あらすじ
彼女たちを「違う世界」へ連れて行ってくれる魔法、それは――
『スタッキング可能』でわたしたちが〈洗脳〉されている「社会」の「不確定さ・不安定さ」と「個人」の「代替可能性」をシニカルに描いた松田青子が贈る、待望の第2作品集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
好き!!寓話的でありながら、リアルな現代を皮肉る視点が冴え渡っていてとっても面白かった。グローバル化を謳う社会、丁寧すぎる注意書、建前だらけのコミュニケーションなどなどに溢れた世界にどっぷり浸って生きている私の鈍感さと空虚を見透かした著者によって、時に面白おかしく、時に温かくそれらを胸に突き付けられた気分。本当に面白かった。
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元ヨーロッパ企画女優さんの小説集第二段。
現代を生きる一般的な女子目線寄りのシュールな世界観や、ヨーロッパ企画の演劇を思わせるチョイ脱線感のちりばめられ方は相変わらずクセになる◎
特に後半の作品は、この世界観の最後に星新一ばりにハッとなるのがプラス。
松田さんのペンがレベルアップしてるのが素人でもわかるくらいでした。
ちなみに、無数のよしき事件を引き起こした『おにいさんがこわい』、世にも奇妙な物語が好きな人にはオススメです(怖くはないよ笑
Posted by ブクログ
松田青子さんの著書はフィクションでありノンフィクションだ。
それは彼女と私が同世代で、生まれ、育ち、そして働き今に至るまでに共有する感覚、世代間が共通しているからかもしれない。
英子の森にあるように、
私も「英語」が得意で英語ができて、英語ができれば職業選択の自由を得、お金持ちになれると思ってきたけれど、いざ働いてみたら完全ドメスティックな仕事、あれだけ得意で難解な学術論文すら読んでいた自分の英語力は化石となってしまった。
笑えない、苦しい、こんなはずじゃなかったのに、
しかも妊娠出産のキャリアを経て、第一線や出世というキャリアからは完全に遠かった。
葛藤があるからこそ、人は成長するものだと思う。
著書に描かれている他人事のようで紛れもない自分ごとと感じるなにかの世界に触れ、無意識に受けてきた呪詛に気づき、自立してどう生きるのか?
そのきっかけにしたいな、と強く思うのだった。
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節々におもしろさが滲み出てる。笑う。けど、笑えない。
読むのがしんどいです、松田青子さん。
おだやかな気持ちではいさせてくれなくて、読み終わるといつもくたくたです。
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松田青子さんはじめまして。友だちが松田青子めっちゃいい!!と絶賛していたので。名久井直子さんの装丁も素敵。どこかふわふわとしてつかめないおとぎ話みたいでなんかひかれる感じ。『スタッキング可能』を買ってしまった。
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・「英語が使える仕事とそうでない仕事の差が、たったの50円」というのに愕然とし、「英語が話せる仕事」という夢の行く先はこんなもんか、という脱力を感じる場面が特に好き
・小花模様が壁紙からぽろぽろこぼれたり、家が森の中にある、という描写も、若干シュールレアリスチックで、非現実と現実に片足ずつ突っ込んでいる感じが良い
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母親は、娘に期待しすぎて、娘は、思っていた通りにいかないことを、母親のせいしている。
森という幻想の中に、グローバルと言う言葉に振り回されてすがる親娘と社会がより明らかとなる。
やがて彼らは、再生の道を選ぶ。
意図があると思うけど、固有名詞と普通名詞が同時に使われてて、小説として読みにくい。
Posted by ブクログ
簡単に言うと、母娘の自立物語。
なのだが、そこは松田青子作品。独特な世界が存在する。
彼女の作り出す少し不思議な物語は、好き嫌いが分かれるのかもしれない。
言葉の選び方や、清潔感のある文章など、私は好き。
「博士」
「うん?」
「博士のそういうところ、ヘドがでそうです」
「うん?」
「正直ヘドがなにかよくわからないですが、それでもヘドがでそうです」
(『博士と助手』より)
『英子の森』他5作品収録。
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英語の仕事に執着する人々とそれぞれの森、表題作の英子の森
*写真はイメージです、おにいさんがこわい、スカートの上のABC、博士と助手、わたしはお医者さま?
