渡辺優のレビュー一覧

  • 自由なサメと人間たちの夢

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    真っ先に抱いた感想は「メンヘラっぽい」。
    この短編集の登場人物たちも、作者も、この本を気に入る読者たちも。
    これは馬鹿にしているわけではない。
    人間の心を描写する必要のある小説というものにおいて、「メンヘラ」というのはとても現代らしい扱うべき対象だと思う。

    「メンヘラ」というネットスラングは最近では大分世間にもなじんできたと思うが、はっきりと説明するのは難しい。
    一言でいえば「心の健康を損なっている人」を指すが、多くの場合、その病状が著しく重い人は含まれない。
    希死念慮が中途半端に強いものの実行には移さない、いわゆる「かまってちゃん」のような人を揶揄する意味合いを含めて呼称することが多い。

    ただ、重度にしろ軽度にしろ心が健康でないのは明らかで、現代の日本にはそういう人たちが一定数いる。
    男女は問わないが、若者に多いイメージ。

    彼らにとって、この短編集は少しの救いになるかもしれない。
    メンヘラがメンヘラなりに納得できる一歩を踏み出した作品が揃っていて、過度な期待を持たせるような現実離れしたハッピーエンドではなくて、妥協点を見せてくれる。
    もしかすると、自分を客観視するきっかけにもなるかもしれない。

    「ラスト・デイ」
    「さて、私は死にたい。」の一文から始まる本作の主人公は、強い希死念慮を抱いているものの、「一度しか死ねないからもったいない」とのたまう。
    そんな主人公が、精神病院の退院日を最後の日と決めた。
    自分の不安定な精神のせいで周囲の人間を振り回すわかりやすいメンヘラなのだが、終盤にかけて真意が見えてくると、清々しい物語に変わるのが面白い。

    「ロボット・アーム」
    不運な事故から右手が義手となった主人公は、力への憧れを刺激されて、その欲望がエスカレートしていく。
    力を望むこと、力を手に入れること、その力を行使できることのそれぞれの間には大きな隔たりがあるな。

    「夏の眠り」
    主人公は幼馴染との出来事がトラウマになっていて、その記憶から逃れるために明晰夢を見ようとする。
    悩みは人それぞれだとは思うが、悩み込みすぎておかしな方向にいってしまうのも病みがちな人の特徴か。

    「彼女の中の絵」
    絵の技術はあるのに絵を創造するセンスはないと悩む主人公のもとに、夢の中で見た絵を探しているという女性が現れ、主人公はその絵を再現することにする。
    人それぞれにできることとできないことがあり、協力し合うという正しい人間の営みを見た。
    この短編集の中で一番気に入った。

    「虫の眠り」
    学校でいじめられていた少女が、同級生をボールペンで刺す事件が起こった。
    しかし、刺されたのはいじめの主犯格の生徒ではなく、いじめ被害者の少女に寄り添っていた生徒だった……。
    「藪の中」のようでもありつつ、「人は自分が見たいように物事を見る」ということによりフォーカスした作品。
    おもしろかったが、本当に病んでしまった人間は怖いなという感想が上回ってしまった。

    「サメの話」
    自分自身のコントロールもままならず、ぐちゃぐちゃな人生を歩みながらも、「サメを飼うこと」だけを目標に生きている主人公の物語。
    強烈な欲望があっても、人生それだけではない、というか、環境が変われば望むものも変わる……。

    「水槽を出たサメ」
    サメ視点で語られる「サメの話」の後編。
    「サメの話」の物語としてはすこし蛇足だったようにも感じるが、この短編集全体の総括のような位置づけでもあるので、不要とまでは言えないか。

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    2020年10月07日
  • 行きたくない

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    行きたくないってら気持ちがさらに増幅した!!!!
    2つ目の話はイライラが止まらんかった…。
    全体的に不思議な空気を纏った小説だった。

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    2020年07月14日
  • アイドル 地下にうごめく星

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    地下アイドルがテーマ。
    女装アイドルや天使を名乗るアイドルなど、登場人物の思考や背景が少しぶっ飛んでいて面白い。
    けど、ストーリーは真面目で夢見ることの大変さ、好きなだけじゃ駄目なことを思い知らされる。

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    2020年07月04日
  • 行きたくない

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    加藤シゲアキ 阿川せんり 渡辺優
    小嶋陽太郎 奥田亜希子 住野よる
    6人の作家さんが手がける
    それぞれの『行きたくない』短編集です。

    渡辺優の『ピンポンツリースポンジ』は
    1人に1台所有するAIロボットが
    朝、突然「行きたくない」とエラー表示を起こす
    という不思議なお話。
    ちょっと近未来的な、
    この先有り得てもおかしくなさそうなストーリーで
    とても好きだなぁと思いました。

    加藤シゲアキ以外は初見の作家さんばかりだったので、
    それぞれの代表作を
    今後読んでみようと思います。

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    2020年05月02日
  • 自由なサメと人間たちの夢

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    以前読んだアンソロジーの「行きたくない」を読んで気になった渡辺優さんの短編集。
    社会で上手く生きられず、どこか歪んだ人たちの願望が凝縮されている。妄想、空想と現実が交わる日々から少しずつ現実で自己を取り戻すまでの描写が良かった。

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    2020年04月11日
  • 行きたくない

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    行きたくない、そんなときが誰にでも。

    立ち止まっていることに対して、マイナスのイメージがあるのはなぜだろう。「行きたくない」けれど、別にここにいたいとか、ここが好きとかではない。明確にことばにできないけれど、「行きたくない」ときがある。逃避と言われても、目をそらしていたいことがある。各短編の登場人物それぞれに、「行きたくない」理由がある。結末は、前向きに立ち止まるようなものが多い。進んではいないけれど、進んでいるような。決して、読後が暗い作品ではない。

    渡辺優「ピンポンツリースポンジ」将来、もっとロボットが発展したら、なんとなく理由はないけれど行きたくないと言い出すロボットが出て来るかもしれない。そんな、ロボットに親しみがわく未来を想像しつつ。どうしてもロボットに感情移入してしまう人の話でもある。

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    2019年10月23日
  • 自由なサメと人間たちの夢

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    サメだ…!

    帯に納得である。
    短編集ではあったけど、その数の分だけの人生と、彼らの追う夢を見た気がした。あとサメ生も。

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    2019年10月02日
  • ラメルノエリキサ

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    復讐することを心にきめている女の子のお話。いろいろと屈折しているし、社会的な正義や道徳とはずれているのだろうけれど、主人公の女の子含め皆憎めないところがある。読み終えた後、なぜか爽快な気持ちになる。
    2019/3/14

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    2019年03月14日
  • ラメルノエリキサ

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    過激とも捉えられるほど復讐に執着する女子高生が主人公。見た目が可愛いだけあってこんな子が本当にいたら脅威だろうなあ

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    2019年03月04日
  • ラメルノエリキサ

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    女子高生・小峰りなのモットーは、やられたらやり返すこと。ハンムラビ法典以上の復讐の鬼である彼女が夜道で刺された。犯人が残した謎の言葉「ラメルノエリキサ」とは何か。第28回小説すばる新人賞を受賞した異色の青春小説。
    エキセントリックだけど、それがとても魅力的なヒロイン。自己中心的で周りに流されない彼女が、犯人探しに疾走するうちに見つける大切なもの。大胆な設定だけど嘘臭くならないのは著者の巧さだろう。

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    2018年06月24日