梶井基次郎のレビュー一覧

  • 檸檬

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    「えたいの知れない不吉な塊」に心を圧迫される「私」が、確かな美を持つ「檸檬」を「爆弾」に見立て、既存の美の宝庫である「丸善」に置く話。

    「丸善」の棚に置いた「檸檬」が、陳列された「美」を吹き飛ばすことを想像することによって、「私」の心は「不吉な塊」から解放されるのです。

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    2025年11月30日
  • 文豪死す

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    表紙や作者の紹介ページで使われるイラストがとても美しい。適度に服装、髪型は本人の雰囲気を残しつつ、完璧に美化されていてイラストレーターの腕の良さにたまげる。

    文豪たちの最後の作品を集めた本で、まとめて読むとその文豪らしさがよく感じられて良い。
    芥川の「歯車」 私も偏頭痛持ちだからこの現象(閃輝暗点)よくわかる!と共感するとともに、精神病になりやすい家系の人なんじゃないかと邪推してしまった。

    太宰の「グッド・バイ」 女性関係の華やかな作者の理想の別れ方を描こうとして、結末までいかなかったのは収集つかなかったのかな、と思った。

    梶井「のんきな患者」 若い頃から結核を患ってたから、今回の主人公

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    2025年11月30日
  • 乙女の本棚4 檸檬

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    2025/11/03
     ――それをそのままにしておいて私は、何喰わぬ顔をして外へ出る。――
     私は変にくすぐったい気持がした。「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」そして私はすたすた出て行った。
     変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ませた。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなに面白いだろう。

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    2025年11月03日
  • 檸檬

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    無邪気さと生命力に溢れた作品。
    表題『檸檬』は言わずもがな、『冬の蝿』『桜の樹の下には』など、虫眼鏡をのぞくような梶井の視点には生を燃やすだけの強い意志に溢れている。
    元気のない時にこそ読みたい一作。

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    2025年09月10日
  • 檸檬

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    これがいったい国語の授業でどう解説されるのか気になった
    同じ物事に対して自分の感じ方がネガティブな方向に変わったことに気付く瞬間、その重みみたいなものはわかる気がする

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    2025年09月05日
  • 檸檬

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    風景描写が美しい。
    何故こういう表現を思いつくのかと感心する。
    「冬の日」にて、堯が街に出かけ、「何をしに自分は来たのだ」と自問する様子は、感情移入ができた。
    妙な安心感を得たのは、やはり昔も今も似たような人がいるからだと分かったからだろう。
    「闇の絵巻」、「冬の蝿」等から、何気ない風景からここ迄感じ入る事が出来るのかと驚く。
    もっと普段から周りに注視してみたくなる。

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    2025年09月14日
  • 乙女の本棚4 檸檬

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    ネタバレ

    イラストの綺麗さに惹かれた一冊。

    元々小説を読んだ時、難しいなと感じたが
    イラストの雰囲気や文章で少しわかった気がする。

    身体的・精神的に暗くなっていた日常の中、鮮やかに見えた檸檬。
    もしもこの檸檬が爆弾で爆発したら…。
    なんてよく分からない気もするが、分かる気もする。

    難しいと感じていたがこの本を読んで、分かる様で分からない、それで良いのかなと納得できた。

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    2025年08月13日
  • 檸檬

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    舞台は京都の街と丸善の書店という狭い範囲に留まる中、主人公の感情が不安、倦怠、高揚、破壊衝動と目まぐるしく移ろう。
    この静的な場面展開と動的な心情の対比が強い魅力となっている。
    また、想像上であれ丸善を爆発させる箇所は人間の嵯峨という意識をメタファーとして表現している。
    というのも、大好きだったものが一瞬の心の移ろいで大嫌いになったりもするのが人間の面白くも儚い所。
    絶対の不在を鮮やかな果実一つに託して描ききったのが檸檬である。

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    2025年08月11日
  • 檸檬

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    鬱屈としたモノクロの世界に、檸檬という小さな爆弾。
    色と香りが一瞬にして炸裂して、心の奥に火花が散る。
    こんなにも静かで鮮やかな「爆発」を描ける筆致、ただただ見事。

    梶井基次郎『檸檬』(立東舎 乙女の本棚版)
    「えたいの知れない不吉な塊が、
    私の心を始終圧えつけていた。」
    言葉にできない重さを、
    檸檬の鮮やかさがそっと照らす。

    イラストと相まって世界感の想像がしやすい。
    文豪版岡本太郎『芸術は爆発だ』感がある作品です

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    2025年08月01日
  • 檸檬

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    憂鬱や孤独といった感情が、これほどまでに詩的で、しかもその暗さを鮮やかに際立たせた形で表現できるものなのかと、驚いた。
    心惹かれた文章を抜き出し、それらを並べて読んでみると、一つひとつが独立した詩のように感じられる。憂鬱の深みや孤独の静けさが、かえって鮮烈な印象となって心に迫ってくる。
    類まれな詩的感性を持った者が、憂鬱や孤独と真摯に向き合い続けた末に生まれた芸術だと感じた。

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    2025年06月21日
  • 檸檬

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    Audibleにて拝聴

    檸檬爆弾を仕掛けたら…なんだかとても清廉な気持ちになった。何度も読み返したい。

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    2025年06月01日
  • 乙女の本棚4 檸檬

