あらすじ
高知の山深く、平家の落人伝説が残る蝶ヶ谷村。土砂崩れで密室と化した村の一夜に起こる殺人と自殺。大学の後輩全家美鳥を訪ねてきた桑原崇と奈々たちも事件に巻き込まれるが、その最中、維新の英雄・坂本龍馬暗殺の黒幕を明かす手紙の存在を知る。因習に満ちた山村と幕末の京都を結ぶ謎に挑む崇の推理は!?
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Posted by ブクログ
もはや竜馬の暗殺の謎と、奈々たちが巻き込まれる事件との関係はほぼない。
なんなら殺人事件がなくたって成り立ちそうな、つまり人は死ななくても山奥で孤立した夜に、竜馬の暗殺についての個々の推察を述べるだけで話は成り立ってしまうレベル。
無理に殺人事件と絡めてしまったため、竜馬暗殺の謎といつものスサノオとかの神話レベルの謎の二本立てになってしまった。
これは明らかに別建ての謎であろう。
ただ、竜馬の暗殺に絡んで、幕末のいろんな史料をもとにした黒幕の説が列挙されたのは楽しかった。
私も作者と同じく、吉田松陰の考えた維新の姿と実際の維新では、天と地ほどの隔たりがあると思っている。
で、西郷隆盛については、作者と考えを異にする。
勝海舟教の熱烈な信者としては、勝先生が見込んだ西郷隆盛が、ことほどかように手の込んだ後ろ暗いことをやるとは思えんのだ。
竜馬暗殺の実行が見廻組だとして、黒幕が薩摩藩だとしたら、それは大久保利通なんじゃないの?
彼なら、裏でコソコソ陰謀をめぐらした挙げ句に西郷隆盛に押し付けることぐらいはやりそうじゃん。
公武合体派の先頭にいた島津斉彬に心から慕い従っていた西郷隆盛が、いつどこで幕府許すまじの急先鋒になったのか、いろいろ調べてもよくわからないのだが、、今私が考えているのは、江戸幕府の在り方よりも、徳川慶喜個人を許せなかったのではないかということ。
どうも幕府撲滅よりも、慶喜を亡き者にするために動いていたのではないか。
革命は血で贖うようなことを言っていたけれど、それは他人に血を流せと言っているのではなく、その覚悟で行えと言っているだけで、西郷隆盛が新徴組、引いては庄内藩を全滅させるのではなく、維新後も交流を持って海外留学の支援なども行っているのを見ると、やっぱり彼は懐の大きな人物であると思える。
だから、トップに立つ覚悟の見えない、腰の据わらない徳川慶喜を戴くことだけはできないと思い定めたのではないかと思うのだけど。
でもそうすると、江戸を火の海にしてもかまわんという姿勢はどうなのよ、という謎の答えは出てこないが。
閑話休題。
この先のシリーズを、大和朝廷以降の隠された黒歴史を暴いていくシンプルなつくりにするのか、もう少し現実の事件との関りを濃密にするかしないと、今作はシリーズの本筋の方が添え物的になっていて、龍馬にすっかり持っていかれた気がするわ。
Posted by ブクログ
久しぶりにQEDシリーズ。
今回のテーマは龍馬暗殺。
龍馬暗殺犯については新撰組説とか、薩摩藩説とか、
いろいろな説があるけど、実行犯と黒幕を分けて考えると
意外にわかりやすいなって思った。
個人的には、昔何かで読んだ大久保利通説が有力だと思ってたけど、
本書には大久保は出てこない。
まあ、薩摩藩ってとこは一致してるんだけど。。。
龍馬暗殺のもうひとつの謎である、
拳銃をもっていた龍馬がなぜ簡単に斬られたのか?
についての解答はなかなか説得力があったな。
昔、司馬遼太郎の「龍馬がゆく」を読んだとき、美化し過ぎだなって
思ったけど、やっぱり魅力のある人物ではあるな。