福永武彦のレビュー一覧

  • 死の島(上)
    「島」という絵を通じて相馬が知り合った女性-広島で被爆し心と体に深い傷を負った芸術家・素子と彼女と暮らす美しく清楚な綾子、双方に惹かれてしまった彼の許に二人が広島で心中したという報せが届く。これは一日の物語であり、一年の出来事であり、一生の話であり、一人類へ与えられた悠久の啓示でもある。文学史に燦然...続きを読む
  • 死の島(下)
    生きているのか、死んでしまったのか。素子と綾子の身を案じる相馬を乗せた東京発の急行列車は夜を繋いで走り続け、京都、神戸、姫路、岡山-と移り行く風景や車中での会話が彼の心と記憶を写し出す。そして目的地・広島着四・三六分。愛と死、原爆と平和、極限ともいえる人間の姿を斬新ながら、正統的な筆致で描いた歴史に...続きを読む
  • 草の花
    汐見は藤木を永遠に忘れられず、それに絶望して、危険な手術に踏み切ったのだろうと思った。全然ちえこを好きな感じもしないし、ちえこ自身も「兄と重ねて見られるのが辛い」と後年の手紙に書いている。
    本人は悦に入ってると感じてしまうくらい「孤独」を見せるが、現実よりも面影を選んだ人間の末路だと思う。
    しかしな...続きを読む
  • 現代語訳 古事記
    福永武彦の古事記現代語訳本である。宇宙開闢から神話の時代の上巻、神武〜応神天皇までの中巻、仁徳〜推古天皇までの下巻から成る。上巻では、荒唐無稽な説話が語られているが、ギリシャ神話と同じように、妙に神々が人間臭いのが面白い。中巻からは天皇の系譜が語られている。168歳まで生きた崇神天皇、身長が3m余り...続きを読む
  • 現代語訳 古事記
    日本書紀と並び称されるが、こちらは本居宣長に見出されるまでは知られていなかったらしい。国造りの神話から始まって、推古までの歴代天皇の系譜・物語まで。性も人殺しも古代らしい率直さで語られていて、神様も天皇も現代的感覚からするとけっこうヒドイやつが多い。天の岩戸、八岐大蛇、因幡の白兎など有名エピソード以...続きを読む
  • P+D BOOKS 加田伶太郎 作品集
    福永武彦が加田伶太郎のペンネームで発表した探偵小説集(プラスSF1篇)。片手間のお遊びで書いたから駄作的な言い訳を本人は書かれておられますが、いやはやどれもベーシックな本格ものを目指されてて面白い。
    ペンネームの加田伶太郎や探偵の名前はアナグラムで決めている所から始まり、序文に『福永武彦』が『加田伶...続きを読む
  • 廃市・飛ぶ男
    のっけから比喩のこねくり回しで始まる短編集。安部公房のフォロワーかと思いきや、同世代に活躍していた「戦後派」の純文学の旗手だった模様。

    この本の中で、やはり一番印象に残るのは「未来都市」だろう。異常ノイロンを修復し、犯罪は一切起こらない都市における反乱と離脱。アイデアからメカニズムが明確に打ち立て...続きを読む
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集
    内容よりは資料的価値だろう。

    町田康が訳した宇治拾遺物語は秀逸。
    自由自在過ぎて、言葉もない。

    千年経っても人間は何も変わらない。というか、千年前の人間たちのなんと奔放なことか。
  • 夢みる少年の昼と夜
    草の花の美しさに中てられて読み始めたので、長編と短編の違いで少し戸惑った。しかし読み進めるうちに、短編は短編で瞬間の風景を切り取る力に魅せられた。幻想の中に住む人たちについての短編集といったところだろうか。「鏡の中の少女」「死後」「世界の終り」のような夢遊病に近い感覚を持つ小説は夜に読みたい。
  • 風のかたみ
    福永武彦が「今昔物語」を材に取るとこうなるのか。登場人物がお上品になるのはこの作家ならでは。破天荒な人物が破天荒になりきれていないようで残念。らしいといえば、らしい。
  • 現代語訳 古事記
    少しカタカナが多くルビも最初だけなので読みにくいという欠点はあるものの、全体を通してはまぁまぁ分かりやすかったですね。今まで学校で題名しか教えられなかったのでどんなものかと思い読んでみましたが、だいたい漫画とか小説とかってこういう古文書が基になっているのだなと理解しました。
  • 忘却の河
    福永武彦はいう。
    『私がこれを書くのは 私がこの部屋にいるからであり
    ここにいて私が何かを発見したからである。
    その発見したものが何であるか。私の過去であるか。
    私の生き方であるか。私の運命であるか。
    それは私にはわからない。
    ・・・・
    僕は思想なんてものを信じてはいなかったんだ。
    ・・・・
    生きる...続きを読む
  • 古事記物語
    ちゃんと読んでなかった古事記
    いまさらすぎるけど読んでみた。

    神様大杉
    名前むずかしすぎ
    天皇争いすぎ‥
    奥さんもらいすぎ!


    いなばのしろうさぎや
    結局お父さんに愛されなかったヤマトタケルや
    ヤマタノオロチの話や
    あまのいわととか
    くさなぎのつるぎとか
    うみさちやまさちとか

    なんとなく知って...続きを読む
  • 現代語訳 古事記
    神様の名前が…混乱しまくりです(-_-;)
    ルビの振り方が、文字の右横だったらもっと読みやすかったのに…と己の浅学を棚にあげて僭越な感想を述べました(^o^;)
  • 現代語訳 古事記
    イザナギイザナミとか天岩戸とか八岐大蛇とか大国主と稲葉の白ウサギとか海彦山彦とか、子供の頃に読んだ「日本の神話」的な話でしか記憶していなかったので、もういちどちゃんと知ろうとして読んだが……天孫降臨以降はやっぱりつまんないと思った<ミもフタもないw
  • 古事記物語
    なかなから読む機会のなかった古事記。子ども向けなのでわかりやすく読みやすいです。古代の日本の様子がわかったり、身近な場所と同じ名前が出て来ると親しみが持て、もっと勉強したくなりました。
    9月読書会テキスト。小学校高学年から。
  • 現代語訳 日本書紀
    現代語訳でも、もう一度じっくり読まないとよく分からん。
    前半の神話よりも、後半、天皇や皇后やらのぐちゃぐちゃの人間関係のほうがおもろかった。
  • 忘却の河
    これ以外は『草の花』しか読んでいませんが、相変わらず、良くも悪くも、山岸涼子とか竹宮恵子あたりの少女漫画を読んでいるような感覚があった。あの感じが好きな人にはおすすめ。
  • 風のかたみ
    今まで読んだ福永武彦とは全然違う。でもやっぱり福永武彦だった。わたしが敬愛する唯一無二の小説家、福永武彦だ。
    まあ知識人だよね、って思った。こんなにも溢れ出る泉のような、本当の理解に裏打ちされた日本古典の教養を備えているのに西洋詩やってたんだよね。頭がいいひとはずるくてこわい。
    なにもかもが無常だっ...続きを読む
  • 夢みる少年の昼と夜
    再々読……くらいでしょうか、記憶も曖昧ですが。
    1954-1959年に書かれた短編集。
    長~いブランクを経て読み返すことの醍醐味を再確認。
    その昔、気に入っていたお話が、
    今、この年で(笑)読んでみると、
    どうにも感傷的過ぎる気がして評価が低くなったり、
    逆に、かつて今イチとか思った作品が、
    すこぶ...続きを読む