服部まゆみのレビュー一覧
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ネタバレ『この闇と光』がとても面白く好みだったのでこちらも読んでみようと購入。
世界観がやっぱり好きで楽しめたけど、主人公の実の両親を他の大人に比べて明らかに愚かに書きすぎなのがいちいち気になってしまいもやもやした。
もちろん対比させた上で画家さんも問題のある人なのだからあえてなのはわかるけど。
作者の他作品からもそれは感じてたので、なぜ実両親をこんな人物にするんた?という疑問が最期まで付きまとってしまった。
本当に美しい世界観なんだけど、最後のページで一気にまとめる感じなのも少し残念に感じた。
子の未来を守ろうとした英子は怖いけど素晴らしいと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ角川ホラー文庫ベストセレクションの第二弾。今回も8名の作家の8作品だった。特に印象に残ったのは以下の3作品。
「骨」小松左京
なにかに突き動かされるように庭を掘り続ける主人公の姿が最後に悲しみを誘った。何かを思い出しかけているという描写がよかった。
「或るはぐれ者の死」平山夢明
こんなにも悲しい話だとは思わなかった。自分だけでも死者を埋葬しようとしたその清らかな心は悪意に踏み躙られる。
「人獣細工」小林泰三
この作品が最も衝撃だった。自分と父の秘密を探らずにはいられない、そのはやる気持ちが痛いほど伝わってくる。凄まじいラストだった。 -
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なぜこの本を予約したのかさっぱり思い出せません。ともかく読んでしまう。
1993年角川ホラー文庫創設。そこから30年あまりの作品の中から精選収録のアンソロジー。
竹本建治「恐怖」1983
小松左京「骨」1972
SFっぽさあり
宇佐美まこと「夏休みの計画」2017
新しいなって思う
坂東眞砂子「正月女」1994
女の嫉妬の怖さ
恒川光太郎「ニョラ穴」2013
平山夢明「或るはぐれ者の死」2007
都会の隅で見過ごされる悲しさ
服部まゆみ「雛」1994
雛人形の怖さと女の情念の怖さのダブル
小林泰三「人獣細工」1997
ありえなくもない豚と人間の相互移植
坂東さんの正月女は、言い伝えにまつわる話。死期が近い若い妻が死んだ後の夫への嫉妬。諦めきれない思いや、優しげだけど裏がありそうな家庭の状況等、怖いより上手し。
たぶん、坂東さん読みたかったのだと思う。
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ネタバレ服部さんのファンで、ずっと気になっていたこの作品にようやく手を出したけれど、読み始めてみると何とも読み辛い。服部作品定番の「美少年」や独特の関係性が冒頭からマンネリに感じられてしまったり、登場人物が誰が誰だかわからなくなってきたり、合わないと感じる文章表現が目についたり。
挫折しそうになったけれど、色々予備知識を蓄えながら挑み、第2章までいくと読みやすくなって中盤以降は一気に加速した。
まあとにかく、クセの強い作品。
フランチェスコにあまり魅力を感じられなくて辛かった。ほかの弟子たちの方に興味が向いていたので、少し消化不良な感じ…テーマから反れてしまうので仕方ないのだろうけど。
私が読んだのは平成15年初版の単行本だったけれど、どうしてこういう装丁にしたのか?(本編のイメージと違う…表示されている文庫版の装丁なら納得)不思議。 -
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ネタバレお耽美かと思いきや、コミカルでスラップスティックな味わい。
かと思いきや、所々まぶされていた暗い情念が、終盤にぶわっと明らかになって、ぞっ。
思わず二度目を読んで、構成の巧みさにびっくり。
翠と昭平という主旋律の奥に、瑠璃という副旋律の毒がぎらりと光る。
いろいろ連想できたのも面白い。
マンションからオペラグラスという構図は『裏窓』。だがあちらとこちら互いの誤解という捻りが効く。
殺人者の精神が乱れていく『黒猫』。あるいはホフマン『砂男』。
ごーん、ごーん、という工事現場の神経をささくれ立たせる音響は丸尾末広『電気蟻』を思い出したりして。
ある書き物ではキューブリック『シャイニング』。
老婆の取り乱しと憔悴の雰囲気は『何がジェーンに起ったか?』。
佳品。 -
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本作は有栖川氏の『ダリの繭』同様、角川ミステリ・コンペティションの参加作品で文庫書下ろしで刊行された作品。
一読して驚くのは、非常に読みやすい文体と内容になっていることだ。ゴシック趣味溢れる『時のアラベスク』や『罪深き緑の夏』の同一作者とは思えないほど、普通のミステリとなっている。恐らく読者の人気投票で優秀賞が決まるというこの企画に即して、自らの持ち味をあえて殺し、普段本を読まない人でも読めるように意図したのではないだろうか。
出版社を退職し、翻訳者として第2の人生を歩むことに意気揚々としていた森本翠は女性編集者の瑠璃と祝杯を上げたその夜、愛猫の黒猫メロウが行方不明になり、心境穏やかでなくなる。
一方、近所のアパートでは駆け出しの役者鳴海が妻を殺害し、バラバラに解体していた。底に現れた1匹の黒猫。黒猫を必死に探す翠と、瑠璃、そして鳴海の人生が交錯しようとする。
退職した独身女性で唯一の家族が黒猫という60歳の女性、翠の思考がなんだか痛々しい。独り身の寂しさの拠り所が猫というのは、私も飼っていたので猫に対する愛情については理解できるが、やはり常人とはどこかずれていて、狂気さえ覚える。鳴海もボタンの掛け違えのような瑣末な事から起こしてしまった殺人を、どこか夢の中の出来事のように第三者的に捉えながら、その実、自覚せずにどんどん狂気の井戸の底に落ちていく。
そしてまた2人の狂人の緩和剤として挿入された瑠璃もまた、常識人とはちょっと違った特異な考え方を持っている。つまりこれは1匹の黒猫を軸にした3人の狂人たちの遁走曲なのだ。
作者の故服部氏は猫好きとしても有名だったので、どうしても翠と作者がダブって仕方がなかった(ちなみに作者は既婚)。
中身はごく普通のミステリで、結末も皮肉が利いている。前2作の雰囲気が好きな人にはあっさりとしすぎて物足りなさを覚えるだろうが、私は全く逆の立場だったので本作は服部氏の作品では最も評価が高い。
昔のミステリマガジンで猫ミステリの特集が組まれていた。その中にいくつか猫ミステリ作品が挙げられていたが、本書はその選から洩れていた。長らく絶版になっており、本書もまた忘れられていく一冊になるのだろう。そんな消えゆく作品を少しでも誰かの記憶にとどめて欲しいために私はこんな風に感想を書いているのかもしれない。