福永武彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
40歳で画家の渋太吉は、一人旅の途中で安見子という女性に出会います。二人は急速に心を惹かれあい、関係を結びます。太吉には、妻の弓子と息子の太平、そして母親とともに暮らしていましたが、妻と母の折りあいが悪く、自分が自由をうしなっていると感じた弓子は彼の家を出ていってしまいます。その後、太吉は旅先で出会った女性と再会しますが、驚いたことに彼女は、太吉の親友である心理学者の古賀信介の妻でした。太吉は安見子との密会をかさね、彼女といっしょになりたいと話しますが、安見子はそんな彼の想いを知りながらも、現在の家庭を捨てることはできないといいます。
その一方で、太吉や弓子をはじめとする登場人物たちの関係が -
Posted by ブクログ
著者が加田伶太郎のペン・ネームで発表したミステリ作品八編と、「素人探偵誕生記」というエッセイを収録しています。なお「解説」は、ミステリ作家の都筑道夫が執筆しています。
伊丹英典という古典文学の研究者が探偵役となり、研究室の助手である久木進がワトソンの役目を務めて、二人がさまざまな難事件にいどむ連作短編集となっています。純文学作家がミステリの枠組みをとりこんで書いた小説ではなく、福永武彦名義の小説作品とはべつに、本格ミステリとして読まれることを志向して書いた小説といえるように思います。
とはいっても、「解説」で都筑が「謎と論理が二本の足であって、トリックは自然で奇抜なものが出来ればあってもい -
Posted by ブクログ
短編11編を収録しています。
表題作の「夢みる少年の昼と夜」は、ギリシア神話に興味を示す少年を主人公にした物語で、感受性の強い少年の不安定な心をていねいにえがきとろうとしています。
おなじく強い印象をのこす少年が登場する「死者の馭者」や、画家の父をもつ少女を主人公とする「鏡の中の少女」は、すこし神秘的な内容を含んでおり、ロマン派の小説の影響が感じられます。
一方「鬼」は、『今昔物語』から想を得てつくられた作品です。人間の心のありようを冷徹に見つめようとする著者のまなざしが印象的です。
兄の自殺した理由を知る女性をえがいた「秋の嘆き」や、精神に異常をきたす医者の妻をえがいた「世界の終り」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ家族ってなんだろうという疑問を個々の魂のありかた、ゆくえから見つめている作品。
といって、難しい言葉が並べてあるのではなく、日常の生活を描き積み重ねてあるのですっとはいってくるのだ。
父親と母親と二人の年頃の娘、時代は昭和30年代なかば 生活は上等の部類。
なに悩むことあろうと思うのだが、父はなぜだか心ここにあらず(これが物語の芯)、母は不治の病、長女は母の看病で家にしばられ鬱屈したよう、妹はひとり楽しげな大学生生活を送っているようで家族てんでばらばら。
現代の複雑なストレスのたまる家族たちと変わりないではないか。だから古いものがたりだけれど今読める。
ちなみにわたしの娘時 -
Posted by ブクログ
元々が読みやすいとはいえないものなので仕方が無いと思うがやっぱり心から面白かった!とはいえなかった。まずは名前の長さと意味のわからなさでくじけそうになり、登場人物の多さでまたくじける。カナは漢字にルビを振った方が理解しやすいかと思った。けれども、相当に読みやすくはなっているのだと思う。現代の子どもたちの倫理観としてこの結婚?の多さとか、兄弟での争いとかは受入れられるのだろうか。昔話として天の岩戸とかイザナギイザナミ、海幸山幸、天皇の寿命の長さなんかを基礎知識として知っていないと楽しめないものなのかなと思った。文体の美しさとかはよくわからないのだけど、読みにくいものではなかったので、次へのステッ
-
Posted by ブクログ
福永武彦の古事記現代語訳本である。宇宙開闢から神話の時代の上巻、神武〜応神天皇までの中巻、仁徳〜推古天皇までの下巻から成る。上巻では、荒唐無稽な説話が語られているが、ギリシャ神話と同じように、妙に神々が人間臭いのが面白い。中巻からは天皇の系譜が語られている。168歳まで生きた崇神天皇、身長が3m余りあった景行天皇(子が80人もいたらしい)など尋常でないスケール感、25代武烈天皇の崩御の後世継ぎがいなくて、15代応神天皇の5世の孫(継体天皇)を担ぎだすなど途絶える危機があった。ひたすら誰々を妻として、子の名前が何々という記述が累々と続き、名付けへの思いが感じられる。改めて稗田阿礼の凄まじい記憶力
-
Posted by ブクログ
福永武彦が加田伶太郎のペンネームで発表した探偵小説集(プラスSF1篇)。片手間のお遊びで書いたから駄作的な言い訳を本人は書かれておられますが、いやはやどれもベーシックな本格ものを目指されてて面白い。
ペンネームの加田伶太郎や探偵の名前はアナグラムで決めている所から始まり、序文に『福永武彦』が『加田伶太郎』の友人として序文を寄せる体裁にしているところ、随筆『素人探偵誕生記』と、随所に遊び心と推理小説愛が溢れていました。
『完全犯罪』『眠りの誘惑』が好みでした。
船田学名義で書かれた未完のSF『地球を遠く離れて』も、未完ではありますが、物語が一区切りするところまで書かれてますし、面白かった。 -
Posted by ブクログ
のっけから比喩のこねくり回しで始まる短編集。安部公房のフォロワーかと思いきや、同世代に活躍していた「戦後派」の純文学の旗手だった模様。
この本の中で、やはり一番印象に残るのは「未来都市」だろう。異常ノイロンを修復し、犯罪は一切起こらない都市における反乱と離脱。アイデアからメカニズムが明確に打ち立てられ、その中での矛盾を見出す。
他の作品も、物語の外殻は非常に緻密で強力なのであるが、つい癖で些細な人の出入りだの感情の起伏だのを追ってしまい、幹であり殻になっている部分を読み飛ばすと、よくわからないまま終わってしまう。
内容は全て難しいわけではないが、動きが少ないので読むのに非常に時間がかかる -
Posted by ブクログ
福永武彦はいう。
『私がこれを書くのは 私がこの部屋にいるからであり
ここにいて私が何かを発見したからである。
その発見したものが何であるか。私の過去であるか。
私の生き方であるか。私の運命であるか。
それは私にはわからない。
・・・・
僕は思想なんてものを信じてはいなかったんだ。
・・・・
生きるということは何のためなのか。
思想のためなのか。人類のためなのか。自分のためなのか。
僕は 思想も人類も自分も信じない。
地球が滅びようと、労働者の天下が来ようと、
僕にとってそれが何だというのだ。
僕の身体が死んでしまえば、それで終わりだ、
・・・
僕はただすべての人が平等でありたい、
皆が幸福で