大田直子の作品一覧
「大田直子」の「善と悪の生物学」「におい 脳を支配する究極の感覚」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「大田直子」の「善と悪の生物学」「におい 脳を支配する究極の感覚」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
東京大学文学部社会心理学科卒。『繁栄』(マット・リドレー)、『隠れていた宇宙』(ブライアン・グリーン)、『音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』(オリヴァー・サックス)などの翻訳を手がける。
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Posted by ブクログ
著者がもともと携帯端末Palmの開発者であったこともあり、人工知能に関するトピックも扱われているが、興味深いのは、やはり新しい脳理論について述べた第1部である。
著者の設立したヌメンタ社における研究によれば、脳の新皮質は「皮質コラム」と呼ばれるニューロンの塊を一つの単位として働いている。
そして、それぞれの皮質コラム(計15万個!)は、構造的には同等のものであって、しかも共通のアルゴリズムに従って働いている。
もっとも、皮質コラムは場所によって異なる役割(例えば視覚を担当するか触覚を担当するか)を持っており、役割の異なる皮質コラムが組み合わさって認識や思考が形成されている。
また、著者は、皮質コラムの本質的な機能は、モデル化及び予測であるという。
「停止しているエスカレータ」を上り下りする際の経験を思い出すと、これが腑に落ちる。
エスカレータが停止していることは明確に認識しているのに、最初のステップに足を乗せる時の体重移動は、どうしても動いているエスカレータのステップに乗る時と同様になってしまう。
これは、脳が「エスカレータに乗る時の身体の動き」をモデル化しており、「エスカレータに乗ること」を予測すると、それが停止している時でもそのモデルに従った動きをするよう、脳が身体に指令を出しているからだろう(なお、本書によれば、新皮質は直接的に「指令」を出すのではなく、まずは古い脳に「依頼」を出すのだという。)。
脳の構造という点からもう一つ重要なのは、主に生命維持や情動を掌る「古い脳」(旧皮質)と、知的機能を担う「新しい脳」(新皮質)の区別である。
人は「古い脳」なしには生きていけないが、著者は「古い脳」のために人類が滅亡してしまう可能性があるとも主張している。
本書では、例えば外国人に対する排外的な行動も「古い脳」による本能的なものと説明されており、昨今の国際/国内情勢を見ていると、「古い脳」が世界を滅ぼすこともあり得ない話ではないと思えてくる。
Posted by ブクログ
「じん・ましん」ですか? かゆくなるやつ?
そんなじゃありませ~ん! 表紙の画像よく見て!
色つき「パスタ」うにゅうにゅ、これ「リボソーム」ですから!
はい! この本はリボソームのパーツの立体構造と動き方を調べて2009年にノーベル化学賞を受賞されたヴェンカトラマン・”ヴェンキ”・ラマクリシュナンさん(ヴェンキさん)の「自伝的科学エッセイ」です。
ヴェンキさんが、インドの大学を卒業してアメリカに渡り、のちにノーベル賞を受賞するまでをユーモラスに、そして、率直に語っています。
たいへんおもしろかったです!
この本、まず巻末の「解説」から読まれることをおすすめします。リボソームが何かを説明してあります。
リボソームは、細胞のなかの分子です。遺伝情報から、エネルギーを使って、タンパク質を合成する「分子マシン」です。
水分を除いた細胞の「乾物」だと、重さの30%がリボソーム。だから、細胞の中にたくさんあります。その数、6~7万個!
水分70%の肉100gだと9gくらいあるのかな?
わたし、ぜんぜん意識せずに「リボソーム」めちゃめちゃ食べてました!
リボソーム、細胞のなかの分子としては最大の大きさ、でも細胞と比べると、めっちゃ小さいです。
そして「大」と「小」のふたつにわかれます。両方とも「RNA」と「タンパク質」でできています。でも、太古の昔はRNAだけだったとか。
RNAって、情報を運べるし、化学反応も起こせるすごいやつ、「生命のはじまり」とも関係しているようです。そんなRNAとタンパク質をつなぐリボソーム、超重要分子です。
ヴェンキさんは、そんなリボソームのちっちゃい方の立体構造を明らかにしました。
この「立体構造を明らか」って、つまるところ人間の目でみてわかるようにすることです。
つくづく思います、人って目で見てわかることが、何かを理解するのに重要なんですね。当時難しかったとはいえ、ノーベル賞級の仕事になるんですから。
この本のおもしろさは、ヴェンキさんのノーベル賞にいたるまでのストーリーです。
もともとヴェンキさんは理論物理学のひとです。それが、アメリカで物理の博士号をとってからの生物学への転向です。ゼロからのスタートです。
生物学に転向してから読んだ『サイエンティフィック・アメリカン』でリボソームに出会います。そこから、どんどん追いかけます。
ヴェンキさんはとても優秀ですが、超天才とかではない感じ。スターじゃない、常識ある普通っぽいひとが、ゼロからはじめてノーベル賞にたどり着くのが痛快でした。
自分を成長させるために研究拠点を変える決断、自分にもチャンスがあると思ったら研究レースに飛び込む勇気、とってもよかったです。
生体の高分子のお話なので、とくに役立つ情報はないのですが、ひとつお役立ち情報ありました!