この人の文章って匿名性が強いと言うか顔やキャラが浮かばないんだよなあ。悪い意味でなく。
おにいさんがこわいとわたしはお医者さま?がすきだった。
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私的2013年度ナンバーワンの本は松田青子さんのデビュー作スタッキング可能だったので、二作目はとにかく期待度高く楽しみにしていました。
二作目のこちらも素晴らしい。こう来たかと思わず唸りたくなる面白さ。相変わらず世の中の皮肉を摘み取るのがうまい。実に巧妙。ただスタッキング可能のときよりも幾分難しい、というか分かりづらい。どなたかの解説が読みたいくらい。表題作英子の森がちょっと読み取りづらかったかなー。英語の森? にかけてるのかしら。英語ができたとしても時給にして50円ほどしか変わらないなんとも残酷なんですよ、ってね。
表題作以外は分かりやすいです。なかでも、おにいさんがこわいが好き。
スタッキング可能と比べてこの評価ですがとても面白かったです。誰かの解説を読んだ後にまた読みたい。次回作が今一番楽しみな作家さん。
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星新一を21世紀にしてガーリーにして。「森」を「マンション」や「戸籍」に置き換えたりしてみたけど、やっぱり「森」なんだよね!!高学歴ワープア、母娘関係、現代のリアルな問題なのに、帰る場所は、「森」!!
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取っ付きやすいカテゴリの作品ではないはずなのに、全篇ともするりと楽しく読めてしまった。
もちろんこれは、褒め言葉です。そして個人の感想です。自信と責任を持って発信したい個人の意見です。
「森」が意識のメタファーだなんてことは疾うの昔から知れてることですが、
こんなにシュールでガーリーで、ちょっとばかり毒のあるいい森を作ることは、
言葉について、言語について考え続けてきた人にしかできない高等な言葉遊びでしょう。
もし今度、ちょっと気になる誰かが現れたとしたら、
「今度、うちの森に遊びに来ませんか」と誘ってみたい。
その誘いに応じてくれる人とは仲良くなれそうだ。
Posted by ブクログ
読んだ2014年当時、正に主人公の娘と同じように英語の仕事に固執して、キャリアに悩んでいた。だから「それじゃお守りじゃなくて呪いよ」というフレーズが刺さった。
2022年に再読。今は拘りなく英語に関係ない仕事をしている。
改めて読んでみると、英語が出来ることがアドバンテージのはずなのに、そのせいで派遣の仕事を転々としていることの皮肉が伝わってくる。
また、今更ながら英語への皮肉とは別で親の子供に対する執着についても皮肉られていることに気付いた。
主人公の母は夫や義母のような道を歩んでほしくない一心で娘に英語教育を受けさせているけど、それは「あの人たちのようになってほしくない」が動機であって、娘にどうなってほしいかではない。
もっと言えば娘がどうありたいかという尊重の姿勢に欠ける。
別に英語に限らず、「せっかく就いた仕事だから」「ああはなりたくないから」みたいな理由の動機はお守りじゃなくて呪いに変わり、自分の「森」が腐っていくから気をつけてね、というメッセージを感じる。
難点は主語が「英子」「娘」「わたし」と混ざってり、誰の目線で語られた文章か分かりづらい。(使い分けられているのかもしれないけど、意図は分からなかった)
これ以外に収録されている短編はいまいち印象に残らなかったので星3つ。
Posted by ブクログ
だめだ、こりゃ。私には難しすぎる文学だった。こういう観念的な感じで、書いてあることが浮かんでこないようなやつだと物語の世界にも入っていけないんだよね。こういうのが面白いと思えるようになれるといいのにな。
Posted by ブクログ
収録されている最初の短編「英子の森」は、チープに駆り出される「英語ができる」女たちの苦悩を描き、感情移入するところが多々あった。とてもリズムの良い無駄のない文体で好感が持てた。だけど、「英語エリート」に対する社会的な目を批判的に書くにとどまり、深いところまで潜れていない気がした。娘の「森」と母の「森」を見つける物語なので関係ないっちゃ関係ないのかな。他の短編も、社会の今まであまり触れられてないかゆいところに手が届いて、指先でスクラッチする感じ。かゆみ止めではないし、原因もわからないまま。でも、楽しく読めた。割と好きだった。
Posted by ブクログ
何者にもなれない自分といまも格闘している私にとって、とても共感できるし、どこにも行けない寂しさを感じて、なんだかどこかほっとした。山内マリコと川上弘美を足して割ったような雰囲気の短編集。
