伊藤邦武のレビュー一覧

  • プラグマティズム入門

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    デカルトに端を発した「我」あるなし論争は、ヘーゲルの他者による精神発展論(1)、キルケゴールのシーソー論(2)、ラカンの鏡像段階理論(3)など多くの哲学者の主題の一つであり続けた。また、「認識」については、カントを乗り越えたフッサールの対象確信論(4)が現象学の扉を開いた。
    プラグマティズムもまた、概ねこれらの問題を主題としたものであることがこのほど明らかになったのである。

    パース曰く、先入観が払拭できない以上、普遍的懐疑は不可能である。(5)そして、人間の認識とは、人々による記号による学び合い(議論)の過程に参加することである。(5)認識なるものの概念の根底が覆ったとき、「真理」をどう位置

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    2025年11月20日
  • プラグマティズム入門

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    ローティの『100分de名著』をきっかけに興味を持ち、読み始めた。
    プラグマティズムは、絶対的な知識の存在を前提とせず、改訂可能性をもつ可謬的な知識から出発し、探究を通じて新たな知識を獲得していく立場だと理解した。その際の「客観性」への考え方には思想家ごとに幅があり、科学的な手続きを通じて客観性を担保しようとする立場もあれば、真理や客観性そのものを措定せず、知識をコミュニティ内の合意として捉える立場もある。

    特に「科学的手続きによる調停」という考え方には、ビジネスにおける意思決定のプロセスとの共通点を感じた。パースが述べるように、科学的探究は複数の異なる推論を行き来しながら、より確からしいも

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    2025年10月16日
  • 宇宙の哲学

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    ルネサンス以降近代科学が勃興してから現代のビッグバン宇宙論に至るまでの流れを、科学と哲学の共同作業という観点で追っていく好奇心唆られる著作
    デカルトやパスカル、カントの宇宙論は勿論、ニュートンら科学者の宇宙論も概観できて面白かった

    第1講から第6講まで名だたる科学者や哲学者が交代しつつ進んでいって、近代という時代は皆が「コスモロジーの自立」に向かって手を取り合っていたんだと思うと熱くなる
    カントの理論を敷衍したパースら論理学者の理論も興味深かった
    解説も、理論物理学者の補足があったりとワクワクさせられた

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    2025年01月02日
  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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    哲学とは歴史である。そのことがよくわかる本だった。本書は、哲学史を一つの物語として語った本だ。歴史といっても、実際にはさまざまな細部があり、すべてを詳細に記述することはできない。本書が考える哲学史の展開のストーリーは、「魂の哲学」から「意識の哲学」、「言語の哲学」を経て、「生命の哲学」に向かっていく。
    ある思想がどのように生まれ、どのように否定されるのか、ある人物はなぜこのような主張をしたのか、そして私たちは今なぜこのように考えているのか、などのことがわかるようになる。これまでの思想の全体像を理解したい人におすすめの本だ。

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    2023年09月24日
  • プラグマティズム入門

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    プラグマティストの思想の変遷を辿れる。
    ただプラグマティズムの本を読んだことない人は他の入門を当たった上で、戻ってくるのがいいかも。ちょいむず。

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    2023年03月30日
  • プラグマティズム入門

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    プラグマティズムとは何かが、各時代の人物とともに分かりやすい書いてあった。
    内容が濃いのでメモをとって頭を整理しながら読んだ。

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    2023年03月11日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    中世Ⅰ

    古代で3つの枢軸であった3つの文化がついにユーラシア大陸の両端に達するのが中世である

    冒頭に世界哲学史として、中世の特徴を俯瞰する
    ①民族の大規模な移動と侵入が世界を動かした時代(旅人の時代といっている)
    ②古典を形成するのではなく、古典を継承し、それに対する註解を蓄積する時代。
    ③思想の伝達と交換をする時代
    ④神と人間の対立⇒神の人間からの超越


    ギリシア文化⇒ローマへ⇒(アカデミア→修道院、学校へ)西欧へ
          ⇒東方(ビサンチン)へ:コンスタンチノープル、東欧へ
          ⇒イスラム世界へ(シリア語→アラビア語)⇒再びヨーロッパへ

    インド文化(仏教)⇒中国⇒日本へ

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    2022年10月27日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    啓蒙の時代を経て発展した「理性と自由」の対立構造が、19世紀に向けてどのように展開されていったかを論じている。
    「自由」の種類、新世界で生まれたプラグマティズム、スピリチュアリスムに焦点。
    功利主義も。

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    2022年03月19日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    17〜18世紀を主な舞台に、「啓蒙」にまつわる思想を展開している。「理性」と「感情」の問題は通奏低音で、現代にも続く議論の背景が丁寧にまとめられている。

