松田青子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレすがすがしいディストピア小説。
「おじさん」による「おじさん」に都合のいい社会。
※この場合の「おじさん」は「家父長制・男尊女卑」を維持しようとする生物のことであり、年長の男性を指して言う言葉ではない
こんな日本に誰がした!という答えにいやいやそんな、と思いながらもそうでもなければこんな風なことがまかり通るのおかしいよねとも変に納得してしまう。
どんな革命が起こり、どんな畳まれ方をしたのか具体的には描かれていないが「きれいに畳まれた」のは確かでそれはほっとする。
家父長文化、ミソジニーが色々書かれ、その象徴としてアイドル文化が出てくる。
アイドル文化を批判しながらそのアイドルに救われるジレンマ。だってそもそも芸能界を牛耳ってるのは「おじさん」たちなわけで。
K-POPの女性アイドルとの比較もアイドルに詳しくないけどわかる。
「アイドルとは愛でるもの」に完全にシフトしたのはいつなのか「アイドルとは憧れるもの」であったはずなのに。ハロプロとK-POP贔屓の友人がいて彼女にとってアイドルは年下であっても「憧れるもの」だったことを思い出す。
男性アイドルも「愛でる」対象として見ている女性も多いがまだやはり「憧れ」成分も女性アイドルに比べれば多い。
作中元アイドルの女性にとどめを刺したのが「ファンとの夢小説(R18)」を送り付けられたことというのがオタクとしては冷や汗ものだが、その後彼女自身二次小説を趣味とするのが二次小説を全部アウトとしているのではなく、一方的な性ファンタジーを『子ども』に受け入れてもらえると思いこんでいるのがやばい。
相手を「愛でる」ために「無垢」「健気」「幼稚さ」を求めるのに「ケア」「許容」は大人としてのものを当然として要求する「おじさん」が作った女のあるべき姿。そりゃ畳むしかないこの世界。
彼女たちが起こす革命、スタンガン、デモ、タメ口は現実の私たちにも手が届きそうだがなかなか難しい。でもどこかで始まりかけているというのがこういう小説の出現がその証拠だと思う -
Posted by ブクログ
p124
「魂は減る。(中略)
魂は永遠にチャージされるものじゃない。理不尽なことや、うまくいかないことがあるたびに、魂は減る。魂は生きていると減る。(中略)
三十年以上生きてきた敬子はもう自分の魂は、どれだけ満タンにチャージしても、残り「82%」ぐらいなんじゃないかと感じる。さっきの××たちのライブでだいぶ充電されたけれど、それだけももう「100%」には戻れない。一体人生のどの段階まで、敬子の充電は「100%」だったのか。」
p138
「望ましい」の枠外に出ることはもちろん自由だったが、その自由には名前があり、ただ大目に見られているだけだった。「まだ若いから奇抜なファッションを楽しんでいられる一過性の時期」だとか「女を捨てたもう終わりの時期」だとか。」
p184
「未熟さ」が熱狂的に受け入れられたということは、この頃の日本では、「未熟さ」を魅力として考える人が多かったからだろうと推察できます。つまり、女の子たちではなく、国そのものが「未熟」だったのです。 -
Posted by ブクログ
短編集。
いくつかの小説に関連性があったり、時々ショートショートより短い一文が挟まったりする。
相変わらず不思議な世界観だが、テンポがいい文章で読みやすい。
以外特に面白かったもの。
・あなたの好きな少女が嫌い
日本のアニメなどを見ていると黒髪ストレートに白ワンピ(もしくは女子学生の制服)が正統派少女像みたいな前提が存在するのを感じる
ポトレ撮影が目的でもなければそんな機能性に欠ける格好をしている女性がいるとは思えないような場面でもそういう格好をした少女が微笑んでいる画が多く、でもこういう少女を好む人たちは“自分を美しく撮影するために装う女”は嫌いなんだろうなぁと思う。
・女が死ぬ
瀕死の重傷を負った女性に行きあった人々。悲劇のヒロインであるその女性になにかしてあげようと声をかけるが、彼女はヴァギナ論を語りだし…
冷蔵庫の女という言葉が登場して久しい。
しかし未だにストーリーに一波乱起こすために男性主人公に試練を与えるために、女性キャラクターが死んだりレイプされたり流産させられたりする。
・男性ならではの感性
ミラーリング。
・履歴書
普通に働いているのに“女の子”としての役割しか求められない女性の履歴書。
「10年働いても、一度もち ゃんと「仕事」だった気がしない。いつもいろんなことがよくわからない。 次の10年も、よくわからない10年だろう。」
・テクノロジーの思い出
人類とともに発展してきたテクノロジー。
並走していると思っているのは人間だけで、テクノロジーは振り返らずに進んでいく。
・反射
物語のしっぽを捕まえるにはタイミングと運が必要
・若い時代と悲しみ
「若い時代と悲しみ」という花言葉を知ってから考えるようになった主人公の独白。たぶんこの花はサクラソウ。
・文脈の死 -
Posted by ブクログ
50もの短編が収められている。
短編だからサクサク読めるかと思いきや、一つ一つが濃厚で、時間をかけて少しずつ読みたい一冊。
全然違うかもしれないけど、芥川龍之介の『侏儒の言葉』を想起した。私たちが普段何気なく過ごしている事柄を言葉に、物語にして提示されることでドキッとする。中にはほんの数行の作品もあるけれど、意味を考えるとクスッと笑ってしまったり、ドキッとさせられたり。
「ハワイ」は3年着られなかったセーターが主人公の話。
世の中でブームの断捨離の裏をかくような内容。
「少年という名のメカ」「あなたが好きな少女が嫌い」「女が死ぬ」などは私たちのジェンダーに対する認知バイアスに思いもよらない角度から攻め入ってくる感じ。「男の感性」も、世の中にある「女」に対する言葉を全部「男」にした作品で、その違和感から、逆に「女」に対する世の中の言及の仕方に疑問を抱かされる。
翻訳家でもある作者の海外映画やドラマへの造詣の深さも垣間見える。歴代ボンドガールが一堂に会して懇親会を行う「ボンド」には笑ってしまうし、私も好きなドラマ「クリミナル・マインド」に登場するDr.スペンサー・リードへの手紙の形式をとった作品もある。
『女が死ぬ』のタイトルとなって文庫化もされているとのこと。でも単行本のタイトルになっている「ワイルドフラワーの見えない1年」もすごく好きな作品。 -
Posted by ブクログ
p.53「何千人と人がいたって、どの階でも同じようなことが話されていて、行われている。構成要素だいたい同じ。」
望む望まない、戦う戦わないに関わらず女性として会社で働くこと。本人が様々な環境で自分らしく考えて化粧をし服を着て、男性と会話をし、仕事をしているとしても、周りがそれを評価し、ラベルを貼っていく。5階でも7階でも11階にも、A山さんもB木さんもC川さんD田さんもいて働いている。
最初は、この没個性的なABCDEのネーミングとエレベーター階の表示、スタッキングの意味がわからず、前衛的な女性論的な本を読んでいると思っていたが、漠然とそれぞれのアルファベットの位置付けと「個性」を感じるにつれて、この小説の試みと良さが分かってきた。
「わたし」は誰だろうか。どういうアルファベットが割り振られる人なのだろうか。
このつぎの「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」の短編がコメディっぽくて女性あるあるで勢いがあって面白かった。