福永武彦のレビュー一覧

  • 草の花

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    愛と孤独について。
    祈りのような、音楽のような、美しい文章。
    ああ、もっと、若いころに出会いたかったなあと思う。10代20代くらいの、寂しくて寂しくて仕方なかったころに。孤独と向き合い続けるのは辛いけれども、空っぽは、自分で埋めるより他にどうしようもない。

    汐見の思う「愛する」ことについて共感できるところもあるのだけれど、やっぱり本当に藤木きょうだいを愛していたかとなると千枝子の意見に賛成…
    「人から愛されることには何の孤独もない」と汐見は言うけれど、愛されていても孤独はなくならない、と思う。藤木くんもそう言ってた。
    ふたりが愛を返したとしても、汐見の孤独はそのままそこにあるのだと思う。

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    2021年08月10日
  • 矢の家

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    推理小説古典黄金時代の20年代作品。この時代の特徴なのか、推理よりは関係者の心の様子を追うストーリー展開がこの作品でも顕著。でもアノー探偵のキャラクターは新鮮であった。

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    2021年06月01日
  • 草の花

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    ネタバレ

    かつて、藤本ひとみ氏が、コバルト文庫で活躍していた時代に、私はその作品を千切れるほど愛読していた。
    10代の子供だったけれど、藤本さんの作品は少女小説という枠をはるかに超えて、若い読者に対し、愛をするとは、生きることとは、命を尽くすとは、繰り返し考えさせる物語を編んでいた。
    本書『草の花』は、若い時代に受けた、あの強いメッセージと葛藤を、少し生き過ぎた私へ、再び、そして立ちどころに蘇らせた。
    冒頭に、汐見のダンディズムを強く匂わせながら、彼を退場させ、遺された2冊の「ノオト」で、その過去を、生きる汐見の一人称で、現在として語らせる。この構成の巧みさが素晴らしい。
    戦中から戦後に青春を送った彼が

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    2021年04月14日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    とにかく町田康の宇治拾遺物語が笑えて最高!疲れが吹き飛ぶ面白さ。
    最初の日本霊異記は、現代の常識じゃ理解できない展開ばかり。オチそれでいいの?みたいな。
    最後の発心集までくると、普通にしみじみ自分の生き方を考えてしまう。
    1冊としてさすがの構成。
    今の考えすぎ、悩みすぎな時代に、読んで頭がほぐすのにちょうどいい1冊だと思う。

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    2021年01月25日
  • 忘却の河

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    扉にこうある。

    レーテー。「忘却」の意。エリスの娘。タナトス(死)とヒュプノス(眠り)の姉妹。また、冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで現世の記憶を忘れるという。
    「ギリシャ 神話辞典」

    これでこのタイトル。それはもう。
    四つに組んで読みましょう。

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    2020年09月29日
  • 草の花

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    自分の思考方法に囚われてしまったが故にからまわり、回りくどく自分の願いを叶えることが出来なかったそんな話

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    2020年09月20日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    町田康の訳がとにかく笑える。
    全体通して、1000年前後昔の話だが、考えていることや悩んでることは今と大して変わらないなと思った。当たり前といえば当たり前だけど。
    ドスケベな坊さんがたくさん出てきた印象。
    読んだ直後は色々考えたけど、時間がたってしまったのでわすれてしまった。
    また読みたい。

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    2020年07月20日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』の中には、こんなにもおもしろい話が載せられていたのかと、あらためて目を開かさる思いであった。確かに、ここに掲載されているような、特に性愛に関する説話の類は、中高生の古典学習の教材として取り上げるわけにはいかないであろうが、もしもこのような話が載せられているということを知ったなら、いつか読んでみようと興味を持つ?中高生もいるのではないか。
    『今昔物語集』の福永武彦訳もよいが、出色は『宇治拾遺物語』の町田康訳。適度に関西弁が混じって、それがまた絶妙の味わいを出している。

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    2020年05月02日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    皆さん書いているけど、町田康の訳が本当に面白い。
    声出して笑えるくらい。
    中学高校の時こんな訳に出会えていたら、もっともっと古典が好きになっていた気もする。

    日本霊異記は真面目な感じ。教科書のよう。
    今昔物語は、受験生の時に死ぬほど読んだものがちらほら。
    宇治拾遺物語は大人のエロさもあって、R20な感じが好き。
    発心集は、興味がなかったのでとりあえずスルー。

    この本好きだなぁ。何度も読みたい。

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    2020年03月09日
  • P+D BOOKS 海市

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    画家の渋太吉は一人で旅に出ていた。蜃気楼が見られると言われて行った海の街で若い女性に出会う。自由で陽気で掴みどころがなく奔放。渋はすぐに彼女に惹かれてゆく。渋にはかつて愛した女性があったが、彼女とは不幸に始まり不幸に終わった。その後妻と結婚したが、その愛情は幸福に始まり不幸に終わりつつある。だから今度は幸福に始まり幸福に終わる関係を経験できるのではないか、そんな想いを持った。
    だが彼女は安見子(やすみこ)という名前だけを伝えて去った。
    (「安見子」は万葉集に出てくる「我もはや安見子得たりみな人の得がてにすとふ安見子得たり」という歌であり、「安見しし」というのは「心安く天皇が国を収めるという意味

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    2020年02月27日
  • 忘却の河

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    面白かった。。



    人は他人の見るようにしか見られないし、他人によって見られることの総和が、つまりその人間の存在そのものであるのかもしれない。

    あたしたちはみんな宙ぶらりんだ、宙ぶらりんのまま生きているのだー生きることも出来ず死ぬことも出来ず、惰性のように毎日を送っているのだ。いつかは何とかなるだろうと、それだけは信じて。

