梶井基次郎のレビュー一覧
-
購入済み
いつもながらの、暗い
病んだ主人公の日常描写である。細緻な筆致で風景や風俗が描かれている。その筆力は、当然卓越したものであるのだが、作品としての焦点が奈辺にあるのかが不明。特に工夫もない。従って『檸檬』を既に読んでれば、余り高く買うことの出来ない作品である。強いて読みどころを挙げるなら、質屋での小店員とのやり取りと、友人との刃のような会話とであろうか。最後に檸檬が一個あるか否かで作品の読後感はこうも違うものか、と思わざるを得ない。
-
Posted by ブクログ
最初の出会いは教科書。年齢バレるかな? 別にいいけど。
まったく興味が湧かなかったことだけは憶えている。“授業のテキスト”じゃ無理もないだろう。
思い返せば、中島敦も三好達治も教科書が最初だ。教科書、意外と侮れない。
その後どういった経緯で再び梶井作品に触れることになったのか、もはや思い出すことは困難だ。新潮社版の奥付には、昭和六十二年五月二十五日 第四十一刷とあるから、えぇと…………いつ?(笑)
とにかく今から20年以上前ってことだ。そのくらいに、梶井と三好達治に、分からんけど何かハマった。
三好達治のことはここでは置いておいて(梶井と三好は同人仲間)、梶井作品については、私自身若かった -
Posted by ブクログ
【檸檬】
再読。
今まで憧れていても、居づらかった丸善。
そこへお気に入りの果物屋で買った檸檬を手に
まるで武器を持ったかのように入る。
それでもやっぱり居心地は悪く、
落ち着かなかったが、檸檬を思い出し
積み上げた本へ檸檬を置く。
丸善を彼が生きづらいと感じた社会とするなら、
檸檬は文才が光る彼自身なのかなぁと再読して思いました。
【鼠】
大きな人間が小さな鼠が猫に囚われているのを眺めている。
鼠にとっては恐ろしいことだとしながらも、
猫と戯れているようだと愛らしくも眺めながら。
【栗鼠は籠にはいっている】
日がさんさんと照っている時には籠の中にいながら
車を回している栗鼠を革命家だと -
Posted by ブクログ
音楽会の最中の静けさに孤独を思う「器楽的幻覚」
猫の耳を切符切りでぱちんとしたい、猫の爪を切ってしまいたい、
そう想像しながら猫の前足を瞼に乗せる「愛撫」
桜の神秘的なほどの美しさの理由を見出す「桜の樹の下には」
影の中に別の人格を見ていたK君が溺死した「Kの昇天」
崖の上から期待を持って開いた窓を見つめる「ある崖の上の感情」
新任の先生につけたあだ名が勝手に広まるのを恐れ出す「大蒜」
なかなか帰ってこない小学生の弟2人を嫌々探しに行く「夕凪橋の狸」
土手の上から眺めた雲の恐怖を覚える「蒼穹」
ほか全27編に梶井の手紙を加えた全集。
装丁:安野光雅
本人も病を患っているからか病気の人物が多く