あらすじ
好きだけど、触れあうことはできない。
そんな私は異端者なのだろうか。
主人公の志川は、新卒で就職した不動産会社を辞め、現在、SMの女王様をデリバリーするお店の電話番をしている。友達には「そんな職業は辞めたら?」と眉をひそめられたが、女王様の中でも美織さんという最高に素敵な人に出会い、そこそこ幸せに暮らしていた。
ある日、あこがれの美織さんと初めてごはんを食べに行く約束をして舞い上がるものの、当日にドタキャン。そのまま音信不通になってしまう。彼女の常連のお客さんなどにこっそり連絡を取り行方を探るうちに、どうも自分の知っている美織さんとは違う面ばかりが見えてきて・・・・・・。
過去、志川が不動産会社を辞めた理由は、あこがれの男性社員・星先輩と付き合う寸前に、先輩が自分に求めている性的なことが一切無理だと気づいたからだった。好きだったのに。付き合えないと正直に言っただけで、志川は同僚に悪女扱いをされ、そのまま会社にもいづらくなり、退社することになってしまったのだ。
私はアセクシャルなのだろうか? 「ない」ことを証明するのは、悪魔の証明だ。もしかしたら、まだ見ぬピンクのひつじに会えるかもしれないのに・・・・・・。なんでも性的なことや恋愛に結びつける世の中に馴染めない主人公の戸惑いを通じて、現代社会を描く問題作。
アセクシャルの自身に戸惑い、彷徨い、清爽と一歩を踏み出す――。
小説すばる新人賞受賞から10年。物語はしたたかに進化する。
【著者プロフィール】
渡辺優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。2015年に「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著作に『自由なサメと人間たちの夢』『アイドル 地下にうごめく星』『クラゲ・アイランドの夜明け』『アヤとあや』『カラスは言った』『私雨邸の殺人に関する各人の視点』『月蝕島の信者たち』などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白かったです。タイトルから想像する内容とは違って人が思い悩む描写が上手く分かりやすかったです。 電話番からキャストへ誘われるシーンがあったのでジリ貧系に向かうのかと思いきや、主人公の芯はしっかりしていましたね。 嫌な人間関係がいくつかあってすがられる方はしんどいなと思いました。
Posted by ブクログ
ビックリするようなあらすじ紹介に興味津々で本作を手に取りました。いやぁ賛否両論あるとは思いますが、真面目なお話が、ここまでユーモア溢れる世界観で表現された作品は他にないかなぁと思います。
本作は、デリバリーヘルスの電話番を務める女性が主人公。その主人公は自分のセクシャリティに悩みを抱えていたが、とある女王様と出会ったことをキッカケに自分の性と向き合うというお話。
本作の1番の魅力は、ボキャブラリーかなぁと思います。それが現れているのはまさに本作の1行目かなと。「この世界はスーパーセックスワールドだ。」こんな強烈な1行目は見たことないですし、この1行目を読んだ瞬間、主人公の突飛な発想にすごくワクワクしました。そして物語を進めていっても、突飛さと語彙力が好みドンズバで、終始読んでて楽しかった作品でした。
内容としてはセンシティブよりですし、セックスワールドとか頻繁に出てくるので、嫌悪感を示される方がいらっしゃるとは思いますが、私は本作は非常に良かったかなと思います。
Posted by ブクログ
アセクシャル:性欲がない、もしくはわかないこと
アセクシャルの女性が派遣型のマッサージ風俗店の電話番のアルバイトを始める。マッサージ師を「女王様」と呼び、
さらに「この世はセックスに溢れている」ことを痛感する
わかっていつつも自分はセックスに対して理解ができず、他者にも理解されずに一人苦しむ。
性事情は人それぞれ。誰にも打ち明けられない苦しみが辛い。
Posted by ブクログ
会話や物語の進み方のテンポがよくとても読みやすい作品なのに、読み終えた後には胸に残るものがあるような作品であった。
主人公の志川は、自分が何者なのか言葉にできず、「アセクシャル」という言葉を知ってもそれで「理解した」とはならない。むしろこの作品は、「1つの言葉を知っただけで全てを分かった気になること」の危険性を何度も何度も読者に突きつけてくる。
性風俗の電話番という少し変わった仕事、職場で起こるささいな謎。切ってもきり離せない男と女という枠組みと、そこに入り込めない感情。読みながらそれらに思いを馳せることがきっと大切なのだなと私は思った。
Posted by ブクログ
読んでいて
自分がマジョリティであること、
そのことにかなり無意識に生きてるなぁと意識した
途中までは自分と主人公の嗜好の違いを感じてばかりいたが
作中のある一文に出会ってから
みんなそれぞれ、何かしらあるよね。
と腑に落ちた。
「あの人」は「この人」は、というよりは
世の中の「みんな」それぞれにもがいて生きてる、そうだよねぇ、としみじみ
登場人物それぞれ、納得のいく生き方に向かうような雰囲気があって読後感はすっきり。
Posted by ブクログ
SMのデリバリーの受付をする女性が主人公
彼女はセックスができない
それがどんなに好きな人であっても
彼女は中年のSM女王様に惹かれる
その女王様は破天荒で自由で誰にも縛られない個性を持つ
この女性2人と、デリバリーの顧客や他の女王様、受付担当を交えて物語は進む
結局何がテーマだったのだろう?
