渡辺優のレビュー一覧
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ネタバレこの世界はスーパーセックスワールドだ。
…そんなキャッチーでインパクトある最初の一文に釘付け、首ったけ。
性愛を抱かないアセクシャル、主人公の志川は、自分がそうなのかもしれないと思っている。
でも性的な欲求が「無い」と証明するのは、自分自身に対してだって難しい。
異性愛や同性愛、様々な性愛が取り上げられるこの世界で、
取り残されたような寂しさがなんとも妙なリアルさで描かれているなあと思った。
何度も出てくる「大丈夫」のワードが印象に残っている。
「一方的に呼び出してきた待ち合わせの相手が席で二人してカレー食べていたら」、
呼び出された人はどう思うのか。
日常の些細な言動の中にも、人それぞれに「大丈夫」の線引きがある。
性的志向だけじゃなく、この「大丈夫かどうか」を見きわめるのは、
○○ハラスメントって言葉が増殖していく、現代の人間関係の生きづらい距離感みたいなのがにじみ出てて面白いと思った。
そして、いちいち悩んでしまう志川だけれど、
センシティブで臆病な人なのかと言うと、そうでもない。
職場から個人情報持ち出しちゃったり、待ち伏せしたり勝手に家に入っちゃったり…かなりモラルが低い部分もあって、
それを
「私ってこういうところがあるんだよなあ」と自分の特性として受け入れちゃっている。
このあたり、全然共感出来ないところが、また面白い。
読者として、志川のことをわかったつもりになって突き放される。
他人のことを簡単に理解できたなんて思っちゃいけない、そんなメタ体験だった!
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Posted by ブクログ
ネタバレこの世はスーパーセックスワールドである、という衝撃的な文章で始まる。
そのとおりである。
好きという感情、おつきあいという過程、その先には性行為があり、結婚したら、レスであれば離婚理由にもなり得る。
自分はメジャーだと思っているので、そのような世界が普通だと生きてきたけど、そうではない世界もあり、そうではない世界で生きてきた人たちにとっては、スーパーセックスワールド自体がその人たちの存在を否定してしまう。
主人公はアセクシャルに分類されると自分では思っているけども、誰とも性行為ができないという悪魔の証明を世の中に求められている。証明できなければ、それは嘘なんでしょうと。
そんな不毛な世界、嫌だよなぁ、、と読んでて思った。
そんな感情もなく、単にハグしてくれる美織さんが、主人公にとって救いの人だったんだな。
主人公も美織さんも、人との距離感はちょっと近すぎるとこはあるけども。
私はLGBTQのことはうっすら知ってるくらいで、近くにはっきりそうだと分かる人に会ったことがない。気付いてないだけだと思うし、どの人にもグラデーションでいろいろな事情があるものだとも思う。
だから、自分の普通を誰に対しても押し付けないように、自然に皆生きていけるようになるといいなと思う。 -
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「いきたくない」
そう思っちゃダメなのかな。
自分は不出来なのかな。
そんな気持ちがなんだか浄化された1冊。
ピンポンツリースポンジ。ロボットと心。対極にあるものだと思ってたけど、実は違うのかも。ロボットが抱く気持ち。ほんとはあるのかも、と思うと、不思議な感覚となんだか心があったかくなる感じがした。
シャイセ。日常の少しずつのストレスは、まわりの人が包んでくれる感覚で緩和されてて、その感覚がなくなった瞬間、耐えられなくなる感じ。すごーく沁みる。「いきたくない」って当然だよ、のシャイセの言葉に救われた。
週末のアクアリウム。普通と普通じゃないの、境目。平常心と狂気の境目。人って、絶妙なバランスで立ってる。足元がグラグラする感じの怖さを感じました。 -
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渡辺さんの小説を読んでいると、ああ、俺今小説を読んでいる!という気分になる。なんか、これこそが小説だよな!という気分になる。これ、ちゃんと褒め言葉になってますかね?どうやったらこんな設定が思い浮かぶのか?作家さんの頭の中はどうなっているのか、本当に不思議な気持ちになってしまう。この人にはジャンル分けなんて関係ないんでしょうね。
