福永武彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本文の一部が、いつぞやのセンター試験(本試験か追試かは忘れた)で使われてた。
戦後まもない時代の、とある家族の物語。
ある章では父の視点、別の章では娘の視点というように
それぞれの章が家族の中の一人の視点から描かれている。
このタイミングで読んで良かったなあと思えた本だった。
10代の頃ってまだ家族と一緒に暮らしているのもあるし、精神的にも未熟だからあまり自分の家族を客観的に捉えて、考えることってできないけど、
一人暮らしを初めてあと数年後にはもしかしたら自分も家族とかもつかもしれないんだよなあとか思うようになると、家族を扱った小説が割とリアルに感じられるようになる。
読んでて思ったのは、家族 -
Posted by ブクログ
◆ 過去と終わりに向かって 男は旅立った ◆
分厚い二冊を一挙に読んだ。
一昼夜の 特別な体験だった。
男が列車に乗って広島まで行く。それだけの話。
ヒロシマはシノシマでもある。原爆がからんでいる。
時空が分解され渦巻くように集約していく。
三人の登場人物 相馬鼎、萌木素子、相見綾子の名前は 実在の人物以上に ぼくの中に残った。
日本文学最良の財産のひとつ。
持ってる本の数だけ読んだ作品。
というか、出たすべてを購入してると思う。
この文庫は、まだ出てるんやろか?
もともと河出書房新社の普及版で読みました(これには時刻表とカレンダーが栞としてついていた)。
感動のあまり、発作的に古 -
Posted by ブクログ
ある家族の肖像を、家族の一人ひとりの視点から描いた、連作短編集。戦時に友を死なせ、もっとさかのぼればごく幼い頃に生まれてきたことを否定されて、己の生きる意味を見出せないまま、亡霊のように生きてきた父親。その夫との間に愛を築きあげることができず、かつて生まれたばかりで死なせてしまった息子のことを嘆き続けて、病み衰えている母親。晩生な長女と進歩的な妹、二人の娘たちのそれぞれの恋愛……
それぞれの独立した短編を続けて読むと、大きなひとつの長編になっている形式です。
重厚。ひとつひとつの短編が非常に重く、しかし心の機微が丁寧に描かれていて、引き込まれて一気に読まずにはいられない力がありました。