    他人なのだ、みんな他人なのだ、ー他人がいることによって、他人が鏡の代わりに自分の姿を映していることによって、地獄は成立する。そして家庭も亦、他人の集合なのではないだろうか。

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    2020年01月05日
  • 草の花

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    汐見と藤木とその妹千枝子とのすれ違う愛と孤独の物語。読書会の課題本。

    サナトリウムで汐見にあったわたしは、彼の死後2冊のノオトを託される。
    そこに汐見の藤木や千枝子との思い出が書かれている。そのノオト読みたい。千枝子に連絡して手紙がかえってくるが、それも読みたい。と思わせてくれた。
    純愛、プラトニックだからか、清純で哀しく、美しい。汐見は藤木を愛してたから、そのかわりの千枝子と一緒になってたとしても、どうにも寂しさは埋められない気がした。

    オリオンの星座が、その時、水に溶けたように僕の目蓋から滴り落ちた。
    甘いショパンの調べと、ときおりでてくる横文字。ショパンを甘いか聴いてた。
    戦後の混乱

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    2019年07月07日
  • 現代語訳 古事記

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    とても幸せな読書を味わえた。貴重な時間であった。辞書と格闘しながらである。歌謡も情感あり楽しい。数々の発見があった。一例として、「尾張」が何か所も記述あり、「美濃」もあったが、「三河」「駿河」は無かったことである。素晴らしい日本の宝である。現代まで読み継がれてきたことを誇りに思う。

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    2019年03月20日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    説話、物語が抜粋でまとめられている。仏教の話も楽しめた。『宇治拾遺物語』が訳がキュートなこともあり、特におもしろかった。性に関してもおおらなであっけらかんとしていて、みだらな感じがしなかった。

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    2019年03月20日
  • P+D BOOKS 海市

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    蜃気楼を「海市」と呼称するなんて、すてき
    というちょっとミーハーなあこがれで読みたかった小説です

    これも倉橋由美子さんが例の『偏愛文学館』で究極の恋愛小説とおっしゃっているのですが

    ストーリーをありていに言えば
    男の友人に失恋した女と結婚してしまった男と
    結婚相手のうちの二番手と結婚した女が
    ダブル不倫になった・・・ため苦しむ・・・

    はあ?
    勝手にしてクレい~~!
    と言ってしまえば終わりなんで

    そんな不合理な恋愛は破綻するってのは、常識
    死者が出ますね
    でも、不条理だから究極の恋愛物語というわけでして

    蜃気楼でなくても幻の城郭をさまよう空想をたまらない楽しみに思う、

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    2019年03月12日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    「日本霊異記」(伊藤比呂美訳)

    訳者あとがきで、伊藤比呂美さんはこの書に惚れ込んだ理由をこう記す。「なにしろエロい。グロい。生き死にの基本に立ち戻ったような話ばかりである。しかしそこには信仰がある。今のわれわれが持て余しているような我なんてない。とても清々しい。しかも文章が素朴で直裁で、飾りなんか全くない。性や性行いについても否定もためらいも隠し立てもない。素朴で素直で単純で正直で明るく猟奇的である。」(469p)

    何しろ雄略天皇のセックスをたまたま見た小姓に向かい、天皇は場を取り繕うために「雷神を連れて来い」という話もある(15p)。これが、​奈良県飛鳥の里に今もある「雷の岡」​の謂れだ

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    2018年08月25日
  • 堀辰雄/福永武彦/中村真一郎

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    堀辰雄の「かげろうの日記」と「ほととぎす」。
    ここにはヨーロッパ仕込みの見事な「平安文学の心理小説化」がある。前回配本の森鴎外からもう一歩進んでいる?

    平安貴族の生活が生き生きと描写されて、物忌みや、待っていることしか出来ない貴族女性の立場、子供のような道綱(藤原道綱)の振る舞い、揺れ動きながらたまに男を手玉にとる道綱母の行動など、なかなか興味深い。

    道綱も成人したころに、夫は他の女に産ませた「撫子」という少女を連れてくる。次第に情が移ってきちんと育て始めたころに、頭の君が撫子を求めてひつこいぐらいに道綱に連絡する。「まだほんの子供ですから」と「いや一目だけでも」何度も何度も同じやりとりを

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    2017年12月23日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    書評を読んで町田康さんの超訳「宇治拾遺物語」を読みたくて借りました
    なーるほど いいのかってくらいの現代語訳でした
    面白かった
    よく知っている話も
    こういう古文なら高校生にもうけるかなあ
    ≪ 笑いあり エロい話も 昔から ≫

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    2017年06月17日
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

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    【献本】平家物語とセットで頂いたけどこちらは読みやすくて、しかも相当面白いからボリュームの割りにすらすら読めました。R15か!?と思うほど露骨で卑猥な言葉が頻出して吹き出すこともしばしば。特に町田康さん訳の宇治拾遺物語は抱腹絶倒。これは読まれることをお勧めしたい。馴染みのある昔話の出展はここか、と改めて読んでみれば曖昧な記憶が甦り、そして煩悩の恐ろしさを痛感するばかり。発心集は心持ちの貴い人がやたら乞食になり、素性が知れると行方をくらます物語。ただ今を生きる私達にも通じる深い考えが根底にありました。

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    2017年03月09日
  • 忘却の河

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    「ふるさと」について考えさせられる本でした。ふるさとはもちろん自分が生まれたところだけど、人によっては人生の深い後悔を置いてきた場所でもある。

    母に勧められたこの本、とても良かったです。

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    2016年11月05日