正直いうとよく分からなかったが、面白い作品であったのは間違いない
Posted by ブクログ
多様性や愛、孤独についてすごく考えさせられる作品。性的思考に偏見はないつもりだけど、本質的には理解はできてないような気がする。
アクセシュアル。この本を読むまで知らなかった。
知らないからいいわけではないし、理解したつもりもダメな気がする。
自分の思考や知識について改めて考えさせられる。
難しいテーマでも、心の描写がすごく細やかで読みやすい!
Posted by ブクログ
いやー凄かった…
アセクシャル。
多分私もそうなんだよなぁ
主人公と全く一緒って訳ではないと思うけど、気持ち悪いとか嫌悪感とかは抱いてしまう。
結婚とかは無理だと分かってるし、主人公ほどそれに対して絶望感とかはないけど、人間ってめんどくさいなとは思ってしまう。
なにをしたら地獄だとか考えて生きるより、
何をしてたら天国って考えて生きる方がいいよね。
Posted by ブクログ
よかった。
主人公とともに美織の行方を探す中で彼女の本当の顔はなんなのか怖さとともに引き込まれた。
また、主人公は自分のセクシャリティを探りながら孤独を抱えながら葛藤しながら自身と向き合っていくが、その様子が物語の主軸としてぶれずに描かれていて作品の中に深く入り込めた。心動かされた。刺さった。
私と主人公では性格もセクシャリティも全部違うのに、主人公の幸せを願っていた。
サスペンス的な側面とドラマとが組み合わさり最後まですらすら読めたし、ラストも私好みだった。
☆4.2
Posted by ブクログ
この世界はスーパーセックスワールドだ。
から始まる、え?なに?ってどんどん興味を惹かれた。
主人公の志川さんが、マッサージ店の電話番のバイトをしながら出会う人のことや過去にあったことが少しずつわかっていく。
電話番での出来事がずっと綴られているわけじゃなく、女王様がいなくなったことによってわかる人間関係とか、いろいろ場面も変わって面白かった。
アセクシャルは初めて聞いた。
Posted by ブクログ
この世はスーパーセックスワールド!!!
最初読んだ時
なんだっけ?なんでこの本選んだんだっけ?
セックスワールド?なんの話?って思ったけど
読めば読むほどこの世はスーパーセックスワールド!!!
そもそも生き物が誕生するために性行為は必須。
食欲、睡眠欲、性欲!!!
ってなんで人間の三大欲求に性欲が入るんか、私には疑問です。
だからなのか?生き抜くための本能なのか?絶滅しないためなのか
人間には性行為が必要とされる。
異性愛でも、同性愛でも恋人や夫婦やパートナー
恋だの愛だのが関係している者同士では
おそらく必然とされる。
だけど、この作品は
その違和感について、ずーっと問いている。
性行為がないと生きていけないのか、スキンシップがないとダメなのか、ただただ相手が好きだけじゃだめなのか、好きな気持ちって持たないといけないのか。
自分にはない感覚だし、周囲にアセクシャルの方がいないから
リアルな話は聞いたことがない。
わからない世界。
だけど、わからないからと言って全部否定するのは違う。
主人公の友達も吉野ちゃんもすごく苦手。
世の中を自分の感覚で見すぎて、自分の感覚で理解できない人を否定しすぎてて
なんだかずっとイライラする。笑
世の中確かに愛とか恋とかを良いものっていう風潮が多い。
恋愛作品も多いし、天気予報の「デート、、」っていう表現もそうだったし、
化粧品とか洋服とかも
"恋するなんちゃら""モテコーデ"みたいなキャッチフレーズは多い。
そりゃあー、当事者の方たちはどんどん孤独に追いやられるし
自分だけおかしいのかも?って考えちゃう。
恋するもよし
セックスするもよし
愛がないセックスも互いが満足ならよし
恋しないもよし
誰にも興味がないのもよし
みんな自分は自分、人は人。
世の中孤独を感じている人たちが
この作品を読んで、わかるー!!!そうだよ!ほっといてくれよ!
