シメール

シメール

小説・文芸
1,320円 (税込)

6pt

満開の桜の下、大学教授の片桐は精霊と見紛う少年に出会う。その美を手に入れたいと願う彼の心は、やがて少年の家族を壊してゆき――。逃れ得ぬ陶酔と悲痛な狂気が織りなす、極上のゴシック・サスペンス。

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シメール のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    シメール…幻想
    最初の数ページで「あ、好きな本」と思ったのだけど間違っていなかった。

    満開の桜の下に精霊がいた。

    片桐と翔、2人の視点から交互に進む物語。
    友人の息子である翔。
    父の友人である片桐。
    2000年に刊行された物語で人々がまだそれについて今ほどナーバスではなかったのだろうと思うのだけれど、人によっては嫌悪する内容であることは否めない。
    それでも私には美し過ぎる悲劇。

    火事によって、家と祖母と双子の片割れを失った僕と、兄を愛してやまない母と、社会性に乏しい父。
    母にとって不平不満だらけの引越し先のアパートでさえ立ち退きを言い渡されて途方にくれる僕たちの前に現れたのは、大学教授であり画家であり著名人として活躍する社会的成功者である片桐さんだった。
    片桐さんもまた、事故により奥さんを失ったばかりだという。

    片桐の幻想。
    英子の思惑。木原の絶望。翔の希望。
    それぞれの思い込みや勘違いで運命に弄ばれ墜落してゆくひとつの家族の物語。
    『詩人のミューズの結婚』
    詩人は美しいミューズに優しく抱かれ飛翔するけれど逆さに飾ればそれは墜落。

    出会い、戸惑い、希望とただ美しく進む…はずもないと思っていたらやはり…ちゃんと辻褄の合った幕引きをしてくれる。流石です。
    そして一行目に戻る。
    全てはシメールが見せた悲劇。

    今年の18冊目




    0
    2023年08月18日

    Posted by ブクログ

    『この闇と光』が良かったので、他の服部まゆみさん作品を探し、美少年と聞いてこちらを読みました。

    若くして美大の教授となりテレビでも人気の片桐教授。事故により嫁を亡くすが、もともと教授の座を射止めるための政略結婚であり愛惜に暮れる様子もなく、ただ鬱々としていたところに、美少年を発見し猛烈に魅せられる。
    こちらの美少年は双子の片割れであり、現在中学二年生。外見は美少年ながらも、中身は思春期真っ只中の中2病らしく、不登校でゲームに没頭しゲーム作家を目指している。
    教授は彼を手もとに置いておきたいがため、家族ごと自分の広い家に引っ越しさせ一緒に住み始めるが……。

    教授と美少年、それぞれの視点で交互に描かれます。おもしろいのは、教授はひたすら美少年を愛でて耽美耽美しているのに対し、美少年は教授のことはなんとなく素敵なおじさんくらいにしか考えてなくて大半はゲーム脳という、二人の内面の対比。
    そのズレが最終的には悲劇を生み出すのですが。
    冒頭から三分の二くらいまでは、そんな二人と周囲の親や友人や職場の話がゆったりとすすみます。が決して飽きることなく、徐々に近づいていく教授と美少年の心情が丁寧に描かれます。美少年は双子の兄と弟どっちなのか?という謎も解明されないまま(兄弟二人の会話は出てくるが、どちらかが亡くなっているであろうと読んでいると察しはつくのだが、謎が解明されるのは終盤になってから)。
    ラスト100ページで物語が一転。あれよあれよと展開。美少年ならではのラストとはいえ、私としてはけっこう衝撃のラストでした。悲しい。

    美少年の母親に対する心情も、鬱陶しがってるのか好きなのか?まあ思春期だからな…と思って読んでいたのですが、双子の謎が解明されると、なるほどな、と。そんな彼を愛していながら、教授は最後まで観察者であり続けたということなのでしょう。夢見るために、シメールをシメールたらしめるために。うーん何とも言えない哀切。でもそれが心に残る。

    やはり服部作品はおもしろいですね!他の作品も読んでみたい。しかし著者はもう亡くなられているのが残念です。文庫版復刊ありがとうございます。

    0
    2021年04月25日

    Posted by ブクログ

    服部まゆみさんと言えば…憂鬱で含みのある雰囲気から、ゴシック的モチーフを緻密に、絵画のように組み立てる筆致で、『この闇と光』を初めて読んだ時から、読書に疎かった私を「没入」させてくれた、思い入れの深い作家さんになります。
    本作の雰囲気は、いみじくも作中に書かれた通り…『ヴェニスに死す』『ハムレット』『ロリータ』…といった作品群を彷彿とさせるものがあります。画壇の若き秀才、片桐哲哉が、美少年木原聖(翔)の絶対の美を求めんがために生まれてしまった悲劇が、その流麗な筆致により息付く間もなく次々と展開していきます。ラストのぶつ切り感は否めませんが、それでも見事な悲劇であること! シメールというタイトルの意味から、ゲームの構想や様々なシーンに張り巡らされた伏線まで…丁寧でそして勢いがある…服部まゆみさんでなければこうはいきません…。
    さて、まとまらぬ感想はとりあえずこのくらいにして…もう一度最後の節を読みます……うーん、この哀しい勢いと虚しさ! そうそう忘れることはないでしょうね…

    0
    2022年10月09日

    Posted by ブクログ

    こうなる以外はあり得ないなという完璧なオチ。
    美少年に魅せられた男の物語と聞いて、『ヴェニスに死す』を思わずにいられないが、『ヴェニスに死す』では主人公自身に破滅が訪れるのとは対照的に、本作では主人公の想い人である翔(とその家族)が破滅の運命を辿っていく。つまり、まさに主人公の片桐は作中で翔が思い描いた「魔王」そのものである。

