渡辺優のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「姉は私をこう名付けた―復讐の申し子と」。
復讐が生き甲斐でハンムラビ法典を愛好するマザコン女子高生が、警察に先んじて自分を切り付けた通り魔に復讐せんとする痛快爽快青春小説。あるいは復讐娯楽エンターテイメント。
主人公や周囲のキャラがかっとんでて楽しい。
「私は自分が好きだから、大好きな自分のためにいつでもすっきりしていたい。復讐とは誰かのためじゃない。大切な自分のすっきりのためのもの」
「痴漢やひったくりを恐れて音楽を聴くのを我慢するということは、痴漢やひったくりに音楽を聴く楽しい時間を奪われるということだ。それは痴漢やひったくりに遭わずして痴漢やひったくりに害されているのと同じ事」
etc名言のオンパレード。毒舌と暴言を織り交ぜた素晴らしくエッジの利いた一人称に痺れる。
自分が大好きで最高にイヤな性格なのに憎めない主人公の暴走から最後まで目がはなせない。 -
Posted by ブクログ
この悩ましい、実に愉快な、あるがまま。
弱いまま強く生きる人びとのエッセイアンソロジー。
ご自身の虚弱をありのまま書くことで、そのひとそれぞれの健康観というものも、浮き上がる。
虚弱を知ることで健康が身に沁みる。
アンソロジーを読みながらわたし自身もふりかえって、わたしの生活や持病を再考する機会を得られている。
言いよどむような、明瞭に説明し難い虚弱は今の時代、より身近な話題となりつつある。
虚弱はコントロール不能な、横暴で、特定の原因がはっきりしない、肉体と魂からの時をこえた叫びだとわたしは思う。
上手く聞き取りたくても、叫び声が耳を障る。
この叫びは声だ。
声は、社会の中で生き抜くための摩擦の結果なのかもしれないし、自分自身の身体の仕組みの不具合さを健気にあらわしているのかもしれない。
誰もが大なり小なり健康に容易にはたどりつけないリアルを書いているし、ご自身の虚弱さにいかに向き合うかを押しつけがましくなく書かれている。
アンソロジーなので、虚弱の色彩もその向き合い方も、それについてわたしたちになにを訴えかけるのかも、人それぞれに豊かに文章として書かれていて、わたしは好感をもてた本。
『虚弱人生の振り返り、ならびに新たな幕開け』
渡辺 優
『脳みそグニャグニャ人生の半生』
トミヤマユキコ
『異常なし』
ヒオカ
これらのエッセイが特に共感した。
個人的には小中高の学校の先生におすすめの本。
虚弱もいろいろ、子どももいろいろ、成長もいろいろ。
道もいろいろ、だと思う。
社会もいろいろには現実まだなっていないからこそ、学校の中の多様性を視ることから虚弱について考え始められることがあるのではないか、とわたしはこっそり思う。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ恥ずかしながら、アセクシャル、という方々の細かい状況を知りませんでした。
この本が全てでは無いのでしょうが、身の回りの今までの出来事で、納得できる事が沢山ありました。
全てをジャンルで分けて考えることは危険だと思うけれど、知ることは大切なことだと改めて感じます。
私は自分から勉強しに行く事はあまりしないので、せめて小説から、色々と知ることが出来るのはありがたい。
でも、知っているから良い訳じゃない。
本人がアセクシャルと伝えていながらも、分かると言っておきながら了解していない人々。
知っているという意味は広すぎる。
美織さんが、きっとよく分かんないのに単純にお笑いとか進めちゃうのとか、こりゃあ知識が大切ってだけじゃないのだ、と、ひとつ先の答えを教えてもらった。
正直、きっと職場にいたら私は美織さんを好きになれないかも。
でも、こうやって俯瞰で見れば、凄く素敵。
私の身の回りにも、こんな人たちが沢山いる。
はっとさせられた体験でした。 -
Posted by ブクログ
家族を巡る青春ヒューマンドラマ
サスペンス的なあらすじに、姉を殺す夢という不穏すぎる冒頭。そこから一転、恋する乙女の小説が始まって驚いた。ところが全体を通して読んでみると、これはヒューマンドラマだった。主人公の麻友による、女子高生らしい軽やかな地の文が小気味いい。
