あらすじ
私は体調の悪いときに美しいものを見るという贅沢をしたくなる。香りや色に刺激され、丸善の書棚に檸檬一つを置き--。現実に傷つき病魔と闘いながら、繊細な感受性を表した代表作ほか、12編を収録。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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檸檬は救いというより、一瞬だけ現実の見え方を狂わせる異物に近い。状況は何も変わっていないのに、世界が軽くなったように錯覚させる。そのズレの中で丸善に檸檬を置く行為は、小さすぎる反抗でありながら、本人にとっては唯一まともに世界へ干渉できた瞬間だったように見える。
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檸檬だけ読み終わった。
丸善という本来ならば青春が詰まっているであろう場所を憂鬱の象徴に、檸檬という瑞々しく単調でポジティブな色を発しているものを物騒な爆弾に、といった色彩豊かな対比が美しかった。また単純に鬱な気分をさっぱり吹き飛ばせればどれだけ良いだろうかという誰しもが持つ気持ちを綺麗に描写されている点も素晴らしかった。
文系の人はこれを授業で取り扱ってもらえるとは羨ましい。私の稚拙な読解力では上記のような平べったい表面的な分析と感想しかできなかったので、詳しい文学的な解説が欲しい。とりあえず最後まで読む。
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これまで読んだ作品の中でも、かなり好きな部類に入る。
精神的に追い詰められた人間が、正常な思考を保てなくなったとき、どこか素っ頓狂な行動を取ってしまうこと。そして、その行動によって当人が一時的な安堵を得るという状態が、この作品にはよく描かれている。
本当に辛いときには感情が抜け落ち、辛いとすら感じなくなる。そうして、ふとした瞬間に不意に笑ってしまったり、理由もなく涙がこぼれたりするものだと思う。
『檸檬』では、店先で見かけたレモンが、ある瞬間に煌々と輝いて見える。
何でもないはずのものが、異様なほど魅力的に感じられる――そんな感覚には、私自身にも覚えがある。
あの状態を経験したことがあるからこそ、この作品には強く共感してしまった。
丸善に檸檬を置くという突飛な行為も、決して突飛なだけではなく、切実な心の発露として理解できてしまう。
そう思わせる力を持った、忘れがたい短編だ。
私も檸檬で丸善爆破したいなぁ。
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無邪気さと生命力に溢れた作品。
表題『檸檬』は言わずもがな、『冬の蝿』『桜の樹の下には』など、虫眼鏡をのぞくような梶井の視点には生を燃やすだけの強い意志に溢れている。
元気のない時にこそ読みたい一作。
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これがいったい国語の授業でどう解説されるのか気になった
同じ物事に対して自分の感じ方がネガティブな方向に変わったことに気付く瞬間、その重みみたいなものはわかる気がする
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舞台は京都の街と丸善の書店という狭い範囲に留まる中、主人公の感情が不安、倦怠、高揚、破壊衝動と目まぐるしく移ろう。
この静的な場面展開と動的な心情の対比が強い魅力となっている。
また、想像上であれ丸善を爆発させる箇所は人間の嵯峨という意識をメタファーとして表現している。
というのも、大好きだったものが一瞬の心の移ろいで大嫌いになったりもするのが人間の面白くも儚い所。
絶対の不在を鮮やかな果実一つに託して描ききったのが檸檬である。
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鬱屈としたモノクロの世界に、檸檬という小さな爆弾。
色と香りが一瞬にして炸裂して、心の奥に火花が散る。
こんなにも静かで鮮やかな「爆発」を描ける筆致、ただただ見事。
梶井基次郎『檸檬』(立東舎 乙女の本棚版)
「えたいの知れない不吉な塊が、
私の心を始終圧えつけていた。」
言葉にできない重さを、
檸檬の鮮やかさがそっと照らす。
イラストと相まって世界感の想像がしやすい。
文豪版岡本太郎『芸術は爆発だ』感がある作品です
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憂鬱や孤独といった感情が、これほどまでに詩的で、しかもその暗さを鮮やかに際立たせた形で表現できるものなのかと、驚いた。