って思える作品なんじゃないかな?って感じた。
読者が増えるといいなあ。
しかし、登場人物みんな変で、ズレてて、人を信じすぎて、、、なんか色々変な人達ばっかで
面白かった。笑
Posted by ブクログ
性愛のない愛を求める人に送りたい一冊
性の欲がよく分からないことってある
女王様も主人公も完全には分かること出来ないけど、そもそも私ってわたしのこと分かってるっけと我に帰った。
恋愛至上主義?!いやだ!と思う時に読みたい
Posted by ブクログ
直木賞候補になっていたので気になって読んでみた。
初めて読んだ作家さんだったが、面白かった。
タイトル通り派遣型マッサージ店で「女王様の電話番」として働く主人公が、自らの性自認(アセクシャル)と向き合いながら話が進んでいく。
女王様が失踪し、彼女の手がかりを求めて色々なお客さんなどにも接触していくのだが、やり取りがテンポよく展開していくので楽しく読めた。
アセクシャルというのも知識としては知っていたが、当事者目線での葛藤にはなるほどと感じられることも多かった。
主人公のまっすぐさと素直さは時に不自然なぐらいたが、ひたすら彼女の視点で語られるので、いつの間にか応援するような気持ちで読んだ。
「スーパーセックスワールド」に「スーパーセックスビーム」って…パワーワードすぎて笑う。
この世をそんな言葉で表現できちゃうセンスが凄いし、世の中に対する見方が変わるというか、新しい視点を得た気分。
Posted by ブクログ
新感覚
「スーパーセックスワールド」と、ちょっとピンク感たっぷりな書き始め。
女王様を探すストーリーと、自分の生き方と性を探すストーリーが絶妙に重なるセキララな書きぶりにひきつけられました。性自認と悪魔の証明の難しさ、共感。
Posted by ブクログ
冒頭1文目のワードが独特で特徴的で本書のキーワードだと思う。
自分と周りの人の感覚の違いに悩む気持ちに共感する部分があった。
私は女王様の人柄は素敵だと思った。
そして、主人公のお願いがとても綺麗だった。
Posted by ブクログ
この小説の冒頭部分です。
『でも、なんかもう一生懸命頑張ってきた大切な職を失ってやる気もぜんぜん湧いてこないし、なんだかなあという気持ちで求人サイトをだらだら見る。
そして私は女王様の電話番になった。』
人というのは、自己実現ができないと、その先の自分の在るべき姿が分からなくなってしまって、身動きが取れなくなる存在のような気がします。
例えば、この小説の主人公(志川さん)のようなアセクシャルの人が、それを一つの性的指向であるとキチンと認められないまま周囲から誤解を受け孤立してしまったら。。。
彼女はどこで自己同一性を保てばよいのでしょうか?
彼女は、女王様の電話番になりました。
「ご希望の女王様とコース」を聞いて、「日時」と「利用はホテルか自宅か」を聞いて、女王様に予約をLINEで連絡するお仕事です。
性的な触れ合いに関心を持てない彼女が、(特殊な?)性的サービスのビジネス現場に身を置くことになったのは、皮肉なことなのでしょうか、それとも必然と言えることなのでしょうか?
