【感想・ネタバレ】非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークVIIIのレビュー

あらすじ

日雇い派遣で食いつなぐフリーターのサトシが、寝泊りするのはネットカフェ。夢は、脚を伸ばして夜眠ること、そして医者にかかること。そんなサトシが悪徳人材派遣会社に立ち向かう決意をしてユニオンのメンバーになった途端、何者かに襲われて膝を壊された。仲間のメンバーにも次々に襲撃が。「今のぼくの生活は、ぼくの責任」と言い切る彼をマコトもGボーイズも放っておけず、巨大派遣会社に立ち向かうことに。表題作他3篇収録。大好評IWGPシリーズ第8弾!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

活字欲を満たしながらコミックを読むくらいするすると楽しい話が読めるので重宝しているシリーズ。でもビターエンドで終わる話とか社会問題に切り込む話とかも好き。表題の話は後者の方。2007年に書かれた話でも日雇労働者の問題ってまだ大きくて、でも2024年になっても見えないけれどそんな状況に置かれた人はきっといるはずなのかなと考えた。考えるだけ。

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2024年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

社会の弱者の話で、今から約十年ほど前に書かれた話なのに、当時より今の方が切迫した状況にあるのかもしれないと思いました。

 『千川フォールアウト・マザー』はシングルで子どもを育てている若い母親がコンサートに行っている間に、運悪く、一人で留守番していた3歳の子供が3階のバルコニーから転落してしまう話。
一人で仕事と子育てを頑張ってきた若い母親ユイが、友達から大好きなアーティストのコンサートに誘われ、行きたいと言う。その間、3歳の子どものことをマコトに見てもらいたいと頼みに来たのだが、マコトもその日は取材があって駄目だった。
どうしても行きたかったユイは子どもの食事を用意し、お昼寝をしている間に出かけてしまったのだが…。

 そのことが新聞にのり、ユイは世間から非難されてしまいます。二年間休まず仕事と子育てを頑張ってきたのに、たった一日の息抜きさえ贅沢と言われる、胸が痛みます。
 弱った彼女の心につけこむ悪い男。それを撃退したのがマコトの母親です。ユイが身も心も崖っぷちなのをみて、「だったら子どもを捨てな」と言う。捨てると言っても一時期涙を呑んで子どもを施設に預け、生活を立て直してから引き取りなさい、ということらしい。
 マコトの母親も一時期そうしたことがあったようです。それでも、ちゃんと人の役に立つ男に育っているマコトを頼もしく思い、自分の子育てに安堵していることでしょう。なんだかんだと言いたいことを言い合える親子っていいですよね。
 ユイが一日も早く子どもを引き取り、幸せに暮らせるようになってくれればよいなぁと思います。

 表題作『非正規レジスタンス』も弱者、派遣労働者の話でした。
足を伸ばして寝ることが出来ず、大切な持ち物はコインロッカーに預けて、日々の派遣労働で何とか生活している、地方から出てきた若者。保険証がないので病気になっても病院に行けない。職場で怪我をしても派遣先が労災を使ってくれない。
 そんな労働条件を何とか改善しようというフリーターズユニオンがあるのだが、それに加入している者が次々と襲われてしまう。マコトが知り合ったサトシも襲われて怪我をしてしまった。
 サトシのためにも大手派遣会社と闘う決意をしたマコト…。

 地方から出てきた者が安定した生活をするためには、やはり安定した収入(職)がないと厳しいと思います。
ですが、なかなか正社員での採用が難しい今の状況では、普通の生活すらも夢なのかもしれません。

なんだか切なくなる話でした。

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2016年04月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回は同じくらいの長さの短編が4作。
シングルマザーが置かれている過酷な状況「千川フォールアウト・マザー」
集まってボランティアで街のゴミ拾いをする若者たち「池袋クリンナップス」
別れた彼から、恥ずかしい写真をネタに脅迫される「定年ブルドック」
そして表題作「非正規レジスタンス」

最初と最後の作品が、奇しくも社会の底辺から這い上がれない若者たちの姿を描く。

シングルで子どもを育てるのに必要な保育園が足りない。
だから夜子どもがが寝ている間に必死で働き、昼間は家事と育児で毎日が過ぎていく。
身も心も疲れ切ったなかで、ちょっとだけ息抜きをしたその時子どもがけがをしてしまう。
「鬼母」「親の資格なし」と、世間から責められる毎日。

困った時にちょっと手を貸してくれる人、話を聞いてくれる人がいたなら、耐えられたかもしれない。
一人で全てを抱えるには、母親だって余りにも若すぎる。

今回はマコトの母親が活躍した。
「そんなに大変なら子どもをを捨てろ」
一度施設に預かってもらって、生活を立て直してから迎えに来ればいいと、ケースワーカーを紹介する。
この解決が必ずしも正しいのかはわからないけれど、ひとりで悩んでいても解決できないのなら、誰かを頼っていいと私も思う。
手助けもしないで「かくあるべし」と糾弾する権利は、誰にもないと思うし。

そして「非正規レジスタンス」
フリー他なんてやっているのは、怠け者だからだ。というのはもう、正しくはない。
一生懸命勉強していい大学に入ったって、就職できない人が大勢いるのが現状なのだ。
そして就職したはいいけれど、サービス残業、長時間労働で疲れ切り、大人としての判断力さえ奪われている人たち。
気が付いたら底辺に押しやられ、這い上がることはほぼできない。

“職業を斡旋する際には、厚生労働省令で手数料の上限が決められているんだ。上限でも10.5パーセントなんだ。それも月給の半年分のね。でも、日雇い派遣にはマージンの上限がまだ決められていない。”(作品中、サトシは4割のマージンを取られている)

“明日が今日よりも貧しくなる。子どもが親よりも乏しい選択しか与えられない。サトシのようにまじめに働く若いやつが、じりじりと格差のどん底に滑り落ちていく。それはこの六十年間で、俺たちに初めて起きている事態だった。”

“おれは日雇い派遣の裏側にある真実が、ようやくわかってきた。ここには誰ひとり責任を取る人間がいないのだ。すべての責任は使い捨てにされるフリーターにある。無限の自己責任。”

最初から就職できず、または体を壊して会社を辞めて、またはリストラされて、一度はみだしてしまえば二度と戻ることは出来ない一般社会という囲い。
崖っぷちを歩いている人は、いつ何時何があって崖から転落するかわからない。
そしてその可能性は、誰にでもある。

そんなリアルな世の中の仕組みを、改めて突き付けられた。

ところで、マコトがボランティアで街のゴミ拾いをするとしても、タカシは絶対にやらないと思う。
タカシはやらない。
ただ、空き缶やたばこの吸い殻をポイ捨てするやつを見つけたら、フルボッコだ。
池袋のキングだからね。

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2016年02月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シリーズ8作目

「千川フォールアウト・マザー」はいいお話し♪
マコトのお母さんはカッコイイ(≧▽≦)

「非正規レジスタンス」は考えさせられる…
私は「自己責任」って言葉がキライ。
本当に責任を負うべき人の言い訳に聞こえるから。
もちろん、本人が負うべき責任もあるだろうけど、最近は過剰に個人が責められてるような気がする。
人は自分の生活が安定していなければ、他のことはすべて二の次になってしまうのは当然だ。
それが「自己責任」というツマラナイ言葉で片付けられているうちは決して世の中は良くならないだろうな。
本当に本当にそれは「自己責任」ですか?

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2015年09月04日

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