心惹かれた文章を抜き出し、それらを並べて読んでみると、一つひとつが独立した詩のように感じられる。憂鬱の深みや孤独の静けさが、かえって鮮烈な印象となって心に迫ってくる。
類まれな詩的感性を持った者が、憂鬱や孤独と真摯に向き合い続けた末に生まれた芸術だと感じた。
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表紙が素敵だったので角川文庫で購入。ざらざらした質感もいい感じ。
物語とするには断片的で、日記とするには茫漠としていて、詩とするには病魔の影が濃すぎる、不思議な感覚の短編集。
眠気に襲われているときや集中力が切れてぼんやりしているときに脳内を駆け巡る凪いだ混沌を、梶井基次郎氏がすくい上げて言葉にしてくれている感覚。
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結構な短さなのにここまで物語としてかけるのがすごい〜〜と思った
檸檬の匂いとか、冷たい感触、そのほかにも視覚的に訴えてくるようなもの、琥珀色や翡翠とか 描写が繊細に脳裏に浮かんできた。
少年の爆破させたい気持ち、でもできない弱さ。だけど、檸檬を置くことでなんだか救われてるのが強さだと思う^ ^
ヨルシカの爆弾魔を聴きながら読んだよ~
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人間の完全な等身大のように感じた
鬱病になり昔と感覚が変わって苦手意識すら持つようになってしまった
鬱病になったということにおいていけなかったのは、過程ではなく鬱病という事実が感覚を変えてしまった
そんな好みが変わった自分に麻薬のような快楽を与えてくれる存在だったのがこの人は檸檬で、昔の感覚を懐かしながら神格化されていて本当に今の人と思考が同じだと感じた
私達もお金が入ったら少しだけ贅沢して質のいいものを買ったりして、昔好きだったものを嘲笑してまた成長したら可愛いって思い始めたり。
散歩しながら色んなことを想像したり、歩いて疲れたら気持ち悪くなったり。
体調が悪い時に周りの子に手を当てて熱があるマウントをとったり
現代でも全くおんなじことがありそうだった
私が面白いと思ったのは最後
自分の心を落ち着かせた檸檬という概念の完璧な形
アンティークなものを扱っていた丸善の中にたった一つだけ異物が入ったら誰でも気になるだろう
そしてそんなことをして出て行った人はまた妄想を膨らませる
気まぐれさと破天荒さが文字通り爆弾のように落とされて終わる
思わず笑ってしまう楽しいお話だった
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檸檬
その狂気と寂しさと、どうしようもなさに
激しく共感してしまう
これからその世界を抜け出して生きれる気がしないというか,それを望んでいない自分がいる気もしていて怖い
あれ?私は病んでるのだろうか?
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「檸檬」と「櫻の樹の下には」は読んだことあったけど、その他も読んでみようかと。
どれも良かったけど、上記2つ以外だと冬の蝿が好き。中学の頃に櫻の樹を読んで自分以外に同じことを思っていたひとがいた!と痛々しく喜んでいた記憶が蘇った。筆者の写真からなんとなく乾燥した?ドライな人かと思ってたけど全編通して、じっとりとうだうだした人間味を感じた。
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「檸檬」と「桜の樹の下には」以外は初めて読みました。
この二つはやはり面白いなぁと。
体調の悪い主人公が全編鬱鬱してる感じ。
解説がもう少し面白いと良かったかなぁ。
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檸檬の存在、冷たさが一人ぼっちでいた作者にとって友達と重なる部分があったんだろう
かつて、不吉な魂を抱える前に好きだった丸善の存在を否定するようになったこの小説は自分自身の存在を否定しているようにも思える
全体的に病んだ人物のエピソードだった
文の作りがとても綺麗
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誰ってんじゃないが僕の友人を見ているようだった。「そこ」か「ここ」かにある得体の知れない恐怖がいよいよ実体を持とうとしているのを、どこか心待ちにしているような、不本意な他人事というか、究極の他力本願というか。『ある崖上の感情』が好き。「歩け。歩け。歩き殺してしまえ。」「闇!」
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得体の知れない不吉な塊
