辻堂魁のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
夜叉萬シリーズのファンで、その他の辻堂魁の本『吟味方与力人情控』なども好きなので、この新装版を読んでみた。
正直なところ導入部からしばらくは、これを選んで失敗だったかと思った。
かつては隠密仕事をしていた九十九九十郎は理由あって今は世間の揉め事をおさめることを生業としている。
最初は皿を割ったの割らないのといった揉め事が中心で、このまま話が終わったらどうしようかと思った。
ところが九十九の家に、突然女の子が働かせてくださいと出てくるあたりから面白くなる。
もう、ここからは一気に読みたくなった。 この七という女の子が家の事はなんでもこなし、子供なのに機転が利く。
もちろん、同時進行で起こる事件の展開もなかなか面白かった。
結局のところ、読み終わった時にはシリーズの次作を読みたいと思ったのだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前巻の感想で「大きな陰謀や事件と、市兵衛の緊迫した剣の場面が好きな読者には、ちょっと物足りないかも」と言うコメントをしたのだが、今回は、いつもの展開や剣の場面が戻ってきたような。
それにしても、早菜と市兵衛の間には、微妙な空気が流れている。これはもしや、と思ってしまいつつ、読み進めていくと、終盤、市兵衛が≪空蝉≫に気づく場面がある。
『市兵衛は自分の心が何かに躓いたような気がして~(略)自分の心の奥を探るかのように見入ったのだった。だが、市兵衛はすぐにそれを止めた。それが何かはわからなかったが、わからぬならわからぬままでよいのだと~』
なんだか、自分の淡い気持ちに気づきかけたというよりは、寂しげな。
そして、最後に、武州松山に出発する早菜を見送る。早菜は、骨をおさめ墓参りしたら、また戻ってくるはずなのに、また寂しげな描写。
どういうことなのだろう・・・
気になってしまう。
少し前から感想に残していることだけど、市兵衛自身にも幸せになって欲しいので、親戚のおせっかいおばさんのように、市兵衛の今後も気になってしまう。 -
Posted by ブクログ
旗本の家柄ながら、元服後すぐに江戸を出奔。大坂で商売と算術を、奈良の興福寺で剣術を学び、江戸に戻って臨時雇いの用人稼業で生計を立てる唐木市兵衛の活躍を描く、時代サスペンス。
シリーズ32作目。第弐部12巻。
◇
市兵衛と矢藤太は両替商近江屋刀自の季枝の仲介で、下り酒問屋の摂津屋主人からの依頼を引き受けることになった。
摂津屋の主は里右衛門といい、還暦を迎えて大病をしたことで、この世での心残りを清算するための人探しをしようとしていた。
探すのは3人の女で、里右衛門によると時期は異なるがいずれも自分の女房にと思ったものの身分違いで叶わず、知らぬうちに女の方から姿を消してしまったという話である。
市兵衛たちの仕事は、その3人を捜し出し手切れ金百両を手渡すことだった。
同じころ、北町同心の鬼渋こと渋井鬼三次は、遠島が解けた始末屋の柳五郎が江戸に戻り、再び始末屋稼業に手を染めているという情報を得て探索に当たっていた。
( 第1章「根岸」) 序章と終章を含め全6章。
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今回の市兵衛の仕事は人捜し中心。市兵衛は矢藤太と手分けして、かつて里右衛門と情を通じた3人の女の行方を辿ります。けれどその過程での苦労は特になく、描写もあっさりしたものでした。
そのかわり詳細に描かれる女たちの半生がなかなか読ませます。つまり本巻は、人情ものとしての色合いが濃い内容だと言えるでしょう。
さて、シリーズ最大の見せ場となる剣戟シーン。敵役である柳五郎の設定が魅力的で、展開に期待しながら読み進めました。
何と言っても「始末屋」です。剣術は我流ながら天性の運動神経と怪力で、超腕利きの殺し屋。それが柳五郎です。
鬼渋が捕縛に向かいますが、いかに鬼渋でも柳五郎には刃が立たないでしょう。市兵衛といえども簡単にはいかないに違いない。ワクワク感は高まります。
けれど当外れでした。不意に斬りかかってきた市兵衛の剣先を避けようと転がったときに足を痛めた柳五郎は、市兵衛から逃れるだけで精一杯。結局、逃亡先で鬼渋・助弥・蓮蔵の三方からの攻撃を防ぎきれずにお縄となってしまいます。
3人の女たちの人生に紙数を費やし過ぎたため、柳五郎の大物感を十分に演出できなかったのでしょうが、クライマックスの殺陣を楽しみにしていたので、あまりのあっけなさが残念でした。
それでも、エピローグとなる終章で見られた、市兵衛のほのかなロマンスシーン。ここは実にステキでした。
村山家息女の早菜に市兵衛が一瞬見とれたところや、早菜と市兵衛が無言のうちに心の交流をするラストの情景。
本巻に限ってはいちばんの見どころだったように思います。