志川さんは、美織(みおり)女王様と仕事場であるクイーンズマッサージ ファムファタルで出会うのですが、美織さんはまさにfemme fatale(運命の女性)でした。(ずっと主人公が、志川と名字呼びで書かれている理由にも通じます)
その辺のところを味読してくださると嬉しいです♡
結末の「0 エピローグ」には、こう書かれています。
「自らのセックスについて悩んだことがない人間がどれだけいるだろう。みんな普通の顔をして歩いている。」
マジョリティとかマイノリティと区別されますが、よくよく考えてみると、皆がマイノリティなような気がします。つまり、似たような特質で大づかみに捉えれば良いようでいて、実は個々人は皆異なる、と。
何が「普通」で、何が「普通でない」とか荒っぽく考えるのではなく、個々人に丁寧に寄り添って、異なることを尊重する時代が来ているような気がします。(同性愛の人のことを「生産性が無い」などど口走る国会議員が存在するどこかの国でもです)
とっても良い作品だと思いました。
ジメジメしがちな性的な事柄を、心に痛みを抱えながらも、心地良くカラッとした雰囲気で描き切ってくれていると思います。
オススメです♡
〔作品紹介・あらすじ〕
好きだけど、触れあうことはできない。
そんな私は異端者なのだろうか。
主人公の志川は、新卒で就職した不動産会社を辞め、現在、SMの女王様をデリバリーするお店の電話番をしている。友達には「そんな職業は辞めたら?」と眉をひそめられたが、女王様の中でも美織さんという最高に素敵な人に出会い、そこそこ幸せに暮らしていた。ある日、あこがれの美織さんと初めてごはんを食べに行く約束をして舞い上がるものの、当日にドタキャン。そのまま音信不通になってしまう。彼女の常連のお客さんなどにこっそり連絡を取り行方を探るうちに、どうも自分の知っている美織さんとは違う面ばかりが見えてきて……。
過去、志川が不動産会社を辞めた理由は、あこがれの男性社員・星先輩と付き合う寸前に、先輩が自分に求めている性的なことが一切無理だと気づいたからだった。好きだったのに。付き合えないと正直に言っただけで、志川は同僚に悪女扱いをされ、そのまま会社にもいづらくなり、退社することになってしまったのだ。
私はアセクシャルなのだろうか? 「ない」ことを証明するのは、悪魔の証明だ。もしかしたら、まだ見ぬピンクのひつじに会えるかもしれないのに……。なんでも性的なことや恋愛に結びつける世の中に馴染めない主人公の戸惑いを通じて、現代社会を描く問題作。
アセクシャルの自身に戸惑い、彷徨い、清爽と一歩を踏み出す――。
小説すばる新人賞受賞から10年。物語はしたたかに進化する。
【著者プロフィール】
渡辺優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。2015年に「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著作に『自由なサメと人間たちの夢』『アイドル 地下にうごめく星』『クラゲ・アイランドの夜明け』『アヤとあや』『カラスは言った』『私雨邸の殺人に関する各人の視点』『月蝕島の信者たち』などがある。
Posted by ブクログ
LGBTQIA+の+には無限の個性がつまっているんだと感じた。
他人を100%受け入れることも
自分のことを完璧に伝えることも
とてもむずかしい。
でもきっと寄り添うことはできるんだろう。
随分とフックが効いた言葉が頻発していた。笑
ひとつひとつを切り取ると重い話になりそうだけど
とても読みやすかったし読んでよかった。
Posted by ブクログ
直木賞候補作とのことで手に取る。自分がアセクシャル(他社に対して性的欲求を抱かないという性的志向)ではないかと悩む主人公が、デリバリー型SM風俗の電話番となることを通じて自己と向きあう物語。
ホットなトピックではあるが、ここまで誤解を恐れずに直接的な表現を試みた作品はなかなかないんじゃないかと思う。「この世界はスーパーセックスワールドだ。」という書き出しに始まり、少々面食らってしまうような単語もしばしば飛び出すが、それをものともせずにぐんぐんと物語を進めていく若さのある作品だと感じた。
そして不思議なことに、幾度も読者に投げかけられる問が無垢でストレートなものであるほど、いわゆる「当事者」だけのものではなく私たちみなが向き合うべき問題として、それは心に響くのだった。なぜ、恋愛感情とセックスがこれほど分かちがたく結びついてしまうのか。セックスがなければ愛ではないのか。それ以外の関係の形ってありえないのか。
