福永武彦のレビュー一覧

  • 現代語訳 古事記
    古事記の内容を忠実に現代語訳されていると名高い名著。

    古事記自体が名前の描写が多く、読みづらくはあるものの一つ一つのストーリーの描写は示唆に満ちていてその本意を理解することは極めて難しい。しかし、古書ではあるもののその考え方は決して古くはなく現代の我々に欠けているものを補ってくれるものであるとさえ...続きを読む
  • 忘却の河
    冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで知覚の記憶を忘れるという――。愛の挫折とそのないことに悩み、孤独な魂を抱えて苦しみを希求するまたの葛藤を描いた。
  • 忘却の河
    人は人が亡くなった時に、思い出すようにして愛を確かめる。人類の死は繰り返されてきたけど、愛する人の死は個人的に確かな「死」また「愛」として訪れる。そんなメッセージを僕は受け取りました。
    生きるとは何か、愛とは何か、このありきたりな問いを新しい形で投げかけてくれる一冊です。
  • 草の花
    儚くも純粋な愛を知りすぎるほど知ってしまった主人公。何にも勝ることなく孤独と向き合う。
    どの会話も心地よく読めた。美しい。
  • 草の花

    今から50年程前の高校生の頃読んだ作品だが 本当にこの時期に出会えて良かった。この現代で初めて読む人達には色メガネをかけずに読めるのだろうか? 自由が不自由の内の自由から 自由を飛び越え過ぎ 多様化で自由の名の不自由な現代で このプラトニックな愛情を 人に紹介はできないのか?一生大事にしたい作品で...続きを読む
  • 草の花
    静かに生涯を終えた汐見。
    なんて寂しく切ない話なんだろう。

    藤木への強い想いから始まり孤独の中で悩み考えつづけた汐見の人生と美しい描写に引き込まれた。
  • 草の花
    すばらしい読書体験でした。 芸術家を志し、自分を靭(つよ)くすることに執着し、そして孤独を愛しすぎた男の、儚く切ない青春の物語。 藤木に対する、千枝子に対する盲目的な愛に、苛立ちすら感じてしまうのだが、目の前に情景が浮かんでくるような美しい文章が、主人公汐見の数奇な運命を救済しているような気がする。...続きを読む
  • 廃市・飛ぶ男

    安部公房という名前をチラホラ見るが、彼よりも情緒的で、かなり感情の部分を大切にしている気がする。
    著者の描きたい事・目線はどちらかと言うと康成寄りなのかも。
    レベルの高い短編集だった。
  • 海市

    個人的には忘却の河よりも好みだった。
    作者の、こういった何も実らず深い哀しみがただ残るような話は、特徴的で一級品だと思う。
    登場人物よりも、それを動かす作者の心情に目を向けたい。
  • 草の花

    作者の魂が乗り移った様な、登場人物のひたむきな愛の渇望や孤独に、言葉を失う一作。
    書簡形式はあまり得意ではないが、それを差し引いても引力のある一冊。
  • 草の花
    心理描写が秀逸で、複雑な心のすれ違いもすんなり読み進められた。バイセクシャルの主人公というのは現代でも珍しいと思うが、当時はもっとインパクトがあったと思う。
  • 忘却の河
    セピア色の、どこか寂しくて、だから純潔な心の在り方が、さらさらと水のように流れていく。確かに人の記憶は沈殿そのものだと思う。次第にそれ自体がその重みに耐えかねて、静かに沈んで忘れられてゆく。水面の震えに応じて、時々浮いてはまた沈んで。
    心に残るフレーズも時折。大好きな小説。
    蒼くて、深くて、涯がなく...続きを読む
  • 草の花
     汐見の考えはわかるようでわからんが、彼は多くの人に確かに気にかけられ愛されていたと思う。それらが目に写ってなかったけど。自分のうちではなく、外に目を向ければひとりではないことに気付けたんではなかろうか。読むうちにやるせなせくなる。

    オリオン座の輝く冬に夜に読むと、美しい文章が、さらに身にしみる。
  • 草の花
    一文一文が叙情に溢れ、その繊細で美しい文を身体に染み込ませながら読んだ。恋愛のみならず戦争の羅列があったのも、私には色々と感じ入るものがあり。汐見の孤独にも深く共感や既知感があり、夢中になって読んだ。名刺代わりの10選に必ず入れる一冊。特別な小説となった。
  • P+D BOOKS 夜の三部作
    『人間を内面から動かしている目に見えない悪意のようなもの』著者が”暗黒意識”と言うものをテーマにした三つの中編小説。
    やっぱり福永さんはいいなあ。


    『冥府』
    死んだ青年の意識は気がついたら冥府にいた。
    そこは死んだ人々の意識が存在している。
    彼らは生前のことを思い出す。
    死者に対して、裁判官と、...続きを読む
  • 忘却の河
    とにかくすごい小説だった。
    寂しくて哀しくて、過去と現在が入り乱れる、揺蕩うような物語。文章がひたすらに美しい。
    忘れたまま生きていくということ。
    父親のパートでの、こちらの文章が印象的だった。
    「私が物語を選んだのではなく、物語の方が私を選んだのだ。」
    作中ではサルトルの劇が演じられるが、まさにサ...続きを読む
  • 草の花
    ひたすらに孤独な青年の恋と愛の物語。

    サナトリウムに入っている私は手術で帰らぬ人となった汐見からノートを託される。そこには汐見が愛した二人の人、藤木忍とその妹千枝子との想い出が綴られていた。忍には渇望に似た感情を持ちつつも忍から拒絶され、千枝子には青年的な恋を心に抱えつつ、結局は汐見は孤独を選ぶ。...続きを読む
  • 草の花
    サナトリウムで望みのない手術を自ら受け、帰らぬ人となった汐見。彼は、同部屋で親しくしていた「私」に二冊のノオトを遺していた。
    物語は、この二冊の手記が中心となっている。

    一冊目、「第一の手帳」
    汐見が十八歳の時に下級生の藤木を愛した過去が、H村での弓道部合宿をメインに描かれる。
    汐見は忍をプラトニ...続きを読む
  • 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集
    楽しかった♪
    町田康さんのラジオ出演から2年ぐらい経ってしまったけど、大変面白く読ませていただきました。
    次は何にしようかな?
  • 古事記物語
    思ったより読みやすい。1957年の作品とは。
    断片しか知らなかった話がこのようなかたちであれ、やっと通して読めた。
    神話らしいダイナミズムがあり、思いもかけない展開があり、ときに人情と道理が示される。

    物語の特徴
    ・動物と人間がほぼ対等
    ・神様といえダメなやつが目立つ
    ・生と死がありふれている
    ...続きを読む