伊藤邦武のレビュー一覧

  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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    哲学史や哲学概論の本はこれまで何冊か読んできたが、これが最もわかりやすく、新書にしておくのはもったいないと思うほどである。
    哲学史ではよく「元素(アルケー)」の説明から始まるが、これだけでは「だから何?それが何でプラトンとかの哲学につながったの?」という疑問で終わってしまう。実際、元素自体に関する考察はギリシアのみならず中国でも生まれているし、「タレスは万物の元素を水とした」などという事実の列挙だけではギリシアで哲学が発展した理由にはならない。
    この本はその疑問に答え(本書p.36参照)、哲学全体の流れを一つの物語として淀みなく、かつ初学者にとってはかなり網羅的に記述している。また、アリストテ

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    2024年01月27日
  • 世界哲学史 別巻

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    本書は、世界哲学史シリーズのふりかえりと、シリーズで語られなかった漏れを補完することが目的である。

    見た目、各章の流れや、並べ方については、どうして、そうなっているのは、理解できませんでした。読むの長い時間がかかってしまいました。

    <ふりかえり>

    古代Ⅰ 世界と魂がテーマであった。世界哲学の始点をどこにおくか、それはギリシアである。哲学とは、ギリシアから始まる大系であることを始点におく。
    古代Ⅱ ギリシアからローマへの流れとキリスト教の成立が軸となる。この時期に世界宗教が成立したことを捉えて、その成立には、聖なるテクストの整備が必要であったことを論じる。
    中世Ⅰ 中世のはじまりと、古代が

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    2022年11月17日
  • 世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知

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    本書は、第一次世界大戦後から、現代までの世界を描いています。
    万能であった科学が破綻をし、幸福をもたらすだろうことか、災難をもたらしたのが、第二次世界大戦であった。
    全体主義の台頭を許し、世界を分断に至らしめた状況に対して、深い反省のもと、その問いに答えるのが本書であることが冒頭に述べられている。

    過去から現代へ、世界をめぐる哲学の旅はまだ終わっていない。
    別巻があるので、シリーズの総括と、現代のさらなる論点はそこで語られる。これは、現代Ⅰと考えていただいたほうがいいかもしれない。

    本書は、主義、論と、哲学者の名前、著者と、その概説でほぼ埋められていて、難解極まりない。所詮、数行で、哲学者

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    2022年11月09日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    近代Ⅱ 自由と歴史的発展

    本書は、19世紀の哲学を扱っています。

    難解、つらかった。各哲学者の考えが断片的に紹介され、教科書的に並べられているのは、やむをえないか。
    時代を下るにつれて、その登場人物も概念や事象も膨大に多くなっていく。連綿と続く思想の系譜と変遷は驚くほど複雑であり緻密である。
    国や、キーワードが分散されているので、行ったり来たりしないといけない。
    哲学者の考えを正確に理解するためには、オリジナル・テキストにちゃんと向き合わないとわからない。各巻末にある文献もそれらをつなぐキーとなっています。

    気になったことは次です。

    ・ロマン主義というのは、ナポレオンに対抗したドイツの

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    2022年11月03日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    近代Ⅰ 啓蒙と人間感情論

    本書は、18世紀の哲学を扱っています。

    近代における西洋世界の文明上の優位は、17世紀の科学革命から始まり、18世紀の政治的な大革命、19世紀の産業革命と帝国主義的植民地化への加速して、地球全体の規模へ拡大した。

    気になったことは次です。

    ・啓蒙とは、ものごとに通じていないこと、その無知をなくすこと、正しい知識を与えることである。
    ・西洋近代の啓蒙思想は、イギリスの名誉革命、アメリカの独立戦争、フランス革命らの変革のうねりに、バックボーンとしての役割を果たした。
    ・産業革命と帝国主義的植民地政策を通じて、啓蒙主義もまた、世界のすみずみまで伝播していく。
    ・17

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    2022年11月01日
  • 世界哲学史5 ──中世III バロックの哲学