消えた女王様である美織さんがどうやらあまり健全な人間ではないらしいというのは序盤から想像がついたものの、最後、真摯な対話を通して彼女のことを決して悪者にせず温かな形で着地させたのはちょっと意外で、いいなと思った。
Posted by ブクログ
スーパーセックスワールド‥って何それ?まずそのパワーワードに当惑する。
なぜ彼女が不動産会社を辞めて、女王様の電話番になったのかは明かされないままに物語は進む。姿を消した美織女王様を、好きだからと言う理由だけで探し始める彼女。彼女が美織を追うミステリーでもある。
彼女が探しているのは彼女自身でもある。自らをアセクシャルと自認するところから始まる、彼女の自分探しである。解答例もお手本もない孤独を、誰かに何とかしてもらうのは、確かに難しいことだ。他人事ではなくそう思う。でも結局のところ正解は誰も持っていないのかもしれない。
彼女はアセクシャルかもしれないが、人が好き。周りにいる人たちのことも、ほとんど善意でとらえている。それは彼女の生きる力となるはず。
美織さんの方が理解できないかな‥美織さんはそのままで生きてゆけると思うけれど。
Posted by ブクログ
またまた、変な人の話に遭遇してしまいました。
う〜ん、なんだろう。
まあ、ちゃんと最後まで読み終えたので特別面白もないけどつまらなくはなかったです。
感性が合わなかっただけ。
人は皆、悩みながら生きていくしかないのだな。
無理する必要はないけど、頑張って生きていきましょう。
Posted by ブクログ
第174回直木賞候補作。
受賞作含む候補作の中で読むとしたらこれかなぁと、なんとなく思っていた本と新刊の棚で出会えた。
飛んだ美織女王様を探していくうちに、彼女像のような物のカタチが変わっていく。
最終的に美織女王様が悪い人ではなくて良かった。
そして自身のセクシュアルと向き合うにつれ、少しずつハッキリとカタチが見えてくる感じ。
積もる違和感や周囲からの「普通」の圧だったり、善意のズレや理解されるされないことへの曖昧さのモヤモヤだったり。
アセクシャルについて、とりあえず感覚として触れられる距離感みたいなものとして、300ページくらいの小説はちょうど良かった。
テーマというか物語の芯になっているものに対して、シニカルだけど軽やかで読みやすかった。
グサグサと心を刺されるような内容は結構ありましたが、バッドエンドではなかったので読後感は割とスッキリとして良いものでした。
Posted by ブクログ
主人公の志川は前に勤めていた会社で大好きな先輩と付き合う寸前に性的なことは無理と思ってしまい、人間関係がこじれて辞めてしまった過去を持ちます。その後、資格を取るために勉強をしながらバイトを始めます。それが女王様マッサージ専門店「ファムファタル」の電話番です。風俗にそれほど偏見がない志川はわりと楽しく仕事をしていたのですが、憧れの女王様の美織が突然音信不通になったことを心配して —— 。
他人に性的な興味を持たないアセクシャル、自分がそうかもしれないと気付いた志川。でもそれを他人に理解してもらうのは難しく、前職ではそれが元で大好きな先輩も友達も失いました。
突然会いたいと連絡してきたその友達の目的に、やっぱりと思いました。友達の恋を応援していても実は自分も好きというのはよくあるシチュエーションですし、友達より好きな人の立場を優先する気持ちになってしまうのも無理ないことかもしれません。読んでいてちょっとムッとしてしまいますけど。
美織さんの消息について調べていく過程はミステリーの要素もあり、ワクワクドキドキしました。
主人公の志川があっさりした思考に思えて没入感は浅めですが、そこそこ面白かったです。
Posted by ブクログ
泳ぎ切ることは難しくとも、せめて、その泳ぎを見せられるように努力したい。そんな力を感じる作品だった。人を制御しているものはなんだろうなあと、漠然と思った作品でもある。
Posted by ブクログ
後半は人探しになるが、結末が呆気なさすぎて拍子抜け。主人公のコンプレックスの部分もストーリーの本筋にはあまり関係ない気がして、うーん。ブランチとかで紹介されてた本だったか。
Posted by ブクログ
まっとうなことを考える脳の容量が〇〇のことを考えるのに使用されているせいで考えられない
→キャパオーバーの時の私すぎる
吉野ちゃん怖いけど、こういう人が合理的に行動して得するんだろうな
読み進めながら、美織さんはどんな悪い人なのか、あるいは全部理由があって普通にいい人なのかとか考えながら読んでいった。