    カントの批判哲学を扱った章は特にわかりやすかった。

    終盤、中国、日本に目を向け、「儒学」「朱子学」を起点に感情論を展開した点は、読者の思想につながるいい構成だった。

    ところどころで垣間見えた現代における「理性・感情」にまつわる議論を追ってみたい。

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    2022年02月11日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    哲学=西欧哲学という常識を塗り替え、アジアやアフリカなどを含めた世界哲学の体系化を試みるという壮大な理念を掲げたシリーズである。
    一巻ではメソポタミア文明からヘレニズム時代を扱う。メソポタミア文明を哲学史に組み入れること自体がすでに世界哲学への第一歩であり、その内容も大変興味深かった。
    一点気になったのが、9章と10章の内容の矛盾である。9章ではヘレニズム時代にギリシャ人とインド人が出会ったエピソードを世界哲学の導入にはならないと切り捨てているが、10章ではそのエピソードを丸々取り扱っている。章ごとに作者が異なることに起因した矛盾であろう。
    世界哲学を体系化しようという試みの中でこのような齟齬

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    2021年10月28日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    第四巻は13世紀を舞台とした思想群が紹介されている。歴史の流れとして12世紀は成長の時代(騎士道精神、大恋愛)、13世紀は西洋中世の最盛である。本書の目的は哲学の流れはそこに呼応しているのか解明するところにある。際して、都市の発達、商業の成長、教育と大学の発達、托鉢修道会の成功などが論じられ、日本においての大思想家の誕生などまで様々なことが論じられている。中でも「存在と本質」、「普遍論争」に関してはとても興味深かった。
    そこで簡単にまとめてみようと思う。
    存在と本質
    存在はesseとexsistentiaの二つがありそれは明確に区別されている。本質は形相としてそれをそれたらしめているものであり

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    2021年09月08日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    第一巻目がとても面白かったので、楽しみにして読んだ。結果、第二巻もとても面白く読めた。

    第二巻目は古代から古代末までの世界の哲学を取り上げている。今から2000年も前の世界だ。特に、ギリシアの哲学者やその世界観、アウグスティヌスの自由意志、内的超越の話は印象に残っている。仏教や中国哲学、ペルシア哲学(ゾロアスター教、マニ教)の話は、とても難しかった。というのも、それらの章は本の中盤に位置しているのだが、それらの考え方に対して慣れ親しんでいない上にそれらの話がすごいスピードでスイッチするためである。とても頭が疲れたが、マニ教の話はあとの章のアウグスティヌスの話に繋がってくるし、仏教世界が綺麗に

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    2021年08月12日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    キリスト教や仏教、マニ教やゾロアスター教などの宗教も取り上げられる。各地様々な思想が入り乱れる様子を見て取ることができる。

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    2021年07月04日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    ヨーロッパ中心の哲学史を、全世界の多面的な視点から捉えなおすことを試みた8巻シリーズの第1巻。それぞれの章末には関連する参考資料の紹介もあり、興味を深められそう。特に、ソクラテスの「不知の自覚」にまつわる記述には深く頷ける。

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    2021年05月09日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    哲学初心者には少し難しいが西洋哲学一辺倒ではなくアジアや他地域にも目をむけているのが興味深いので続けて読んでみたい。

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    2020年11月28日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    ちくま新書の世界哲学史シリーズ第2巻。古代哲学の後半を扱う本書では、キリスト教、仏教、儒教等、後に世界宗教へと発展していく各宗教の展開が扱われる。新書だからと侮るなかれ。いずれの論考も高度な内容で、読みこなすのはなかなかに骨が折れる。でもそれだけに知的刺激をビリビリと受けることができる。

    本書を読みつつ、先日読み終えた『天才・富永仲基』(釈徹宗・著)を何度か思い出した。思想や言説は、先行する思想を足がかりに、それを超克しようとする。その際には新たな要素が加えられるとする加上説を仲基は説いた。さらに、時代や言語が異なれば、説かれる考えも変わるということも指摘している。本書を読むと、プラトン然り

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    2020年12月03日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    志は素晴らしいが、その割に章ごとの方向性が違ってしまっている。勉強にはなるが、編集もうちょっと頑張ってほしかった。

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    2020年11月04日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    世界各地の思想や宗教で、同じような対立や弁証法的な関係が散発して存在している。この一点だけでも、「世界哲学史」を学ぶ価値がある。ちくま新書という専門レベルが大事だ。

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    2020年10月08日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    初めて知ることが多い。しかし、それらの知識が私の既存の知識に的確に布置されていっていることも感じながらの読書であった。博識は力である。井の中の蛙となって、自らの世界だけが一番と思ってはいけない。特に思想・哲学では。

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    2020年09月29日
  • 宇宙はなぜ哲学の問題になるのか

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    宇宙をどのようなものととらえるかについて、カントの論を中心に、それ以前のギリシア古代とそれ以後の現代の論についてもとりあげている。カントについては、一般的なカントの解説書では見ることのない『天界の一般自然史と理論』等への言及など、新しく知ることがけっこうあった。また、現象世界と物自体の関係についての説明も丁寧で、すっきりわかるとまではいかないが、類書よりも、その辺りのところをきっちり説明しようとしていると感じた。

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    2020年09月03日