梶井基次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
心理描写と情景描写のバランスがいいのか、単純に両方上手いからなのか、とても読みやすい短編集だった。
特に「泥濘」という短編が印象に残った。
まず「泥濘」という字がとても綺麗。「ぬかるみ」とも「でいねい」とも読むらしく、個人的にはでいねいが好み。濘はさんずい(水)+寧(安らぐ)で構成されていて、柔らかい雰囲気がある。
作品としては、日常の停滞感や重苦しさをリアルに感じられるものだった。不活発と活発を繰り返しつつ、結局は同じ場所に留まっているような、足を取られて進みにくい様な感覚や心境に共感できた。構成上は逆だが、これを読んだ後に「檸檬」を読んでも面白い気がした。 -
Posted by ブクログ
檸檬、城のある町にて、桜の木の下を読んだ。
淡々と静かな日常を描いた作品という印象。
つまりはこの重さなんだな。
という言葉が印象的。
えたいの知れない不安をかかえていた、そんな時に出会った檸檬。
単純な塊が、鮮やか色、形、匂い、冷たさを通して美しいものに感じ、えたいの知れない不安はレモンと同じ重さであることに気づく。
今、空は悲しいまで晴れていた。
ー城のある町にてー
病弱で病に伏せることが多かったからか、自分では思うようにならない悩みの核心というところにはあえて触れずに、よりよくしたいという希望を持って、えたいの知れない闇から光を求めていく。
そういうところに価値を置いていたのかな -
Posted by ブクログ
苦労を重ね(原因が身体にあるにしても)参ってしまった人間の、暗いモヤモヤした日常を正確に描いている。
不思議と負の感情は少なく、小さなことに幸福や安心を見出したり、また暗闇に落ち着いたりする。
精神的に病んだ経験がある人ほど共感を得やすいかもしれない。
多くの人が漠然と持っていたりする、あまりに抽象的な感覚が日本語でハッキリと表現されていてハッとする。
このような精神状態を文学として言葉にして表現された例はあるのかないのか知らないが、ここまでリアルな感覚は他にないのだろう。
非常に独特の読後感。
梶井基次郎の世界観に飲まれて脱力する。
現代の忙しさから逆行する感覚がある。
唯一無二である