Posted by ブクログ
2020年11月19日
結果的に長く続いているシリーズの「原点」ということになる。この「原点」の好さが発信され続けている訳である。
手にした文庫本の奥付を視れば「2020年10月5日 第36刷」とある。その上に「2001年7月10日 第1刷」である。作品は1998年に初登場し、2001年に文庫本になっている訳だが、以降の2...続きを読む0年間弱で「36刷」というのは、最早或る種の“古典”である。
この最早或る種の“古典”という様相の第1作から、既に「一冊に4篇」という体裁になっている。
この一冊には…“援助交際”で関係した若い女の「首を絞める」という妙な性癖の男が現れたと話題になっていた最中に、女子高生が死亡するという事件が発生し、男の正体を暴いて女子高生の死の真相を明らかにしようという一件…関係者の間で“姫”と通称されていたヤクザの組長の娘が行方を眩ませてしまったことから、何とか探し出そうとする一件…風俗嬢と交際していたイラン人が、風俗嬢が使ってしまっていた麻薬の件で激怒し、売人とモノを卸している暴力団員との取引現場を襲撃してしまい、「何とか件のイラン人を匿いたい」という切っ掛けで、池袋に進出しようとしていた売人の一味をはめようとする一件…池袋で最大のストリートギャングである<Gボーイズ>に対して、新興の<レッドエンジェルズ>が在ったのだが、どういう訳か“シヴィルウォー”(内戦)と呼ばれる事態に陥り、両者が争って様々な問題が発生していたが、それを何とか収拾しようとする一件…という4篇が収まっている。
本作はシリーズの第1作だが、後々のシリーズで主人公のマコトが見せる種々のクラシック音楽を聴く趣味、ストリートファッションの雑誌でコラムを連載するようになったこと等の、契機になるような出来事が出て来る。近年の作品から最初期の作品へ遡るように読み進めて来たので、そういう辺りに酷く納得していた。
市井の若者が出くわす様々な出来事、その関係者達、時に関係者達との色々な意味での交流、やがてハッピーエンドともその限りとも言い悪いかもしれない結び。作品が発表された時代の様々な様子を巧みに取り込みながら展開する物語である。敢えて申し上げると「少年漫画?」というような感も在るのかもしれない。とにかく愉しい。
別段に用事も無く、この作品の時期と様子も変わっていることも承知しているが、「ウエストゲートパーク」こと池袋西口公園という場所に、何となく寄ってみたくもなる。今後も、このシリーズの関係作品を眼に留めれば、親しんでみたいと思う。