あらすじ
古風(さきかぜ)十一(じゅういち)、話を聞く耳を持て。
裁きの陰で泣いている者はおらぬか。晩年の大岡越前を支え、少年の死の謎を追う若き十一。
町奉行から外れても、大岡越前は裁きが気にかかる。
十七年前、寺の年若い下男が折檻されて殺され、山桜の下に埋められた。父親が下手人御免の願いを出し、皆、お咎めなしと決した。
その事件にいま、ある疑惑が浮かぶ。大岡越前は、鷹匠の子・古風十一に探索を命じた。
あの裁きは正しかったのか?〈文庫書下ろし〉
辻堂 魁の「次」はこれだ!
味わい豊か、情感あふれる異色の事件帖。若き古風十一の活躍を描く、上質な時代書下ろし小説!
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Posted by ブクログ
楽しく読めた。ちょっと話が飛びすぎてたけど、まぁ、いつも通りの感じでした。
そこまで登場人物を多くする必要があったかどうか・・・?な気もしました。
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。
前作より面白かったように思う。
前作の感想で、過去の裁きを調べ直す、と言う設定なので、既に大罪人として裁かれ亡くなってしまった人の命は戻らず、歯がゆい、と言うようなことを書いた記憶があるのだが、
勿論、今回も同じ設定で、過去の裁きの再調べ、なのだが、
今回は17年前に殺されてしまった少年の事件を調べ直す、ということで、少年の名誉も回復されたと思うし、裁かれるべき人が、それなりの報いを受けた、と言う事で、救われる気持ちになった。
「十一」が越前守から禄をもらう
大岡越前は本能寺の住持、日彦が死の間際に言い残した悔恨の言葉を聞いて、17年前に起きた寺小姓、直助殺しの事件の再調査を古風十一に依頼する。
御鷹匠番餌差、古風十一は若く溌剌とし、加えて頭の良い好青年である。十一は越前守に見込まれて、わずかだが禄を貰って仕えている。
もっとも、事件は17年も経って人の記憶も薄れていて、十一ははっきりと事件の真相は掴めなかったが、ただ事件に関与したであろう人物の名前だけは掴めた。
真相は鉄砲組百人組与力で、今は隠居の身の上、一色伴四郎から大岡に書状が届き判明した。伴四郎は事件の被害者直助の父でもある。
本能寺の檀家に野添家があった。野添家主、真親は鉄砲百人組之頭に就ている。そして跡継ぎとして息子の泰秀がその組に属していた。鉄砲の訓練は練習場にて行われていたが、泰秀は練習熱心の余り、禁止されていた練習場外、郊外の雑木林近くにある湖沼で、鳥の小群を撃ち落とすために発砲したが、的を外して近くにいた百姓、達吉に当たり死なせてしまった。不慮の事故であったが一人の命が奪われた。
この事件の処置は、公にはされず内々に示談で解決された。その役目を担ったのが裁定所留役、水下藤五である。
その後、水下は野添家の妻、野江と本能寺で密会するようになり、その様子を直助に目撃されたので、直助は口封じで殺されたのであった。
更に謀り事は続き、水下は直助の父、一色伴四郎を騙して下手人御免の願い状を書かせて、本能寺の2人の所化、知念と本好を無罪とした裁きをさせたのである。
切れ者として通っていた水下が、自らの欲に目がくらみ、暴走して事件を勝手に処分したのである。
殺された直助が余りに不憫で可哀想である。
大岡越前は江戸の庶民に愛された名奉行であり、将軍からも憶えが好いが、反面、城内の一部の家臣や重臣からは妬まれていたことが判る。概して言えば、武士や大富豪たちは、庶民のことなどどうであろうと良いのであり、大岡の庶民を大切に思う気持ちとは相容れない考え方だったようだ。
Posted by ブクログ
大岡越前守忠相。還暦を越えてもなお吉宗の計らいで寺社奉行として幕閣に留まる旗本だ。忠相には南町奉行時代に下した裁きの中に引っ掛かりを覚えるものがあり、晩年を迎え内々に再吟味に乗り出すことにした。
シリーズ2作目の本作は、本編4章と序章および結章からなる。
◇
今回の再吟味は 17 年前に起きた、寺の下男だった少年が殺された一件である。
当時の調べでは、2人の所化による折檻死であると判明。
これは過失致死であり、少年の父から下手人御免の願いが出されたこともあって、入牢していた2人の所化は放免という裁きが下されたのだったが……。
* * * * *
前作よりおもしろかった。理由はいくつかあります。
いちばんの理由は、事件が謎に包まれた設定になっていることでしょう。だからサスペンスとして読み応えがありました。
また十一と金五郎の息がぴったりで、捜査の描写がおもしろく、読んでいて退屈しなかったのも大きいと思います。
さらに忠相も終盤に十分に存在感を放つ動きを見せていたし、エンディングで ( 恐らく ) 吉宗が申し渡した沙汰も読後感をよくしています。
物足りなかった点は2つです。
1つめは、お半がつけ足し程度の登場だったこと。十一と誼を通じそうな感じはよかったですが、彼女の魅力を考えればそれだけでは不十分だと思いました。
2つめは、十一の殺陣が控えめだったこと。どうしても唐木市兵衛と十一のイメージが重なるため、もう少し派手めの剣撃シーンを望んでしまいます。 ( それでも前作のあっけなさよりはマシでした。)
ただ、本作は主要人物の動きがかなりこなれてきており、次作に大いに期待できると思いました。