伊藤邦武のレビュー一覧

  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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    哲学を「存在とは何か?」「人間とは何か?」ということを切り口にギリシャから現代まで俯瞰した本。非常に狭い範囲に論点を絞っているのでそれぞれの哲学社の思想をすべて網羅しているわけではないが、「存在」「人間」というものをどのように考えるかという哲学の最大課題を見事に描き出している。プラトンのイデア論、アリストテレスの目的論、デカルトによる理性の発見、イギリス経験論、大陸合理論、カントの観念論、ショーペンハウアーの生の哲学、ニーチェの力の哲学、プラグマティズム、ラッセルの言語哲学、実存主義と哲学の大筋を理解するにはうってつけ。一つ一つの哲学書を読むよりその思想を生み出す土台となったそれ以前の哲学との

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    2021年06月07日
  • 世界哲学史 別巻

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    これまでの哲学を根幹から揺さぶる世界哲学史のまとめ編に相応しい内容。特に冒頭の鼎談。後の各論は、小論集なだけに、刺激には乏しいが示唆には富む。

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    2021年03月28日
  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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    まさに「物語」のように哲学の歴史を有機的に紡いでくれます。全くの初心者にはお勧めできませんが、それなりに哲学の知識を入れた後ならば
    断片的な知識を結びつけるのに役立つと思います。

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    2020年12月07日
  • 世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知

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    世界哲学とは、哲学の広がりと感じた。哲学とは改めて他者との出会いである、と感じた。とりわけ最後のアフリカ哲学のアクチュアリティに震える。

    安藤礼二の批評論も素晴らしかった。
    「どのような人々の集団でも聖なるテクストをもっている。そのテクストは文字を用いて刻み込まれている場合が多い。しかし、そこで用いられている文字には身体の痕跡が、身ぶりと言葉(声)の痕跡が残されている」

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    2020年10月20日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    知っているつもりがあまり理解していなかったことのオンパレード。ベルクソンと近代インドが刺激的だった。

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    2020年10月19日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    理性偏重に感情の価値を認める。このテーゼの元、西洋とイスラム、中国、日本をなぞっていく。なかでもイスラムが興味深い。また、西洋哲学はその時代の問題意識の解説に理解が深まる。

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    2020年10月19日
  • 世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知

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    世界哲学史シリーズの最終巻。12月に別巻が出るらしいが、一応、本巻でおしまい。

    シリーズの掉尾を飾る第8巻では、「分析哲学の興亡」、「ヨーロッパの自意識と不安」、「ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理」「フェミニズムの思想と「女」をめぐる政治」、「哲学と批評」、さらには「現代イスラーム哲学」、「中国の現代哲学」、「日本哲学の連続性」、「アジアの中の日本」「現代アフリカ哲学」とさまざまな角度から「世界哲学」の現在的諸相が扱われている。それぞれ興味深い論考が並んでいたが、自分自身はやや消化不良気味。その中でもやはり日本をテーマにした第8、9章は興味深かった。

    全巻読み終わって、これ

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    2020年09月08日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    西欧中心となりがちな哲学を世界規模で、文明間での同時代的な関係(かならずしも影響関係ではない)をみながら、8冊でその歴史を辿ってみようというチャレンジングな企画の6冊目。時代は、「近代」になって、18世紀を中心とした話。

    最初の3巻くらいは、なるほどね〜、この問題って、今でも形を変えて、議論しているよね〜、と興味深く読んでいたのだが、4〜5巻になると議論が専門的になってくる感じがあって、「頑張ってお勉強のために読む」みたいな苦行になりつつあった。しかし、時代が「近代」にかわって、また視界がすっきり広がってきた感覚。

    18世紀になると、良くも悪くも、世界の中心は西欧+アメリカになる。資本主義

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    2020年06月16日
  • 宇宙はなぜ哲学の問題になるのか

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    帯に「いちばんやさしい哲学入門」とあるけれど、ひらがなの「やさしい」を「易しい」と勘違いすると読み出してすぐに投げ出したくなるはず。全然「簡単に理解できる」話ではないから。でも「優しい」だと思えば、嘘とは言えないものの、著書の丁寧で熱心で面白い話に「よく分からないけどもう少し読んでいたい、先を見てみたい」と思うようになるはず。
    本書は古代ギリシアの哲学からはじめて「宇宙は無限か」「宇宙が無限の広がりを持つなら知的存在がいるはずだけど私たちはその宇宙人とコミュニケーションとれるのか」という問いに進んでいく。
    私は「学問は哲学として始まった、具体的な対象や方法が固まると〇〇学として独立していった、

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    2020年05月26日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    世界哲学史の3巻は「中世Ⅰ超越と普遍に向けて」のサブタイトルが付されている。全部で10章の構成。コラムが4つ。

    最初に「超越と普遍について」が手際よく概説されている。中世が古代に付け加えたものの1つが「超越」という論点であった。また「超越と往還は一体の問題なのである」(p.20)と指摘され、「極言すれば、中世において、人間は「旅人(viator)」であった」(同上)。そして、「人間が旅する者(viator)」であったことは、中世という文明の基本的ありかたを示している」(p.24)。