本作の姉・凜は、半端なく邪悪な女の子だ。妹やクラスメイトを肉体的・精神的に傷つけることに積極的。そのくせ、器量がよいうえに立ち回りがうまくて罰せられずにいる。麻友が殺意を覚えるのも無理はないだろう。
「家族」というのは解くのが難しい呪いだ。繋がりの強い他人。親やきょうだいは自分で選べない。
例えば麻友は、邪悪な姉の存在に対して常に神経をとがらせている。それは恋に浮かれているときですら。姉の周囲への行いに対して責任感を覚える。姉が万引きをしようとすれば見過ごせない。姉から当たられないように機嫌をうかがって過ごす。周囲の人間が姉のことを知れば、自分も嫌われるかもしれないと恐れる。そんな様子は見ていて痛々しい。
我が子の邪悪さを薄めて理解しようとする親、家族なんだから仲がよくて当然だと説く友人。世の中には麻友の思いに沿わない思想があふれ、読んでいて胸が痛む。
でも麻友も成長を見せる。長年の鬱憤をわずかでも晴らすような、胸がすくラストだった。 -
Posted by ブクログ
直木賞候補だったのか、芥川賞かと思った。(先入観なく読むのでこういうことがままあります)
女王様がマッサージをする風俗の受付兼手合い係のような電話番に就いた女性が主人公で、自分を性的なことをしたくないアセクシャルではと思っている。
※手合い係は将棋で誰と誰が対局するか組む人のこと。
芥川賞かと思ったのは新しいなと感じたから。
LGBTQやそれに類することを扱った本は本当に多いけどアセクシャルは初めてで、でも新しいのはそれでなく、主人公が「普通」が何かをしょっちゅう気にしてたから。
若い人が特に「浮いてないか」と気にするのは昔からのことだけど、最近の1ミリもはみ出したくない!かの風潮は異様に見える。
不登校が未曾有の勢いで増えているのも、病む人が多いのも、SNSで全く知らない人を叩くのも、子育てしにくい社会になったのも全部これが元凶だと思う。
そんなことしてもいつか自分の首をしめることになるだろうし、これだけ多様性が言われる中なぜそうなるのかと思うけど。
最後私は、それぞれでいい、と読んだ。そんな風潮こそ広まって欲しい。 -
Posted by ブクログ
アセクシャルの人々が性的サービスの電話番だったら。ないことを証明することはとてもとても難しいし、不可能に近い。証明が難しいそれを、必要とされる社会になっていると思う。
p.17 長く生きているぶん世の中に対してなあなあになっているタイプのご老人を知っているつもりだったのに。これが性風俗店の予約電話だという意識が影響しているのだろうか?性風俗を利用するお客さんというものに偏見をもっているせいだろうか?もし私が女王様の電話番ではなく、健全なマッサージ師の電話番だったなら、こんなイライラは感じていなかっただろうか?
p.189 私、アセクシャルなのかもしれない」
大学時代にはじめてその言葉を知ってから、何度となく考えてきた。
自分はもしかしたら、そうなのかもしれないと。でも、それをどうやって確かめたらいい?
目の前の人間に性的欲求を抱かないことを確認することはできる。でも、世の中のすべての人間に性的欲求を抱かないことを確かめるには、すべての人間と親しくなり、距離を詰めて、それでもやっぱり無理だったという工程を踏まなくてはならない。そんなの不可能だ。無いことを証明するなんて、私には無理。
-
Posted by ブクログ
評価が難しい本。3と4の間ぐらい。
まず、一気に読み進めてしまった程、読みやすい本だったけれど登場人物のほぼ誰にも共感できなかった。
それはきっと私の「当たり前」と登場人物(主人公だけに限らず)の「当たり前」が著しくズレていたから。
私が「人として美しくないよね」と思うことをしちゃうのが私には受け入れられなかった。
そういう「当たり前」のズレを浮き彫りにする作品だなと感じた。
ただ、「好き」だと思っていた美織さんの失踪を通して、自分の性自認や自分の「当たり前」と他者の「当たり前」を考えていく過程、他者に理解して貰えない、自分が異質であると感じるが故の「大丈夫」という言葉は軽いように見えて重いのかもしれない。
未知のものは怖い。
分からないことは不安。
だから、自分の知っている枠の中に押し込めようとして傷付ける。
知ることは大事。だけど、自分に分からないものを、そのまま「私には分からない。でもあなたはそうなんだね」と受け止めることが何よりも大切なのかもしれないなと感じた