堺屋太一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本作が出版されたのは、1975年。
時代は、第一次オイルショック直後だった。
まさに、日本は高度経済成長期の真っ只中、エネルギーの大半を中東に依存していることに気付いた。
著者堺屋太一氏は、当時通商産業省の課長補佐として、エネルギー政策に携わっていた。
本書の執筆は、第一次オイルショック以前の1971-72年であった。
政策研究の過程で、取引先の商社や電力会社の協力を得て、当時まだ珍しかった大型計算機を駆使して、「中東からの石油が途絶した場合」をシミュレーションしたところ、その内容の凄まじさに直面した。
「二百日間中東石油が入らなかった場合、三百万人の人命と国富の七割が失われる」
著者は、予想をはるかに上回るこの結果をどうやって発表すべきかという問題に直面した。
著者の結論は、小説としての発表であったのだが、当時まだ官僚として現役で、「大阪万博」を成功させるなど忙しくしていたこともあり、出版に至るまでに時間を要した。
そんな折に、小説の内容そのものが現実に「石油ショック(第一次オイルショック)」として起こってしまい、さらに出版が遅れると言うことも有った。
そんな紆余曲折を経て1975年に出版された。
.
内容は、上述のように当時の石油輸入、国内の流通、消費、さらには経済全般に至まで川上から川下までのあらゆる状況を、実際のデータを分析した結果に基づいた社会状況の混乱を描いてる。
世の中に「未来小説」と呼ばれる小説が有り、G.オーウェルの『1984』が例にあげられる。
しかし、本著『油断!』は、大規模シミュレーションに基づいた物語であることから、著者は「予測小説(シミュレーション・ノベル)」と呼んでいる。
このシミュレーション・ノベルを読んでみて欲しい。
実に、50年の時を超えて、今まさに起こっていること「ホルムズ海峡封鎖」は、この小説に酷似どころか、全く同じ状況なのである。
さらに、小説では、そこから始まる政府の混乱で論じられることに、たとえば、「石油備蓄」とか、「中東とは別の太平洋の向こうからの調達」と言った話が出てくる。
(実際に私が読んだのは2005年で、その頃はアメリカのイラク戦争の頃であった)
今私たちが直面している現実は、著者が50年前に描いた世界その物であることに愕然とする。
この50年間、日本は中東依存のエネルギー政策から何にも変わっていないわけだ。
「石油備蓄」と言う言葉が50年間どう扱われてきたのかも気になる。なんだか、すっかりカビの生えた言葉が突然スポットライトを浴びても機能するものなのかどうか。
失われた○○年と呼ぶことが有るが、本書を読んで思うのは、半世紀この国の政府はサボってきたってことだ。
そして、今の政権を見ると…
絶望しかない。
さらに、シミュレーションが示した、多くの国民の命が奪われていく予想が、とても気になる。
----2026/03/31記録---
----以下、2019年5月4日記録---
フィクションとしての面白さ以上に、はたしてこれを絵空事としておけるのかという恐怖を感じる。
50年近く前の情報と時代背景に基づいた小説であるため、エネルギー環境は劇的に変化している。
石油への依存は依然として高いものの、その供給元は中東のみのかつてに比べると、アメリカを含めて多様化している。
しかし、はたしてその多様化した石油供給に何か安全性を求める根拠があるのだろうか。
エネルギーの一部を原子力に頼る政策もあったが、そのエネルギー体制は、震災とともに崩壊してしまった。
地球環境の変化を考えると、化石燃料の利用の再検討が迫られている。
この10年ほどの間に、私たちは、その経験から私たちの生活を支えるエネルギー供給の脆弱性を思い知らされた。
あるいは、生活そのものの基盤すら、安泰ではないことも確認した。
小説の中で起こる生活の混乱、人災をもとにする被害の拡大は、そこまで激しいものではないが、その端緒を実際に見たかもしれないのだ。
この小説から得られるのは、いくつかの知識ではなく、私たちが向き合わなければならない現実とは何か?という事だろう。
そして、私たちが現実に目を開いた時、見えてくるであろう現実の一端をここから予習できるのかもしれない。
問題が大きすぎる。
しかし、ここで心の準備をすることができる。 -
Posted by ブクログ
今週月曜日(2019.4.1)にとうとう新元号が発表されましたね、1130からの発表、仕事中でしたがYutubeで見てしまいました。「令和」と聞いてしっくりこないのは、平成の発表があった時も同じだったように思います。
さて、平成6年頃に単行本で、通産省官僚・経済企画庁長官も務めたこともある、堺屋太一によって書かれた経済予測小節です。社会人になって数年ほど経過したころに、平成30年にもなると、日本はこうなって(衰退して)しまうのか、と思いながら読みましたが、まだまだ先のことで、他人事のように思って読んだのを覚えています。
あれから20年以上経って、気づいてみれば、平成30年は終わってしまい、今は平成31年、来月には令和元年です。