抽象的な表現が多い中で、この感覚で作品に共感できるようになった。
レモンに希望を見出す読後感の気持ちいい作品ですが、鬱鬱とした現実との表裏一体を想像できる背景が面白かったです。
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学生の頃に読んで、勝手な解釈で映像化した。
檸檬。ベートーヴェンの楽譜を見てうっとりするような、舶来物好きなインテリ純朴青年の梶井氏は、自らの命の短さに絶望しながら、気詰まりに感じるようになった丸善を希望の象徴として木っ端微塵にする事で、欲望と魂の浄化と共にこの世を去ったのだろう。
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描写される陰鬱な感情に、あまりにも身に覚えがあり過ぎる。
日常の小さな場面を切り取って表現する能力が高くて、情景と自分の肌が溶け合うような、境い目がなくなるような感覚がした。
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『檸檬』、『桜の樹の下には』などは存在は知っていたが初めて読んだ。頽廃にして清澄、と言われれば、なるほど確かにと思う。
自分は分かりやすく面白い『ある崖上の感情』が好きだったな
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檸檬、城のある町にて、桜の木の下を読んだ。
淡々と静かな日常を描いた作品という印象。
つまりはこの重さなんだな。
という言葉が印象的。
えたいの知れない不安をかかえていた、そんな時に出会った檸檬。
単純な塊が、鮮やか色、形、匂い、冷たさを通して美しいものに感じ、えたいの知れない不安はレモンと同じ重さであることに気づく。
今、空は悲しいまで晴れていた。
ー城のある町にてー
病弱で病に伏せることが多かったからか、自分では思うようにならない悩みの核心というところにはあえて触れずに、よりよくしたいという希望を持って、えたいの知れない闇から光を求めていく。
そういうところに価値を置いていたのかな。
表現の端々にそういった著者の繊細さと憂いを感じた。
Posted by ブクログ
あの有名な(「桜の樹の下には」)
桜の樹の下には屍体が埋まっている!
を初めて通して読んだ
夢現で詩的な世界観と
超現実的な緻密さを感じる描写
曼荼羅絵のようだなぁ〜
常に死の影に追われつつも
冷静な頭脳を持つ方だったのかなと
思いつつ読む...
Posted by ブクログ
美しいと感じるものを切り取る力が素晴らしい
ほとんどが主人公の内面描写のみで完結するが、圧倒的な描写力で満足感がある
"積まれた本の頂上に檸檬"この光景を想像するだけでワクワクさせられる
なぜ主人公はこの檸檬の塔を作り上げて爆発させたかったのか
本屋を爆破したいというのは、本への愛が反転して憎しみに変わってるのか 愛に応えられなかった時のための予防線みたいなものか
Posted by ブクログ
久しぶりに、純文学を読んだので1冊読み終わるのに時間がかかってしまった。
あと1冊ずっと鬱々とした雰囲気に覆われているせいもある。
作者本人の精神状態がそうなんだろうけど、ずっと湿った薄暗い部屋で書いてるみたいな。
でも表題の檸檬は好き。ちょっと破滅的ではあるが。
個人的にいちばん驚いたのが、時々なにかで聞く「桜の木の下には死体が埋まっている」の始祖がまさかのこれだったということ。
Posted by ブクログ
檸檬
2025.12.02
病んでいる人の世界の捉え方なのかなと。
ちっぽけな檸檬に着目して壮大な破壊を想像する主人公。全てめちゃくちゃにして終わりにしてしまいたいという気持ちだろうか。
Posted by ブクログ
抒情的な本を読みたい。そう思ってAIに「明治〜昭和15年までで、叙情的な小説を書く文豪を紹介して」と頼んだ。真っ先に出てきたのは、この梶井基次郎「檸檬」だった。
朝の家事を終え、のんびりとこたつに足を伸ばしながら読み始めた「檸檬」は、AIの紹介文に書かれた通り、そしてタイトルの爽やかさとは裏腹に、不吉で意味の分からない話だった。
確か学生の頃、名作として紹介されていた気がする。
「……これが?」
真っ先に浮かんだのはそんな疑問だった。
鬱々とした主人公の日常に、爽やかな刺激を与える檸檬の香り。鬱々の原因となる丸善。末路は唖然としたものだ。荒唐無稽甚だしい。
でも鬱々とした人とはあんなものだろう。私も経験があるが、人間は時折意味の分からないことをするものだ。それを見事に切り出した梶井基次郎は、実体験かもしれないが、素晴らしい観察眼と卓越した文章力を持つ作家だったのだろう。
面白かった……のだろうか?なんとも頭を悩ませる作品だった。