悪い姉に支配された世界からの脱出=生まれたときからの憧れだった姉からの精神的な自立、な物語。いわゆるストレートな親殺しのテーマなのだと思った。日常生活の中で麻友ちゃんの脳内で沸き起こる煩悶や苦悩や一喜一憂が軽快なリズムと言葉でひたすらに語られ続ける。いったいこれは何なんだ?と思いながらも、いつの間にかそうやって麻友のキャラクターが仔細に形作られていくのだった。終盤に少しずつ世界は変わり始め、最終章はとても感動的。毛色はまったく違うけれど、映画「アメリカングラフィティ」を見た後のような余韻を感じた。(とは言い過ぎか?) -
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作品紹介・あらすじ
誰に何を言われようと行きたくない場所もあれば、なんとなく気持ちがのらない朝だってある。
ふとしたきっかけでサボってしまうかもしれないし、人生を変えるような決意で回れ右をすることもあるかもしれない。
ひとはいつでも「行きたくない」気持ちを抱えている。
僕たちのそんな所在なさをそっと掬い上げる、刹那のきらめきを切り取った物語。
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6人の著者による、「行きたくない」をテーマにした短篇集。「とりあえず気楽に暇つぶし程度に読めそうだな」と手にとったのだけれど、そんな安易な気持ちはいい意味で裏切られた。
●加藤シゲアキ「ポケット」
アイドル・グループ「NEWS」のメンバー。2020年と2023年に直木賞候補となる作品を発表している。本書「行きたくない」は2019年の出版なので、直木賞候補になる直前の短編。だからかどうか分からないけれど「これから本領を発揮していくのかな」なんてちょっとイジワルな感想を持ってしまったのは、この「ポケット」が今ひとつよくわからなかったから。言いたいことはなんとなくわかるような気もするのだけれど(回りくどい言い方ですが)どうもかゆい所に手が届かない。いや、違う。かゆいという感覚はあるのだけれど、どこをピンポイントでかいていいのかわからないので、とりあえずかゆい感覚がありそうな周辺をボリボリとかきまわっている感じ。決してつまらなくはないので、余計にもどかしい気持ちだけが残ってしまった。それでも矛盾しているようだけれど好感が持てた作品。
●阿川せんり「あなたの好きな/わたしの嫌いなセカイ」
楽しい作品ではないです。読んでいてもちっともハッピーにはなれないのだけれど、目を背けることが出来ないというか、変に共感してしまうような状況。淡々とした文体なのに書かれている内容は登場人物本人にしてみれば、どうしようもないほどに切羽詰まった心境になっていると思う。しかも「わかる!わかる!なんとなくその気持ちわかる!」と思えてしまうのだからたちが悪い。僕にとってはそんな作品。「面白かった」という感想は相応しくなさそうなので「物凄く印象に残った」にしておきます。
●渡辺優「ピンポンツリースポンジ」
これはもしかしたら近未来SFなのかもしれないですね。AIがどんどん進化していった結果、AI自体が「なんとなく行きたくない」という感情を表現するようになるかもしれない。そしてAIを使用している人間を困らせる。この「なんとなく」というのが、白黒はっきりしている感情よりも、より複雑なのかもしれない、という指摘だけでも「おお、そうかも」と思えてしまった。またそんな「なんとなく」という感情を持ったもの同士に仲間意識が生まれるのも、なんとなくわかる気がする。面白かった。
●小嶋陽太郎「シャイセ」
この作品に出てくる「2階の住人が床に物を落として騒音を発したら、その下の1階の住人が天井を突っついて2階の住人にクレームをつけてくる」みたいな状況は、実は僕はリアルで体験している。なので、途中までまるで自分のことのような気持ちで読み進めた。実際にはクレームではなかったのだけれど。恋人との別れ、現実とうまくかみ合えない状況とそれに対する諦念、それでも誰かと結びつきたいという欲求、コンビニや喫煙所での邂逅、DV、そして不器用ながらなんとなく結びついた2人。そんな物語が重くなることもなく、時にはユーモラスで軽快に描かれている。これまた面白かった。