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    梶井基次郎の『檸檬』と素敵なイラストがコラボする、乙女の本棚シリーズ第4巻です。
    懐の寒い主人公が様々な考えを巡らせながら京の街を放浪する物語です。
    自らが貧しくみすぼらしいので美しいものに強く引き付けられる反面、好きなはずの丸善も格調の高さから重苦しい場所になっていました。
    店頭が薄暗い青果店に珍しく檸檬があり、一つだけ買う主人公。
    素晴らしい芳香のせいか幸福感を得た彼は、避けていた丸善へ向かい…。
    イラストは私が想像していた『檸檬』の世界観そのものでした。
    美しい純文学を美しいイラストが彩り、世界観を更に色濃く描く良書です。

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    2025年05月28日
  • 乙女の本棚4 檸檬

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    げみさんのイラスト、いいですね。特に暖色系の色合いが、いいなと思いました。

    鬱々とした「私」がわりとイケメンに描かれていて、それが余計に想像していることの不気味さを増している感じがしました。

    爽やかな檸檬に託した気持ちで、少しは彼の中の不吉な塊が減って、前向きになれたのだろうか。この後の彼がどうなったのかが、気になりました。

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    2025年05月24日
  • Kの昇天(乙女の本棚)

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    河合隼雄先生の影の現象学で紹介されてたので気になって読んでみました。
    読んでいくうちにこんなに美しい文章があるのかと驚かされた。とにかく繊細で、触り方を間違えれば割れてしまいそうなガラス瓶のような話だな、という印象。特にK君の儚さというか、想像力を掻き立てられるような人物像が素晴らしくて、彼の言動に目が離せなかったです。
    風景描写も本当に良くて、夜の海や月明かりみたいな冷たい空気感が好きな人にはたまらないんじゃないかと…
    短い話なので皆読んでほしーーー!そんでもってK君について話したいよーーー!!

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    2025年03月31日
  • 檸檬

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    檸檬だけ青空文庫で読みました。
    怠惰による焦燥であったり、劣等感であったり、胸の奥や頭の中にどんよりと渦巻いている薄暗い感情をなんと言っていいのか分からないけれど、満たされていないという不幸と断言できない幸福を渇望する感情がものすごく美しく表現されていて見事でした。中学、高校時代に希死念慮とまでは言えないけれど満たされていないという気持ちがずっと取り巻いていたことがあり、非常に主人公に共感しやすい本でした。
    自身に納得していない人生を送っている時は豪華絢爛であったり大衆嗜好の文化を受け入れられず寂れ、捻くれたサブカルチャー的なものに強く惹かれるという部分や、そうしてであった檸檬を真の幸福の象徴

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    2025年02月24日
  • 檸檬

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    写生文好きな私としてはめちゃくちゃ好きな本です。
    他愛ない日常の風景の中に作者ならではの発見や見方、作者(登場人物)の心情が細やかな描写で表されているので心に程よく染み込んできます。
    読んでいて作者の孤独感が猛烈に伝わってきますが共感でき、それは誰しもが経験できる孤独なのかなと感じました。
    てかなんでこんなにも共感できる感覚を言葉で表現できるのか!!!!本当に驚愕です。すごすぎます。
    じっくり何度でも読み返しさらに味わい深く、また新たな楽しみを得られる宝物のような本です。
    特に「路上」「器楽的幻覚」「冬の日」「冬の蝿」が好きです。

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    2024年12月28日
  • 檸檬

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    ※主に『檸檬』『冬の蠅』についての感想です
    物語を追うというより、その美しい言語表現を目で追って、好きなフレーズはあるかなぁと探しながら読みました。
    意外にも共感出来ることが多くあり、今まで好きだったものがある日を境に距離を置きたくなるものになったり、粗末でどこにでもあるようなものに惹かれるようになったり、幸せな時間が来たとき、その後に訪れるであろう苦痛の時間を想像して憂鬱になったり、「分かるなぁ」という気持ちになった場面が多くありました。

    あと、作品全体を貫くどこかひょうきんで明るい雰囲気が好きでした(病気は辛かったと思うけど)

    檸檬、冬の蠅は読書初心者でも読みやすいかも?(なにを隠そ

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    2024年12月13日
  • 檸檬

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    好きな話は冬の蝿(闇の絵巻)、冬の日、Kの昇天、泥濘
    収録の中で異彩を放っていたのは、
    城のある町にて(巻末の解説にあるとおり、単純で、平明で、健康な世界)
    ある崖上の感情(不安定さは感じない。感情の発露?)
    愛撫(変態的だけど猫への愛情を感じる)

    病のせいか、常に死を身近に感じているように読めました。
    常に精神不調で絶望しているけど、世の中の一般的な幸せや娯楽、喜びを分かっている。分かっているからこそ対になっている絶望が深い。
    人並みの幸せを求めつつも、幸せを意識すると途端に苦しみが増す矛盾に苦しんでいる様子と、その状況を楽しんでいるようにも思えました。

    のんきな患者で、梶井の本音が書か

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    2024年10月19日
  • 檸檬

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    昔読んだきりで、檸檬というタイトル以外印象にも残っていなかったが、最近読み返す機会があり、文章の上手さを今さらながら感じた。情景が鋭く鮮やかに浮かんでくる感じが爽快だった。

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    2024年08月29日
  • 檸檬

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    短編ながら日本近代文学の歴史に残る傑作が並ぶ。何気ない自然や風景、子供の描写に作者独特の瑞々しさを感じる。生来、感受性豊かな作者が持病によって常に死を意識する状況の中で「生」を感じさせるものに対してより鋭敏な感受性を発揮したのではないか。

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    2024年08月10日