【感想・ネタバレ】はぐれ烏 日暮し同心始末帖のレビュー

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純粋な気持ちの日暮龍平

2023年12月11日

北町奉行所の平同心、日暮龍平は三十歳で、身重の妻と子供一人と八丁堀に住んでいた。
龍平は、元は旗本沢木家の三男の部屋住みだったが、日暮家の娘、麻奈に見初められ、奉行所与力の日暮家に婿養子に入った。作者が描く徳川時代小説は、江戸時代後期、1800年前後の時代背景が多い。その頃は太平の世が永く続き、武士...続きを読む階級が壊れていく頃であり、代わりに商人や町人の活動が盛んな時代であったようだ。旗本でも、この時には落ちぶれ果て貧乏に苦しみ、生計もままならない状態の武士が増えたのである。
龍平は奉行所では平同心なので、自身の仕事をしている間にも他の同心たちから色々と雑用を頼まれる。しかし龍平が若い時に武道で鍛えた体と私塾で学んで得た才能で、そつなく頼まれ事をこなすのである。
菓子問屋鹿取屋の娘が拐かされているという訴えがあり、調べると娘は惚れた男のもとに嫁ぎたいのだけれど、お店を大事と考える親との意見の相違があって、娘が勝手に家出をして惚れた男のもとに走っただけであった。ただ、龍平には武家には無い町人たちの暮らしぶりが新鮮なものに感じられて魅せられるのであった。
この後、鹿取屋は破落戸たちに強請られたのだが、龍平は武士二人を含む破落戸を、武士は斬り殺して、後は捕縛して見事一味を退治する。
最後は、鹿取屋の娘が年が明けた春に、新たに婿を迎えるという目出度い筋書きだ。
鹿取屋の娘が惚れた男、川太郎もその出自を辿ると、武士生まれだが貧しさゆえ幼い頃に捨てられたという。
豊かな人がいる反面、貧しくても逞しく生き生きと暮らす町人たちの営みを直接肌で感じるこの仕事に、龍平は彼らから教えられるものが多く、そして憧れに似た感情に駆り立てられるのである。しかも彼らに対してもっと純粋な気持ちが龍平に湧くのかもしれない。とても興味があり面白い物語だった。
奉行所の他の同心たちは、その性根には江戸の商人や町人、大名などから事あれば金のために動く者ばかりである。それはそれとして良いのであろうが、プラス何かを感じさせる龍平である。

#ほのぼの #タメになる

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Posted by ブクログ 2017年09月05日

内容(「BOOK」データベースより)

北町奉行所平同心・日暮龍平。旗本ながら部屋住みを嫌って町方に婿入りした、妙な男である。ひょろりとした痩躯に柔和な風貌だが、実は小野派一刀流の遺い手。何も知らない同僚は、雑用をおしつけ“その日暮らしの龍平”と嘲笑うが、一向に意に介さない。ある日、北町奉行から凶悪...続きを読む強盗団の探索を命じられ…剛剣で江戸の悪を一掃する痛快時代小説!


平成29年8月31日~9月5日

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Posted by ブクログ 2023年07月08日

思っていた通り、無茶苦茶面白かった。このシリーズも、読み進めなくちゃいけなくなってしまった。しかし、風の市兵衛シリーズも3刊までしか読んでないので、ヤバイなあ!

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Posted by ブクログ 2021年08月16日

優れた、読み継がれる時代小説は、その書かれた時代にシンクロ・フィットすると思っています。同時代に影響された思想や、ありたい世の中への希望や、そこはかとない懐かしみを盛り合わせて創造するのです。

 山本周五郎の生真面目な剛直とまで言える精神(戦後復興期)、池波正太郎の洒脱さにくるまれた暖かい人間観察...続きを読む(高度経済成長期)、藤沢周平の哀愁こもった深い情緒(安定成長期)が今までのわたしをとらえました。

 辻堂魁さんはまた、異なった方向から時代小説に切り取ってくれます。

 北町奉行所平同心日暮さんの「事件簿」ではないのです。「始末帖」なのです。でてくる事件はありふれています、けれども事件を単に解決することだけではなく、収めどころが憎いのです。「悪いことは悪いばかりじゃない」「法に反しているがお目こぼしがあっていい」大げさに言えば多様性のように思えます。今の時代にとても必要なことですね。

 3話収録してあるのですが、「序」の章もありましてそれが「親のしつけ」ですよ、現代における耳に痛い話じゃないですか、1話2話がそう。

 (いまのところ)シリーズ7巻まであるので、いろいろの提起があるのではないかと思っております。

 余談ですが、事件の舞台として江戸の町名が、うるさいくらい詳しく出てきます(よく調べてあります)。そりゃそうでしょう、江戸時代は歩くのが当たり前なんですから、人物が動けば、この町からあの町までとなる。

 今では東京の街はすっかり郵便住所表示になってしまいましたけど、昭和時代、旧町名で成長したわたしなどにはとても、とても懐かしいものです。そういうところでも時代物はいいですね。

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