●奥田亜希子「終末のアクアリウム」
これはどうなのだろう。男性である僕が読むのと、女性が読むのとではやはり受け取り方が大きく違ってくるように思う。一組の夫婦が登場するのだけれど、なんとなく不穏な空気を僕は常に感じながら読み進めていた。しかもそんな夫婦にちょっかいを出してくる第三者の存在。そしてバランスが崩れてしまったラスト。「終末のアクアリウム」とはそういうことだったのかと思い知らされる。結末は用意されていない。でも「自分の家に、帰ります」という一言にひとすじの希望が見られたような気もする。物凄く印象に残った。
●住野よる「コンピレーション」
仕事から帰宅すると毎晩知らない友達が待っている。しかも毎晩違う友達で既に400人は超えている。そしてそんな友達と楽しく交流する。主人公の女性はそんな環境に疑問も不安も抱かずに浸っている。次の夜の「初めて出会う友だち」を心待ちにしている。途中でこの環境を「初めてではない、二度目の友達」が打破しようとするのだけれど、結局はうまくいかない。
決して現実味のある設定ではないのだけれど、「二度目の友だち」が打破できずに主人公の女性が、このある意味自堕落でただ流されて生きているだけの状況を受け入れる、という点がすごくリアルに思えた。仮にここで主人公の女性が、「よし、自分を変えてやろう」なんて一発奮起したらかえって嘘っぽくなってしまったように思える。打破できなかった友達が、それでも主人公の女性とふくれっ面のまま食事をしたり、泊まっていったりするあたりも僕にはすごくリアルに思えた。
少し違うかもしれないけれど、映画「トゥルーマン・ショー」みたいな世界観なのかもしれない。タイトルの「コンピレーション」とは「編集、編集物」といった意味で、「なるほど」と思わせてくれる。この異様な状況に関する説明は作品内ではほとんどでてこないのだけれど、それに対しては全く気にならなかった。
作者は「君の膵臓をたべたい」の著者とのこと。僕はこの「君の膵臓を~」を読んでおらず、いままでは食指も動かなかったのだけれど、この「コンピレーション」を読んでみて、機会があったら読んでみようと思った。この「コンピレーション」、本書の中では一番面白かった。 -
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新興宗教のプロモーションのために絶海の孤島に集まった運営と参加者。そこで繰り広げられる連続殺人。これは相当面白い。それぞれが持つ信念や信仰、思惑が絡み合い、不可解な状況はさらに折り重なっていく。次第に狭まっていく犯人の選択肢。正直、過去何作かを読んだ著者からして、ここまで正統派なミステリーを予想していなかった。もっと天の邪鬼な、ひねくれた物語を予想していた。その一点をして、少し拍子抜けしてしまった感はある。しかし普通にミステリーとして十分に面白かった。最初の登場人物紹介の連鎖はとても映像的で上手かった。
しかし連続殺人ミステリーっていうのは、納得できる動機の創造が最高に難しいんだろうなあ。という感想です。 -
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直木賞候補作
星4.5
主人公は大手不動産会社の社員だったものの、好きな人から性的な振る舞いをされただけで、それが受け入れられず、会社を退職してしまった志川。
自分は、性を受け入れられない、「アセクシャル」ではないかと思い始める。
生活のため始めたのは、デリバリーヘルスで、女王様を派遣する電話番の仕事。
そこで、憧れの50歳の女王様(なぜか私の頭の中では鈴木保奈美)と知り合うのだが、女王様が失踪してしまい、禁じ手の捜索をするという物語。
アセクシャルという言葉について、主人公も周りの人たちも、Wikipediaなどで調べたりするのだが、確かな定義は分からない。そもそも、LGBTQにしたって、人それぞれなんだろうな。
ヘテロ(異性愛者)だって人それぞれなんだから。
直木賞候補作にならなかったら読まなかったかもしれないが、女王様の失踪をからめ、ページを捲る手が止まらなかった。
主人公の心のひだも、なかなかうまく書けていると思った。
追記 2026.7.31 島清恋愛文学賞 -