この本で予測されているような、円安(特に、中国や韓国通貨に対して)3倍以上のインフレ(日本通貨の価値の低下)は起きていませんが、ハイブリッド車・デジタル家電・スマホ・インターネットの普及は、書かれている通りですね。但し、カラオケから進化した「パソエン」が普及していないのは個人的に残念でしたが。
この本を初めて読んだ時にはイメージできなかった時代を生きている今、日本を改革する方向性を考えてみる良い機会を得たと思いました。
以下は気になったポイントです。
・日本の自動車業界は、競争力がなくなるのではなく、競争がなくなりそう、外国で造った車を日本で売り、日本で造った車を外国へ輸出している(p57、63)
・1ドル360円、1元60円くらいになると、外国からみた日本企業はとても安く見えるので、円安になっても日本の自動車産業はかつての盛況はとりもどせない(p71)
・夢を見た末に失望するほうが、夢のない予定通りを生きるより幸せだと考える(p135)
・明治維新から太平洋戦争までの74年間と、終戦から今日(平成30年)は、結構似ている(p149)
・本来は執行機関の行政官庁が政府の意思決定機関のように振舞っている、逆に意思決定機能を発揮すべき国会と内閣が、行政官庁の下請け手続き屋に成り下がっている(p219)
・地方発のニュースは、事件・事故・スポーツ・伝統行事に絞るのは、東京にはない物珍しいもの(p329)
・地域サービス型商店街の要は、八百屋・魚屋・肉屋、このどれかが欠けると町全体の売り上げが二割近く減る(p323)
・落ち葉は週2回、区の清掃車が集めて、ゴミ発電の燃料にするが、うまくいくのは晴天続きの場合で、雨で流れて下水に入って腐敗すると、メタンガスを発生する(p355)
・優料ブロードバンドで問題を送り、通信サービスを賞品に出すクイズということで、賭博性を回避している(p397)
2019年4月6日作成 -
Posted by ブクログ
正直、東京に住んでいると、大阪都構想が実現すると何がよくなるのかピンとこなかったんですけど、これを読んで非常によく理解できた。
主張されていることはごくごくシンプルなんですよね。
中央が号令かけて地方を画一的に統制し、恣意的に分配するやり方はもう時代に合わない。
地域地域で、最適な形を自ら選択できるようにすることで活力を生む。
シンプルかつ真っ当な考え方です。
それと、政治と行政の役割分担について。
政治家はビジョンと方針を示し、行政は実務が回るよう細部を組み上げる。
お互いが衝突する際は、とことん議論を尽くす。
これもまたシンプルかつ真っ当。
そして、組織マネジメントの大切さ。
政治家は政策を示すことより、体制・組織をデザインすることに注力すべし。という慧眼。
なんだか拍子抜けするくらいシンプルで真っ当です。
過激なところなんて全くありません。
「ハシズム」だ「独裁」だ、と批判している人はこれを読んだのでしょうか。
とはいえ、職員基本条例や教育基本条例がシンボリックに取り上げられるのは、橋下氏から「仕掛けている」面もあるように感じます。
その点は”小泉流”な「わかりやすい敵を作る」手法の踏襲に思え、ポピュリスティックに感じられるのも事実ですが。
主張がシンプルな分、同じ内容が繰り返されて、読み物としてはやや冗長。
それと、「第三の敗戦」「下り坂」など堺屋氏の時代認識は的を外しているような気が。 -
Posted by ブクログ
大阪都構想のことがよくわかります。
堺屋氏が書いている 一章「大阪の衰退、日本の衰退」で大阪都構想の必要性が明快に書かれています。ここだけ読めば本質はわかると思います。
対談部分は同じことの繰り返しな感じがしたので読み飛ばしてもよいでしょう。
橋下氏の執筆部分は具体例、府知事時代の体験話もあり面白かったですが、あらゆる反対意見に反論・論破しようとしているので、本として冗長な部分が多いかと思います。
政治と行政の役割分担についてよくわかり勉強になりました。
大阪都構想は日本全体の構造的問題を指摘しているので大阪府民以外も読んで役に立つと思います。 -
Posted by ブクログ
橋下知事(当時)と堺屋太一による大阪都構想を始めとする体制改革についての考えを書いた本。今まで漠然としかわかっていなかった橋下氏の考え方がよくわかった。考えには全く同意であり、官僚機構の特徴をよく理解していると思う。同じような内容が何カ所かに出てきており、冗長な感じはある。
「新聞は、もっと話し合いをしろ、議論を尽くせと書きます。もちろん議論すべき問題は議論を尽くすべきだと思います。しかし権力の再配置に関しては、話し合いでは絶対に決着がつきません」p74
「あれだけ「市町村別(試験の)結果の公表をしたら過度な競争が生じる、不当な学校序列が生じる」と主張していた文科省や教育委員会、そして有識者、朝日新聞や毎日新聞は、その後の総括をしていますか?」p79
「(私立、公立高校の無償化について)公立高の尻にも火がついたのです。今までは、授業料が安いから、タダだから、という理由で生徒が入学していたのが、どんどん私立に流れるようになったため、定員割れの全日制公立高校が3割も出た」p135