    同じく普遍について。中世という時代は、実体論を残しつつも、関係性や流動性を重んじ、聖霊が伝達の原理として中心

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    2020年05月09日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    「こんな時だからこそ先人の知恵に学ぼう!」というわけではないけれどもちくま新書から「初の」世界哲学史シリーズが刊行中ということで、シリーズの第1巻。第1巻は「古代1 知恵から愛知へ」。

    世界哲学という概念は、大学生時代にカール・ヤスパースの『歴史の起源と目標』やヘーゲルの『歴史哲学』などを読んでいる身にとっては意外とハードルが低かったが、本シリーズの目標は当然これらの西洋哲学者の「限界」を超えていこうとするところにある。

    第1巻は「哲学の誕生をめぐって」「古代西アジアにおける世界と魂」「旧約聖書とユダヤ教における世界と魂」「中国の諸子百家における世界と魂」「古代インドにおける世界と魂」とま

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    2020年04月11日
  • 宇宙はなぜ哲学の問題になるのか

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    わかりやすく哲学の思考や実例を紹介し、科学との関係を説明してくれています。カント哲学における宇宙の有限性と無限性の話、大学の研究室に入った頃から科学的に証明することの正しさや限界についてあれこれ思案してきましたが、それらに着地点を与えてくれたような気がします。哲学入門にもってこいの一冊です。

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    2020年03月30日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    第1巻では、似ているところもあるものの、国ごとというか、地域ごとに別々に生まれてきた哲学が、第2巻ではすこし影響しあうところでてくる。第3巻にくると、文化圏間での相互影響関係がさらに高まってくる。

    とは言っても、まだまだ哲学は、文化圏ごとにそれぞれの発展の道を歩んでいる感じかな?

    この巻では、キリスト教関係の話が面白かったな。とくに、東方教会(ギリシャ正教)の発展が新鮮。なんだろう、ここでは身体性とか、神秘主義的なスピリチュアリティとのつながりが重視されている。この傾向は、カトリック的な世界では、しばしば出てくるものの、異端として弾圧された流れだな〜。

    自分のなかに神性があって、それを身

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    2020年03月17日
  • プラグマティズム入門

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    プラグマティズムにおいて「真理」がどのようなものと考えられているかについて知りたかったので、とても参考になった。(特に序章、第一章)。

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    2019年11月12日
  • プラグマティズム入門

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    前提とするものが、まさにプラグマティックなプラグマティズム。現代を生きる私にとって、問題意識に応え、日常感覚に合う、示唆的な議論だった。

    全体的に本質を突くような記述が続き、グイグイと引き込まれながら、最後まで読みきった。構成も素晴らしい。

    数学への見方も新鮮。
    読みながら、テクストでなくコンテクストが大事ということが何度も思い起こされた。

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    2018年02月28日
  • プラグマティズム入門

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    恐ろしく緻密な本。新書でこのクオリティのものを出版してもよいのだろうか、と心配になる水準。伊勢田哲治氏のブログに、この本についての書評(というか著者に向けての手紙)が公開されている。プラグマティズムの入門書としては現在のところ最高だといえる。

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    2017年01月30日
  • プラグマティズム入門

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    読み直したさ:★★☆
    Evernoteにノートを作成済。推論的意味論の発想は、私的自治と民法の発想に応用可能な気がする。
    〈感想〉
    次はジェイムズのプラグマティズムを読みたい。
    分かりやすく、かつボリュームとしても満足。
    主題の整理→詳論という書き方で進むので読みやすい。

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    2016年02月24日
  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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    哲学が時代ごとにどのように発展してしたのかが概観できる。これまで漠然と知っていた哲学的な知識を、全体の中に位置付けて理解できる。必読!

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    2013年07月01日
  • 物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために

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     哲学の歴史を、「魂」、「意識」、「言語」、「生命」へと展開する物語として描かれていることで哲学がどういった経緯をたどったのかがよく分かった。同時に、なぜ現代哲学が分かりにくいのかという事も理解できた。つまり過去の哲学に対する批判、反省を土台としているため、その土台が理解できていないから現代哲学が理解できないということである。哲学の歴史を俯瞰することを目的としているため細かい部分はバッサリ落としている。そのため哲学者それぞれの主張を読み解くためにはやはりその哲学者の著書を当たらなければならない。しかしながらその主張が何を土台としているのかを本書で扱っているため、理解の手助けになると思う。ただ、

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    2012年11月27日
  • 経済学の哲学 19世紀経済思想とラスキン

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    ネタバレ

    個人的にはラスキンの経済学の考え方より、「ポリティカル・エコノミーの歴史」が興味深く読めた。元々オイコノミアは家政術のことであり、「ポリティカル」がつくことにより、家政としての「オイコノミア」が社会全体に適用されるならば、どうなるか、というのが今で言う「経済学」の発想であることを学んだ。

    ラスキンそれ自体は、あの「ユートピアだより」を書いたウィリアム・モリスの師匠であるのだが、彼の考え方自体、当時の経済学の潮流とは激しく異なる。彼はまず「人間」を主体に経済学の理を考える。彼は古代ギリシアの富の考え方を援用し、「自らのため」ではなく「共同体のため」の富を提唱した。これは古代ギリシアのクセノフォ

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    2012年08月21日