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表紙とあらすじで気になり購入。
突然喋るカラスが現れて、そのカラスの目的とは?ってお話なんですけど、部外者って言葉たくさん出てくるんですけど、本当に、人間ってそうだよなって。
誰かの事を信じるってことは、その誰かが自由に考えたり感じたり行動する能力があるってことを否定してる。他人を信用しないっていうのは、他人の人格を認めることだ。
俺は自分の意志を持った自由な人間だから、嫌いになったら縁を切る。
そういう考えもあるのか!と思いました。
2つ目の文章はわたしも通ずる所があり、とても共感しました。
誰かに寄りかかって責任やら全てを崇拝、目標とすることはいい時もあるけど、される側は重責とかすごいですよね。
信じすぎないというのも大事ですが、主人公がすぐ人を好きになる人間性がとても心配であり、愛おしく感じました。 -
Posted by ブクログ
2025年版 そして誰もいなくなった… 怪しい新興宗教の孤島ツアーで起こる惨劇 #月蝕島の信者たち
■あらすじ
かつて電子商取引の犯罪歴がある後藤望、彼は友人の天羽七希、金子千香と共に新興宗教を立ち上げた。彼らは礼拝施設を建設するためにクラウドファンディングを企画し、信者たちを月蝕島に招待する。翌日、信者のひとりが死体となって発見、なんと首が切り取られていたのだ…
■きっと読みたくなるレビュー
おもろい! スタンダードな孤島ものクローズドサークル。
追い込まれていく登場人物の描写や、男女や仲間同士の絆など、本家『そして誰もいなくなった』に近いですね。シンプルながらも丁寧なプロット、しっかりとした筆致で書かれた作品で読んでて安心。
またクローズドサークルの面白味を分かりやすく書いてくれてるので、普段本格ミステリーを読まない人におすすめしたいです。
まずキャラクターがいいすね~、ひとりひとりの背景が大変分かりやすい。新興宗教の運営側は、いかにも怪しい奴らで、思想や考え方もそれっぽい。対して信者側も動画配信者、モデル、会社員、主婦など。こんな宗教にお金を出すという残念な人たちばかり。見るからにひと悶着ありそうな面々で、読む側としては期待しちゃう。
特に推したいのは、葛西ミアですね。いい役どころで、ずっーと目が離せない。計算なのか、天然なのか、真面目なのか、狂ってるのか、はたして何者なのか気になってしょうがないよ。
また本家同様、スリラー感もしっかりあります。徐々に死体が増え、当然犯人も限定されていく。連絡も取れず助けもこない、果たしてどうなってしまうのか… 久しぶりに手に汗を握ってしまいましたね。
本作「そして誰もいなくなった」のオマージュと分かるようなタイトルのほうが売れたんじゃないかなー。そのくらい読み味が近いですし、PRもしやすいんじゃないかと。
あと人物が多いので人物表は絶対入れたほうが良いです。これから読む人のために、ご参考までに書いておきます。
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■人物表
後藤望 :新興宗教BFH 運営
天羽七希:新興宗教BFH 教祖
金子千香:新興宗教BFH 運営
新堂譲司:新興宗教BFH 医師・投資家
塙 悠一:信者 配信者
葛西ミア:信者 アルバイト
桃木円華:信者 モデル
不破 翔:信者 学生
増田友恵:信者 主婦
野々村圭吾:信者 会社員
田中 :信者 ?
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著者が以前書かれた『私雨邸の殺人に関する各人の視点』も好きでしたが、本作はまっすぐミステリーでさらに好感が持てました。ゴリゴリの本格謎解きが展開されるわけではありませんが、真相はかなり強烈で読み応えがありましたよ。
今後の作品にも期待しております~、ぜひもっと本格ミステリーを書いてくれると嬉しいですっ
■ぜっさん推しポイント
犯行のきっかけと動機が現代的でしたね、ラストはしんどかったなぁ。あまり詳しくかけないので、ぜひ読んでみてほしい。
勝とうと思いすぎない、正解を出そうとし過ぎない、結論を出そうとし過ぎない。
どんなことでも逃げる姿勢は良くないんだけど、ただ真面目すぎるってのも良くなんだよね。人間って機械じゃないし、だからこそ心の寄り処として、宗教ってのがあると思うんだ。