荻原浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この小説の裏表紙に
「たっぷり笑えてしみじみ泣ける、最高にキュートな誘拐物語」
と書いてあるんですが
まさにその通りだと思いました。
冴えない人生の極みを生きる伊達秀吉は
死に場所を求めて見知らぬ街をほっつき歩いているはずなのに
死のう死のうとするわりに
死ねる条件が揃ってしまうと言い訳をつけて回避するロクデナシ。
そんな彼の元に
お金持ちの家の6歳の男の子が「家出したい」と飛び込んできて
起死回生の大チャンスとばかりに誘拐を企てるんですが
警察からヤクザからチャイニーズマフィアから
最悪というよりも極悪な相手から追われまくる羽目になり・・・。
主人公の伊達さんと
家出少年の伝助とのやりと -
Posted by ブクログ
類人猿の言語習得を勉強していると話したら、友人が薦めてくれた本です。
とある霊長類センターで、ボノボ(ピグミー・チンパンジー)のバースディが言語習得を披露する公開検証の場面から始まります。
もう一人の主人公・真は、恩師の後を継ぐ形で実質的なリーダーとしてバースディの言語習得を日々研究しています。
着実に、そして平和に進められていると思っていた研究でしたが、ある事件がきっかけで、真は真相を知って行くことになります。
真とバースディ、彼らの周りの人間。それぞれの性格や、行動が随所で偏りなく書かれているので、のめり込むことができる作品だと思います。
特に、バースディの表情が映像のように頭 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小説家デビューしたものの売れず、三冊目をなかなか書けないでいる広告制作会社の社長「私」が、危篤の父が書き残した自伝の原稿を読む……というお話。お父さんの人生は、熊に襲われたり、早稲田文学にかぶれてみたり、戦時中は敵の戦闘機を撃墜したり……という激動の人生だったことをはじめて知る。まさに人に歴史あり、という感じ。
すごく良い作品だったとは思うのだけど、なにせ渋い。わたしには渋すぎた。。。主人公からして50代だしな。。。
もうちょっと、笑って泣けてドンデン返しありのポップな話かと思っていた。もうちょっと齢を取ってから読むとまた違ったかな、と思う。
いい感じにちょいヘタな文章を書いて素人の -
Posted by ブクログ
長い年月を生きてきた樹と、樹とともに生きてきた人々の物語のモチーフを思い描いていたところ、この本に出会いました。
千年の時を生きてきた樹はその樹皮に人々の想いをまといます。 根は時に人々の悲しみや、涙を吸い取って来たかもしれません。木々の葉は周りで喜び遊び回る子供の声や、明るい陽の暖かさを感じていたかもしれません。恐ろしく長い時を、同じ場所で、繰り返す人々の人生を見てきたのでしょう。
手を広げても余りある、大きな樹を抱きかかえてみませんか。一目では見上げることのできない程の大きな樹形に囲まれると、樹と空気と土と木漏れ日、そして自分自身が一体となる感覚が湧いてきます。 -
Posted by ブクログ
タイトル間違いで買ってしまった、この本。ガッカリしながら読み始めてみた。が、!
短編集だけど、話の一つひとつがジワ~っと入ってきて、飽きがこない。短編集だとは思わせない。断片的に話は繋がっているからかもしれないけど。
子どもの口から落ちたクスの実が芽吹き、気が遠くなるような時間を経て根を深く、太く張る。いつしか樹齢千年の巨木となっていた。恐ろしいほど巨大な木。この木の周りでいろんな時代でいろんな事が起きる。この巨木の名前は「ことりの木」。
ゾッとする話もあるし、私は好きだな。これほどデカイ木を見てみたくなるし、そこら辺に生きてる木も、この本読んでからはなかなか面白く見える。