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    中世Ⅲ バロックの哲学

    本書は、14世紀から17世紀の哲学の展開を扱っています

    この時代は、人類史上から見て1つの激動の時代であった。
    大航海時代、活版印刷の発明普及、宗教改革、ルネサンス。宗教改革以降は、大学教育の大衆化とも相まって、哲学の世俗化、宗教からの隷属からの脱却が進んだ。
    14世紀は、ペストの時代、ローマ教皇庁の凋落、15世紀は、ルネサンス、16世紀は、宗教改革と、大航海時代、17世紀は、バロックと、合理主義、哲学から科学が分離して発展していく。
    デカルトはスコラ哲学の膨大な遺産を大量に保有し、その概念群を継承し、ライプニッツに引き継いだ。ライプニッツは、微分積分学を含めて、哲

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    2022年10月29日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    中世Ⅱ 個人の覚醒

    本書は、12,13世紀の中世に光を当てる

    「12世紀ルネサンス」という言葉があるこの時代は英雄譚や騎士道精神が誕生し、ヨーロッパのアイデンティティがしていく時代。
    都市の発展、商業の成長、教育と大学の発達なヨーロッパは様々な面から大規模な発展を遂げていく。
    自らが聖書をよみ、人々が個人に目覚めていく時代、哲学は、個人の救済という問題に向き合うようになっていく。

    気になったことは次です。

    ・16世紀のルターらの宗教改革は、実は第2ステップであった。その原点は、15世紀にチェコがおきたフスの宗教改革だ。個人が聖書に向き合うための準備をしたのがこの時代だった。

    ・トマス

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    2022年10月27日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    古代Ⅱ
    紀元前1世紀から紀元後6世紀までの古代を俯瞰するのが本巻です。
    わかりにくい、行ったり来たりしたり、章の中でも段落間の関係が不明瞭

    気になった言葉は次です。

    ・西洋の古代は、西ローマ帝国の滅亡までであるが、中国、インドには、明瞭な歴史区分はない。
    ・学園アカデメイヤをつくったのは、プラトンから始まる。
    ・一民族、一地域を超えた広まった宗教を世界宗教とよぶ。それはどちらかというと、教義に普遍性というよりも、経典の翻訳といった観点から考えるのが望ましい。
    ・ローマの哲学者の初期の、中核はキケロである、キケロは懐疑派の一員として、ギリシア哲学かラテン語化を促進した
    ・ローマ哲学者の代表は

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    2022年10月24日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    古代Ⅰ 
    世界哲学とは、西洋哲学を包含し、世界の知的営為を俯瞰する、試みであり、日本が打ち出した理念である。

    ナチスの台頭により、分断された世界に絶望したヤスバースは、哲学的自伝において、世界哲学へと進んでいく。それを継承したのが、日本の世界哲学である。

    気になった言葉は次の通りです。

    ・枢軸の時代、中国、インド、メソポタミアにおける文明のうねりを、枢軸の時代として捉える。

    ・メソポタミアとは、2つの河の間という意味、チグリス、ユーフラテスの間の土地である。
    ・メソポタミア下流で誕生した、楔形文字は、紀元前3000年から、紀元100年もの間、メソポタミアの言葉であり続け、やがて、その知

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    2022年10月22日
  • 世界哲学史 別巻

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    各分野に詳しい学者の知見を集めた,新書サイズにして専門分野に踏み込むことができる良シリーズ。あえて「世界」哲学史というだけあり,意図的に西洋以外にも範囲を伸ばしている。

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    2022年07月01日
  • 世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知

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    第1章 分析哲学の興亡
    第2章 ヨーロッパの自意識と不安
    第3章 ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理
    第4章 フェミニズムの思想と「女」をめぐる政治
    第5章 哲学と批評
    第6章 現代イスラーム哲学
    第7章 中国の現代哲学
    第8章 日本哲学の連続性
    第9章 アジアの中の日本
    第10章 現代のアフリカ哲学
    終章 世界哲学史の展望

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    2022年06月20日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    第1章 理性と自由
    第2章 ドイツの国家意識
    第3章 西洋批判の哲学
    第4章 マルクスの資本主義批判
    第5章 進化論と功利主義の道徳論
    第6章 数学と論理学の革命
    第7章 「新世界」という自己意識
    第8章 スピリチュアリスムの変遷
    第9章 近代インドの普遍思想
    第10章 「文明」と近代日本

