辻堂魁のレビュー一覧
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「十一」が越前守から禄をもらう
大岡越前は本能寺の住持、日彦が死の間際に言い残した悔恨の言葉を聞いて、17年前に起きた寺小姓、直助殺しの事件の再調査を古風十一に依頼する。
御鷹匠番餌差、古風十一は若く溌剌とし、加えて頭の良い好青年である。十一は越前守に見込まれて、わずかだが禄を貰って仕えている。
もっとも、事件は17年も経って人の記憶も薄れていて、十一ははっきりと事件の真相は掴めなかったが、ただ事件に関与したであろう人物の名前だけは掴めた。
真相は鉄砲組百人組与力で、今は隠居の身の上、一色伴四郎から大岡に書状が届き判明した。伴四郎は事件の被害者直助の父でもある。
本能寺の檀家に野添家があった。野添家主、真親は鉄砲百人 -
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大岡越前守忠相。還暦を越えてもなお吉宗の計らいで寺社奉行として幕閣に留まる旗本だ。忠相には南町奉行時代に下した裁きの中に引っ掛かりを覚えるものがあり、晩年を迎え内々に再吟味に乗り出すことにした。
シリーズ2作目の本作は、本編4章と序章および結章からなる。
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今回の再吟味は 17 年前に起きた、寺の下男だった少年が殺された一件である。
当時の調べでは、2人の所化による折檻死であると判明。
これは過失致死であり、少年の父から下手人御免の願いが出されたこともあって、入牢していた2人の所化は放免という裁きが下されたのだったが……。
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市兵衛の友であり市井の名欄医 柳井宋秀を仇と狙う女郎がいるという。柳井宋秀は信州下伊那の出身で保利家に仕える菅沼宋秀というご典医だった。女郎は名を理緒といい、父は保利家の元勘定奉行 赤木軒春で柳井宋秀に切られて死んだと吹き込まれてていた。下伊那ではかつて紙会所を作って利権を得ようとする一派と紙漉き農民らとの間に紛争が起こり、宋秀の実の父も捕らえられ命を落とし、宋秀自身も養子に入った菅沼家から離縁されていた。当時の宋秀の仲間だった面々は今や藩の重鎮になっているが、赤木軒春の残した科野秘帖を巡って、再び血生臭い事件が起こる。
北町奉行所同心 鬼渋の別れた女房との間にできた息子の放蕩も絡み、事件はさ -
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市兵衛の京都時代の悪友で今では江戸の宰領屋(口入屋)の主に納まっている矢藤太の頼みで誘拐事件に巻き込まれる。誘拐されたのは元京都町奉行の旗本 垣谷貢の末息子 勝之助で身代金三千両を要求されていた。垣谷は、幼い息子の命には代えられないと三千両を払う前提で、市兵衛に賊のねぐらを探り出すことを依頼する。誘拐された勝之助は、垣谷はと後妻との間にできた子で、その後妻は、市兵衛が京都時代に仕えた九条篤重の娘、お吹だった。そして、誘拐事件の背景が明らかになるにつれ、垣谷家の闇の部分も露わになってくる。
市兵衛の京都時代と初恋も背景に描かれていて、シリーズの中でも異色な作品になっている。