ほかの作品も、日常に感じる違和感が共感たっぷりに描かれている。ありきたりの言葉で語ることによって、却って何かの可能性を失ってしまうむなしさ。なんかみたことある言葉で、なんとなくまとめてしまうことは、結局なにも語っていないんだよね。このレビューにしたってそう。私は本のレビューなんて結局書いていないんだ。
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何かに気づくと、気になってしまって仕方がない。
スルーできない、突き詰めたところで、また、
次の事が気にかかる。決して終わらない世界。
さぁ今日も自分の森のなかに逃げ込むとします。
Posted by ブクログ
魅力的な装丁に一目惚れ。
しかしまあ、なんとも独特な世界観。
今まであまり触れたことのない不思議な物語だったけれど、
こんな視点でこんな風に書く人がいたんだ、と新鮮に読めた。
ちょっぴりダークでほんのりシニカル。
普段読む本とは何かが違い、違和感みたいなものを感じたけれど、これはこれで悪くない違和感。
だからこそ面白い。
Posted by ブクログ
短編集6編。
「わたしはお医者さま?」の職業が、私もこれならやりたいという風でとても面白かった。どれも切り口が斬新で、ある意味実験小説的な感じもした。
Posted by ブクログ
痛い小説だ。いやいや作品が痛いんじゃなくて痛いのは私。
うーん、刺さるなぁ。痛すぎますよ・・・。
自分のことを言われているようで逃げたくなった。
多分ね、日本中に英子のドッペルゲンガーがうようよしている。
私もその中の一人。
英語ができない人から見たら英語ができる人と英語の出来ない人の二種類しかいないのだろう。でもね、英語ができる人(と認めたうえで)の中でも歴然としたヒエラルキーが存在するのよね。
ああやっぱりね、作者は英文科卒か。だから分かるのよね。そうよねー。
英子はやっと翻訳の仕事についたところ。
これからも先が長いのよ、なーんておせっかいか。
「翻訳の仕事やってます!」って胸を張って言える日が来ると良いよね。
私は・・・、無理だな(笑)
肝心なレビュー!!
表題作は割と長いけれど、6つの短編をまとめた本作。
実験的と言うか空想的と言うか不思議な作品が多かった。
これは小説じゃなくて散文でしょと思われる作品もあったり。
でも作者の独特の感性が光ってる。ちょっと他では読めない感覚が心地いい。
全作品を通して楽しめました。
小説家として今後どうなるかは未知数だとは思うけど、これは大化けするんじゃないかな。非常に楽しみです。
Posted by ブクログ
媚びない文章だから好きなんだけどスタッキング可能でじわじわ来た感じほど来なかった。コンセプチュアルアートのように感じた。そういうやりかたもあるんだな、と。何度か読めばまた違うんだろうな。最後の作品はやりたい仕事って自分で作っちゃえばいいんだと作品の中の人と同じ感覚でわくわくしながら改めて発見した。もっとはやくに気づいていたら…。
Posted by ブクログ
カオス文学である。
妄想広がる部分ととても現実的な内容が共存しながら進み、その境目が非常に曖昧というか溶け合っている。
川上弘美ともこういうタイプなのだろうか(数冊しか読んだ記憶がないからわからないが)。
私は地に足ついた話が好きなのと、
導入部がハマらないと楽しめないので苦手なタイプだった。
表題作の『英子の森』が80ページ程度の短編で、他は20ページ程度の掌編。
『英子の森』
英語を習得すれば人生はうまくいくという教育のもと英語だけをひたすら頑張ってきた主人公の英子。
だが英語を使う仕事とは言っても地味で退屈、しかも英語ができない人と時給もほとんど変わらない現実を疑問に感じ始める。
英子のバイト生活はリアルなのだが、タイトルにもなっている”森”が唐突に出てくる。
英子を始めとする登場人物はみんな自分の森を持っていて、英子は母の価値観を反映した森に住んでいる。
英語と自分の関係を見つめなおすことと、母の支配から脱却することを森に喩えているのだろう。
テーマは分かったが、森の部分がどうもしっくりこなかった。
Posted by ブクログ
短編集で、作品の完成度はまちまちな印象だけど、私は著者の感性が好き。
表題作も、他にとりえもないから、唯一他人よりできる(といってもほんの少し)英語に縋って「知的でグローバルな私」という幻影に生きる自立できないフリーターを描いてはいるけれど、実際に結構な数存在するそういった人々を嘲笑しているわけではない。彼らの立場に立って悲哀を描いている。情に溺れずに。そして、そんな仕事をしている娘を生きがいに生きる母親も描き、ちゃんと救いがあるところが良い。
表題作が一番面白かったが、「*写真はイメージです」「博士と助手」も良かった。この人、詩を書いてもいいかもしれないなと思った。
これからも期待したい作家です。