梶井基次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自身の性向や病と向き合いながら紡がれた作品たち。繊細な感性で文章化された絶望は読んでいて苦しくなる時もあったけれど、心が洗われるような静謐さ、命の美しさや儚さを併せ持っているように感じた。
1,檸檬
精彩を欠く日々に現れた魅力的な一顆の檸檬の描写が素敵だ。鬱々とした気分に、檸檬が光を投げ掛けてくれたということか⋯
2,城のある町にて
主人公・峻の日々を淡々と描く。峻はたぶん、梶井基次郎さん自身を投影しているのかもしれない。何気ない日常のひとコマひとコマに注がれる視線の感性が豊かだった。
3,泥濘
青年の鬱々とした1日の記録。何をしても上手くいかない。そういう時は不思議と「上手くい -
Posted by ブクログ
これまで読んだ作品の中でも、かなり好きな部類に入る。
精神的に追い詰められた人間が、正常な思考を保てなくなったとき、どこか素っ頓狂な行動を取ってしまうこと。そして、その行動によって当人が一時的な安堵を得るという状態が、この作品にはよく描かれている。
本当に辛いときには感情が抜け落ち、辛いとすら感じなくなる。そうして、ふとした瞬間に不意に笑ってしまったり、理由もなく涙がこぼれたりするものだと思う。
『檸檬』では、店先で見かけたレモンが、ある瞬間に煌々と輝いて見える。
何でもないはずのものが、異様なほど魅力的に感じられる――そんな感覚には、私自身にも覚えがある。
あの状態を経験したことがあ -
Posted by ブクログ
表紙や作者の紹介ページで使われるイラストがとても美しい。適度に服装、髪型は本人の雰囲気を残しつつ、完璧に美化されていてイラストレーターの腕の良さにたまげる。
文豪たちの最後の作品を集めた本で、まとめて読むとその文豪らしさがよく感じられて良い。
芥川の「歯車」 私も偏頭痛持ちだからこの現象(閃輝暗点)よくわかる!と共感するとともに、精神病になりやすい家系の人なんじゃないかと邪推してしまった。
太宰の「グッド・バイ」 女性関係の華やかな作者の理想の別れ方を描こうとして、結末までいかなかったのは収集つかなかったのかな、と思った。
梶井「のんきな患者」 若い頃から結核を患ってたから、今回の主人公 -
Posted by ブクログ
檸檬だけ青空文庫で読みました。
怠惰による焦燥であったり、劣等感であったり、胸の奥や頭の中にどんよりと渦巻いている薄暗い感情をなんと言っていいのか分からないけれど、満たされていないという不幸と断言できない幸福を渇望する感情がものすごく美しく表現されていて見事でした。中学、高校時代に希死念慮とまでは言えないけれど満たされていないという気持ちがずっと取り巻いていたことがあり、非常に主人公に共感しやすい本でした。
自身に納得していない人生を送っている時は豪華絢爛であったり大衆嗜好の文化を受け入れられず寂れ、捻くれたサブカルチャー的なものに強く惹かれるという部分や、そうしてであった檸檬を真の幸福の象徴 -
Posted by ブクログ
※主に『檸檬』『冬の蠅』についての感想です
物語を追うというより、その美しい言語表現を目で追って、好きなフレーズはあるかなぁと探しながら読みました。
意外にも共感出来ることが多くあり、今まで好きだったものがある日を境に距離を置きたくなるものになったり、粗末でどこにでもあるようなものに惹かれるようになったり、幸せな時間が来たとき、その後に訪れるであろう苦痛の時間を想像して憂鬱になったり、「分かるなぁ」という気持ちになった場面が多くありました。
あと、作品全体を貫くどこかひょうきんで明るい雰囲気が好きでした(病気は辛かったと思うけど)
檸檬、冬の蠅は読書初心者でも読みやすいかも?(なにを隠そ