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    2022年06月13日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    第1章 啓蒙の光と影
    第2章 道徳感情論
    第3章 社会契約というロジック
    第4章 啓蒙から革命へ
    第5章 啓蒙と宗教
    第6章 植民地独立思想
    第7章 批判哲学の企て
    第8章 イスラームの啓蒙思想
    第9章 中国における感情の哲学
    第10章 江戸時代の「情」の思想

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    2022年06月09日
  • 世界哲学史5 ──中世III バロックの哲学

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    第1章 西洋中世から近世へ
    第2章 西洋近世の神秘主義
    第3章 西洋中世の経済と倫理
    第4章 近世スコラ哲学
    第5章 イエズス会とキリシタン
    第6章 西洋における神学と哲学
    第7章 ポスト・デカルトの科学論と方法論
    第8章 近代朝鮮思想と日本
    第9章 明時代の中国哲学
    第10章 朱子学と反朱子学

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    2022年06月04日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    第1章 都市の発達と個人の覚醒
    第2章 トマス・アクィナスと托鉢修道会
    第3章 西洋中世における存在と本質
    第4章 アラビア哲学とイスラーム
    第5章 トマス情念論による伝統の理論化
    第6章 西洋中世の認識論
    第7章 西洋中世哲学の総括としての唯名論
    第8章 朱子学
    第9章 鎌倉時代の仏教
    第10章 中世ユダヤ哲学

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    2022年05月24日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    第1章 普遍と超越への知
    第2章 東方神学の系譜
    第3章 教父哲学と修道院
    第4章 存在の問題と中世論理学
    第5章 自由学芸と文法学
    第6章 イスラームにおける正統と異端
    第7章 ギリシア哲学の伝統と継承
    第8章 仏教・道教・儒教
    第9章 インドの形而上学
    第10章 日本密教の世界観

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    2022年05月11日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    第1章 哲学の世界化と制度・伝統
第2章 ローマに入った哲学
第3章 キリスト教の成立
第4章 大乗仏教の成立
第5章 古典中国の成立
第6章 仏教と儒教の論争
第7章 ゾロアスター教とマニ教
第8章 プラトン主義の伝統
第9章 東方教父の伝統
第10章 ラテン教父とアウグスティヌス

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    2022年05月04日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    序章 世界哲学史に向けて
    第1章 哲学の誕生をめぐって
    第2章 古代西アジアにおける世界と魂
    第3章 旧約聖書とユダヤ教における世界と魂
    第4章 中国の諸子百家における世界と魂
    第5章 古代インドにおける世界と魂
    第6章 古代ギリシアの詩から哲学へ
    第7章 ソクラテスとギリシア文化
    第8章 プラトンとアリストテレス
    第9章 ヘレニズムの哲学
    第10章 ギリシアとインドの出会いと交流

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    2022年04月17日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    世界哲学は中世に突入した。副題に『超越と普遍に向けて』とあるが、主役は西洋ではなく東洋である。

    東洋哲学は500年から1000年、西洋哲学を先行していると言っても過言ではない。インドでは6世紀にはバラモン教と仏教の間で普遍論争が繰り広げられる。また、日本では空海がソシュールの言語論を先取りし、それを超越しようという壮大な試みをしていたことが語られる。

    8章から10章の東洋哲学史だけでも一読の価値がある。ただ、インド哲学史が難解で、読者が置いてけぼりにされることは必至だ。

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    2022年04月16日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    本巻ではローマに入った哲学からキリスト教父たちの登場を扱う。西洋哲学の他には仏教、ゾロアスター教やマニ教が取り上げられた。
    章ごとに筆者が異なることから内容の質に差があるが、マニ教と東方教父の章が大変参考になった。
    マニ教では筆者がユーモアを交えながら解説するためスッと頭に入ってくる。中でも教祖のマーニーを「ストーリーテラーとしては優秀」と評したのは笑みがこぼれた。
    東方教父の章では日本人には理解しにくい三位一体説についてわかりやすく解説されている。なぜ神とイエスと聖霊が同一視されるに至ったのか。そもそもそれはどういう意味か。それを知りたい方にこの章だけでも読む価値がある。

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    2021年11月21日