わたし、血液検査のたんびにマグネシウムやタンパク質不足を指摘されていますが、リボソームさんもマグネシウム不足にもろ影響をうけるみたいです。
リボソームさんにタンパク質をせっせと作ってもらうため、もっとマグネシウムとらなきゃと思いました!
Posted by ブクログ
脳に関して現在分かっているしくみを学べた。
脳は知識や経験を座標で蓄積するんだ!
ノートや辞書のように並べてるんじゃないんですね…
そして脳内にモデルを作り、それを基に予測しながら世界を見ているというのも驚いた。脳の予測と違うことが起きると誤りに注意を向けて脳内モデルを更新する。
日常の慣れきった行動は(脳内予測と同じなので)無意識に行うが、何かちょっとした違和感を感じるとそちらに意識が向く、というのはのその予測モデルから外れるせいなのか!
また先ほどの座標の話も、たまたまXで「育児疲れで義実家で爆睡後起きた母親が『私は今学生?就活してるんだっけ?あ、子供を産んで育児中だった…』と一瞬自分の時空を見失った話」を読み、ああこれは疲労などで脳内で座標の混乱が起きたせいで脳が時空を含めた現在軸を一瞬見失った話だったのか!と合点がいった。
記憶喪失とかもそうなんだろうな。
言葉は理解できるし、身体機能も問題ないし、常識も覚えているのにある記憶だけ抜け落ちたり混乱したりするのは、その記憶に関する座標がうまく機能しなくなっているせいなのだろう。
また古い脳と哺乳類だけにある新しい脳(新皮質)の違いも分かった。
人間の筋肉などの身体機能は古い脳でしか制御できず、知能を担う新皮質は直接筋肉に作用することはない。
また、我々の行動を導く「感情」というものは古い脳から生まれる。
人間の行動は「感情」から生まれ、古い脳が攻撃的なら攻撃行動をうまく行うために新皮質のモデルを使用し、古い脳が情け深い人なら新皮質のモデルを情け深い目標を達成するために使う、とも。
つまり新皮質や知性それ自体には目標はなく、古い脳が自らの目標を達成させるためにそれらをうまく使っていると。
そういえば私は学生の頃人前に出る、発表するというのがとても苦手で、自分の順番が近づいてくると、勝手に心臓がバクバクと激しく動悸し顔には血が上り、声が震えてどうしようもなくて、頭のなかでは大したことないから落ち着きたいとどんなに思っていても体の反応が頭と逆だった。それは古い脳が「ほかの人間」「人前」を評価してくる敵と認定していて、血流と心拍数を上げて戦闘態勢と恐怖の心理作用を起こしてたんだな…新皮質(知能)は古い脳を制御できないし、つまり身体機能も制御出来ないので、だからいくら落ち着けと心で思ってもだめだったんだな、と理解できた。
(こういう場合はいくら言葉や頭のなかで言い聞かせても身体反応を制御できないので、同じように身体的な行動である深呼吸などが大いに効くらしい。気休めじゃなかったんだ…)
後半はAIの話。
機械の知性と意識について。
AIには人間と同じような自己更新できる知性ある新皮質のような脳が必要だ。AIは意識は持つだろうが人間の古い脳のような死への恐怖や悲しみといった要素は不要なのでそれをわざわざセットすることはないという前提で、感情はないだろうとも。
後半ではAIの話と並行して、人間は古い脳によって感情を支配されているのでせっかくのテクノロジーを誤った信念を持つ人たちに悪用されやすく、滅亡の可能性を捨てきれないと言った重点を置く。
ただ著者は古い脳に対する新しい脳(知能)の勝利を希望してやまない、ハッピーエンド志向で終わらせているのが、警告はあるものの恐怖を煽らない良いまとめ方で良かった。
Posted by ブクログ
原著は2018年刊。ヴェンカトマラン・ラマクリシュナンの研究自伝。
1952年インド生まれ。細胞のタンパク質工場「リボソーム」の構造と機能の解明で、2009年ノーベル化学賞を受賞。
生い立ちから始まるわけではない。インドで物理学を学んだことも出てこない。アメリカに渡り、UCSDの大学院で生物学、ポスドクとしてイエールでリボソームの研究に入り込んでゆくところから始まる。1980年代、90年代、構造生物学が輝いていた時代、その熱気と活気と興奮が描かれている。
プロローグから引き込まれる。1980年、イエールの掲示板で見た講演会を聞きに行く。聴衆はわずか。質問はほとんど出なかった。だが、研究内容がすごいことだけはわかった。講演者はベルリンのマックス・プランクのアダ・ヨナット。その29年後、ふたりは同じ授賞式の席にいた。
第3章、リボソームの可視化の歴史の記述はみごと。専門外の者にもよくわかる。
訳文はよどみなく読める、おお、なんという幸せ!