辻堂魁のレビュー一覧
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上役の藩札乱発の罪に連座し失職した越後宇潟藩の竹本長吉は文政12年(1829年)、故郷に妻子を残し、仕事を求めて江戸に出てきた。請人宿で斡旋された勤務先に溶け込めなかった長吉は、翌年から、新たに紹介された「雇足軽」の職に就く。
「雇足軽」は、関八州取締出役・蕪木鉄之助の元、数名で一年をかけて関東八州(上総、下総、安房、常陸、下野、上野、武蔵、相模)の農村を巡回し治安を維持する幕府勘定所の臨時雇である。
わずかな日当だが、旅費などは勘定所持ち、仕事の内容としては、無宿者の改め、博奕や喧嘩、風俗の取り締まり、農間渡世の実情調査や指導など地道なものだった。
物語では、八州を回る鉄之助一行の旅先での取 -
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旗本の家柄ながら、元服後すぐに江戸を出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。
シリーズ32作目。第弐部12巻。
◇
市兵衛と矢藤太は両替商近江屋刀自の季枝の仲介で、下り酒問屋の摂津屋主人からの依頼を引き受けることになった。
摂津屋の主は里右衛門といい、還暦を迎えて大病をしたことで、この世での心残りを清算するための人探しをしようとしていた。
探すのは3人の女で、里右衛門によると時期は異なるがいずれも自分の女房にと思ったものの身分違いで叶わず、知らぬうちに女の方から姿を消 -
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内容(ブックデータベースより)
命あるうちに、おのれの心残りに始末をつけたい。
遠い昔、別れの言葉もなく消えた女に、
市兵衛は初老の豪商の真心を届けられるのか!?
大人気!感涙の時代小説
還暦を前に大店下り酒屋の主・里右衛門が病に倒れた。店の前途もさることながら、 里右衛門の脳裡を掠めたのは、若き日に真心を通わせた三人の女性だった。唐木市兵衛は、里右衛門から数十年も前の想い人を捜し出し、現在の気持ちを伝えてほしいと頼まれる。一方、店では跡とりとなる養子が、隠居しない義父への鬱憤を、遠島帰りの破落戸にうっかり漏らしてしまい……。
令和5年10月4日~7日 -
ネタバレ 購入済み
小太刀遣いの女剣士
大川のお厩の渡しは浅草と本所を結ぶ船渡しである。
本所側の河岸通りを少々北に行った大川端に、萱葺屋根の出茶屋が、《お休み処 やき餅くさ餅》の幟を出している。その店の女将は、おはやと言い、嘗て松江藩、松平家の勘定方下役を務めた田部権之助の娘であった。父が勤め先で不正の疑いを掛けられて訴えられ、家は改易にあった。この娘は父譲りの小太刀の遣い手、武士にも劣らぬ強い女剣士だ。父の務めの上役組頭の二人を斬って殺し、仇討ちを果たした。娘は郷里を離れて、父の友が住む江戸へと向かったが、路銀も少なく、旅籠の下働きなど雑用をしながらようやく食いつなぎ、2年の放浪を経て何とか江戸にたどり着いた。しかしすでに父の友