結局、いい人でも悪い人でもなく、思ったことを思うがままにやっていた人だったというだけだった。
なんかふわっと終わったな〜という感じ
Posted by ブクログ
難しかった。ハラスメントと一緒でいろんなセクションに名前がついていて自分が当たり前?と思って話してたことが相手を傷つけてることもあるんだなーと思った。誰もが皆それぞれの天国を持っているそう思える方が幸せだと感じた。
Posted by ブクログ
不動産会社を辞め、女王様のマッサージ店の電話受付を始めた志川。ごはんに行く約束をした女王・美織が無断欠勤し、仕事に来なくなった。美織の行方を追うが…
色々な人との付き合い方が書かれています。結婚していることを隠してW不倫している友人。彼氏が元カノと会うのが許せない友人。元風俗で働いていた友人。嬢を派遣してもらう老人。そして志川自身は…。
直木賞の候補作で、『女王様』というキーワードなので、もう少しドロッと性的なものを想像して読み始めたものの、性的な表現はなく、とても読みやすい。これから恋愛をする世代向けです。
人間そんなものだ、とおばちゃんの私は思うのですが、志川は人を疑いません。
小説の主人公は賢く冷静な人物像が多い中、この志川の駆け引きのない一直線な考え方と行動は、若くて新鮮だなぁ、と思います。
LGBTQについては、「そういうものなのね」と考えるようにしているので、私自身あまり心が動かされなかった。それよりも志川が美織の行方を追う時点から、それはやっちゃあかんやろ、と思うことが続出して、志川の行動と重要な主題のアンバランスさが気になりました。
でも爽やかに読み終わりました。
Posted by ブクログ
小説すばる新人賞の『ラメルノエリキサ』を本棚登録したまま放置していたら、いつのまにか最新作が直木賞候補になっていたので読んでみたもの。
なかなかどうして面白い。終盤戦で美織さんは実は”とっても悪い人”なんじゃないかと思わせるところ(彼女宛の遺書が出てきたところ)があってこれがオチだったかと思いましたが、結局、そういうことではなくて(そうかもしれないけれど)、天然だったことにホッとしました。
『ラメルノエリキサ』を読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
何が「普通」で、何が「普通じゃない」のか。
どうして「好き」の先には、
いつも身体の関係がある前提で語られてしまうのだろう。
『女王様の電話番』渡辺 優
「多様性」という言葉を、
最近は本当によく耳にするようになった。
朝井リョウさんの『正欲』を読んだときと同じで、
分かったつもりになっていただけで、
自分は何ひとつ噛み砕けていなかったのだと、
この物語を読んで思い知らされた。
✧
主人公の志川は、アラサーの女性。
世の中では、結婚や出産を
意識し始めるのが「当たり前」とされる年齢だ。
けれど彼女は、自分がアセクシャルであることを
静かに受け止めながら生きている。
風俗店で電話番のアルバイトをする志川は、
推しの女王様・美織さんと食事の約束をする。
ところが、ある日その美織さんが忽然と姿を消してしまう。
彼女の行方を追う中で、
志川は過去の記憶と向き合いながら、
あらためて「性」や「関係性」について
考えざるを得なくなる。
✧
「私はそういうのに全く偏見ないから大丈夫」
この言葉を、何度聞いてきただろう。
多様性が語られるようになってから、
理解者のつもりで、うなずく人は増えた。
でももし、志川と星先輩のような関係を
すぐ隣で目にしたとき、
同じ言葉が出るだろうか。
人は結局、
何かしらの型に当てはめて安心したがる生き物で、
そこから外れた瞬間、
簡単にマイノリティになってしまう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
ファミリー向けの間取りに納まることを想定された
無数の人生のひとつに納まり、
誰かと一緒にあの部屋灯りのひとつを
灯すことを望んだ。
でも私は、ただ一人で天井を見ていた。
私には誰もいなかった。(P230)
━━━━━━━━━━━━━━━━━
美織さんの失踪の謎と、
志川自身が向き合う「性」の問題。
正直、この二つは
別々の物語でも成立したかもしれない。
それでも、迷いながら、もがきながら、
自分の居場所を探している今の時代の人には、
他人事だとは言い切れない人も多いはず。
自分は「分かっている側」だと思っていた人ほど、
立ち止まってしまう一冊です。