    退廃美を描いた至高の作品だった。

    0
    2019年10月24日

    Posted by ブクログ

    美少年に魅せられた男の物語。といっても下心のある感じではなくて、あくまでもその美を愛でる、というような純粋な思いだと感じられるのですが。それでも恋に似た感情なのかも。微笑ましいようにも思えたのだけれど、ぴりぴりと危なっかしい雰囲気が漂う作品です。
    秘密を持った少年、どこかしら歪みを見せる少年の家族、という道具立ても相まって、物語の進み方はとにかく不穏。美しい雰囲気とファンタジックな要素も交えつつ、この生活は絶妙なバランスの上に成り立っている気がしました。だからこそそこに綻びが見え始めた時にどのようになってしまうのか、という危惧が感じられて、それがなんとも言えず不安です。
    そしてこの急激な幕切れ。後に残るのはなんとも言えない読後感……でも最後まで「美しい物語」という印象は消えませんでした。

    0
    2019年05月24日

    Posted by ブクログ

    美しい少年は聖なのか翔なのか?

    少年に魅入られた男の柔らかい傲慢さ。
    関係を端からみしみしと詰めてきて、息苦しいほど。
    少年も男も、欲しい相手の愛情は手に入れられなかった……

    自分で創る物語や、鑑賞してきた絵画や小説に浸る分には、この家は少年にも楽園だったはずなのに。

    男が身勝手極まりないのに紳士すぎて笑える。
    が、彼が評する翔の姿は、うっとりするほど美しかった。それがよけいに残酷に感じる。
    相手をまるで一人の人間として扱っていないようで。
    だからこその美か。

    どうしても大谷亮平さんの顔しか浮かばなくて……
    実写化されることがあったらぜひにw

    0
    2019年03月23日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    面白かったです。
    幻を求めた為に、ひとつの家族を壊してしまうお話。
    主人公のひとりである美術家の片桐が、もう一人の主人公の美しい少年・翔へ向ける、崇拝と所有欲は狂気じみていました。
    翔には双子の兄・聖がいるようですが、巧みな描写でラスト付近までどちらが生きているのかわからずでした。家族は、生きているのは聖だと思い、でも本人は、自分は翔だと答える。この辺りで、翔も少しずつ壊れていっていたのかなと思いました。
    こちらでも、テレヴィ・ゲームが出てきました。でも面白そうなRPGです。
    人々は転落していき、悲劇的な結末を迎えるのも好きでした。片桐はひとり、空洞を抱えて生きていくのかな。それとも、生を失った翔を本当に飾るのか…片桐ならやりかねない、と思いました。
    うっとりする世界でした。「ナジャ」や「さかしま」を読みたくなり、「詩人とミューズの結婚」は検索しました。綺麗な光の画でした。

    0
    2020年02月06日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    登場人物全員が大切な人のために尽くしていたが、その裏で犠牲が生まれていた。

    ゴシックサスペンスは馴染みがなかったので、表紙からは内容を想像できなかった。読み終えてやっと意味がわかった気がする。
    ラストの展開が衝撃的だった。

    0
    2023年12月18日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    子どもの親に対する健気な行動、成長と共に新たな生活も含め、親に対する考え方の変化。それでも、子どもは、どうすることもできず、親が選択したものについていかなければならないという葛藤、現実。
    目の届く範囲にいれば、愚痴も嫉妬も羨望も憐れみも強くなる。そしてお互いが相手をどう思っているか、いたのか浮き彫りになり、強く意識するようになる。
    一人の少年と出会ってしまってからの、男の酔い方。花を愛でるように、手の届かない神をみるように陶酔し、畏れ、悶える。
    シメールをシメールのままにしていれば、この男が行動を起こしたことで、ひとつの家族が、崩壊してしまう話。
    最初はうまく回っていたかのような歯車も徐々におかしな方向に流れていく。

    物語だけでなく、芸術、小説、絵画も知れる作品。

    0
    2022年06月09日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    あぁ美しい・・・この破滅美をどう伝えれば良いのだろう。

    河出文庫様、『罪深き緑の夏』に続き『シメール』の復刊をありがとうございます♪

    『この闇と光』で服部まゆみ先生の美しい世界に魅せられ、手に入った作品を読み漁っているけれど、毎回その期待を裏切られることはなく安心する。


    作品紹介
    満開の桜の下、大学教授の片桐は精霊と見紛う少年に出会う。その美を手に入れたいと願う彼の心は、やがて少年と少年のの家族を壊してゆき――。陶酔と悲痛な狂気が織りなす、極上のゴシック・サスペンス。(河出書房)


    本作にサスペンスの要素はあまりないと思う。様々なことがわりと早い段階で種明かしをされていくし、トリックのようなものもない。

    でも、だからこその、片桐と少年とその家族との薄氷越しの会話や行動が読み手の心を掴んでいくのだと思う。
    片桐は紳士的でありながらも、究極の「美」を求めるその心と行動が、「美」そのものである少年を癒し、そして追い詰めてゆく。

    片桐も、少年の家族もみんな少年を愛しているのに、薄氷の向こうにいる少年にはその愛が届かない。そしてその氷は解けることなく割れる。

    その突然の幕引きに暫し思考が停止した。。。

    ああそうか、という思いに至るまでにかなりの時間を要した。
    そうだね。うん。やっぱり美しいね・・・。

    0
    2019年11月23日

シメール の詳細情報

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