公はまったく冴えない青年で、対照的に事件を解決していく友人は、容姿も性格も頭脳も正反対。そのコンビは、主人公が事件を日記風に綴っていくところも含め、ホームズとワトソンの姿と重なる。番外編で、別の事件も読みたいと思ったほどだ。
個人的には、主人公が -
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物語は盲目の姫レイアの生い立ちを中心に進行し、中世的な世界観を想起させる導入となっています。しかし、読み進めるうちに時代背景と齟齬を生じる要素が散りばめられ、その違和感が作品全体に張られた大きな伏線として機能しています。
レイアの成長を丹念に追った第一章は分量が多く、冗漫に感じる可能性もありますが、後半で明かされる真相と構図の転換は、その長さを必要な積み重ねとして位置づけてくれます。
音楽や芸術に関する描写が随所に織り込まれており、それらへの関心を持つ読者にとっては一層の深みを与えるでしょう。
結末の受け止め方は読者によって大きく分かれるはずですが、周到な仕掛けと構成によって「欺かれる読書 -
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ネタバレ『この闇と光』がとても面白く好みだったのでこちらも読んでみようと購入。
世界観がやっぱり好きで楽しめたけど、主人公の実の両親を他の大人に比べて明らかに愚かに書きすぎなのがいちいち気になってしまいもやもやした。
もちろん対比させた上で画家さんも問題のある人なのだからあえてなのはわかるけど。
作者の他作品からもそれは感じてたので、なぜ実両親をこんな人物にするんた?という疑問が最期まで付きまとってしまった。
本当に美しい世界観なんだけど、最後のページで一気にまとめる感じなのも少し残念に感じた。
子の未来を守ろうとした英子は怖いけど素晴らしいと感じた。 -
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ネタバレ今まで読んだことのない、へんな雰囲気で進むところが「百年の孤独」と似てるなあ、と思いながら読んでいたら、あらら、そうなりますか。
初めは、どこかに囚われた盲目のお姫様。ファンタジー、メルヘンの世界かと思いきや、実際の言語や芸術作品が現れ、世界観が混乱する。
父王の優しさや、芸術や自然の美しさと、意地悪なダフネと怖い兵士の暗さによる対比が、まさに光と闇で、題名はそういうこと?じゃあこの先の展開は脱出?それとも父王に何か起こるのか?と思った矢先に、ひっくり返る。ほえ?忙しい話w
さて、ガラッと変わった世界で、元お姫様は、それでも持ち前の頭の良さを発揮する。煩わしいことばかりで辟易しながらも、遂に事 -
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この作品のジャンルは何になるんだろう。
ミステリーかな?
盲目のお姫様の日常編からスタート。
とにかく優しくて娘LOVEのお父様と、なぜかキツく当たってくる使用人風のオバさん?
ぐらいしか登場人物がいなくて、
どっかの国を舞台にした、よくある少女の成長譚なのかなとか思ってダラーっと適当に読んでたら、途中から雰囲気が一変。
雰囲気というか、世界が文字通り一変する。
ネタバレを避けてこれ以上はあまり書かないが、解説を読んでも、
「この闇と光 ネタバレ」でググってみても、
正直よく分からんかったので星は控えめ。
ラストは読者にお任せ系かな?それとも私の理解力が欠如してるだけかな?
この一冊の中 -
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ネタバレ角川ホラー文庫ベストセレクションの第二弾。今回も8名の作家の8作品だった。特に印象に残ったのは以下の3作品。
「骨」小松左京
なにかに突き動かされるように庭を掘り続ける主人公の姿が最後に悲しみを誘った。何かを思い出しかけているという描写がよかった。
「或るはぐれ者の死」平山夢明
こんなにも悲しい話だとは思わなかった。自分だけでも死者を埋葬しようとしたその清らかな心は悪意に踏み躙られる。
「人獣細工」小林泰三
この作品が最も衝撃だった。自分と父の秘密を探らずにはいられない、そのはやる気持ちが痛いほど伝わってくる。凄まじいラストだった。 -
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なぜこの本を予約したのかさっぱり思い出せません。ともかく読んでしまう。
1993年角川ホラー文庫創設。そこから30年あまりの作品の中から精選収録のアンソロジー。
竹本建治「恐怖」1983
小松左京「骨」1972
SFっぽさあり
宇佐美まこと「夏休みの計画」2017
新しいなって思う
坂東眞砂子「正月女」1994
女の嫉妬の怖さ
恒川光太郎「ニョラ穴」2013
平山夢明「或るはぐれ者の死」2007
都会の隅で見過ごされる悲しさ
服部まゆみ「雛」1994
雛人形の怖さと女の情念の怖さのダブル
小林泰三「人獣細工」1997
ありえなくもない豚と人間の相互移植
坂東さんの正月女は、言い伝