「日本の行政機構のシステムも基本は明治以来の中央集権体制。4年の任期のお客様知事よりも、国の判断に従うのは当然といえば当然です」p139
「日本の行政システムは、決定権者をはっきりさせると権力の集中になることを恐れて、できる限りぼやかすシステムを構築した。そして責任者をあいまいにして、誰も責任をとらなくてもよいシステムにした。だからいつまでも議論ばかりし続け、決断・決定ができない。反対論者が1名でもいると、今決断しなければならないことでも先送りになる。決定できないと最後は現状維持になるのです」p211 -
Posted by ブクログ
堺屋太一氏が、通産官僚時代に大きく関わった大阪万博を中心に、万博について書いたもの。開催までの経緯と苦労がよくわかった。
「人間は好きに働き、知恵と感覚を研ぎ澄ますべきだ」p40
「(黒くすすで汚れた街大阪)大阪人は自ら「煙の都」と称し、空が煙で曇って見えるのを「大阪の繁栄の証」として自慢していたものだ」p67
「国がいくつかの選択肢の中から三里塚を選んだ理由の一つは、この地域に400ヘクタールを超える国有地・下総御料牧場が広がっていたからであった。国はこの国有地に、取得した民有地をくっつけて空港を造ろうとしたわけだが、この戦略は結果的に大きな反対運動を引き起こすことになった。国有地を広げて、迷惑施設である空港を押し付けるものと考えられたからだ(万博用地は全て民有地買収とした)」p110
「(用地は安く買収した)高い値段での買収は、すなわち、万国博が嫌われるイベントだということになる。万国博の成功のためには、地主たちに、迷惑施設のために土地を売ったという思いを残してはいけないのだと」p111
「(ダニエル・バーナム)理想の低い小さな計画を立ててはいけない。それは情熱を奮い立たせることがなく、ひいては非現実的であるからだ。だから大きな計画を立てよ。それは記憶に残るであろう」p124
「日本はゼロ戦に象徴される航空機の高い技術、戦艦大和に代表される造艦技術を持っていたにもかかわらず、アメリカの艦上戦闘機グラマンやジープなどの大量生産品に数の力で圧倒された」p132
「官庁でも企業でも、自分の意思を通すために、大臣や社長をはじめキーマンとなる上司を口説こうと画策する若者は多い。しかしそれでは決して成功しないのだ。あるいは成功したとしても短命で終わる。なぜなら、偉くない人が大きな事を起こせる日本は、裏を返せば偉い人が下の者に動かされる国でもあるからである」p142 -
Posted by ブクログ
本が出たと聞いてびっくり、まだ意欲的にご活躍されているのですね。堺屋太一氏の日本論かと思えば、(そうなのだが)小説仕立てで読みやすい。他の人にもおすすめ。
数年後の日本を官僚をしている主人公、大学生の息子、現役引退している父の三世代の目線で捉え、話は進む。著者が考える日本がこうなれば良いな論。今の政治じゃなかなか難しいなと現実とのギャップを感じるが、立ち上がり引っ張っていく人がいれば、やってやれないことは無いと思うのだけれどもね。
官僚たちの仕事、こうして政治は動くのか等政治の裏側がイメージできた点でも勉強になった一冊。
【学・共感】
天国を創った日本人は天国から落ちまいとしてみなしがみつくばかりで、未来への夢や希望も改革の意欲もない。それが今日の「欲ない、夢ない、やる気ない」
戦後官僚政治の本流は、国民人生の規格化、流通の無言化、東京一極集中
あまりに安心安全な環境にいると、遺伝子存続本能が潰れて子孫を増やそうとしない「超安定による不胎化現象」
第一の日本、つまり明治の日本は先進国に負けぬ「強い国」二度目戦後の日本は「豊かな国」を目指していた。これからは三度目の日本として「楽しい国」 -
Posted by ブクログ
読み終わった印象としては、信長の思想を肯定的に、光秀の思想を否定的に捉えているという印象です。
しかし、信長の思想を肯定的に考えることは、果たして正しいのだろうか。信長には、光秀のような人が必要であり、光秀にとっても信長のような人が必要だったのではないか。結局は、信長も光秀も、自分の思想に固執して、身を滅ぼしたのではないかと思いました。
仮に信長が天下統一したとしても、泰平の世を築くことはできなかったと思います。第二、第三の明智光秀の反乱を招き、世の中は乱れたのではないかと想像しました。強烈な信長のリーダーシップにより、一時的には、世の中を安定させることはできでも、長期間世の中を安定させることはできなかったと思います。
泰平の世を築く前提として、信長、秀吉、光秀が果たしてきた歴史的意義は大きいと思いますが、徳川家康の果たした歴史的意義は、長期の泰平の世を築いたとして、より高く評価されるのではないかと思います。
などと、いろいろと考えさせられる面白い本でした。多種多様な思想信条の存在を認め、互いに尊重する土壌がないと、人の世は乱れに乱れる。大事を成すには、人と人との関係が、何よりも重要な要素なのだと思います。